石原内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成28年3月18日

(平成28年3月18日(金) 8:46~9:05  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 今日の閣議では、我々に関係のある案件はありませんでした。

2.質疑応答

(問)FRBの利上げペース鈍化について伺わせてください。世界経済の減速を受けて年内の利上げ見通しを、従来の4回から2回へ修正されました。今回のFRBの判断と世界経済の情勢をどのように評価されているのか。また、米国の利上げ鈍化で、海外市場で円が一時1ドル110円台後半にまで円高が進みましたが、この水準や値動きをどう受け止められていらっしゃるのか、以上3点をお願いします。
(答)外国の金融政策について経済財政政策担当大臣が話をすることは、差し控えるというのが慣例です。御指摘のとおり、当初の市場の予想どおり、FOMCが据え置いたわけです。一般論ですが、声明文を読むと、米国経済の認識については、モデレートなペースで拡大しているとされていたと思います。そして併せて、世界経済や金融動向に関するリスクにも言及されていたと思います。アメリカの金融政策当局において、自国の米国経済と世界経済の健全な発展のために適切な金融政策が、これからもとられていくことを期待しています。
 ご質問の後段の円が1ドル110円後半を付けたという為替レートについても、発言をしないのが慣例なので、御容赦いただければと思います。
(問)これまで2回行われた国際金融経済分析会合で、初日はスティグリッツ教授が消費税率引上げは見送るべきではと、2日目はジョルゲンソン教授が、時期は明言していないと思うのですけれども、消費税率引上げはやるべきだということをおっしゃいました。また、今朝一部報道で首相が消費税率引上げの見送りを検討されているという報道もありましたけれども、来年4月の消費税率引上げに対するお考えを伺えればと思います。
(答)2回ともに出席していますが、スティグリッツ教授の受け止めというのは、世界経済が大低迷、そういう状態にあると。そういう中でアメリカもそんなに良くはないし、もっと悪いのはヨーロッパだと。そこそこ良い日本がブレーキになるようなことを行うべきではない。税の世界では、炭素税、相続税、所得税の累進性を高める、などのスタンスに立った中での発言だったと捉えています。
 昨日はもう少し感じが違い、あるべき税制についてのお話でした。安倍内閣になって法人税を下げていますが、法人税を高くする、所得税を高くするなどの税制ではなくて、インダイレクトタックス、間接税である消費税を中心にした税制。税制の在り方としてそちらの方が日本には必要ではないかと、そのように私は受け止めさせていただきました。何であのような報道になるのか、率直に驚いている感じす。
(問)今朝の消費税率引上げの見送りという報道については何かありますか。
(答)よく読むと、引上げを見送ることが決まったという記事ではなかったと思います。世界に冠たる社会保障制度を、サステナブル、持続可能ななものとして次世代にしっかりと引き渡す責任。そして、国際的なコンフィデンス、信頼を確保するために必要だと、総理も財務大臣も国会でも答弁されています。年央にまとめます「骨太」の中で、あるいは「一億総活躍」の中で施策をお示しさせていただきますが、そういうものによって経済の底上げを確かなものにする。私の仕事は、来年4月1日に、総理や財務大臣もおっしゃっているような政策判断ができるような経済環境を整える。我が国はもはやデフレではない状況ではあるが、デフレを脱却してはいない。すなわち、またデフレ局面に入っていく可能性が残っているのでは、デフレを脱却したとは言えない。また、実質GDPが高くて名目GDPが低く、デフレーターがマイナスである。GDPギャップもどんどん開いていく。そんな状態を、引き起こさないためにはどうするかが、アベノミクスの完遂に向けての道のりだと思っています。
(問)先ほどの読売新聞の報道に戻りますが、読売新聞によると増税の延期は一、二年間と想定しているそうですが、振り返ってみると、一昨年の冬に延期したときは、一年半延期して、総理自身が2017年4月に消費増税を実施すると。その後、答弁で、リーマンショックや大震災などのような重大な事態が起きない限り実施すると言ってきたにもかかわらず、こういう報道が正しいかどうかは別としても、延期をするということが軽々しく行われていいのかという問題があると思いますが、その辺について大臣はどのようにお考えになって、総理の発言、総理自身が設定した期限についてどのようにお考えになっているか、教えてもらえますか。
(答)総理も財務大臣も、今の社会保障制度を次世代にしっかりと引き渡す責任があるとおっしゃっています。子どもが100万人しか生まれない時代、65歳以上人口がどんどん増えてきている時代。そういう中において社会保障制度を維持していく上では、消費税がどうしても必要になってくる。
 消費税の増税部分を全て社会保障の充実に充てられればいいわけですが、その前に基礎年金の2分の1を国庫負担としたことで、そこにも財源を持っていかなければならない。その一方で、一億総活躍という形で、女性にも社会で働いていただく。すでに社会で存分に働いている方も増えてきた。社会環境が変わってきたわけです。そうしますと女性が子どもを産まれる間はどうしてもキャリアの間があいてしまう。その間、社会でどれだけのお手伝いができるか。保育だと思いますが、そういうものにもこれまで以上にお金がかかる。
 その一方で介護。私は、介護保険導入を是非やるべきだと議連をつくって、その代表を昔やっていいました。当時は亀井政調会長で、今の総理が社会部会長でした。亀井政調会長が半年、介護保険の導入を延期しました。私は延期すべきではないという論者でした。650の自治体の方が、市民の方々に頭を下げて保険料を頂く準備をしているのだから、このままやらせてくれと。私はそちら側にいたのですが、結果としては半年先送りになりましたが、介護にも当初予想したよりも費用がかかっています。
 日本の消費税は社会保障目的税ですので、EU型の間接税でもないしアメリカで行われている売上税でもありません。納めていただいた消費税は、全て社会保障で国民の皆さん方に還元する。さらに直接税よりも間接税で薄く広く国民の皆さん方に負担を求めていくというのは、税の姿としては正しいのではないかと考えています。
 ですから何でああいう記事になるのかと。もしこれが、仮定の話ですが、例えばセールスタックス、売上税など一般財源であるならば、景気動向の変化によって話が出てくることはあるのかもしれませんが、一義的には社会保障目的税であるということを、国民の皆さん方とともにしっかりと認識して、社会保障を次の世代にしっかりと伝えていくためお願いしていく。もちろん経済環境が大嵐になったら、総理も財務大臣もおっしゃっていますが、リーマンショックや大震災のような事態が起こったら適切に判断される、そういうものなのではないかと思っています。
(問)先ほど介護保険の例を挙げられましたけれども、99年に、社会部会長が総理で、議連の会長が石原大臣で、そのときに当時の政調会長の亀井さんが、家族の美風を壊すので介護保険の導入は駄目だとおっしゃって、そのときに総理と石原大臣がNAISの会でやられたというのは、よく分かっているのですけれども、そうすると要は社会保障の財源になる消費税の重要性については、総理も理解していると、そのようにお考えになっているという趣旨で、今の話をされたということですか。
(答)もちろん総理も財務大臣も、そういう認識があるからこそ国会で、そのように御答弁をされているものだと承知しています。
(問)リーマンショックや大震災が起きた場合という条件があると思うのですが、そういった二つの出来事と今の日本の経済状況、世界経済の状況は、大臣としてはどこが今どう違う、若しくはほぼそれに匹敵するのか、それに関してどのような御見解を、どのような指標を基にしてお考えになっているのか、認識をお伺いしたいと思います。
(答)スティグリッツ教授とジョルゲンソン教授の見解は大分違ったと思います。簡単に言いますと、スティグリッツ教授の方がペシミスティック、悲観的な世界の経済観を持っていらっしゃった。一方、計量経済学の権威であるジョルゲンソン教授の方は、過去四半世紀の経済成長より0.1%下がりはするけれども、ほぼ同等な経済成長が、今後も世界全体でなし得るという、そういう立場でした。世界的なノーベル賞をとったような経済学者、あるいは全米の経済学会の会長をやったような世界的な権威の方々でも、ある意味では見方は違う。日本のエコノミストの方に聞いても違う。非常に不透明な時代であるということは間違いないと思います。
 ただ、私は内閣府の大臣ですから、出てくる数字しか判断材料はないのですが、足下では、個人消費は力強くはありません。これは間違いないと思います。その理由は国会でも述べています。ただ、所得環境と雇用環境は、間違いなく改善されている。倒産が増えた、失業者が増えたという話は、全国どこでも聞きません。もちろん従業員が5人以下の小規模零細の方や、地方の都市での商業活動すなわち商店をやっていらっしゃるような方の中で、景況感が改善していない部分は当然あります。この間も景気ウォッチャーの生の声を聞かせていただきましたが、今度のマイナス金利も含めて、これからどうなるかよく分からないという声が出てきていることも事実だと思います。
 ですから私がこうなる、ああなるということを判断するほど簡単な状態ではなく、お二人の権威ある経済学者のお話のとおり非常に不透明なのだろうと。ただ、そうは言っても、原油価格もバレル30ドルを切ったりするような状態ではありません。中国も過剰設備と不良債権の問題がありますけれども、全国人民代表大会の李克強首相のステートメントや記者会見、あるいは中央銀行総裁の話を聞く限りは、この事態をしっかりコントロールして、当然8%や9%という日本の高度成長期のような成長は望めませんが、6%台の経済の成長を見込んで、また、それに見合った政策をしっかりと打ち出していくということを言われています。一部報道されたドイツ銀行の債券の問題など、個々のことは分かりません。リーマンだって分からなかったわけですし、サブプライムの話も分からなかったわけですから、そういうものが出るか出ないかは別として、ならして見れば日本も世界も不透明な部分、予見できない部分はありますが、緩やかに、モデレートな回復基調にあるということは、事実なのではないでしょうか。

(以上)