石原内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成28年3月8日

(平成28年3月8日(火) 9:05~9:26  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 今日は3点あります。
 まず、TPPについてです。今朝の閣議において、TPP協定及び整備法案について閣議決定されました。本日、国会に提出されます。
 これは、TPP協定の締結について国会承認を求めるとともに、協定を実施するために必要不可欠なものとして、関連する国内法の規定の整備を総合的・一体的に行うものです。
 我が国が率先して動くことで、TPP協定の早期発効に向けた機運を高めたいと考えています。今国会において十分な御審議の上、御承認いただき、更に関連する法案についても御審議いただき、成立するようお願い申し上げたいと考えています。
 2点目です。総理から御指示を受けています、「国際金融経済分析会合」の準備をこれまで進めてきました。
 来週、第1回会合を3月16日に、第2回会合を3月17日に開催して、世界的に著名な経済学者の方々をお招きし、世界経済や金融市場の現状及び見通しについてお話を伺うことになりましたので、今日公表します。
 第1回会合では、ノーベル経済学賞受賞者で米国の大統領経済諮問委員会委員長等を歴任されました、コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授をお招きしたいと考えています。
 次に、翌日の第2回会合では、これもアメリカの経済学会会長等を歴任され、経済政策の専門家であるハーバード大学のデール・ジョルゲンソン教授と、元日本銀行副総裁で、我が国を代表する経済学者である日本経済研究センターの岩田一政理事長のお二人をお招きしたいと考えています。
 この会合は、5月の伊勢志摩サミットに向けて、世界経済、国際金融、エネルギー等、幅広く世界の経済・金融情勢について、しっかりと政府一丸となって勉強していく場にしたいと考えています。
 日にちは16日、17日ですが、開催時間はまだ決まっていませんので、決まり次第、お知らせします。
 3点目です。いわゆるQEの二次速報値の概要です。実質GDP成長率は前期比マイナス0.3%、年率マイナス1.1%、一次速報から上方改定。名目GDP成長率は前期比マイナス0.2%、年率マイナス0.9%、一次速報から上方改定となっています。

2.質疑応答

(問)GDPに関してですが、先ほど大臣がおっしゃったとおり、二次速報で僅かに上方修正されたとはいえ、マイナス成長で、弱さが再確認されたかなという感じですが、日本経済に対する御所見と、それを踏まえて追加経済対策の必要性、あるいは消費税率を予定どおり引き上げるべきなのかどうか、このあたりについて改めて御所見をよろしくお願いいたします。
(答)マイナス成長となりましたが、雇用者報酬は実質で見てもプラス0.2%、前年同月比でもプラス1.7%。経済を見ていく上で重要な設備投資も2期連続プラス、0.2%の上方改定です。2015年暦年で見ると、実質成長率はプラス0.5%、名目成長率は2.5%、デフレーターも2%と名目、実質、物価のいずれもプラスに出ている、明るい動きだと思っています。ただし、御質問のとおり、消費に弱含みがあるということで、このような形になっているのだと思います。
 この他、収益や雇用環境、所得環境等についても、企業収益は10-12月期で見ますと、非常に高い水準で推移しています。有効求人倍率は1.28倍と、24年ぶりの高水準で改善が続くなど、日本経済のファンダメンタルズは良好であるという認識にかわりはありません。 政府としては27年度補正予算の速やかな実施と、今、参議院で議論の最中ですが、予算というのは最大の経済対策ですので、一日も早い成立をお願いしているところです。
 経済対策を策定する必要があるのかについてですが、企業収益や雇用・所得環境は、先ほど御説明したとおり改善が進んでいる、ファンダメンタルズは良好であるという認識です。政府としては、今後とも世界経済、市場の動向を注視するとともに、世界経済の成長と金融市場の安定に向けて、今年はG7の議長国でもありますので、国際連携を深めていくことになると思います。こうした中で、日本銀行と一体となって、デフレではない状態をつくり出すことができたわけですから、デフレ脱却を目指して、経済再生に向けた取組を更に前進させていくということに尽きると思います。
 そんな中で、27年度の補正予算の実施、やはり箇所付けして、しっかりとお金が隅々まで流れていくようにする。そして、28年度の予算の成立、高い水準にある企業収益を賃金や設備投資に更に結びつけることで、経済の好循環というものを拡大していきたいと考えています。今後ともあらゆる政策を総動員することで、景気の回復を実現していきたいと考えています。消費税については、総理が国会で答弁しているとおりです。
(問)国際金融経済分析会合について、この3人の方を選ばれた理由と、それから今後何回程度、どういう方を呼んでやりたいとか、2回目以降のスケジュール感をどのようにお考えになっているか、その辺のところを教えてください。
(答)G7サミットに向けて年初来、中国、あるいは資源国、特に今は、原油価格は安定して緩やかな上昇基調に入っているようですが、世界的な経済状況にG7が適切に対応していかなければならない。そんな上で内外の有識者の方から世界の経済、あるいは金融情勢について意見を伺うことが重要なことと考えます。その趣旨に沿ってこれまで調整を進め、世界的に著名な3名の方からお話を伺うことができることになったというのが人選についてです。
 この後、どれぐらい行うかということですが、サミットが5月26日ということを考えると、連休も入りますし、海外出張等々もあります。そういうことを勘案すると、5回程度は開催できるのではないかと考えています。
(問)スティグリッツ教授は、2013年の初頭にも総理とお会いになって、アベノミクスの方向性は基本的に正しいということをお伝えしていたと思います。スティグリッツ教授の最近の言動を見ていると、消費増税は需要をマイナスにさせる可能性があって、余りやるべきではないというニュアンスの発言もされていらっしゃいますし、もっと財政出動をした方が世界経済にとってはプラスになるのでないか、まだ余力があるのではないかというようなこともおっしゃっていたと思います。世界経済の分析会合と言いつつも、国内の政策判断にも多少踏み込んだ発言をする可能性もあると思うのですけれども、その辺についてはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
(答)今、おっしゃったように、スティグリッツ教授がそのような趣旨のお話をされているというのはネット等々で承知していますが、サミットの議長国を務める日本にいらっしゃって、国際金融、経済の分析をしてほしいというお願いをしていますので、そこでどのようなお話が出るのか楽しみにしているというのが正直なところです。
(問)GDPについて伺います。緩やかな回復基調というのは、今回の結果を受けても続いているという認識でいいのか、大臣のお考えをお聞かせください。
 それともう一つ、GDPの公表時期ですけれども、今日、16年度分のGDPの公表日程が出ていますが、海外では欧米やアジアは既に公表になっていまして、日本はかなりそういう意味では遅いという批判が元々あった上に、今回、経済産業省が鉱工業生産の公表時期や公表方法を変えたので、多分GDPの公表日程の発表がずれ込んだと思うのですけれども、市場関係者からは公表時期について、もう少し早くやってくれだとか、経済産業省が8時50分に公表するのを3時30分に変更するということなので、市場が開く前に公表するという今までの統計の公表方法の流れに逆行するという指摘もあるのですけれども、統計を所管する大臣として、一連の重要統計の公表についてはどのようにお考えでしょうか。
(答)統計については、これまで委員会でも、あるいは閣内でも議論になっています。QEは私の所管ですけれども、鉱工業生産指数は経済産業省が発表する、賃金系にしても厚生労働省が行ったり、総務省が行ったりと縦割りです。こういうものは整理していく必要があるということは、短い期間ですが、担当大臣をさせていただいて強く感じていますし、今の御指摘の趣旨は理解しているつもりです。ただ、他省庁にまで、どうしろというようなことが言える状況ではないということもまた事実だと思います。QEについては今後の公表日程1年分の日時を決めて公表させていただくということを明らかにしているところです。
 それと、QEは、暦年ですと名目、実質ともプラスです。回復基調にあるかという御指摘ですけれども、先ほど言いましたように、企業収益あるいは雇用、所得環境はかなり改善されていると思います。そういうことを考え合わせますと、ファンダメンタルズは良好であり、その認識に変化はないという話は先ほどもしましたので、基調判断は変わっていないというのが今の立場です。
(問)今日閣議決定したTPPについて改めてその意義と、野党は重要5品目をちゃんと守られたかなどをテーマに、徹底審議を求めていく構えですが、国会論戦を通じてどのように理解を深めていこうというお考えかお聞かせください。
(答)TPP協定の締結・署名が2月に行われて、協定を確実に実施していくため、、私どもはTPP対策大綱を昨年11月につくりました。それを行うためにも国内法の整備が必要ですし、整備を総合的・一体的に行うということが重要なのではないかと考えていますし、それをお願いするということです。
 具体的にどのようなものがあるのかというと、関税の手続に関する改正、また、著作権の保護期間を70年に延ばす、これでOECDの全ての国が共通な年数になるわけです。著作権の保護期間の延長、あるいは知的財産関係の改正、農業を営まれている方々の経営安定化対策、こういうものです。これがTPP法案の主だったものです。それをこれから国会にご説明していくわけですが、TPP協定というのはそこに示されていることが全てです。条文に規定された趣旨なども含めて丁寧に説明していきたいと考えています。また、先ほど農業の経営安定対策は重要であるというお話をしましたが、私も現場を歩きますと、不安や心配の声が存在するのは事実です。そういう声に真摯に耳を傾けて、今回の対策によってこれだけのことをやります、ここの部分は関税が撤廃されますなどということをしっかりと説明していくことが重要と考えています。
(問)デフレ脱却についてですけれども、物価がなかなか上がらなくなってきているのですけれども、エネルギーの影響を除いた物価も少し頭打ちになっているところがありまして、今年はかなり厳しいのではないかと。やはり政府として掲げられている2%を前提とした名目600兆円、だんだんフィージビリティが問われてくる側面だと思うのですが、それに対する御所見をお願いします。
(答)今は、3月ですので、まだそのことに言及するには少し早いのかなという気がします。でも、デフレ脱却とは何だろうということを考えれば、デフレーター、賃金などを全て見ていって、もうマイナスにならないと多くの方々が認識して、初めてデフレ脱却に至ると思います。その上で大切なのが、2%の物価上昇、これは別に日本国特有なものではなくて、物価目標を設定している国のスタンダードだと思いますが、それに向かって日銀、政府ともに一体となって取り組んでいる。その時期については、今、御指摘された日銀総裁の先般の発言、CPIで見ましても、いわゆる生鮮食品とエネルギーを除いたコアコアで見れば上昇していますが、その一つ前のエネルギーまで入った値は原油安ということで思ったような数字にはなっていない。そういうものを判断されて、日銀総裁が2017年度の早い段階というふうに後方修正されたのであり、また、そこの点については特異な事情があるので政府としても変更については理解しているということです。
(問)昨日一部の報道で、一部経済官庁が消費増税を先送りした場合の経済効果について検討を始めたといった内容が報道されたのですけれども、大臣もこの内容はお耳に入っていると思いますが、そういった事実関係はあるのでしょうか。
(答)そういう報道があったことは承知しています。内閣府でそういうことをやっているのか確認しましたところ、内閣府ではそのようなモデル計算はしていませんという報告を受けました。

(以上)