山本内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成29年5月23日

(平成29年5月23日(火) 10:43~11:00  於:中央合同庁舎第8号館1階S106会見室)

1.発言要旨


 本日は2件報告事項がございます。
 1件目です。証拠に基づく政策立案、すなわちEBPMの推進体制の構築について申し上げます。
 先週19日の統計改革推進会議による最終取りまとめに関し、本日の閣僚懇談会で官房長官及び関係大臣から関連の発言があり、私からは、EBPMの推進体制の構築について発言しました。
 EBPMの取組は、最終取りまとめを受けてこれから実行段階に入ります。具体的には、早速本年度から行政事業レビューを始め、政策、施策、事務事業の各段階の点検・評価の取組、いわゆる「EBPM3本の矢」を通じてEBPMの実践を進めます。
 EBPM推進委員会は、近く策定予定の官民データ活用推進基本計画に位置付けた上で、本年夏の立ち上げを目指して準備を進めます。
 統計等データを活用して政策の内容の改善につなげるEBPMは、行政改革の観点からも大変重要です。今後、各府省の協力を得ながら府省ごとの状況を踏まえたEBPM推進体制の構築を進めるなど、EBPMの推進に政府を挙げて取り組んでまいります。
 2件目です。昨日、私の下に開催している「地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議」において、地方創生に資する大学改革に向けた中間報告を取りまとめていただき、坂根座長及び増田座長代理から直接手交頂きました。
 中間報告の主なポイントとしては、首長のリーダーシップの下、産官学の推進体制を構築し、地域の中核的産業の振興と専門人材育成に本気で取り組む優れたプロジェクトを全面的に支援すること。東京における大学の新増設の抑制及び地方移転の促進の取組として、大学生の集中が進み続ける東京23区においては大学の定員増を認めないこと、東京圏の大学による地方のサテライトキャンパスの設置を推進すること。地方における雇用創出及び若者の就業支援等の取組として、国、地方、企業が取り組むべき具体の対策などが提言されております。
 今後、中間報告の内容を受け止めて、骨太の方針の時期と合わせて、「まち・ひと・しごと創生基本方針2017」に、地方創生に資する大学改革を目玉施策として盛り込み、概算要求や制度化につなげていきたいと考えております。
 いずれも詳細は事務局にお問い合わせください。
 以上です。

2.質疑応答

(問)加計学園の問題について、すみません、お願いします。昨日、共産党の方が決算委員会で、11月9日の諮問会議前に作成されたと思われる今治市の名前が入った工程表のようなものを示しながら質問されていたと思います。文書は別にして、大臣はそういった今治市の名が入った工程表を見たり聞いたりしたことはありますでしょうか。
(答)いずれにしても我々は、昨日答弁で申し上げましたが、出元がはっきりしない、信憑性の確かでない文書についてコメントすることは一切差し控えたいというふうに思っています。
(問)この工程表は内閣府で作られた可能性もあると思うんですが、こういったものがあったかどうか調査する御予定はありますでしょうか。
(答)そういう文書については先程申し上げたとおりです。ただ、9月に今治市分科会をやっておりますから、その後、11月9日の特区諮問会議に向けて事務方同士でいろんなやりとりはやっていることは承知しております。当然なことだと思います。しかし、そのやりとりというのは検討途中のものでありまして、いろんなものが有り得ます。文章も変わったりするでしょう。それは各省間の取組でありますから、我々は規制改革を推進する立場だし、一方で、抵抗する立場もあるわけでありますから、それを調整していくわけでありまして、そういう途中段階のものについていろんな資料等を出すことはやらないというのが原則であります。そうしないと、今後の規制改革等を進める上で支障になりますから。したがって、そうしたものについては、途中段階のものについては一切コメントしないということにしております。
(問)先程の大学の有識者会議の中間報告の施行の件でちょっとお伺いします。中間報告では、東京における大学の新増設の抑制の他に地方大学の振興とか、あと地方における雇用創出及び若者の就職の促進という、地方公共団体とか、あと大学にもいろいろ求められる取組が書かれていると思うんですけれども、改めて大臣に、こうした地方や地方の大学にはどのようなことを求めていきたいか、大臣、お考えを教えてください。
(答)おっしゃるように、東京の新増設の抑制だけではなくて、地方大学の振興、そして地方における若者の就職支援も必要であります。そういう意味において、これまでも意欲のある大学においては、地域を担う人材の育成、イノベーション創出、産官学連携による雇用創出、若者の定着に向けた取組などを実施していただいているわけであります。
 例えば高知県にこの前行ってきたんですけれども、知事と高知大学学長が一緒になって、そしてまた地元の産業界と手を組んで連携組織、コンソーシアムを作って、地元の中核的、中心的な企業が欲しいと思うような人材教育をやろう、あるいは地方創生に対して学生を巻き込んで取り組んでいくと。そういうことが行われているわけでありまして、やはり地方大学もそうした地元の人材養成に対して対応できるようなプログラムにしていかなければいけないということだと思っております。
 こうした大学の取組に対しては、国においては、国立大学運営費交付金や私学助成、地(知)の拠点COCプラス事業などで就職支援しておりますが、しかし、地方大学全体としては地方産業につながる人材育成、研究成果の創出の面で、地域のニーズや期待に応えられていない、国立大学みたいなちょっと例外的な存在でもありますので、そういう指摘もありまして、地方大学が地域の中核的な産業振興や専門人材の育成を持続的に行っていくためのさらなる支援が必要と考えております。
 このために、新たな取組として、地方の首長のリーダーシップの下、産官学の組織対組織の包括的な連携体制による持続可能な推進体制、いわゆるコンソーシアムですね、これを構築することを前提として、地域の中核的な産業の振興とその専門人材育成などに本気で取り組む優れたプロジェクトについて、国と地方が支援する仕組みを検討してまいりたいと思っております。
 その意味では、是非地方大学はそういう地域の役に立つ人材を育成する、そういう特色のある大学を目指してもらいたいなというふうに思っておりますし、そういうことを一生懸命取り組む場合には、我々としても支援をしていきたいということであります。
(問)ちょっと話題が変わるんですけれども、先日、二階幹事長が中国を訪問した際、アジアインフラ都市銀行(AIIB)の早期の参加を決めるべきなんじゃないかという御認識を示されまして、総理も、条件が整えば参加したいという認識をテレビ番組で示されたようです。
 日本が乗り遅れることに危機感とか、日中関係の改善につながるという指摘もあったりする一方で、政府内では慎重な意見もあるんですけれども、経済通の大臣は、今回の件はどのように御覧になっているでしょうか。
(答)これは大臣というよりは、個人的な意見として聞いてもらいたいと思いますが、AIIBの構想があったときに、参加すべきではないと一番強く主張した、私もその一人であります。
 その理由は、まず、AIIBの運営自体が不透明であること。理事会も、常設の理事会は存在しません。結局、本部のある中国総裁のやりたい放題という形になりかねない。その結果、いろんなプロジェクトが恣意的に進められかねない。したがって、そういうガバナンスがしっかりしないうちに、ただただ手を挙げてというようなわけにはいかないと。日本は伝統的に世銀とかアジ銀とかできちっとしたガバナンスを持った取組をやっているわけでありまして、そうでなければ国際間の信頼を失うというふうに思っております。
 また、一帯一路という考え方は結構だと思いますが、それが中国の個別の利益につながるような形で運営されるとしたら、これは問題になるというように思います。
 私は、個人的に、中国経済というのはかなり深刻な問題を抱えていると思っておりまして、国営企業が国の大きな支援を受けてあまりに強大になり過ぎていて、本来ならば、国営企業の民営化というのを進めなければいけないのに、逆行している。これは経済対策上、しょうがないところもありますが、その結果、生産性が落ち、あるいは知的財産権の話もなかなか改善しない。結局、中国経済で景気が良いのは、ITとかの国営企業が存在しない分野は良いんですけれども、そうじゃない基幹産業のところは問題がある。その結果、鉄鋼などの過剰生産が起こっていると。
 そういうのを掃くために使われるようなプロジェクトになっては、やはり問題があるのではないかというようなことも考えています。
 中国経済は、今そういう意味から、資本流出が起こっていまして、中国の外貨準備額が急速に減っているのは、その結果ですけれども、そういうときに、本当にそれだけの海外投資をやるだけの力があるのかなという、これも個人的な懸念でありますけれども、持っていますし、ダボスに行ったときに、中国中央テレビ主催の会議がありまして、私が二つの問題を提起したら司会者からえらい抵抗を受けましたが、一つは為替レートは変動制にしないと、うまくやっていけないよと話しましたら、そういう政治的な問題はコメントしないでほしいといって怒られました。それからもう一つ指摘したのは、中国はこれからセーフティネット、社会保障制度が整っていませんので、皆保険とか皆年金とか、そういうのがありませんから、ここは非常に問題になるでしょうねと。
 その意味では、本来できるべき中間層がなかなか形成しづらい。極端な所得の二極分化というのが起こってきて、ヨーロッパやアメリカで起こったような問題が生じかねないなという懸念を私は示して、社会科学院の有名な教授がいたんですけれども、その人は全くそのとおりだと言っていましたね。中国の問題は、そういう社会保障のところが整ってないことが問題で、そうしないと、中間層がきちんと育ちませんから、せっかく経済構造を消費中心と、彼らはニューノーマライゼーションというんですけれども、そういう方向に進めたいといっているんだけれども、なかなかできない。
 景気が悪くなると、仕方がないから国営企業に投資して、過大投資、過大生産が起こるという問題が起こっていますので、だからそこはこれからじっくり中国側の経済の分かる方たちと議論して軟着陸を図る、そしてそういう問題の処理のためだけのものではない、本当にガバナンスができた組織にしていけるかどうかが要だというふうに思います。
 あとは、中国の課題、問題は環境問題ですね。北京に行くと、息が詰まりそうになる。PM2.5が毎日200以上というような話ですから、そういう問題を解決しなければいけなくて、これは日本は大いに協力できる分野でありますので、私は中国とこれから話しするときに、是非日本と協力しようよと、環境問題も幾らでも技術協力なり、資金協力なりやりますよと、そしてお互いにガバナンスを良くしたような機関を作りましょうというような話を進めていくことが良いのではないかと。
 特に私の地元の北九州市は、環境問題の先進国でありまして、大連市と提携して、大連市の空気や水はきれいなんですね。北京から大連に行くと、明らかに違うわけでありまして、ただその施策を進めたのが実は薄熙来さん、昔の大連市長だったんですけれども。北九州市は北京市に対しても協力しても良いよと言っているので、そういうことで、前向きに日中が話を進めていくことが大事かなと思いますが、現時点では、まだそこまでの体制ができてないのではないかという私の個人的な感覚です。

(以上)