平井内閣府特命担当大臣閣議後記者会見要旨 平成31年3月26日

(平成31年3月26日(火) 9:21~9:42  於:中央合同庁舎第8号館1階S101記者会見室)

1.発言要旨


 おはようございます。まず、ご報告から。先日の愛知県出張についてです。
 3月23日土曜日、愛知県を訪問して、名古屋港、三菱重工業の飛島工場、株式会社豊田中央研究所、名古屋大学を視察するとともに、「HIRAI Pitch in 名古屋」を開催しました。
 まず、名古屋港は、我が国唯一の自働化コンテナターミナルとして、自働搬送台車や遠隔自動門型クレーンを活用した、荷役効率化、情報の共有化等の取組が進めてられています。1月にシンガポールで港湾のIT化ということで視察してまいりましたが、正直申し上げて実際、生産性を比べると名古屋港の方が上だなというふうに思いました。
 IT化によって港湾の生産性を上げる、このサイバーポートの取組の一つの事例だと思うんですが、これは名古屋港だけができているというところが問題で、これを広げるのは一朝一夕にはできない、いろいろな条件が整わなきゃいかんということだと思います。
 三菱重工業の飛島工場では、H-IIA・Bロケット、宇宙ステーション補給機「こうのとり」の製造現場、さらに現在開発中のH3ロケットの製造設備の視察をしました。特に、H-IIA・Bロケットのエンジンは、宇宙開発の老舗としての我が国の技術の粋を結集したものであり、非常に誇らしく思いました。
 さらに、株式会社豊田中央研究所を訪問して、自動車技術をコアに、長期的な展望を見据えた挑戦的な研究から実用化に近い研究までをご紹介いただきました。
 名古屋大学では、ノーベル賞受賞者である天野教授の「未来エレクトロニクス集積研究センター」、昨年、HIRAI Pitchにも来ていただいた伊丹教授の「トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITBM)」を訪問しました。これらの研究施設はフロアもデザイン思考であったり、いずれも特徴的なもので、このような横のつながりや活発な議論を誘発する研究環境は、若手研究者の活躍を含めて研究力向上には非常に重要ではないかと思いました。 
 また、「HIRAI Pitch in 名古屋」を名古屋大学において開催し、東海地方を中心に活躍するスタートアップ企業などとの意見交換を行いました。東京等との他の拠点との交流や行政によるスタートアップへの与信の必要性ですね。各機関での取組の連携の在り方について、有意義な意見交換ができました。名古屋も小学校の跡地を改装してインキュベーションの施設を作ろうとしたり、相当スタートアップ熱が上がっているなと思いました。
 今回の愛知出張を踏まえまして、本当にある意味では一つの拠点ということで、先進的な技術の現場を視察することができました。これまでのHIRAI Pitchで提示されたスタートアップ政策に関する課題とその解決策は、「中間取りまとめ」という形で今月末にも公表して、今後のイノベーション・エコシステムの拠点形成に向けた政策に反映をさせたいと考えています。
 次に、宇宙政策担当大臣としてですが、昨日「S-NET(エスネット)宇宙利用シンポジウム」に参加した後、「アクセルスペース」と「アストロスケール」という二つの宇宙関連スタートアップを視察しました。
 「S-NET(エスネット)宇宙利用シンポジウム」では、冒頭挨拶をさせていただきまして、準天頂衛星「みちびき」の活用に関するパネルディスカッションも拝見させていただきました。金融やゲーム業界など、物流ですかね。様々な分野での利用アイデアに触れて、改めて「みちびき」7機体制の構築などを政府が責任を持って進め、挑戦的な事業構想の基盤を整えることが重要であると思いました。
 「アクセルスペース」は、小型の光学衛星のコンステレーション事業に取り組む企業です。衛星の小型化・低廉化・コンステレーション化(多数化)ですね。という最近の潮流の最前線を見ることができて、衛星群から生み出されるビッグデータがどのような社会変革を起こしていくのか、その可能性を改めて実感しました。政府としては、政府衛星データプラットフォーム「Tellus(テルース)」も既にサービス開始していますが、更なる整備などを通じて、衛星データの利活用を着実に推進したいと考えています。
 また、最近注目されている「アストロスケール」は、スペースデブリの除去事業に取り組むという企業であります。世界に先駆けた先進的な技術開発の現場を拝見し、誰もやったことない壮大なプロジェクトに取り組もうとしている姿に感銘を受けました。政府としても先日、「スペースデブリに関する関係府省等タスクフォース」を開催したところであり、デブリ除去技術の実証を含め、日本の技術力でデブリ対応に取り組んでまいりたいというふうに思います。
 視察を通じて、「宇宙」と「人間の生活」がデータを通じてつながったんだなというふうに思いまして、サイバーとフィジカルが結合したSociety 5.0の実現に資するものとして、宇宙分野が正にムーンショット的な課題であるということを改めて実感しました若手・異分野・ベンチャーも含めて非常に活気のある分野ですので、今後とも、宇宙政策の推進に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 報告ばかりになりましたが、私からは以上です。

2.質疑応答

(問)昨日、EUREKA!懇談会、開かれたんですけれども、これまでのいろんな議論を踏まえて、あと、今はクールジャパンというとオタクとか、アニメとか、漫画ばかりが前面に出てくるんですけれども、それ以外の新しいクールジャパンの戦略の方向性について、大臣はどのようにお考えでしょうか。
(答)懇談会の方は2回開催させていただいて、今まで約13人の外国人有識者と意見交換を実施したんですが、クールジャパンは100人いれば100通りのクールジャパンがあって、柔軟に試行錯誤していくプロセスこそが重要だということを改めて感じました。
 昨日は、着物や、京都の町家や、実際、2人の方は築240年と175年の家に住んでいるというんですから、普通、日本人でもなかなかいないと。365日着物を着ている女性もおられましたし、彼らが言うには、日本の特徴を作り上げているのは、やっぱり日本人だと。日本人がクールだという話を散々していただいて喜んだんですが、あと、クラフトマンシップに表れているような、謙虚でありながらモノを突き詰めていく点に魅力を感じているということや、昨日の外国人の方はそれぞれローカルの自治会の重要メンバーに入っておりまして、神輿の担ぎ手が少なくなるのが大変だとか、祭りを維持するのは大変だとか、はっきり言って我々以上に心配をしてくれていて、それは国がやってくれというような要望もありました。
 だから、日本を愛する、外国人から見て、日本のその脆さといいますか、何か儚さというか、フラジャイルなところがまたいいんではないかなというふうに思いました。
 結局、いろんな話をしていても思うんですが、日本に外国人が何万人来たとか、ラーメン店が海外に何店舗できたとか、日本のアニメとかフィギュアが海外で幾らか売れたみたいなものを指標にしてクールジャパンを語っていると、非常に表面的なものになるなと。
 結局、日本の良さを、皆さん言うんですが、これは持続可能性が大事でしょうと、日本悠久の歴史をつむいできたのだから、要するに日本の良さというものをやっぱり続けていくというサステナビリティというものをかえって、海外の方々が心配してくれていると。全くそのとおりだなというふうに思っていて、今度の戦略の中では、そういうことも考えたいと思っています。
 それと、若い人たちの潜在能力が非常に高いので、彼らの潜在能力を解放すると。特にクールジャパンの分野や、その次の時代の担い手として、そういう戦略もちょっと考えていきたいというふうに思いました。
 昨日はオタク、アニメ、マンガという切り口が中心ではなかったんですが、次回はそこにどっぷりと焦点を当ててやろうというふうに思っているんですが、相当日本のことを詳しい方々は第三者的な目でちゃんと見ているし、滞在が短い方はそれなりに日本の良さとか、ちょっと不都合なこととか、そういうのをちゃんと指摘してくれているのですが、皆さんに励まされるのは、余り日本の将来、暗い話ばっかりせずにポジティブにやってくださいというようなことを海外の方々に言われるのも、我々がいかに悲観的なことを言うのが好きかということの表れではないかなというふうに思います。
 私もだんだん、これをやっていて、クールジャパンとは何かということが見えてきました。単なる政策論ではなくて、日本という国の在り方そのものに関わる非常に重要なことだと思っていて、トータルでやっぱりこのクールジャパンと言われるものの、我々のいろいろな要素は日本の外交的なソフトパワーにもなっているなと、そのことを更に思いましたので、日本の良さを失わないようにしたいと改めて思った次第でございます。ですから、何か一つの具体的な政策だけでクールジャパンを語ると非常に表面的なもの、皮相的になっちゃうなと。もっとちゃんと考えて、これから情報発信もしていく必要があるなと、つくづく海外の方々に教えていただいたなと、そんなふうにも思います。
 その思いを受けまして、また本体の方の委員の方々とラップアップしていきたいなと、そんなふうに考えています。
 以上です。
(問)先程の視察のことなんですけれども、サイバーポートが名古屋港でしか実現しないと。そうすると、じゃあほかで実現しない要因は何だと大臣はお考えでしょうか。
(答)いろいろあると思います。あそこは港として、圧倒的に輸出が多い。黒字、日本で一番の黒字ですよね、トヨタさんというものが控えているし、三菱重工さんもあるし、で、あそこで走っている無人のAGVと言うんだったっけ、あれなんかはトヨタさんは10年前につくっているんですね。完全に自動ですよ。ああいうものがちゃんと機能しているし、港というのは、いろいろなステークホルダーの権利や利害が絡んでいるので、トップダウンですぐに物事が進められないという状況はご存じのとおりです。ですから、できるところから機械化できるというところ、あそこはまずいろいろな荷役をする会社が共通プラットフォームをつくったというのが画期的で、随分前から、そこがなかなかまず、最初はいかないんだと思います。それさえできると、あのシステムは動くし、非常に効率的になると。そこにトラックが入った時点から、もう全てが最適化できるんですね。ところが、皆さん、会社がばらばらでやっちゃうと、全体最適化できない。そういう意味で、港の特性やそこにいる利害関係者の調整をしながら進めていくという意味で、トップダウンで一気に中国のようにはできないなと、そういうふうに思います。
(問)先程の一つ目の質問、クールジャパンのところでちょっと乗っかって質問させてもらうんですけれども、大臣、おっしゃったように、日本に何万人来たとか、どれだけ売れたとかという指標、これよりもというお話だったんですけれども、ちょっとぼやってとしている。確かに大切さ、パッケージでという、セールスだと思うんですけれども、次にどういう指標が想定されるのかなと、今、お話を聞いていて思ったんですけれども、大臣のイメージというのはありますか。
(答)やっぱり日本に来た外国人の方々、人数ではなくて、どれだけ満足したかとか、日本を感じたかという、内容の段階になっていくのではないかなというふうに、数ではなくて。日本をどれだけ理解してくれたか、そしてまた、これからはリピート率、要するに本当に日本のコアなファンの方々のリピート率に注目したいなと思っています。瞬間的に来る観光客のお客は、一見さんという感じですよね。
 あと要するに、海外のオタクイベント、もう完全に日本のオタクイベントに参加している方々のリピーター、この方々というか、人たちは、まだ若くて、日本に来るお金がないという人が多いんですね。そこら辺りを、ずっと引き続き、日本のファンにしていくというのが、ものすごい日本のファンだと思います、アニメを通じて。そこの手立てが今、ないので、そこへ独自のチャンネルで、何らかの手を打ちたいなというふうに思います。
 オタクビザなんていうのは、果たしてできるのかどうか分かりませんが、そういうようなことと、あと盆栽とか、ニシキゴイとか、こういうのは明らかに輸出金額が増えているんですよね。そうなると、知的財産としての、ちゃんとした守りの部分も必要になってくると思います。そんなようなこととか、結局、最近感じるのは、例えばイノベーションが起きるエリアと、クールジャパンというのは重なっていくんですね。ですから、テック系のイノベーションなんかは、正にクールジャパンそのものなので、そういうものも、今までなかなかクールジャパンのメニューになかったんですけれども、そういうものもちょっと前に出していきたいなと。
 インターネット系はなかなか、海外の後塵を拝するような状況ですけれども、テック系、ディープテック系は必ず日本は生きるなと。
 あと宇宙なんかはもうクールだなというふうに思うのは、正にあれは職人がつくったメカですよね。ロケットもさることながら、特に衛星系、今度のデブリをつかまえる、あれだって、何か夏休みの工作みたいなやつの進化版ですよね、僕から見ると。もう磁石でひっつけて。ああいうのをつくれる技術があるというのが、設計して、これはもう海外の人から見たらクールだと思うし、昨日のベンチャー2社で、海外の人とも話したんだけれども、結局、別に求人して人を求めて雇っているわけではなくて、向こうから来たいと。要するにデブリをなくすというプロジェクトに賛同して、海外からあの会社に来たりとか、コンピューターのソフトウェアの技師が衛星のコントロールをするのに、いろいろなプログラムを書くということ、アストロスケールの方ですけれども、海外から来ると。だから、日本と海外の混在チーム、混成チームで現場を見てですね、これが次の時代の若い人たちのまたクールジャパンにつながるのかなと思ったりしたんですが、これは明らかに日本の技術や、宇宙とて日本のやっぱり技術というのがあるんだなというふうに思いました。
 そんな意味で、もうクールジャパンはラーメンとか、そういう段階ではなくなってきているんだなと、改めて思った次第でございます。

(以上)