石原内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成28年5月18日

(平成28年5月18日(水) 9:40~10:02  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 本日公表した2016年1-3月期のGDP速報値では、実質成長率は前期比プラス0.4%、年率に換算すると1.7%となりました。
 この要因としては、雇用・所得環境の改善を背景に個人消費が前期比0.5%とプラスに転じたこと等が挙げられます。これは、前期が低かったことに対する反動もあると思います。
 名目成長率は前期比0.5%、前年同月比0.8%とプラスとなりました。また、海外での稼ぎ等を含めた我が国全体の所得、GNIは、実質ベースで見ると前期比0.3%、年率に換算すると1.3%の増加となりました。
 これで2015年度がそろったわけですが、年度で見ると2015年度については、実質成長率は前年度比0.8%とプラスに転じ、名目成長率も2.2%のプラス、GDPデフレーターも1.4%となり、1997年以来18年ぶりに、これらの指標が三つともプラスとなりました。
 名目GDPは、リーマンショック以降400兆円台でしたが、500兆円を上回ることになったわけです。
 また、国民総所得、GNIですが、前年度比で実質で2.5%、名目で2.5%のプラスとなりました。
 我が国経済の現状については、このところ弱さも見られますが、企業収益が引き続き高水準にある中で、雇用・所得環境の改善が続いており、緩やかな回復基調が続いていると認識しています。
 今後について、気を付けていかなければならない点は、中国を始めとする新興国や資源国の動向、市場の変動の影響に留意する必要があります。また、先月発生した熊本地震については、平成28年度補正予算が昨日、全会一致で成立し、その活用による復旧を図る中で、インバウンド消費あるいはサプライチェーン、オール九州に対する影響というものもあるわけですので、経済への影響に十分留意していく必要があると認識しています。
 政府としては、デフレ脱却を目指して、経済再生に向けた取組を更に前進してまいりたいと考えています。このため、平成28年度予算についてもできる限り上半期に前倒しして実施し、早期に効果を発揮させるよう取り組んでいるところです。今後とも景気動向を注視し、必要に応じて機動的な政策対応を行っていきたいと考えています。
 また、今月中を目指して「骨太方針2016」を取りまとめ、成長と分配の好循環の実現に向けた取組を加速していきたいと考えています。
 本日、一億総活躍国民会議の最終回が行われました。この後、与党内調整を経て、月内に閣議決定になります。ここにも成長の芽が十分にちりばめられているものと認識しているところです。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)今回のGDPの結果を受けて、景気動向に対する御認識と、弱いとされていた個人消費についての見方をお伺いします。
(答)景気動向について留意すべき点は、先ほど申したとおり、新興国や資源国の動向、4月に熊本で発生した震災です。今も余震が続いており、現地に住んでいる方のお話を聞かせていただくと、これまで大丈夫だったが、もう少し大きな地震が来ると、もう建物がもたないといったところがたくさんあり、余震が続くことによる心理的な影響が、更に大きくなる。こういうことがオール九州の観光あるいは経済にも影響を及ぼす。それが、日本経済に及ぼす影響があるということで、十分留意をしていかなければならないと思っています。ただ、景気判断としては緩やかな回復基調が続いているという見方に変わりはないわけです。
 個人消費ですが、10-12月期の個人消費が極端に低かったので、この1-3月期がプラスになって、それが全体を引き上げているという部分はあると思います。総じて言うと、平準化した、おおむね横ばいに推移している、ことが現れてきたのではないか。雇用と所得環境が改善する中で、個人消費も10-12月期とは違って、持ち直しに向かっているのだと思います。
 ただし、消費税率引上げ以降の回復が、グラフで見てみると、総じて力強さを欠いているということも事実ですので、その要因をよく見ていく必要があると思っています。
 消費税率の引上げや輸入物価の上昇が実質賃金を押し下げたという面はあると思います。しかし、2015年の春以降はマクロで見た総雇用者所得は、名目、実質ともに増加傾向になっています。 20年続いたデフレマインドを払拭するには、時間がかかると思います。そんな中で、様々な調査において、子育てをされている世代の皆さんや低所得者の方を中心に、先行きに対して不透明感が漂って、消費を抑制している可能性出てきています。
 また、個人消費に大きく影響するのは、天候です。2015年は通年国会でしたが、「暑いな、暑くてまいったな」という印象はなくて、今振り返ると、夏に入る前、7月の前半ぐらいが冷夏だったのかなと思います。そういう冷夏の影響。また、昨年の冬はコートを着なかった記憶があります。暖かかったのだと思います。こういう天候要因が、大きく影響していたのではないかと思います。
 耐久消費財ですが、消費税率引上げに伴う駆け込み需要と反動減と言います。けれども、それ以前に、様々な政策を打っています。車もエコカー減税などを、かなり手厚くしました。住宅もかなりいろいろなことをやりました。こうしたことによる反動もあり、耐久消費財の減少が続いている。こういうことをしっかり見て、個人消費がこれからも持ち直しに向かうように施策もちりばめていかなければならないのではないかと考えています。
(問)今回の結果ですが、政府の経済見通し、目標1.2%に届かないというのが年度ではありましたけれども、今後そのGDP600兆円に向けての計画があると思いますが、今回届かなかったことについて、また、今後の見通しについては、どのようにお考えでしょうか。
(答)2015年度の成長率は、実質0.8%。政府見通しの1.2%を下回ったのは事実です。
 これは、私が大臣に就任した、この1-3月期が非常に象徴的だと思いますが、海外経済の弱さです。世界的な株の変動。あるいは油の値段は乱高下していると、見ていいのではないでしょうか。ついこの間、27、8ドル台で、今は46、7ドル台まで戻してはいますが、産油国サイドの需給調整がなかなかうまくいきませんし、どうなるのかなかなか見通しがつかない。
 そういう外的な要因がある中で、日本のデータを見ると、輸出は低い伸びにとどまっていると言わざるを得ないのではないか。
 そして、その前の質問で、消費者マインド、デフレマインドの払拭に時間がかかるというお話をしましたが、個人消費は当初の見通しを作ったとき以上に弱かった。
 経団連等が、設備投資をしっかりとやると言ってくださって、それなりの効果は出ているのですが、想定と比べて緩やかな伸びになったと思います。というのは、油の値段が下がって製造業にとってはプラスな面は多々あるわけですが、それでも設備投資が当初見込んだよりも緩やかな伸びになっている。これが実質ベースで1.2という経済見通しを下回った、主たる要因ではないかと分析しています。
 しかし、所見の中でお示しさせていただきましたとおり、2015年度の名目成長率は2.2%、実質は0.8%、GDPデフレーターも1.4%というように、デフレ脱却、経済再生に向けて前進している日本経済の姿は確認できたと認識しているところです。
(問)2016年度の政府見通しの達成については、どのように思われていますか。
(答)2016年度は、実質1.7%とかなり高い数字だと思います。今回は0.8%でした。先ほど、留意すべき点として、4月に発災した熊本の地震を挙げました。熊本県の経済規模は、GDPでいうと日本全体の100分の1と言いますけれども、その影響をもう少し見ていかなければなりません。特に九州は各県に観光地を抱えています。それが実は全部つながっており、阿蘇と熊本城というのは大きな観光の要素です。28年度の実質成長率を見ていく上で、こういうことも注視していかなければならないと思います。
 現状分析ですが、このところ経済全体に弱さは見られますけれども、企業収益は過去最高を記録した企業が、これまで決算が出た企業の4分の1ぐらいあり、雇用・所得環境は間違いなく改善が続いていて、緩やかな回復基調にあるという景況判断は変更していません。
 先行きですが、急に雇用が大きく落ちたり、所得が減るということは考えにくく、改善が続く中で、先ほどは平成28年度予算の前倒し執行の話をしましたが、その前に既に補正予算もつくっており、それが全国に流れている。このような各種の政策効果もあり、これからも景気は緩やかに回復すると見込まれています。
 昨日、鉄鋼関係の方と話をしたのですけれども、その方が中国へ行って、中国の鉄鋼関係の方と話をして、何であんな低い値段で鉄鋼関係の物を外に出すのか、これはダンピングではないかと言い合いになったそうです。中国サイドからすると、在庫が積み増しされていて、リーマンショック後の設備投資の過剰がいろいろなところにある。だから、いたし方ないんだという話があったと聞きました。そういうことを聞きますと、中国経済や、資源国で、本当に需給調整ができるのかできないのか。毎回予測を裏切られているような感じもしますし、先ほど話をした、熊本の震災も含め、こういう動向には十分留意をしていく必要があります。
 そんな中で1.7%を達成するには、各々の四半期においてある程度の成長が必要になってくる。地震が4月にあって、この4-6月期は弱いのではないかという民間の予測もあります。ある程度の成長がないと、なかなか1.7%に達しない。引き続き経済動向を注視して、この経済見通しを達成できるような施策をこれからつくっていくことが肝要ではないか。そして、デフレに戻ることが絶対にないように、元の木阿弥にならないように注視していきたいと考えています。
(問)うるう年効果について、今の実質GDPは530兆円ぐらいで、うるう年効果を単純に除くと、前期比でほぼゼロ、横ばいなのではないかという見方もあるのですけれども、その辺についての御見解を教えてください。
(答)それだけではないと思います。1-3月期で見ると、外需の寄与度も0.2%あるわけです。内需の寄与度も0.2%あります。それで実質成長率は前期比0.4%になっている。うるう年で1日多いという要因だけで実質成長率が前期比0.4%になるというのは、エコノミストにも聞いていただきたいと思いますが、私が習った経済学の知識では、ちょっと読み過ぎではないかという印象があります。消費をするのは個人ですし、その消費をどういう形でするのかというと、1日多いから1日多く消費するのは、食べ物などだけです。企業の設備投資にしても、うるう年で1日多いからより多く投資するかというと、設備投資は年間計画に基づいて行う。そういうことと外需の寄与度が0.2%あるということを考えると、うるう年効果だけをGDPの増加要因と見るのは短絡的ではないかと思います。
(問)今回、景気判断は基本的には変わらないとして、緩やかな回復基調が続いているという御認識ですが、一方で、消費税の問題がありまして、総理がリーマンショックのようなことが、大震災のようなことがなければ予定どおり実施すると言いながらも、消費税率引上げの延期に関する話題が出ているという状況ですが、改めてこの景気状況を踏まえて、総理の言う消費増税の停止条件に当てはまるのかどうか、若しくは大臣として、巡航速度であるのであるならば予定どおりやるべきだというお考えなのかどうか、その辺のところの御見解を教えてもらえますか。
(答)これは昨日、一昨日と、予算委員会でもかなり議論になった点だと思います。総理の答弁は終始一貫していると思いますけれども、リーマンショックや大震災のような重大な事態が発生すれば政治判断によって適宜適切に判断しますということです。この適宜適切にということを、しっかりとこれまでどおりおっしゃっていたという印象を持っています。
 私は経済財政担当大臣ですので、来年4月1日に消費税が増税できる経済環境をつくっていく。そんな中で留意すべき点として、中国等の新興国、資源国、また、まだ1万人の方が避難生活を余儀なくされております熊本、特にゴールデンウイーク、観光シーズンの最大のピークのときに56万泊分とも言われる宿泊がキャンセルされています。これは、夏休みに取り返すことはできません。こういう影響がどう出てくるか、風評被害などが出ないように、どんどん九州に行っていただけるような施策も出していかなければならないと思います。そういう形で消費税が上げられる環境をつくっていくことが私の仕事だと考えています。

(以上)