平井内閣府特命担当大臣閣議後記者会見要旨 平成30年10月19日

(平成30年10月19日(金) 10:51~11:11  於:中央合同庁舎第8号館1階S101記者会見室)

1.発言要旨


 おはようございます。
 一昨日、エストニアから帰ってまいりました。
 今回のエストニアはデジタルサミットということで、もともと1月に総理に出席要請があったものを、私が代わりに行ってまいりましたが、各国のIT・科学技術担当の責任者の方々、閣僚も含めて、担当という意味では、要するにデジタル化担当というふうに呼んだ方が今の時代はいいと思うんですが、そういう方々と直接お会いはできて、また、意見交換できたことは非常に成果があったと思います。特にエストニアのタンミスト起業IT担当大臣とは、いろいろとバイで意見交換もさせていただきましたし、ちょうどその後に小さなシンポジウムみたいな分科会がありまして、そこは、前大統領の御子息がモデレーターを務めておりまして、現首相、私等々が入った中で、非常に面白かったのは、やっぱりAIに関して、どのように進めていくかというようなこと、各国いろいろ今考えておられるという意味で、倫理の問題やセキュリティー、あと人間中心のAIの扱い方、それと、どの程度までAIが社会実装していくのかと今の段階でっていうようなことを、本当に直接いろんな意見を交わしたことは非常に大きな成果だったと思います。
 エストニアとは、デジタルガバメント、また高齢者対策等々について、今後更に連携を深めて、情報共有をしながらやっていこうということになりました。御存じのとおり、エストニアは九州ぐらいの面積に大分県ぐらいの人口で、ITによって高齢化とかそういう問題を一部解決できているし、デジタルガバメントという意味では、日本のマイナンバーカードに相当するものがもう98%普及している社会ということで、我々にとっては、国のサイズは違いますけど、随分参考になる点が多いなというふうに思いました。そんな意味で、これから更に連携を深めていきたいというふうに思います。
 これは、来年のG20の中でも主要なテーマとして上がってくると思いますし、特にAIの倫理やセキュリティーや、人間中心のAIというようなものについては、日本がある程度今やっぱり主導的な立場を執るべきだと私は考えています。
 エストニアの報告に関しては、以上です。
 私の方からは以上です。

2.質疑応答

(問)科学新聞の中村です。
 先週、サイエンスマップ2016が公表されて、それで、先端領域での日本の存在感が少し落ちてると。総体的に小さいのと、あと、中国がすごく躍進してるという中で、今後、10年後、20年後、ノーベル賞が厳しいんじゃないかっていう見方も出てるんですけども、大臣として、これ、どう受け止めて、そして、今後の政策にどのように活かしたいのかを教えてください。
(答)このサイエンスマップ2016では、895の研究領域が見出されて、日本の参画領域割合が3割程度。前回に比べて微増したとなったものの、英国やドイツの参画領域割合は5~6割であり、日本との差は依然として大きい状況であると承知してます。
 一方、中国の参画領域は、2002年以降、これ、もうすごい激増なんですね。今の2016のマップだと51%ということで、研究者の人数、そして投資額、また、一部企業からのお金等々考えると、質も量も中国はすごい勢いで伸びているというふうに思います。その意味で、相対的に見て、我が国の科学技術力の低下が危惧されている現状は私も認めるところです。
 政府が6月に閣議決定した統合イノベーション戦略というものは、私が大臣になる前ですけれども、国立大学の経営基盤の強化や人事給与マネジメント改革を通じた若手研究者の活躍機会の創出、これは大学改革ですね。あと、新興・融合領域の開拓に資する挑戦的な研究、独創性や分野横断的な俯瞰力を備えた人間の育成の促進、競争的研究費の若手研究者への重点的な配分といったようなところは、これ、新しい取組で、優秀でやる気のある若い研究者を支援したいというふうに思ってます。研究開発予算は限られていますが、それをうまく配分しながら、持続的なイノベーション創出に取り組んでいきたいというふうに思います。
 引き続き、文部科学省を始めとする関係府省と連携して、基礎研究や研究環境整備に対する支援、学際的・分野融合的な新領域の研究の活性化などに積極的に取り組んでいきたいと、そのように思います。
(問)NHKの柳生です。
 先日15日に海賊版サイト対策の有識者会合が開かれましたが、予定されていた中間まとめが決められないという事態になりました。大臣としての受け止めと、今後このテーマについての協議の在り方、どのようにお考えか、教えてください。
(答)ちょうどこの有識者会議は私がエストニアに行ってたときに開催されたということで、新聞報道等も拝見しました。最終的に座長からの報告を受けて、検討したいということですが、海賊版対策を総合的に推進するということについては認識が共有されたというふうに思いますし、また、要するに、全体として中身の濃い、深い議論が行われたという意味では、座長は大変努力もされ、私は一定の成果があったというふうに思います。
 こういうオープンな有識者会議でそういう突っ込んだ議論をするというのは、今の日本に必要なことだと思います。ですから、そういうことを含めて、また座長の報告を最終的に私の方で伺った上で、また検討を進めていきたいと思います。
(問)NHKの鈴木です。
 まず1点、冒頭でおっしゃっていたエストニアの関連でお伺いしたいんですけども、意見交換できて大きな成果だったというお話ありますが、それを踏まえて、今後、政策にはどのように活かしていきたいか、その辺は。
(答)いろんなことがあると思うんですけれども、エストニアという国自体がまず一つ、日本でいうと典型的な地方自治体のサイズだということで、結局、デジタル化を全部、国全体で進めていく中で、やっぱり地方の地方自治体って大事だと思うんですね。ですから、エストニアと今後いろいろな連携していく中で、国全体の政策もさることながら、地方自治体で先行してデジタル化に取り組んでいるところなんかには、エストニアの知見といいますか、今までの経験は大きな役割があるだろうというふうに思ってます。
 そして、これは私の方から各国にお話をさせていただいたんですが、日本はどう考えても超高齢化社会のトップランナーと言っても過言じゃないと思うんですね。そういうものを解決するために、そのデジタル技術や特にAI等々をどのように社会実装していくかということに関して、各国はこれからいろいろアドバイスもくれるし、そういうところでは、また恐らく新しいスタートアップ企業みたいなのも出てくると思うんですね。そういうものをやっぱりこれから情報交換をしながら、できることから進めていきたいと。ある意味、これ誤解を招くかも分かりませんが、いずれ各国全部同じ状況になるんですね。高齢化と人口減少という中で、ある意味で日本の中でこれから行われるデジタル化の中における高齢化社会みたいなものに対してのいろいろな政策は、世界的に注目を浴びると思うんです。そこで日本がどのようなことを成果として上げていくかというのは非常に重要で、それはもう日本だけの力ではできないと私は思っているので、各国いろいろ得意分野もあるので、そういう方々と情報を共有しながら進めていきたいと、そのことに関しては、皆さん合意をしていただいたということです。
(問)あともう1点、先程AIの倫理などで日本が指導的な立場を執っていくべきだという、その心はどういうことでお考えで、そういうふうに思うということなんでしょうか。
(答)要するに日本が必ずしも今までいろいろな情報というようなものを収集するのに、国家としてそんな積極的ではなかったし、アメリカのようなGAFAのような大きなプラットフォームも今のところないと。日本は個人情報保護法もあり、国民が安全・安心っていうことに対して、非常に高い関心を持っているというか、優先順位が高く感じていると。そういう中で日本という国が社会実装、AIをするに当たって、そのセキュリティーや国民の理解や、その何て言いますかね、人間がそれで本当に幸せになれるのかというようなこと。そして機械に任せて、AIに任せていい領域は一体どこなのかという意味では、例えば農業であるとか医療、ヘルスケアですね、の分野で日本が先導的な立場を執れるだろうというふうに思っています。
 AIって今回で3回目のブームっていいますか、第3次AIですけど、本当に社会実装を検討し始めたのは今回初めてで、だから全世界で多くの企業が具体的な投資もし、研究開発費も投じられ、今度のAIブームっていうのは、そこは今まで違うと思うんです。機械学習だけじゃなくて、ディープラーニングっていう技術が出てきて、それをどのように社会に使うかっていう、いろんなモデルがこれから試される中で、やっぱり人間中心にっていうのを日本がリードしていくべきだというふうに私は思っています。
(問)最後に、来月15日に宇宙活動法全面施行されますけども、これに向けての期待と課題についてお願いします。
(答)11月は準天頂も11月1日にサービスインして、これから利活用っていうことが中心にいろんな方々、関心を持ってもらいます。私もこの法律の11月15日の施行を楽しみにしてたということで、この法律によって事業の予見性が高まる。第三者損害の賠償制度が導入されると。間違いなくこれで民間の宇宙活動が後押しされることは期待されます。宇宙ベンチャーみたいなものもですね、日本も結構増えましたよね。そういう意味で、様々な宇宙産業の振興に寄与する法律だなというふうに思っているので、政策的にもそういうところを支援していくべきだろうというふうに思います。
(問)化学工業日報の伊地知と申します。
 ちょっとフィジカルな実社会の話として、海洋プラスチックごみの問題っていうのが割と話題になっているんですが、これの対策、化学技術としてアプローチが必要なのかなという気がしているんですけど、例えば包装材料っていうのは、ある家庭においては衛生問題とかで役に立つけれども、廃棄の問題で大きく問題になっているっていう認識を持ってるんですけれども、例えば生分解性プラスチックの開発っていうので、CSTI(システィ)がイニシアティブを執って研究開発を加速させるというお考えはあるでしょうか。
(答)政府としては、スマートプラスチックっていう政策を今度スタートさせると聞いています。そのプラスチックの今お尋ねになった分野に関して、私あまり知見がありませんので、また勉強させていただきますが、政府として取り組むことは、もう間違いありませんので、その中でその科学技術の分野がどのように貢献できるかということは、これから検討させていただきたいと思います。
(問)固まりましたら、是非お話を聞かせていただきたい。ありがとうございます。
(問)日経新聞の生川と申します。
 簡単で結構なんですけども、ちょっと大臣の御意見をお伺いしたいんですけど。最初のご質問でサイエンスマップの話があったんですけども、日本の参画領域は3割ぐらいということで、要するに多様性が極めて低いというか、あまり新しい分野にチャレンジするような研究者は少ないというふうにも受けとれるんですけれども、単純に何て言うんですかね、この数字に対する受け止めというか、危機感を持って受け止めておられるのか。あるいはもうアメリカとか中国と伍して戦っていくというのは諦めて、選択と集中を進めるという意味では3割でもいいっていう感じなのか、その辺の大臣の御認識はいかがですか。
(答)学術会議の皆さんのお話等々聞くと、日本は非常に多様性があるし、あらゆる分野に対してそれなりの研究者の皆さんが頑張っているというふうに思っています。ですから、その研究の分野の多様性というのは大切にしたいというふうに思います。
 一方で、今回の中国のような状況を見ると、やっぱり大学もアメリカの大学と同等以上に資金を持っているということですよね。そして、海外で留学してきた研究者が中国に戻って、今までより相当レベルの高い研究も進めてきているということで、ある意味では二、三十年前の日本の状況に近いんだろうというふうに思います。じゃ、日本が二、三十年前どうだったかと、ノーベル賞を受賞するという、それが目的ではないでしょうけど、結果になるために、日本が何をしてきたかということになると、その二、三十年前の状況と今はもう一変しましたよね。特にこのデジタル化とグローバル化によって、いろんな情報共有のスピードなんかも上がってしまって、ですから単純に過去と今を比較できない状況にあると私は思っています。
 研究者の皆さん方のモチベーションを上げるということが一番重要だというふうに思っていて、私まだ日本は捨てたもんではないというふうに思っています。そういう意味では、これからあらゆる分野で若い研究者が挑戦意欲を持って、その融合領域等々に取り組んでいけば、私は悲観することはないだろうというふうに思います。
 ただ、中国のように、それいけ、やれいけ、もうあらゆる分野にもう全てお金を今投資するような状況には、なかなか我々は対抗できるとは思っていません。

(以上)