茂木内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成30年8月3日

(平成30年8月3日(金) 10:27~10:41  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

  冒頭、私の方から。
 先ほどの閣議におきまして、経済財政白書につきまして報告し、公表いたしました。 内容の詳細につきましては、既に事務方から説明しているとおりであります。
 経済財政白書については、昭和22年に前身となります「経済実相報告書」が公表されてから今年で72回目となります。その間、「もはや戦後ではない」、これが昭和31年です。そして「先進国への道」「改革なくして成長なし」、こういった副題とともに時代を切り取り、シャッターに収める「白書」の役割を追求してきました。
 現在、景気回復は、戦後最長が視野に入り、AI、IoT、ビッグデータといった第4次産業革命がもたらす技術革新によって、我々の生活や経済社会が画期的に変わる時代に入っております。
 一方で、需給ギャップはプラスに転じておりまして、日本経済の最大の課題は、サプライサイドの改革を通じて、潜在成長率を引き上げることであります。
 今年の白書では、「人づくり革命」や「生産性革命」を推し進めることが人生100年時代を見据えた経済社会、そして、第4次産業革命が開く「Society5.0」を実現をし、日本経済を新たな成長経路に乗せる鍵になる。こういったメッセージを打ち出しております。副題は、「「白書」:今、Society5.0の経済へ」といたしました。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)今、御紹介のありました白書ですけれども、今回の白書では、急速な技術革新に対応するために高度のIT技術の人材育成の点を指摘されています。こうした人材は諸外国と比べて日本では特に不足しているわけですけれども、人材育成に向けて政府としてどのように取り組むのかを教えてください。
(答)人材育成に関しては、一つ、御指摘がありましたような急速な技術革新、これにどう対応するかという側面と、これから人生100年時代に入っていく、そういった中でどういった人材が求められるか。こういう2つの側面があると思いますが、人材育成については、大きく3つのポイントがあると思っております。
 1つは、今、申し上げたように、いつでも人生の再設計を可能とする学び直しのためのリカレント教育の充実とAI時代に対応できる能力を身に付ける職業訓練プログラムの充実であります。
 2つ目は、働き方改革が重要になってきます。白書の第2章でも分析していますように、学び直しを行った人は、そうでない人と比べて年収が10万から16万円上昇する。こういう効果が見られるわけであります。しかしながら、教育機関で学び直しを行っている人の割合は、日本の場合は僅か2.4%で、OECDの平均11%を大きく下回っております。この原因分析でも、やはり日本の場合は、労働時間が長く学び直しの時間が確保できないという、労働慣行に大きな問題がある。こうした意味でも、働き方改革を進め、ワークライフバランスを見直すことが必要だと考えております。
 3つ目は就業の在り方であります。リカレント教育を受けた上で、中途採用される道、こういったものを開いていく。新卒で入ってずっと定年までその会社で勤める。それだけではなくて、中途段階で、人材の側、つまり働き手の側からすると、途中で転職とか企業を回る、起業することもある。一方、企業の側からすると、そういった人材を中途採用でも積極的に採っていく。こういった道を開くとともに、例えば女性であったり高齢者については、テレワークでの就業も可能とする。日立なんかもかなりこれを広げていくということを、つい先日も発表したところであります。またフルタイムではなくても、自分の健康状態であったりとか、能力であったりとか、それに応じて働ける。こういう選択肢の整備が必要だと考えております。
 今、申し上げたような3つの政策につきましては、「人生100年時代構想会議」で議論を行って、「骨太方針2018」にもその具体策を盛り込んでおります。
 また、働き方改革、これにつきましては、先の国会で関連法案が成立いたしておりまして、議論というより実行の段階に入っている。しっかりこれらのことを実行していくことが必要だと思っております。
(問)来週行われます日米FFRについて伺いますが、大臣、これまで国会答弁等で、日米双方にとって利益となる合意を目指したいと発言されていますが、アメリカからは厳しい要求というようなことがなされることが予想されるわけですけれども、そういった中で、日本にとっての利益というのは期待できるものなのでしょうか。どのような利益を想定されていますか。
(答)これは協議ですから、正にやってみないと分からないという部分があるわけであります。そして、日本として、当然幾つかのシナリオであったりとかアイデアを持って、この日米の新しい通商交渉に臨むことになりますが、これがダナンのときもそうでありましたし、こういった国際交渉、現場での交渉でありまして、実質的にライトハイザー通商代表と私の2人の間の協議の中で、全てが決まっていくと思っているところであります。
 いずれにしても、その協議は日米双方のwin-winとなるような成果を求めるということでありまして、我が国として一方的に、何というか、譲って国益に反する、こういう合意を行う必要はありません。
 何度も繰り返しておりますが、決して簡単な協議である、こう思っているわけではありませんが、この協議を通じて、二国間関係にとどまらず、日米両国がアジア太平洋地域の発展にいかに協力していくか。こういったことも含めて建設的な議論を行いたいと思っております。
(問)トランプ大統領が検討する中国への追加関税について、当初の10%から25%に引き上げる意向を示しました。大臣、9日にFFRを控えておりますけれども、こうした一方的な制裁でディールを迫るのがアメリカのやり方かと思いますけれども、そういった保護主義的な動きについて、受け止めをお願いいたします。
(答)今、通商交渉であったりとか様々なやりとりというのは、いろいろな国の間で行われているわけでありまして、私がそれについて統一的に何かコメントをする、こういう立場には当然ないと思っておりますが、何度も申し上げておりますとおり、日本としては自由貿易の旗手として、ルールに基づく多角的貿易体制を重視をしておりまして、各国のいかなる貿易上の措置も、WTO協定とは整合的であるべきだと、こんなふうに考えております。
 そして、各国の追加関税、報復関税、この応酬、エスカレーションというのは、全体的にはプラスには働かないわけでありまして、世界各国が、世界経済の発展に悪影響を与えることがないように、対応していくということが重要なんだと思っております。
 そうした観点から、私とライトハイザー通商代表との間の通商協議においても、自由貿易の重要性、更には多角的貿易体制の意義について米国にしっかりと訴えていきたいと思っております。
(問)話が変わるのですけれども、8月15日の終戦関係で、靖国神社に参拝される御予定があるかどうか。
(答)ありません。
(問)白書についてお伺いさせてください。白書では、リカレントの重要性を書かれていらっしゃいまして、人的資本投資額が増えると労働生産性が上がるということで、いろいろ興味深い試算をされているかと思うのですけれども、こういった試算を内閣府でどう生かしていくか、例えば職員さんの、府の職員さんがリカレントを進めていくとか、府の中で提言を生かしていくお考えがあるのかどうかについてお伺いさせてください。
(答)リカレント、これは元々、日本語にしますと、循環する、回帰する、こういう意味でありまして、これまでの人生、これを考えると、一般的には、高校か大学まで教育を受ける。そして2つ目のステージで、新卒で就労して、定年まで勤める。更には定年後、老後ということになるのですが、例えば人生が100年時代に入っていくということになると、65歳で定年を迎えても、その後40年近い老後ということになるわけでありまして、当然、個々人にとっても人生の再設計、こういったものが必要になってきますし、同時に教育であったりとか社会保障、こういう国の制度についても再設計が必要だと思っております。
 一度社会に出た人が、もう一度世の中の新しいニーズ、こういったものに応えるために、学校に戻る。新しい時代に求められるスキルを身に付けるために学校に戻る。そしてそこで能力を身に付けて、新たな活躍の場、これを社会で見出す。正に循環、回帰でありまして、こういったことを進める上での中心的な政策になるのがリカレント教育、学び直しということでありまして、これについては、既に人生100年時代構想会議におきましても、具体的に職業訓練プログラム、この給付率を2割から4割に上げる。更には様々な新しい訓練プログラムを充実する。こういったこともしっかり決定いたしております。
 さらに恐らく予算規模でいいますと、3,000億、ピーク時には4,000億近い予算、こういったものを活用してこれらの施策を進めるということになるわけでありまして、これをしっかり実行していくということだと思っております。
 労働人口からいいますと、もちろん民間で働いている方、これが圧倒的に多いわけですけれど、政府で働いている人材についても、働き手であることは同じでありまして、一度省庁に入ったからそのまま同じ省庁で、そういった方もいるかもしれませんけど、そういった人たちが、例えば民間に出る。リボルビングドアのように、また省庁に帰ることもあるかもしれません。更には大学で学び直しをする。様々なそういった人生設計が可能になるような制度を作り、あとは個々人が判断していくという問題だと思っております。

(以上)