石原内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成28年2月15日

(平成28年2月15日(月) 10:00~10:29  於:中央合同庁舎8号館1階S101・103会見室)

1.発言要旨

 本日公表させていただきました2015年10月-12月期GDP速報は、実質成長率は前期比マイナス0.4%、年率に換算するとマイナス1.4%となりました。在庫を除いたGDPである最終需要は前期比マイナス0.2%、年率に換算するとマイナス0.9%となりました。
 この要因としては、記録的な暖冬により冬物衣料品などが大きく落ち込んだことなどから、個人消費が前期比マイナス0.8%となったことなどが挙げられています。
 名目成長率は前期比マイナス0.3%、年率に換算するとマイナス1.2%となりましたが、GDPデフレーターの上昇もあり、前年同期比ではプラス2%となりました。
 また、海外での稼ぎ等も含めた我が国全体の所得、いわゆるGNI(国民総所得)は、実質ベースで見ますと、原油価格下落の影響などもあり前期比プラス0.1%、年率に換算しますとプラス0.3%の増加となりました。
 一方、2015年暦年については、実質成長率は前年比0.4%と2年ぶりのプラスとなり、名目成長率は前年比2.5%となりました。また、GNIの前年比は実質で2.4%、名目で3.0%プラスです。
 世界的なリスク回避の動きから金融資本市場の変動が見られますが、我が国の経済の現況については、企業収益や雇用・所得環境の改善が続くなどファンダメンタルズは良好であり、その状況に変化があるとは認識しておりません。
 今後は、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種の政策の効果もあり、景気は緩やかな回復に向かうものと見込まれています。ただし、中国や世界経済の変動の影響を受けやすい資源国をはじめとする新興国の動向や、市場の動きを緊張感を持って注視していきたいと考えています。
 政府としては、デフレ脱却・経済再生を更に前進させていく。このため、平成27年度補正予算を迅速かつ着実に実施するとともに、平成28年度予算及び関連法案の一日も早い成立をお願いしてまいりたいと考えています。また、高い水準にある企業収益を賃金や設備投資に更に結びつけることで、経済の好循環を更に拡大していきたいと考えています。

2.質疑応答

(問)GDPの談話を発表いただきまして、今回、個人消費が落ち込んだことについて暖冬ということを御指摘されていますけれども、それにしては今回、個人消費の落ち込み幅が大きかったように思うのですが、本当に暖冬要因だけで説明できるのか、他の要因はないのか、大臣の御所見を伺えますでしょうか。
(答)御指摘のとおり個人消費がマイナス0.8、強めに出ているという認識は、私も同じです。
 今回の暖冬は、70年ぶりという話はしています。それ以外の要因について、クリスマスや年末商戦は実は好調で、百貨店で見ると前期比プラス2.6、外食はプラス0.5です。やはり暖冬の中で灯油や消費財が大きな原因になっている。いいものがないだけなのかと思ったのですが、暖冬というのは意外にきいているという印象を持っています。
 個人消費の動向ですが雇用と所得環境の改善は今も底流では全く変わっていません。実質の雇用者報酬は前期比でプラス0.2%、前年同期比で1.8%と、堅調な数字だと思います。また、有効求人倍率も1.27、消費者マインドも10月、11月、12月と、3カ月間連続で改善しており、力強さには欠けるものの底堅い動きと考えています。
 今後とも、消費の持ち直しに向けて、今回の春闘が重要だと思いますので、より力強い賃金の上昇の実現など様々な政策に取り組んでまいりたいと考えています。
(問)設備投資が結構伸びているのですけれども、これは大臣から御覧になって、マイナンバーの影響など、そういったものも見受けられるのでしょうか。
(答)設備投資は、中国の経済の減速というものを各企業が、一部ですけれども、判断に入れて、慎重な動きというのはあるのだと思うのですが、10月-12月期の設備投資は前期比で1.4%と、小幅ながら2期連続プラスとなっています。どんな設備投資かということですが、製造業では生産性を上げるための投資など。非製造業でも、これは東京ですが、オフィスビルへの投資が続いています。
 設備投資全体については、高い水準にある企業収益に比べて、改善テンポは、遅れが見られますが、おおむね横ばいの動きが続いていると認識しています。
 政府としては、引き続き官民対話などを活用しながら環境整備を進めますとともに、企業の積極的な投資を後押しする政策をつくって、確固たるものにしてまいりたい。このように認識をしています。
(問)特にマイナンバーが影響したというようなことは。
(答)マイナンバーについての分析は、まだ私のところに来ておりません。影響分析に時間がかかると思いますが、検討していきたいと考えています。
(問)今日は暦年の数字も発表になりまして、2015年の国内需要はほぼ横ばいだったということですが、これについてどう受け止めていらっしゃるのか。
(答)暦年について、これも数字が配付されておりますが、名目で2.5%、実質で0.4%。実質のほうは2年ぶりのプラスになりました。GDPデフレーターもプラス2%と、名目、実質、物価、いずれも上昇している。評価するときには、この3つを総合的に勘案するということが重要であると認識しています。
 今の御質問は国内ですが、海外の稼ぎを入れたらどうなるのかというと、GNIで見ると、実質ベースで前年比2.4%、名目ベースで3.0%。国内だけでは十分でないのかもしれませんが、海外からのリターンによりまして、デフレ脱却や経済再生に向けて、経済が着実に前進する姿が見えている。
 ですから、国内外全体の所得で見ると確固たるものがある。一方で、国内だけでは、まだその水準にはなっていないということなのだと思います。
(問)1月、2月も半分以上終わっておりますけれども、非常に株式市場も混乱しているところがあるのですが、今のところどのように考えていらっしゃるのかお聞かせいただけますか。
(答)私はエコノミストではないので、1-3月期の数字を手元で見て、これからどういう数字が顕在化してくるか。1-3月期の結果が出るのは5月です。ですから、その1-3月期の結果を見て、結果をどう捉えるかということは、お話をさせていただければと思っています。
(問)今回、輸出、輸入ともにマイナスである。しかも、その輸出は、インバウンドの消費を含めてもマイナスだということで、極めて物の動きやお金の動き、海外との動きが極めて低調だということです。最終的には、純輸出はプラスになっていますけれども、輸出入両方とも下がっているというのは、景気にとって極めていい兆候ではない、むしろ悪い兆候の現れではないかと思うのですが、この辺はどのように見ていらっしゃいますでしょうか。
(答)実数については、説明させていただいたとおりだと思います。ファンダメンタルズは、私は何も変わっていないと思っています。企業収益や雇用、所得環境の改善が続く中で、ファンダメンタルズが良好であるという認識を変える、変化していると認識する材料はないということです。
 それでは、どういうことが起こっているのかというと、やはり中国というのは、大きいのではないでしょうか。GDP世界第2位、1,300兆円。この後、上海のマーケットが開きますが、上海のマーケットが春節で1週間閉まっている。このマーケットの動向によっては、中国から何らかのメッセージがある可能性も否定できない。また、月末にはG20が上海で開かれる。
 それと、やはり資源国も非常に大きいのではないでしょうか。ベネズエラの例は既に報道されております。中国が、ある意味では機関車役を担っているわけですから、そこの景気に先行き不透明感が出ますと、資源の値段、油だけではなくて鉱物などの値段も下がっている。それが新興国の実体経済に様々な影響を及ぼしている。そういうことを考えますと、これからもそういうことを注意深く、緊張感を持って見ていくということが肝要なのではないか。
 そんな中で、間違いなく高い水準にある企業収益というものを、賃金、設備投資は2期連続プラスということになりましたが、更に結びつけていく。経済の好循環を拡大していくために、これからも政策を総動員していくということに尽きるのだと思います。
(問)修正した政府経済見通しですと、もともと1.5%だったものを1.2%に引き下げましたが、1.2%を達成するためにも、かなり1-3月期で成長率を確保しなければならないのですけれども、一般的に言うとかなり厳しい見通しなのではないかと思いますが、達成可能だとお考えになっていらっしゃるのか、現時点の御認識を教えてください。
(答)本日公表させていただきました、平成27年10-12月期のGDP1次速報の結果を踏まえますと、平成27年度の実質GDP成長率見込み、プラス1.2%を達成するためには、御質問にございましたとおり、1-3月期にかなりの成長が必要になると認識しています。
 政府としては、27年度の補正予算が迅速かつ着実に実施されることが、国内にとっては非常に意味のあることだと思いますし、28年度の本予算と関連法案が、この国会での充実した審議のうちに一日も早く成立するということは、非常に意味を持っているのだと認識しています。
 高い水準にある企業収益が2年連続で賃金には反映されています。設備投資も芽が出てきました。経団連の会長が2018年度には設備投資を80兆円という具体的な目標までお示ししていただいておりますし、春闘もこれからいよいよ進むわけですので、しっかりと賃上げをしていただいて、経済の好循環を更に拡大していくということに努めてまいりたいと思います。
 経済成長率については、外的な要因を含む今後の経済動向というものをしっかりと注視していきたいと考えています。
(問)先ほど大臣がおっしゃった上海サミット、上海のG20と、その後の参議院選挙の前には日本が主催している伊勢志摩サミットがあるのですけれども、世界的な経済の縮小を食いとめるために、何らかメッセージを発するようなことになるかもしれません。
 その中で、補正予算成立したばかりなのですけれども、さらなる経済対策が場合によっては必要なのではないかという声もあるかもしれませんが、大臣は、その辺についてはどのようにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
(答)27年度の補正予算が、いわゆる箇所付けも済んで実施に移るということは、GDPの底上げ効果としては非常に重要ですし、中小企業対策等々でもかなり重要な施策が入っています。こういうものをしっかりと実施していくということと、28年度の本予算を一日も早く成立させていただきたいというのが政府・与党の共通な考え方です。
(問)現時点では、追加の対策が必要ということではないということか。
(答)二階総務会長がお話しされていますとおり、現在審議されている、28年度予算の一日も早い成立をお願いし、その予算がこれから実施に移っていく27年度の補正予算と切れ目なく、政策として流れていくということが今は一番肝要なことではないかと考えています。
(問)今27年度の見通しというお話もありましたけれども、更に言えば、アベノミクスでGDP600兆円目指していて、そうすると名目で年3%、実質年2%という高い成長率が必要ですけれども、海外経済が不透明さを増す中で、そこは着実に達成できそうなのか。達成していくためには何をしていくべきなのか、改めてよろしくお願いいたします。
(答)企業収益を見ても、あるいは雇用環境を見ても、所得の環境を見ても、改善は間違いなく、この3年間続いているという認識は変えておりません。すなわち、日本のファンダメンタルズは良好であるという認識に変化はありません。
 そんな中で、もう一度振り返ってみますと、非伝統的な政策手法による大胆な金融緩和、これは成功したと思います。そして、10兆円の財政出動、これもきいています。そして成長戦略、70年間手をつけることのできなかった農協改革、あるいはこの4月1日から電力の小売自由化が始まります。私のところにも、いろいろなところから、あなたのところの電力パッケージはこういうものがいいですよ。ある電鉄会社からもきました。こんなことは今までなかった。岩盤規制にくさびが入ったのだと思います。
 そのほか、イノベーションでも、日本で2020年を目途に車の自動運転が実現できれば、GDPは世界第3位ですけれども、日本は産業面、テクノロジーにおいて、アメリカよりもすごいぞ、こういう話になってくる。成長戦略は、そのほかにも先端医療のところでいろいろなものが出ております。山中教授がノーベル賞を受賞された先端医療、再生医療が今現実に動き出しているわけです。また、そこが、一番規制があったことですけれども、心筋シートとかいろいろなものが前倒しで使えるようになっている。
 これは、2018年ごろに向けて進んでいますが、人工知能とか、様々なものを複合的につくり上げた予防医学というようなものは、これから非常に重要になってくるのではないでしょうか。人間ドックは世界中でも余り類を見ないという話を聞いています。そしてまた日本の先端医療のすばらしさというのは医療ツーリズムに代表されますように、アジアの方々からも高い評価をいただいている。
 1つの例を出しますと、私の家からすぐのところに心臓の特別な病院があります。渡邊先生といって有名なブラックジャックのモデルとも言われている先生ですが、その方が病院を開きまして、そこは外国のお客さんばかりです。手術の費用が他の国立病院などと比べて3分の1、正に日本の先端技術、医療の先進性みたいなものを東京の一部のまちから発している。
 こういうことで経済成長というものを確固たるものにしていく。経済再生なくして財政再建なしというのがアベノミクスの基本にございますので、施策を総動員して、これからも取り組ませていただきたいと考えております。
(問)先ほどから高い企業収益ということでしたけれども、足元は円高で輸出企業の業績悪化が懸念されていますし、実際の決算を見ても、かなり減速していると思います。
 それを受けて、先ほど大臣も消費回復の鍵は賃金というお話がありましたけれども、春闘でも、あるいはその要求も昨年を下回っていまして、そういう意味で賃上げが十分行われない懸念があると思うのですけれども、その辺をどうお考えでしょうか。
(答)賃上げは労使で決められることです。政府としては、せっかく大胆な金融政策、そして財政出動、経済の再生、成長戦略でデフレではない状況をつくり出したのですから、それを企業の経営者の方々が従業員の方に還元するというのは、経営者として正しい姿だと思いますので、政府としてもしっかりとバックアップをしていくということに尽きるのではないでしょうか。
(問)このままいった場合に来年の消費税増税、景気低迷の中で、更に大きな経済の打撃があると思うのですけれども、そういう懸念はどうでしょうか。
(答)なぜ消費税の10%への増税を延期したのか。御質問の趣旨にあるような内容も含まれていたと思います。今回は、総理が申されているようにリーマンショックや大地震など、そういうことがあれば、そのときに適宜適切に御判断される。社会保障を次の世代に伝えるためにも必要ですが、それでも社会保障費の財源は十分ではないわけです。平成11年に予算総則の中に消費税は社会保障3分野、今は4分野ですけれども、3分野に充当すると決めた。そして、三党合意によって国民の皆様方から御負担いただいたものはしっかりと社会保障の中に充当していくと決めた。竹下内閣で導入された時とは税の持つ性格というものが変わって、社会目的税化しているというところが日本の場合は他の先進国と、特にヨーロッパのインダイレクトタックスとは大きく違う。そういうことに国民の多くの方々の御理解をいただいているから今日の政権を担わせていただいているのだと思っております。

(以上)