河野内閣府特命担当大臣閣議後記者会見要旨 平成28年6月21日

(平成28年6月21日(火) 10:29~10:54  於:中央合同庁舎第8号館5階共用会議室B)

1.発言要旨


 おはようございます。私からはまず、4点でございます。
 北海道の帯広署の巡査2人が飲酒運転をしたあげく、事故を起こし、そのまま逃走を謀るという事件がございました。飲酒運転の危険性を国民の皆様に訴えている警察が自らこのような不祥事を起こしたことは、本当に示しのつかないことでございまして、誠に申しわけなく思っております。
 特に先般の木曜日、国家公安委員会の中でも、この警察官の飲酒事故、飲酒運転の事案というものは、きちんと指導をしてゼロにすべきという強い意見が出されて、議論になっていたばかりでございますし、これは北海道の飲酒運転根絶対策強化期間のさなかでもあるという中で、このようなことが起きたということは、極めて申しわけないことでございまして、誠に何と言っていいか、申しわけなく、おわびを申し上げたいと思います。
 北海道警はもとより、全国的に国民の皆様にきちんと見える形で、こうしたことを繰り返さないという決意を示さなければならないと思っておりますので、しっかりとした綱紀粛正並びに今後の対策を取れるよう、指導してまいりたいと思っております。
 活発な前線の影響で、九州地方では、数年に1度しかないような記録的な大雨になりまして、熊本県ほか、各地で土砂災害、浸水被害が発生をしております。土砂崩れにより亡くなられた方もいらっしゃいますし、また行方不明の方もまだいらっしゃるという情報が上がってきております。亡くなられた方々に御冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された方々にお見舞いを申し上げたいと思います。
 今日この記者会見の後、関係省庁災害対策会議を開催して、今後の気象状況や被害状況を各省庁間で共有し、これ以上の被害が出ないような対策を講ずるよう、万全の態勢を取ってまいりたいと思っております。
 大気の非常に不安定な状況は、この後も続き、西日本では昼ごろにかけて、関東や東海などでは、これから夕方にかけて、非常に激しい雨が降る見込みでございます。引き続き、河川の増水や氾濫、土砂災害に対して、厳重に警戒をしていただきたいと思います。
 また、各自治体には、早目の避難勧告、避難指示を出していただきますようお願いするとともに、住民の皆様には政府、自治体からの情報を注視し、安全確保に努めていただきたいと思っております。
 自治体には、空振りを恐れず、避難勧告、避難指示をしっかり出していただきたいと思いますし、また、住民の皆様にはしっかりとした態勢を取っていただきたいと思っております。
 本日の閣議におきまして、特定非常災害法の政令改正が閣議決定されました。熊本地震に係る特定非常災害の適用は、4月28日に行いましたが、今回、熊本地震の被災者などが民事調停の申立てをする場合の手数料を免除するという特例を追加することといたしました。災害に起因する民事紛争の円滑かつ迅速な解決に資するものと考えております。6月24日に公布・施行ということになります。
 具体的には、地震により経営状態が悪化したことを理由とする債務整理に関する紛争ですとか、地震により不明確となった土地所有権の範囲をめぐる紛争、あるいは地震により終了した賃貸借契約の敷金返還などに関する紛争などが、こうした民事調停の対象となるかと思います。
 申立ての免除される手数料は、1千万円の場合で2万5,000円、1億円の場合で13万3,000円というふうになっております。少しこの特例の追加、4月28日に他のものが行われて、少し時間的にずれましたが、裁判所等との協議を行ったためでございます。
 最後に本題というわけではございませんが、昨年の12月以来、内閣府防災で立ち上げて検討してまいりました、「防災4.0」未来構想プロジェクトにつきまして、有識者委員からの提言がまとまりましたので、公表をしたいと思います。
 お手元に概要版の資料、お配りをしていると思いますが、1ページ目を見ていただきますと、今回、地球温暖化による気候変動に伴って、風水害の激甚化というのが、昨晩から今日にかけての雨を見ていただいてもお分かりのとおり、これまでの50年に1度とか100年に1度という尺度がどうも成り立たなくなってきている。かなり頻繁に、かつてそう言っていた風水害が起こるようになってまいりました。これまでの想定を超える災害への備えが必要であるということを、改めて認識をするに至り、災害発生時にその全てを公助で対応するということには限界がある。国民一人一人がこの災害のリスクに向き合って、国民自らが主体となって、この災害に対応していただく必要があるという問題意識からでございます。
 委員の皆様から、地域あるいはそれぞれの御家族といったものを中心とする、国民視点での取組、それから企業視点での取組、さらには最新の情報通信技術を防災分野にいかに活用していくかといったことを中心に多岐に渡る御提言を頂きました。
 2枚目を見ていただきますと、今後の取組でございますが、1つは、例えば住民、地域の目線ということでは、住民に参加をしていただくモデル事業としての防災会議。あるいは企業にとって、経済的な備え、リスクファイナンスに関する検討の実施。あるいは情報通信技術を使った、防災・減災に使える技術を広く募集するためのコンテストといったことをやってまいりたいと思っておりまして、まず、次のページ見ていただきますと、「防災4.0」は、災害への対応を「自分ごと」として捉えてほしいということを提起していきたいと思っております。
 静岡県の浜松市をモデルとして、まず実践の場としての取組をモデルとしてやってみようということで、浜松市で実践を行いたいと思っております。浜松市は南海トラフをはじめとする、地震の対象地域でもあり、津波の恐れもありますし、天竜川の水害、そういったものも予想されるという、海から山まで様々な災害が起こり得る場所でございます。そうした浜松市で、まず無作為により市民の皆さんを抽出し、そこで抽出された住民の皆様による「住民協議会」を設け、防災について住民の皆さん自らに、様々な検討をする機会を設けて、そこで様々な手法を検証して、全国展開をしていきたいと思っております。
 それから、もう1枚めくっていただきまして、災害発生時の企業の事業継続に当たっての、例えば資金面の確保をどうするか。今回のこの「(防災)4.0」の提言を受けて、「激甚化する大規模自然災害に係る事業者のリスクファイナンス検討会」を設置をして、リスクファイナンスの現状と課題、事業者の大規模災害リスクに対する意識の醸成、及びリスクファイナンスの普及方法について議論をしてまいりたいと思っております。
 これは、企業の言わば事業継続のためのリスクファイナンスでございますので、これまで私がここで申し上げてまいりました、自然災害のときに住む家を失った方の保険的なもの、これは個人が対象ですので、それはまた別途検討するということで、ここは事業者のリスクファイナンスでございます。
 それから、最後のページを見ていただきますと、最近の非常に発達している情報通信技術(ICT技術)を防災分野へもっともっとこれは活用していかなければならないし、活用できると思っております。民間の創意工夫による新たなサービスの提供をどう図っていくかということで、民間企業あるいは一般の方の創意工夫を生かしたアイデアを競う「防災減災アイデアコンテスト」というものを実施していきたいと思っております。例えば、熊本地震のときに車中泊の方、あるいは指定避難所以外に避難している方をどう認識をするか、あるいはそういう方々のニーズをどう吸い上げていくか、様々な課題が明確になりましたので、例えばそういうことに、このICT技術を使ってどう対応することができるかといったようなウエブアプリの提案を求めていきたいと思っております。
 こうしたことを、この「防災4.0」未来構想プロジェクトを通じて提言されたことに対して、こうした3つの取組をやっていきたいと思っております。その結果、社会全体で災害リスクと向き合うことができる、「防災4.0」時代を一刻も早く実現をしてまいりたいと思っているところでございます。
 私の方からは以上4点でございます。少し長くなりました。申し訳ございません。

2.質疑応答

(問)NHKの藤島です。
 「防災4.0」の関係なのですが、提言の内容を見ると、これまでいろんなワーキンググループが開かれる中で指摘されてきたことというのが、改めて整理されているなという印象を持ちました。結局、そういうものを、どうやってちゃんと定着させて、しっかりやってもらうかということが最大の課題で一番難しいところだと思うのですけれども、どのようにこれを定着させていくのかという点。それから、定着させるためには、どんなことが必要だと大臣はお考えになっていますでしょうか。
(答)一番大事なのは、気候変動で風水害が激しくなっているということを、まず国民の皆様に認識をしていただいて、というのは、今回も甲佐町をはじめ、史上最も多い雨が降った地点というのが数か所ございました。雨が強くなってきたということは、多くの方が肌で感じていらっしゃると思いますので、まず、気候変動の影響が大きく出ている。今までの50年に1度、100年に1度というのが、もっと頻繁に起こるということをまず認識をしていただいた上で、そういう災害にしっかりと、個人個人で向き合っていただく必要がありますねということを、分かっていただきたいと思います。
 特に、風水害ではありませんが、今回の熊本の地震でも、プッシュ型の支援をやりましたが、やはり物資がきちんと避難されている方のお手元に届くには、数日間かかっているわけですし、首都直下地震の国の計画を見ても、最初の3日間は物資は届かないという前提で計画を作っているわけですから、お一人お一人が最低でも3日間分の水・食料、簡易トイレなど、必要物資を備えていただくということは大切だと思います。
 そうした現実をしっかり認識をしていただいて、その上で、まず浜松市で地域住民協議会をやりますが、地域で、あるいは職場で、いろいろなコミュニティーで、それでは災害が起きたときにどう対応するのか、そのためにどういう準備が必要かというのをやはり考えていただくということが大事だと思います。
 行政が後ろへ下がるということは全くありませんけれども、これだけの災害が予測されている中で、行政ができること、特に災害が起きた直後に行政ができることというのは限られておりますので、やはりその場にいる地域の皆さん、職場の皆さんがいかに助け合って、いかに対応していくかということが、大事だと思っております。
 そして、今まで企業の対応というのが、どちらかというと後ろに置かれていて、避難所をどうしようとか救命・救急をどうしようとかいうことをやってまいりましたが、リーマンショックなど、いろいろな事象と比べても、自然災害による影響が、企業規模が小さくなればなるほど、むしろ経済的な変動よりも災害の方がもたらす影響が大きいということが、だんだん分かってきておりますので、その一つ一つの企業が、中小企業を含め、いざというときにどう備えていくかというのは非常に大事なことだと思います。そういうことをしっかりとお伝えして、リスクファイナンスの手法を普及していくということは、やっていきたいと思います。
 ですから、今まではどちらかというと、防災1.0から3.0は行政が何をやるか、行政に欠けているのは何か、どういう法律を作るのかということが主眼でしたが、「(防災)4.0」はむしろ行政は行政でやることはやりますが、災害は皆さんがまず対応していただかなければだめなのですと、皆さんに何ができるか、皆さんに何をやっていただかなければいけないかということをきちんと伝えて、皆さんに対応をいかにとっていただくかということを積極的に、皆さんと向き合って、お伝えしていきたいと思っています。
(問)そういう意識を持っていただくというのは大事だと、僕らもふだん報道しているのですけれども、それを考える機会ですとか、チャンスというのが、日々生活をしていると、なかなかないのかなと思うこともあります。
 そういう場をつくっていくとかいうことはお考えですか。
(答)今度の住民協議会が、実はそのスタートになったらいいなと思っておりまして、こういうやり方をそれぞれの地域の展開をしてほしいという成功例をまずつくっていきたいと思っております。
 これまでも「防災4.0」の中で、荒川区ですとかいろいろなところへお邪魔をして、それぞれの住民の皆さんが防災計画を議論している場に私もお邪魔をしてまいりましたけれども、そういうそれぞれの小さな地域の防災計画というのを作っていただいて、それがまた自治体の計画の中に反映できることになっておりますので、その一歩を浜松でしっかりと成功例として取り上げて周知していきたいと思っております。
(問)産経新聞の市岡ですけれども、大臣は従前より備蓄と保険ということで、金融的手法について強調されていたところではあるのですけれども、今回、企業向けのリスクファイナンスというものを検討していくに当たっての、その位置付けについてお伺いしたいのと、もう一つは、金融的手法に重きを置かれる理由について御説明いただければ有り難いです。
(答)災害の企業に与える影響というのがやはり非常に大きいということを、まず認識をしていただきたいと思っております。リーマンショックのような、経済的な大きな波を皆さんくぐってこられたと思うのですが、リーマンショック、東日本大震災、様々な波を見てみると、やはり企業の規模が小さくなると自然災害の影響がより大きく出てくるという現実がどうもあるようでございます。それに対する備えというのをしっかりやっていただかなければならないなと。
 今回の熊本もグループ補助金のような公的な支援もやっておりますが、それだけで十分かというと、なかなかそうではありません。やはり、いつ来るか、来るかもしれないとは思っているけれども、なかなか自然災害に対して備えるところまでいっていない企業というのが多いと思いますので、今回少し背中を後ろから押してあげるというようなことになるのかもしれませんが、いざというときのことを考えてくださいというつもりでございます。
 それともう一つ、日本というのは、いろいろな国を見ても、地震、台風、風水害、自然災害の確率の高いところです。このリスクファイナンスをしっかりやるということは、むしろこのリスクを、ファイナンスを通じて世界中に広く薄く取ってもらうことにもなるのかなと。ファイナンス的にリスクが世界中に分散されるということにもつながっていくのかもしれません。
 そういうことまで含め、検討会を立ち上げて、どういう手法があって、どういう手法が我が国では有効なのか、それを広めていくために、政府としてどういうことをやったらいいのか、あるいは民間の企業の皆様には何を考えてもらったらいいのかということを少ししっかり検討していただいて、なるべく早く結論を出していきたいと思っております。
(問)読売新聞ですけれども、この住民協議会というのは何人規模ぐらいを想定されていらっしゃるのかというのと、あと、目的というのは先程おっしゃいましたように、住民の防災意識の向上と、あとは地域防災計画を修正していくようなところと考えていいのかというところ、あと、どのぐらいまでに全国展開したいとか、そういった今後の展望というのをお伺いしたいのですが。
(答)浜松市とそこはしっかり意見交換していきたいと思っておりますが、無作為で抽出するということは、ふだん防災のことを考えていないような方にも入っていただきたい。防災の協議会をやりますと言って集まってくれる人というのは非常に意識の高い方ですので、そうではなくて、「えっ」とふだん思っている、防災のことなんか考えたことないよという方も是非参加してくださいという形で無作為で住民を選んで、そこで少し災害についての備えということを考えてくださいということをやっていきたいと思っておりますので、規模感、その他はこれから浜松市としっかり相談をしていきたいと思っています。
 無作為でまず抽出しますので、全員がやると言ってくださるというわけにもいかないと思います。どのぐらいの方が抽出された後、やりましょうと言ってくださるかということもあると思いますので、そこは少し考えていきたいと思っております。
 こういうやり方をやってみたらこんな結果でしたということを、しっかりとお伝えをして、是非それぞれの地域で防災について、いろいろな手法で考えてくださいということは、そこからお伝えをしたいと思っておりますので、できるだけ、多くの自治体、あるいは多くの地域で、そういう動きが広まっていくようにしたいと思っております。
 今年の夏には防災の国民大会のようなものも開催しますので、いろいろな意味で、お一人お一人が自分の地域でも災害が起こる可能性がある、備えはできているかということを考えていただけるような投げかけを積極的にこれからやっていきたいと思います。

(以上)