石原内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成29年7月21日

(平成29年7月21日(金) 10:28~10:44  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 本日の閣議におきまして、「中長期の経済財政に関する試算」と「年次経済財政報告」、いわゆる経済財政白書ですけれども、配付をさせていただきまして、概要について閣議で私から説明をさせていただきました。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)昨日、平成30年度予算の概算要求基準が閣議了解されまして、4兆円の特別枠で人づくりであるとか生産性の向上であるとかが盛り込まれ、一方で要求総額は示されないということで、そのデフレ脱却に向けて、ちょうど昨日、日銀もまた6度目の物価目標の達成時期を先送りしたところでもあるのですけれども、デフレ脱却などに向けて今回の予算をどのように評価されるか、よろしくお願いいたします。
(答)概算要求基準だと思うのですけれども、これは御存じのとおり、経済財政諮問会議等々の議論を踏まえてつくられています。
 ポイント的なところを若干説明させていただきますと、1番は人材への投資です。それと、地域経済、中小企業、小規模事業者、特にサービス業などの生産性の向上に役立つ施策については要望枠の対象とする一方で、今デフレのお話がありました、財政のお話もありましたけれども、経済・財政再生計画の枠組みのもとで、手を緩めることなく歳出改革を行ってPBの黒字化を目指していくと。経済再生と財政再建両方に配慮したものになっているということは、この4年半変わっていないと思います。
(問)今日報告された白書の件で、景気が回復傾向にある中、人手不足の対応ですとか生産性の向上といったことが課題とされておりますが、大臣としてはどのようなところをポイントとしてお考えでありますでしょうか。
(答)特徴的なことは、やはり経済の成長がバブル期を超えて戦後3番目になったと、事実関係ですね。今回の回復の特徴は、冒頭の質問にあったように、デフレではないという状況にはなっている。これも月例経済報告等々でいつもお話をさせていただいていますように、国民生活にとって一番大切なのは、ある意味では雇用です。世界各国の政情不安を見ると、やはり失業率が高いと(それが)大変高まる。雇用状態は極めて良好だと思います。有効求人倍率は1970年代以来の1.49倍、東京においてはもう2倍程度です。それで、更に正規雇用で見てもほぼ1倍、そのような中で去年と大きく違ってきていることは、需給が逼迫している。人を採るのがタイトになってきている。その人材を確保していかない限り持続的な成長というものには結びつかないと、こういう問題意識で書いているのだと思います。
 もう一つは、働き方改革です。やはり女性の就業参加というのは、400万人近く生産年齢人口のベースが減っているなかで、就業者は180万人増えて、このうちの150万人超が女性であると、ここはやはり大きく変わってきたことですし、それによって潜在成長力の向上、強化、消費の底上げですか、こういうものをつくっていかなければならないですし、それともう一つ、潜在成長力を高めていくには、イノベーションというものはやはりどうしても忘れてはいけない。
 これは去年ぐらいから力を入れているのですけれども、そのイノベーションの進歩を全ての人が恩恵に浴することができる。要するにこぼれたらいけないのです、科学技術の進展によって。そういう社会をSociety5.0と呼ばせていただいていますし、それがある意味では潜在成長力を高める鍵になってくる。未来投資会議、経済財政諮問会議、そして、ファクトを連なって取りまとめているのが今回の白書ではないのかなと。そのような印象です。
(問)今のに関連してちょっと2点お伺いしたいのですけれども、バブル期と同水準の有効求人倍率の一方で、名目賃金の伸び率であったりとか、生産性に関してはちょっと伸び率がバブル期と比較するとかなり小さいというような分析が出ていますが、ちょっとそこの受止めをお伺いしたいのと、あと、アメリカやスウェーデンなど欧米の諸国と比べて労働生産性が低いというような分析も出ているのですけれども、そこをどう上げていくかというところをどのように考えていらっしゃるかお願いします。
(答)やはり生産性を高めていくには、規制改革は一つ重要なファクターだと思うのです。政権交代の後いろいろなことをやってきたと思います。例えば農協改革、更にはビザの発給要件の緩和、これすごく実は大きかったのです。それに伴って免税店、上期のインバウンドが昨日報道されていましたけれども、このままいきますと、過去最高を記録すると思います。これには、実はお金はあまりかかっていないのです。
 未来投資戦略の中でもレギュラトリー・サンドボックスといったような、なかなかできないものをそういうツールを使って行う改革を更に進めていこうというメッセージは出しています。先般このような話をOECDのグリア事務総長のところで話をしたら、OECD側としてもこれは非常に見ていて、今、御質問にあったように生産性が伸びない限りは発展しないわけですから、こういうことをやって生産性を高めていくという話をしましたら、もう向こうの方も知っていまして、評価は思ったよりも高かったと思っています。海外の投資家などにもこのIR等で民間の皆様が行くわけです、自社のことで。そういう現場でも政権のこのような取組については高い評価をいただいていると聞いています。
 では、今後はということですけれども、生産性が低いという質問が出るわけですから、それに答えていかなければいけない。やはりポイントは、働き方改革というものもあるのでしょう。まだまだ全ての現場までは下りていないと思います。
 Society5.0という言葉、先程若干説明させていただきましたけれども、要するに超スマート社会の中でこぼれる人をつくっては駄目なのです、それが社会の不安定要因になりますから。雇用も正にそうなのです。働きたいけれども働けない若い人がいるということは、非常にその国の不安材料になりますから、そういうものへの対応というものは、やはり規制緩和とイノベーションです。
 このイノベーションの部分を去年ぐらいから科学技術のところの予算をしっかりつけていこうと。それは長い期間、安定して研究できるというものがなかったら、本物のイノベーションなんて起こりません。あるいは創薬などにしても、日本、スイス、アメリカ、そのぐらいの国しかつくれないです、新しい薬。ただ、日本が先行している部分、日本しかない部分というのはかなりあります。そういうものにしっかりと予算をつけて、その分野を引っ張っていくことによって、今言われたようなクエスチョンが出ない社会をつくっていくということが肝要なのではないかなと。
 私は2年間しかこの仕事をしていませんけれども、2年間でそのラインは引いたなと、そういう気がいたします。あとはやるだけです。
(問)白書の件ですけれども、今御指摘にもあったかと思うのですけれども、中ではAIなんかの新技術の採用によって生産性向上は可能だというデータがかなり説得力ある形で紹介されていると思います。一方で、巷でよく言われているのは、一部の労働者の方の仕事は新技術に奪われてしまうのではないかという懸念があって、今回の報告でも触れられているとは思うんですけれども、私は新技術の導入の意義は理解、確かに不安にお感じになる気持ちも分かるなという部分もありますし、諸外国の政治状況を見ていても取り残されたというふうな人が増えると、ちょっと不安要素になり得ると思うんですけれども、そういう方も含めた国民に向けての大臣の御所見をお聞かせください。
(答)今の問題意識は、私も非常に強く実は持っています。AIとの将棋ですか、これは人工知能の方があっという間に勝った。囲碁はいい勝負だったのが、囲碁も負けたと、ヒューマンがです。そうすると、では公認会計士、税理士、医師などはどうなのでしょうか。臨床例などで、自分で学習していったら、先生の言うことを信じようか、いやいやいや、このロボットの言うことを信じようかと。これは分かりませんけれども、そういう社会が本当に手の届くところに来ているというのは非常に昨今の特徴だと思うのです。効率よくなって生産性は上がったけれども、働く場所がなくなってしまうのではないかということを感じる人もこれから、まだ多分メディアの人とか一部の技能を持った人しかそれは多分感じないと思うのですけれども、本当に多くの人がそれを感じるということがまた不安定化の要素になってくると思います。
 でも、そういうものがないと、また先程サービスの生産性の向上と言いましたけれども、口で言うのは簡単ですけれども、ここのところが実は難しいですけれども、こういうものに実は頼らざるを得ないのだと思います。そういう技術革新が起こって新しい技術が導入され、それに伴って新しいサービスや新しい財が生まれれば、その価値を生み出すということですから、それに伴う、もちろんリカレント教育やそういうものにマッチした、そういうものにマッチできる能力というものをヒューマンのサイドが持たなければいけませんけれども、そういう質の高い雇用というものも、これは間違いなく生み出されるのだと思います。
 ただ、もちろん今私が話したのは、近未来的な非常に主観に基づいた説明でしかないのですけれども、それによってヒューマンのサイドが、人生、生涯にわたって能力とスキルを絶えずブラッシュアップしていければ、今言われたような御懸念は発生しないと。それがなければならない。少し漠然としたお答えになってしまったのですけれども、そういう組立てで今の御質問は私の中では理解をさせていただいています。
(問)白書のことですけれども、昔の経済白書では、「もはや戦後ではない」みたいな一言でずばっと言うようなことがあったのですけれども、今回の白書に関して、何か一言でまとめると、どうなるとか出たりしますか。
(答)あと1年、2年後に言いたいなというのはあるのですけれども、今年のものは考えていないのですけれども、「もはやデフレではない」というふうに言えたら、皆様方の質問も大分減るのではないのかなと。残念ながら、デフレではない状況をつくり出すことができたと、こう舌をかみそうですが、今日のところは、この辺で御勘弁を願いたいと思います。

(以上)