鶴保内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成29年7月21日

(平成29年7月21日(金) 10:56~11:20  於:中央合同庁舎第8号館1階S103記者会見室)

1.発言要旨


 私の方からは、今日は四つほど御報告がございます。
 まず一つ目、原子力委員会が取りまとめた、「原子力利用の基本的な考え方」について御報告いたします。この度、原子力委員会では、府省庁を超えた原子力政策の方針を示すため、今後の原子力利用全体の長期的方向性を示す「原子力利用に関する基本的考え方」を取りまとめました。本日の閣議において、本文書を政府としても尊重する旨が閣議決定されました。東京電力福島第一原子力発電所事故後の状況変化や、昨今の国内外動向を踏まえるとともに、原子力政策全体を見渡し、我が国の原子力の平和利用、国民理解の深化、人材育成、研究開発等の目指す方向性や在り方を分野横断的な観点から示しております。政府としては、これまでの基本的な原子力政策の考え方に変わりはございませんが、今回の原子力委員会の決定を十分に踏まえつつ、安全性の確保を大前提に、国民の理解と信頼を得られるよう関係機関間でしっかりと連携して取り組んでまいる所存でございます。それがまず一つ目でございます。
 二つ目が沖縄出張。本日21日から23日にかけて沖縄を訪問させていただきます。今回は伊江島、伊是名島、伊平屋島及び粟国島を訪問する予定でございます。これで多良間、渡名喜、南北大東村を除いたほぼ全ての市町村離島を訪問させていただくことになりました。南北大東村は以前、私が大臣になる前、自民党の離島振興会で行かせていただいたときにも懇親会等々いろいろとありましたが、多良間と渡名喜に行かせていただければ、ほぼ全ての市町村に行かせていただくことになります。「島のゆんたく」等々をまた開催させていただき、離島の状況を意見交換していきたいと思っております。
 それから三つ目、これは少し過去に遡る話ではあるのですけれども、本年1月に私がドイツ訪問をさせていただいた時に、フラウンホーファー研究機構のノイゲバウアー会長との会談で、フラウンホーファーと日本とが連携をして様々な科学技術の分野で協力関係を結んでいくことはできないか、と問われましたので、私の方で、日本の産業界に声をかけさせていただきました。その連携施策としての第1弾として、いよいよ、この日本時間8月1日の火曜日午後4時から日独間の科学技術協力について検討するテレビ会議を、フラウンホーファー研究機構の日本代表部において開催させていただく運びになりました。ドイツは同機構に所属する労働経済・組織研究所及びソフトウェア・システムエンジニアリング研究所から、我が国は内閣府と、有識者として株式会社日立製作所から関係者が参加し、「インダストリアル・データ・エクスチェンジ」の在り方について意見交換をする予定でございます。データを有効に活用するための方策について意見交換をする予定でございます。御存じのとおり、ドイツは「インダストリー4.0」を強力に進めている国でありますので、我が国としても知見を生かし、お互いにウィン・ウィンの関係になるように努力をしていく所存であります。
 それから四つ目、クールジャパン分野で、かなり前からこの話はしておりましたけれども、在外公館における日本の漫画作品の対外発信についてです。いよいよ内閣府の呼びかけによりまして、7月末より順次、まず2都市、パリ、ベルンの大使館等々に、各国の日本大使館や国際交流基金の海外事務所と日本文化の対外発信拠点において、漫画作品の展示を開始いたしたいと思っております。これから順次、各国大使館にもこうした動きを呼びかけていきたい。外務省との連携をしている最中だということでありますので、多少時間がかかっておりますけれども、こうしたことが日本の漫画文化あるいはクールジャパンの発信につながればと考えております。あと、本年2月に開催したマッチングフォーラムにおける商談会について、その後の状況も調査させていただきました。3件の新たなビジネスが組成されているといううれしいニュースが飛び込んでまいりました。また、引き続き24件の商談も継続されているそうでありますので、これも何かありましたら事務局に問合せいただければと思います。
 私の方からは以上であります。

2.質疑応答

(問)科学新聞の中村です。
 ドイツのフラウンホーファーとの会議なんですけれども、今回は産業分野のデータ利活用だと思います。今後、どのような分野をターゲットに、視野に入れているのか、あるいはフラウンホーファー以外とも、例えばマックス・プランクとかいろいろありますけれど、そういうドイツの他の機関との連携なんかもお考えなのか、そこら辺について教えてください。
(答)後半の部分は私もそう思っておりますが、マックス・プランクの会長にも会って参りましたけれども、フラウンホーファーでの議論が一番具体的かつ、積極的な発言が多かったです。「もう明日にでもやりませんか。うちはもういつでも出せます。」と、通訳が正しければ、そういう言い方でした。それならば、我々の方としても、本当に急いでメンバーを探し、そしてまた、どこにそういうフラウンホーファーとの協力に興味があるかを探りたいということで、約半年ですかね、今まで時間がかかってしまいましたけれども、やってまいりました。日立は御存じのとおり、相当なデータ蓄積をしている。また、この分野においてかなり知見があるということでありましたので、こうした会議を通じて検討を始めるということであります。
 それから、他の分野でということならば、いろいろとあると思います。今も水面下で検討しておりますが、残念ながら、一つ一つを見ていると、やはり海外の企業とどこまで深い協力をすることができるかについては、各個別企業がやはり理解の進んでいないというか、警戒する部分がやはりあります、競争相手でもありますから。したがって、国同士、政府同士が音頭を取って、お互いの共通のプラットフォームを作るというような部分ですね、基礎的なプラットフォームを作る部分が主軸になるのではないかと思います。できれば、そういった意味では、こんなところもできるのではないか、あんなところはどうなんだというような問合せがあるぐらいが私は一番有り難いなと思います。
(問)読売新聞の船越といいます。
 昨日、臨時閣議で来年度のシーリングが了承されたと思うんですが、内閣府の科学技術としては、来年度は官民研究開発投資拡大プログラムが重要なものの一つだと思うんですけれども、改めて、大臣の目から御覧になってその意義と、どういうふうに運用していくか、それと注意しなければいけないことなどありましたらお願いします。
(答)もうこの席で何度も繰り返し申し上げてきたとおり、我が国にとっての科学技術分野での予算的な制約は、各界で、危機感を通り越して相当な声になりつつあると私は受け止めております。それを受けて各部局に督励をし、これまでも相当な努力を続けてまいりました。また、それは内閣府のみならず各省庁で同じように努力をしてきていただいたと存じております。ただ、具体的にそれがどういう形になって見えてくるかについて、やはり国民的理解を得ないと財務省というか財務当局もなかなか納得をしてもらえないのではないかと、私どもとしては様々なプランを立てて、この予算をどう効率的に使い、そしてそれがどういう形で国民の生活に資するものになってくるのかを分かっていただくために、例えば公共調達の分野では優先的に、今までの中小企業ではなくてベンチャー的ですね、新技術を使ってもらえるようにできないかとか、その何割かを使ってもらえるようにすることができないか等々のその運用の中身を詰めてきたりとか、あるいはそういったベンチャーを育てる上で評価性資産をどう使うか等々の、よりビジネスの出口に即した制度改革もやってきたつもりであります。こうしたことが、どれだけまた国民的理解に進んでいくかに私はかかっていると思いますから、問題点とは言いませんけれども、是非皆さんにもそこのところは御協力も頂きたいと思っております。
 我々としては、この席で何度か申し上げましたが、どれが最も重要で、どれが後回しにしていいかという判断をいろいろするよりも、やれることは全てやるというつもりで、これまで1年間突っ走ってきたつもりでありますから、その結果は今次、年後半にでも効果を表わしてくるのではないかと期待しておりますので、どうぞ御注視いただきたいと思います。
(問)毎日の酒造です。
 原子力委の基本的考え方についてなんですが、福島の事故以降、国の原子力政策というのはエネルギー基本計画で定めてきた経緯があって、今回出されたこの基本的考え方を読んでいても、大体、エネ基に書いてあるような地球温暖化対策とか安全性をちゃんと保ちましょうとか似たような中身なんですけれども、まず、このエネ基とのすみ分けと、それとこの基本的考え方はどういうふうに政策に反映されているのかというところを教えていただけますか。
(答)御指摘のとおりです。大きな変化、変更は無いと理解していただければと思います。ただ、少し時期がずれてしまいましたので、私もその部分においては、気になってはいましたが、基本計画を策定したりする上でも、こうした閣議決定をした基本的な方針を踏まえたものでなければならないという意味においては一定の意味はあるのだろうと考えています。
 是非、強調しておきたいのは、こうした国民的な理解が得られないもの、国民的な理解を得て、その知見を生かしてこうした考え方を取りまとめているということでありますから、今後もいろいろ、委員会の中でもパブコメ等々もやっているようでありますから、そうしたことも通じて国民的な考え方を吸収ができるように今後も努力していっていただけるものだと期待をしております。
(問)あと、やはり理解を得ながら、結局利用を進めていくという方向性なんですけれど、大臣がおっしゃったとおり、国民の中では、その原子力の利用を本当に進めていいのかというのは、まだまだ懐疑的な声がある中で、第三者的に話し合った原子力委が、やっぱり政府と同じようなことを言っているというと、なかなか理解も得られにくいんじゃないかと逆に思うんですけれど、その辺、国民の理解というところについては今後どういう取組が必要だとお考えですか。
(答)理解を深める意味においても、今現状がどうなっているか、科学者としての知見、それから国内での議論はともかくとして、世界の知見、世界での議論等々も紹介する義務はあるのではないか、それは良い意味でも悪い意味でもですよ、進むか後退するかという意味ですけれども。そういう部分で原子力委員会が一定の役割を果たしてくれることを期待したいと思っていますし、そのために何か様々なインデックスのようなものを作り、Q&Aをより直截に分かり得るような仕組み、工夫を凝らすような努力をこれからしていきたいと聞いております。
(問)北海道新聞の片岡です。
 北方四島への自由訪問の関係で、日程が変更になったりですとか中止になったりというような事態が続いています。こうした事態の受け止めと、今後、仮に同様のトラブルが続くとしたらどう対応していくべきか、大臣のお考えをお願いします。
(答)自由訪問について、今、外務省及び交渉当局から聞いていますのは、鋭意努力をし、そして早期に再訪問の日程を調整するということです。これは、私どもとしても、じりじりしながらその結果を待っているという状況でありまして、今回の自由訪問のニュースも、報道ベースで飛び込んできたのが一報だったというぐらいの状況になっております。北方領土の交渉についての裏交渉、裏舞台について我々としては何ら情報が入っておりませんので、このことについては大変申し訳ないのですけれど、コメントのしようがありません。ただ、思いだけは一刻も早くという島民の思いを呈して、私たちも外交当局にしっかりと問合せなり、督励をしていきたいと思っています。
(問)共同通信の太田といいます。
 先ほどの原子力利用の基本的考え方なんですけれど、ちょっと重なる部分もあるかとは思うんですけれど、元々は原子力委員会が推進側の代弁組織みたいになっているということで体制の見直しがあって、そうしたことを経て、今回初めてこういう考え方をまとめたということだとは思うんですが、ただ、そういう経緯もありながら、やはりふたを開けてみると推進ということがかなり強く出ているんじゃないかというふうに受け止める方もいると思うんですが、そういった声については、大臣御自身はどうお考えになりますか。
(答)そのことは、当然委員会の方々も意識はしていたと思いますし、結果として、私どもがこの考え方について意見を差し挟むということはせずに、粛々静々とその考え方を各位に付したという状況であります。
 先ほども申し上げましたが、委員会のメンバーも、今、置かれている状況、委員会に対する国民的な理解、認識も踏まえた上で、相当慎重に、なおかつ深く議論をしてきたという自負があるようです。こうしたことについて基本的な考え方ですから、今までの考え方に大きくもとるものではないということが、まず私どもとしては受けている印象でありますし、今後、先ほども言いましたが、国民的な理解が得られるように進めたいということですから、そのための努力をどうやって進めるのかについて、私たちとしてもしっかりこれは注視をしていきたいと思います。また、御指摘の点があれば、こういうところはどうなっているだとか、こういう部分について、風通しの良いところをもっと作るべきなのではないかとか、こうしたことをまた御意見があれば頂きたいと思っております。
(問)推進という、結論としてはというか、いろいろ前提を付けた上で推進を図っていくんだということだと思うんですけれど、その前提の中には、原子力機関が本質的な問題を抱えているとか、そういったことについてはこれまでと比べれば多少踏み込んだ中身もあるのかなと。それを政府として尊重するという今回の決定に持っていくまでには、いろいろ大臣としても御苦労なりあったんでしょうか。
(答)非常にデリケートな問題であるがゆえに、この閣議決定をすることに対して意見は求められました。ただ、その中身について、さっきも少し申されたように、結論ありきであれば、これは揺るがせにできませんので、私どもとしては、そこは強く申したつもりであります。考え方についての知見を原子力委員会として、世界の原子力政策あるいは国内の科学技術者としての原子力に知見のある有識者の皆さんが一定の考え方を取りまとめたということについて、私どもとしてはこれを基本的な考え方として尊重していくという意味において閣議決定をしていたということでありますから、少し分かりにくいかもしれませんが、本当に基本的な考え方ですから、今後、その考え方が覆るぐらいの国民的な事実誤認であるとかが、もし出てくるようであれば、それは当然考えを変えていかなければいけないところだと私は理解しております。
(問)最後に、ここの考え方の中でも触れられている、信頼回復ですとか人材の育成だとか、そういった部分に対して科学技術政策担当大臣としては、具体的にどんな役割を、今後、果たされていきますか。
(答)もちろん、この原子力分野に限らずですけれど、人材育成はそれぞれ必要な部分だと思いますので、原子力を特に取り上げて人材育成について注力するということではありません。ただ、これまでも、当然、原子力の議論はあった中でも、その分野における様々な平和利用、世界中の利用があるわけでありますから、その科学技術という意味においての分野が消えてなくなると私は理解しておりませんので、そういった分野において、科学者としての人材が輩出されることは大いに結構なことではないかと考えています。

(以上)