鶴保内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成29年8月3日

(平成29年8月3日(木) 12:41~13:07  於:中央合同庁舎第8号館1階S103記者会見室)

1.発言要旨


 1年間、大変ありがとうございました。
 ただいま閣議を終えまして、退任の表明をしてきたところであります。
 昨年8月3日の就任以来、ちょうど1年になりますが、常に全力でこの仕事に当たってきたと思っております。瞬く間に本日を迎えた気持ちで一杯でありますので、まだまだやり残したことはたくさんあるように思いますけれども、とにもかくにも職員の皆様、あるいは関係の皆様、多くの方々に御協力いただき、お支えいただいて、今日を迎えられたことを感謝申し上げたいと思います。
 就任時から、現場の声に耳を傾けることを旨としておりまして、とにかく早く結果を出す、やれることから速やかに実行に移していくことを旨としてまいりました。
 沖縄につきましては、在任中は15回ほど沖縄を訪問させていただき、約150箇所に及ぶ視察、意見交換を行いました。ほぼ全ての離島市町村も訪問させていただきました。幅広く各界各層の方々の声を直接聴かせていただいたものと自負しております。また、その上で深刻な沖縄の渋滞問題の解消や沖縄経済の自立的発展につながるための人材育成、あるいは交通モードの多様化等による観光のステップアップ政策を取りまとめさせていただき、また離島活性化の推進、特に離島活性化推進事業を新規で制定もさせていただきました。様々な施策の展開を図ってきたところであります。
 北方対策につきましては、北方領土隣接地域への訪問客拡大に向けた振興方策の検討や、本年5月にはファムトリップを実施し、また北方領土のライブ映像の配信など、北方領土への国民の関心を高めるための新たな取組を実施してきたところでございます。
 科学技術、宇宙、IT、クールジャパン等の施策については、1年間で約150名の外部有識者との意見交換をこちらの方から求めたものでありますので、大変御迷惑もおかけしたと思いますが、わざわざ大臣室に来ていただいて、意見交換を重ねさせていただき、国内は約60箇所の研究機関、大学を訪問させていただきました。また、海外は7箇国、トルコ、中国、シンガポール、ドイツ、スイス、イスラエル、米国へ訪問させていただいたところであります。成長の源泉である科学技術イノベーションの活性化を図るために、「予算編成プロセスアクション」、「評価性資産への寄附拡大」、「公共調達の活用に中小ベンチャーを使っていく」ということをまとめた、いわゆる『TSURUHOプラン』なるものをまとめさせていただいたことも、私としては良き結果につながっていくのではないかと期待をしております。また、何をおきましても先日皆さんにもお世話になりましたS&II、日本のベンチャーのエコシステム形成に寄与する取組も大変私としては思い出深いところであります。
 多岐にわたる担務の融合の一例としては、自動運転の実証実験を挙げたいと思います。沖縄の深刻な渋滞問題の解消に向けて、次世代都市交通システムの実現を図るため、バス自動運転の実証実験を沖縄県内で行わせていただいております。科学技術政策のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の枠組みを通じた高精度な3次元デジタル地図技術の活用等、また宇宙政策における(準天頂衛星)「みちびき」の利活用など、関係施策をフル活用して対応しているところでありますので、特に関係の皆様には感謝申し上げたいと思います。
 これまで幅広く多岐にわたる担務の中で様々な施策を展開してまいりました。1年という在任期間では到底結論を求めることがかなわないものもたくさんございます。道半ばであるというじくじたる思いはないではありませんが、一つずつ道筋はつけていったものと自負をしております。
 この度、大臣の任を離れることにはなりますけれども、歴代の内閣府特命担当大臣の皆様、先輩方と一緒に新大臣をお支えしながら、引き続き関係の仕事に邁進していきたいと思います。
 マスコミの皆様にも1年間お付き合いいただき、改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。

2.質疑応答

(問)科学新聞の中村です。
 1年間お疲れさまでした。
 大臣、様々なことをやられたかと思うんですけれども、その中でこの1年の中で一番印象に残ったことについて教えてください。
(答)やはり1年間かけてS&IIの準備をしたことですかね。これは最後に集まってきていただいた方々、また、来られずに後でメールや激励をいただいた方々の反応を見ますと、ある意味集大成のような集まりになったかなというふうには個人的には思っております。
 先ほど150人の方とお目にかかるというお話をいたしましたが、これはS&IIだけのためにやったのではもちろん初めはなくて、異口同音にそれぞれの方々がおっしゃることを総合すると、このような会が必要なのではないかと考えるに至ったきっかけになったわけでありますから、私としては来ていただいた方々がそういう思いを持って、集大成的な思いを持っていただいたことは、大変感謝したいと思っています。
 今後これがまた地に足の着いたものになるように、立場を変えて私もサポートをしたいと思っています。
(問)もう一つ。今後、次の大臣にこの部分は是非引き継いで何とか完成させてほしい、そういうところがあれば教えてください。
(答)やりおおせなかったこともたくさんあるのです。例えば科学技術の予算における民間活用のためにクラウドファンディングをつくったらどうかとか、様々あります。こうしたことは各部局がもう既に提供などしていただいていると思いますから、まずそれをでき得ればスタートしていただきたいということ。
 それから、何と言っても予算。今、正に8月のこの時期、予算編成の交渉真っ最中でありますから、最後の詰めの段階に来ておりますので、ここはゆるがせにしてはならないと思いますから、新大臣にはその理解をしっかり持っていただいて、問題意識を持っていただいて、我々がこれまでつむいできた思いを継いでいただきたいと思います。
 最後にあえて言うならば、S&IIを、これは民主導でということでありますが、官としてもこうした取組をサポートする、そういったことも是非新大臣には引継ぎをしていただければと思っています。
(問)朝日新聞の永田です。
 沖縄振興政策について振り返っていただきたいんですけれども、大臣の下で人材育成や観光、離島事業など様々な事業がラウンチしたと思うんですけれども、あえて言うならば、この1年間で成し遂げられなかったことがあれば、何かお伺いできないでしょうか。
(答)あえて言うならばということを言っていただきましたので、あえて申し上げますが、沖縄の方々にとっての思いを、長い間たくさんの方にお話を聞く上で、振興策を通じてやはり達成したいと思う気持ちを私たちは酌み取っていかなければならないのだと思います。長い歴史的経緯もあり、そして今、何に問題を感じ、あえいでいらっしゃるか、そういったことをより深く政府は斟酌して、施策を進めていかなければならないのだと思います。
 そういう意味において、私がやってきた1年間は、スタートを切った自負はあるつもりではおりますけれども、まだまだその実感を県民の多くが持っていただいているかということは、少し反省もないではないと思います。個別的、技術的な中途・途上の施策はたくさんあります。例えば海上交通でありますとか、離島航路へのアクセス改革、また航空路を使った離島振興策等々、こうしたこともこれからまだ引き継いでやっていただけるものだと信じておりますけれども、こうしたことをしていく上で常に忘れてはならないのは、そういう沖縄県の方々が何を実現したいのかということについて、深く思考していくことではなかろうかと思います。
 そのことについて、是非今後も立場を変えて、私自身も微力を尽くしていきたいと感じているところであります。
(問)共同通信の中田です。
 今の質問に関連して、大臣として沖縄の方々が達成したいものの中に、具体的に挙げるならばこういうものがあるのではないかというものがあれば教えていただけますでしょうか。
(答)経済的な問題があるからこそ、基地の問題等々において、様々な進まない部分もあるようにも思います。私たちがその底支えをしていく上で求めるべきもの、その先にあるものは、しっかりとそこは意識をしておかなければならないのだと思っています。
(問)今のお答えで、そうしますと、経済的な問題というのが基地問題にも影を落としている面は否めないなという印象を持たれたということでしょうか。
(答)常にその話をするとリンクの話になってくるのですけれども、私が申し上げたいのは政府の施策の背骨にあるものが一体何を目指しているかということなのですね。基地問題だけではもちろんありません。日本の政府として、沖縄というところをどうこれから振興していくのか、何を目指して、振興していただくために協力をしていくのか、ここは忘れてはならないことなのだということを申し上げておきたいと思います。また、新大臣には是非そのような思いを持って当たっていただけることを期待したいと思います。
(問)NHKの奥住です。1年お疲れさまでした。
 今の質問とも若干かぶるんですけれども、政府と沖縄県の関係を考えると、この1年間、やはりどうしても基地問題をめぐって政府と県の対立は続いていたと思うんですけれども、そういう中で振興担当としてやっていくことの難しさとか、そういったところをどのようにお感じになりましたでしょうか。
(答)振興額と基地問題はリンクをしないというのを申してまいりましたが、やはり振興策と基地問題はリンクしているのだと思います。
 というのは、ここに基地があるからこういう振興、道路を作れないとか、こういう離島のこういうところがあるからここは使えないとか、こういうものが建てられないとか、飛行機の航空路を見た時に、ここに米軍の基地があるから航空管制がかかっているので、なかなか飛んでもらえないとか、絶対にそれはやはり認めるべきだと思います。それはあります。ありますからこそ、私たちは基地問題にしっかり、解決していかなければならないのだと思います。
 私は今回、直接の担当ではなかったゆえに、じくじたる思いはありますけれども、政府としてこれからやるべきことは、こうした振興策を考える上で何が必要でどういう交渉をしていかなければいけないのかについて、しっかり私たちも決意を決めてやるべきなのだということを強調しておきたいと思います。
(問)読売新聞の船越です。どうも1年間お疲れさまでした。
 科学技術関係なんですが、この視察が国内60箇所、国外7箇国ということで、相当な数だと思うんですけれども、改めてこの1年間、実際に現場を見た上での日本の強み、弱み。つまり、日本が今後も伸ばしていく部分と、それと、改善して追いつかなければいけない部分、これについて教えてください。
(答)ともすると、これまで予算、予算ということで部局、役所ですから、この発想は仕方ないところもあると思いますし、また、それも大変重要なことではあるのですけれども、詳しく中身を見ますとやはり予算以外にも改革、改善をせねばならないこと、できることがたくさんあると思います。
 今回も先ほど申し上げましたが、大学への寄附税制で評価性資産が寄附できない、評価資産では株とか不動産でありますが、これをもって大学、研究機関への寄附ができないという。各国の事情も考えると、もう少し柔軟に考えていいのではないかという規制改革はあります。
 また、エンジェルが新しく支援をするときに出す書類の量は、おびただしいものがあります。こうしたものを改革することは、恐らくそれほど法的に難しいものではないように思いますから、こうしたことをしっかりとこれからも部局にはつむいでいただきたいと思います。
 あと、今後大きな意味で必要なことは何かということであれば、私も何度も申し上げておりますが、新しい科学技術の振興のために必要なことで、ノーベル賞を取られた大隅教授が言われた、おおらかな社会をつくりたいと。基礎研究をずっとおおらかにできる社会をつくっていただきたいとのお言葉がありました。
 これは日本としてもやはり強みとするところでありますから、是非その社会をつくるためにも、新技術が、実装化がよりスムーズにできる社会をつくっていかなければいけないのだと思います。
 S&IIもそのための試みの一つでありますし、中小企業の日本版SBIR(中小企業技術革新制度)とは言いませんが、中小企業の公共調達を進めさせていただいているのもそういう思いでありますから、こうした新技術の実装化に向けての政府の覚悟が問われているのではないかと思います。そうしたことを今後私も、繰り返すようでありますけれども、立場を変えて微力を尽くしていきたいと思います。
(問)沖縄タイムスの上地です。
 大臣、沖縄に後援会もあるので、今後も沖縄に関わっていただけると思うんですけれども、内閣から外れることでより関わりやすくなることがどういうことがあるのかというようなことと、自民党員として名護市長選、来年の県知事選というのにはまたどのように関わっていくのかというお考えがあればお願いします。
(答)選挙のことは今後どういう状況になるか分かりませんから、ここでは申し上げませんが、確かに後援会の皆さんからもいろいろな激励やお話をいただきました。今回、大臣が替わるのか替わらないかについても、その思いを私もしっかりこれを受けて、やらねばないと思っているところであります。
 立場が変わってしやすくなることは、たくさんあります。もっと沖縄に行かせていただきたいと思いますし、また、いろいろな方とも立場を超えて、いろいろなお話も聞かせていただきたいと思います。
 海外に沖縄の実情を話しに行くことも、今まではなかなかできませんでしたけれども、そういったことも私としては今後やりたいことの一つであります。
 それも様々、状況を沖縄県民の皆さんにまた御示唆を頂きながら、こういう問題があるよと、また、こういう問題を解決したらいいのではないかということを、私からもぶつけたいと思いますし、そんな答えのやり取りの中からできることを、大臣としてのような大きな仕事、大きな力はありませんけれども、小さなことからでも一つ一つやらせていただきたいと考えています。
(問)日経新聞の猪俣です。1年間お疲れさまでした。
 宇宙政策を振り返っていただきたいんですけれども、まず、先週スペースXを視察されたと思うんですけれども、行く前におっしゃっていたように日本の裾野拡大に向けて、何か参考になるようなことがありますでしょうか。
(答)これは驚きました。そもそも日本のというか、世界のロケットをつくる実情があれでいいのかということも含め、一つの模範といいますか、参考にはなるのではないかというぐらいのショックを受けて帰りました。
 といいますのも、例えば工場一つ取ってみても、クリーンルームで囲まれた塵一つ無いところで組立てをやっていますというようなところではないのです。正直、言葉は変ですけど、自動車工場でオートメーションでだーっと流している、ああいうところでどんどんそのものができていく。そして、なおかつ24時間体制の2交代、場合によっては3交代制の工場労働者ですね。これのエンジニアではあると思いますけれども、工場労働者のような方々が意気に感じながらやっていると。
 なおかつ最終的には火星へ人を移住させるためという高邁な理念を持って仕事を続けている。来年、再来年にはそのことを実現すると、CEOは言っているそうでありまして、こうしたことを全て総合すると、我々としては、こうした動きに対してどう反応していくべきなのかということは考えるべきなのではないかと思いました。
 ロケット、宇宙産業といわれると様々裾野は広くて、衛星もあれば衛星に積む様々な工学技術とかそういったものもありますけれども、このロケット打ち上げの技術に関しては、こうしたやり方に何か学ぶべきものがないのかを虚心坦懐に、謙虚に学んでいく必要があるのではないかと、最後ではありましたけれども、思って帰ってまいりました。
(問)それから、小型ロケットの件でお伺いしたいんですけれども、北海道のベンチャーがちょっと残念ながら失敗という結果ではありましたけれども、任期中に今回の北海道のロケットも含めてJAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)がつくったSS-520というロケットも、これも失敗でしたけれども、打ち上げには至りまして、これもその民間振興という目的の中で実現したものでした。
 それから、宇宙活動法を含めて二つの法案も任期中に成立したと思うんですけれども、次の大臣のときにはそれが実際に走り出すときになると思うので、特に伝えたいことがあれば教えてください。
(答)まず、これは部局の皆さんに是非引継ぎをしていただきたいと思うことは、宇宙関連2法は8年間のブランクがあってできたという、大変有意義な、エポックメーキングな法律であり、それができたことによってものすごく今、勢いが出ているんだということを強調していただきたいと思います。
 我々国会議員で、宇宙政策の今の雰囲気というか背景を理解している人はそうそう多くはありませんから、その思いで仕事をしていただくということがまず第一だと思います。
 そこへ持ってきて、これから民間企業がどういったことで苦労しておられるか、また、どういう問題を抱えておられるか等について、一番は新しい産業なので、部局に聞くのではなくて、現場へ行くのが一番ではないかと思いますから、今度の担当大臣は松山さんであろうと聞いています。同じ参議院(議員)ですから、私も大変仲良くさせていただいておりますので、しっかりそこは連絡をさせていただいて、行動を私としてもサポートしたいと思います。
(問)毎日新聞の竹内です。
 内閣の支持率が下がる中での内閣改造になりまして、一部の狙いとしては内閣支持率の回復ということもあると言われていますけれども、今後政府としてどう取り組んでいったらいいのか、退任する大臣としてお考えをお聞きしたいと思います。
(答)名前が変わって支持率が上がるなどという、簡単な考えでないと私は思っています。清新なイメージだけで支持率の上昇が続くのは僅かでありますから、今後しっかり仕事をしていただくことが大切なのではないか。
 特に、今回は経験者又はその分野に精通していると言われている方々がたくさん閣僚に就任されておられますから、こうしたことに大いに期待したいと思いますし、私も党に立ち返りまして、そういったことをつぶさにまた注視し、サポートもできればなと思います。
 ありがとうございました。

(以上)