山本内閣府特命担当大臣閣議後記者会見要旨 平成28年9月20日

(平成28年9月20日(火) 10:21~10:43  於:中央合同庁舎第8号館1階S106記者会見室)

1.発言要旨


 私からは特に発言はありません。御質問があれば。

2.質疑応答

(問)先日、島根県の方に視察に行かれたと思うんですけれども、参考になった点や、今後にそれをどう生かすかなどについてお伺いしたいです。お願いします。
(答)日曜日と月曜日を使いまして、島根県に行ってまいりました。まず、隠岐の島町、それから海士町に日曜日に伺いました。それから、月曜日は本土の方に入って松江市、それから雲南市、出雲市と回ってまいりました。
 隠岐の島町では、ジオパークの試みについてお話を伺いましたし、海士町では、正に地方創生のモデルの町じゃないかと私は考えているんですけれども、いろいろなお話を伺いました。
 特に、私は1年半前にも海士町に伺ったことがあるんですけれども、そのとき、CASと言われる特殊の冷凍装置に関心を持って伺ったんですけれども、この最新の技術を使った冷凍装置で、細胞を壊さないで急速冷凍するということによって、味も品質も維持できるという形で、漁業者が好きなときに、ある意味で、値段の良いときに出荷できるという体制ができて、それによって漁業者の生活が安定した。所得が安定して、そのことによってまた町内でもいろいろな試みがなされるようになった。特に、そういうことをやったのは、その町長さんの、たしか2005年ぐらいに就任されたんだと思いますが、もうこのままでは町がつぶれるという危機感から、何かをやらなきゃいかんということで、もう自分たちでやるしかないという覚悟で取り組んだのが、そのCASの採用でありました。そのために、彼らは自分たちの給料も削り、また、大変な努力をして資金を捻出して取り組みました。その姿を見て町民の方々も、自分たちも一緒にやらなきゃいかんということで、土建業者が、じゃあ、隠岐牛を放牧して、それを事業にしようというような形を進める。
 また、教育が大変大事だという認識のもとに、廃校がささやかれていた高校を何とか維持しようということで、高校の教育のレベルを上げる努力をいたしました。そして、県外からも島留学という形で高校生に来てもらって、その高校を維持するという形になってまいりました。それが大変な成果を生んで、今やUターン、Iターンの若者がどんどん来ています。人口もほとんど減少がほぼ止まったという形でありまして、高校生が、東京の一橋大学の学生たちとまちづくりについて討論会をやる、そういうことで一橋大学の学生たちが来て、そのうちの何人かは島に住みついてナマコの養殖を始めたとかそういう事業をやったりしています。
 私も現地で高校生と対談をいたしまして、高校生自体が自分たちの町を再生するにはどうしたらいいかということを真剣に考えているという姿に大変感動いたしました。そうした意味で、町内の経済の好循環を作って、そして正に所得も上げているという姿で、大変すばらしい地方創生のモデルだと思いました。
 それから、松江では、私は興味があったのが、地方から世界へということを目指しているところであります。一つは、ボタンの輸出を農協がやっています。もう一つは、中村茶舗さんという132年間続く老舗のお茶屋さんなんですけれども、このお茶屋さんが抹茶をタイに出そうということで、タイにお店を開きまして、単に商品を商社を通じて出すというんじゃなかなかうまくいかない。そうじゃなくて、自ら体験してもらうカフェ、抹茶カフェですね、そういうカフェを作って、そしてお茶の飲み方はこうですよ、これはこういう意味があるんですよという日本の文化もそこで教えている。かなり現地の価格からいえば高い価格、日本と同じような価格で出すので、現地は3分の1ぐらいの通貨価値だそうですから、現地では高い価格帯だそうですが、非常に好評で、タイの王室も来ていただいたということで大変なにぎわいを果たしている。そのお店では、年商5億円ぐらいのお茶屋さんらしいんですけれども、8,000万から1億ぐらいがタイで売り上げることができるようになってきているというようなことでありまして、これまたすばらしい話だなと思って伺いました。
 それから、雲南市では、これは地域自主組織といいますか地域自主運営組織といいますか、そういう活動が非常に盛んに行われておりまして、子どもチャレンジ、若者チャレンジ、大人チャレンジという名前で、それぞれの年代に応じた地域自主運営組織というのができて、まちの活性化のために活動しています。
 子どもというのは、大体中高生が対象ですが、中高生たちに自分たちのまちの魅力を発見してもらって、それをPRするようなことを実践してもらう。
 それから、大人チャレンジというのは、いろんな自主組織をまとめたような形で地域に自主組織が出来ています。その中の海潮地区振興会というところ、自主組織ですけれども、そこでは正に地域全体のあらゆる問題を部会を作って、そして、それを運営する。また、自分たちで、これは温浴施設かな、そういうのも運営しているというような形で、自治会組織というのは世帯ごとにあるんですけれども、そうではなくて、1人1票だという感じで、全員が参加してもらうんだという取組であります。それで、地域のいろんな分野にわたる共助というのをある意味でやっている。
 その間に若者チャレンジというのがあるんですが、ここは、私は子どもとか大人のところでなかなか稼ぐというのは難しいかなという話を聞いていたんですが、しかし、稼ぐようになってもらわないと、私の言う地方創生にならないなと思っておりましたら、若者チャレンジではしっかりそのことは認識しておりまして、若者たちでいろんな事業を起こして稼ぐことに持っていくんだということであります。
 今取り組んでいるのは、看護ステーションを彼らが作って、そしてそれを運営して、既にペイするような状況になっています。どうして看護ステーションだったのかと聞きますと、その地域、雲南市の中をずっと見ていて、一体何が足りないのかということを彼らなりに分析したそうです。そうすると、やっぱり無医村地帯がその中でも幾つかのまちにある。そこで直ぐお医者さんというわけにはいかないので、まず看護ステーションを作って、看護師さんが訪ねていってお世話をしようということから始めて、そういう看護師さんをよそから招請してやり始めるわけですが、最初は大変な苦労をしたそうであります、いろいろな研修もしながらですね。
 そして、じゃあ、本当にそういうのが事業として成り立っていくためには、自宅で看護をしてもらうような人たちがいなきゃいけないわけですね。そういう人がどうして見つかるだろうかと思っていたら、正に大人チャレンジの方々が、そういう方々と相談したら、いや、あそこの家は今病院に行っているけど、あのおじいちゃんはもう自宅に帰りたいと言っているよと。こっちはあのおばちゃんはいるけど、そういうので診てもらうということができれば、自宅でやってもいいよという人がいるよというようなことを、大人プロジェクトの人たちがいろいろ紹介してくれて、そして、その看護ステーションというのがスタートして、ビジネスとして今大変うまくいっているということであります。
 そのほか、若者プロジェクトの方々は、今シェアオフィスというのを作って、そこに、そんなにお金が掛からないで小さな事業をスタートするというようなことができるようなスキームを始めたし、そのポイントは、要するに、稼ぐことにつなげなければいけないんだということだそうでありまして、私はそのことに大変我が意を得たりという感じで感心いたしました。
 また、出雲市では、勝部農産という、これは株式会社が大農業経営をやっているところであります。もともとは個人で農業をやっていたんですが、やっぱり休日が取れないとか、年金、保険がちゃんと確保できないというようなことから、株式会社化しなければいけないということで、21年ぐらいからだったかな、から取り組んだということでありますが、お父さんの跡を継いで農業をやっていたんですが、亡くなったということで、その息子さんが21年から株式会社化した。その株式会社化するに当たっては農協が大変協力してくれたそうです。そして、今や経営面積が62ヘクタール、作業を受託しているのが30ヘクタールですから、全部で92ヘクタールの米、麦、大豆、そば、加工用米なんかを作って大変大きな、ものすごくでっかいトラクターとかコンバインとかを持って大規模経営をやっております。そういう頑張っているところ、しかも、株式会社形式でやっているというのを見て、やっぱり勝部さんも言っておりましたが、社員というか年金とか保険とかそういうのはきちっとしてあげないと、安心して若者が来るような状況にならないんじゃないかというような話でありまして、今、5人の若者が一緒に働いて、みんな楽しい、面白いと。大きなトラクターに乗ってやっていると、非常にやりがいがある、将来は自立したいんだ、そんなことを言っておられる方もいました。ただ、彼は、それで販売は農協に全部依頼しているというふうなお話でありました。
 私も意地の悪い質問をして、「生産資材が高過ぎるということはありませんか」という質問をしたんですけれども、そこのところは農協さんとはうまくいっているし、結構それだけ大きなことをやっていると、条件も良いのを出してくれるみたいなことでありましたけれども、一つの農業のやり方としてのヒントを得た感じがいたします。
 こういうのを通して、改めて私は地方創生というのは、その地域の平均所得を上げるという、つまり稼ぐことに結びついて、その地域の経済の好循環を作るということに結びつかなければ本物ではないという認識を新たにしまして、是非そういう取組は一生懸命やっている。そしてまた同時に一番大事なのは自助の精神ですね。自分たちでこのまちを良くするしかないんだという意欲を持って取り組んでいることが大事であって、そういう取組を支援するような方策、あるいはそういうところに対してはしっかりと人材面、情報面、財政面で応援をしていきたいというように考えておりまして、それを具体的な施策に、どこをどうするのかというのはこれから考えたいと思いますが、いろいろヒントをいただいたと思っています。
(問)高速増殖炉のもんじゅについてなんですが、党側からランニングコストについて問題視する声が相次いでいまして、前行政改革担当大臣をされていた河野太郎さんも、大以外の何物でもないというふうな指摘をされていますけれども、大臣、ランニングコストについては、大臣の御所見というのは、どのような御所見をお持ちでしょうか。
(答)まだ十分に勉強していないので、特段のコメントをすることはありません。ただ、これは非常に重要な問題だと個人的には思っておりまして、よく勉強してそれなりの考えを持たなきゃいかんと思っていますが、一方で、官房長官のところで何らかの方向性を出すというふうな話でありますので、それを注視したいと思います。
(問)統計の勉強会について伺いたいんですけれども、日銀が、今年の夏にGDPの算出方法について疑問を投げかける論文を発表していると思うんですけれども、そことの連携というのはどういうふうにお考えでしようか。
(答)特段そこと一緒になってというつもりはありません。日銀の論文を読みましたが、大変興味深い論文だと思いますが、彼らは、要するに、分配面からアプローチしてやっている話ですね。一方で、現在の我が国のGDP統計というのは、支出面から見ているのが中心でありまして、それと生産面を合わせるという形でできています。ある意味では、分配面のところは生産面と自動的に合わせて、釣り合わないところは余剰かな、そこに入れちゃうというような形でやっていますので、そういう意味では分配面から始めてやったという試みは面白いと思いますが。ただ、基準が違えば結論は全く違ってきますので、だから、違った基準でいってどんどん批判するだけではいけないなと思っておりまして、やっぱり政府として出している支出面を中心としたGDP統計の基準というものにのっとったときに、それが本当にちゃんとしたものかどうかということをまずしっかりやることが大事じゃないかなと思っています。
 我々は、そういう作り方のところを批判するというだけのつもりではなくて、統計を使う側、事業者側から見てエビデンス・ベースト・ポリシーメイキング、根拠に基づいた政策形成というのを一番大事にしなければいけないので、そういう観点から見ると、GDP統計ではこういう問題がありますよと、あるいはこういう統計が必要ですよというような形で議論していきたいと思っております
 そういうふうに要求するときには、今の統計委員会の形ではちょっと無理。例えば、新しいサービス産業について全然統計がないからこれを作ってくれよというような話をするときに、統計委員会にはその権限は今ありません。したがって、これは行政改革の一環として考えなきゃいけないし、また、やっぱりこれまで行政改革という名のもとに一番予算面でも人員面でも削られたのが統計部門だったんですね。そのことが非常に今ひずみを生じている要因でもあるんじゃないかと思いますし、そういう観点から、行政改革の問題としてこの統計の話を考えていきたいと思っているところであります。

(以上)