石破内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成28年6月10日

(平成28年6月10日(金) 8:31~8:53  於:中央合同庁舎第8号館1階S106会見室)

1.発言要旨


 おはようございます。本日、第2回の「地域働き方改革支援チーム」を開催いたします。これは各地域の働き方改革に向けた取組を支援するということが目的でありまして、専門家及び関係府省からなります「地域働き方改革支援チーム」の第2回目の会合ということに相なります。配付資料にメンバーが記載をしてございます。6月2日に閣議決定いたしました「まち・ひと・しごと創生基本方針2016」におきまして先駆的な取組例を示し、その普及を図ることなどを盛り込んだところでありますが、この支援チームはその実行部隊の位置付けをなすものであります。
 本日の会合におきましては、この取組例を提示をし、出席の皆様方に御議論いただくということを予定しておるものであります。今後、各地域に対して積極的に普及を図りたいと考えております。
 もう一点、6月13日、今度の月曜日より金沢大学におきまして、第1学年約1,000名を対象としたRESASを活用した全8回の授業が開講されるものであります。今学期、前期ということでしょうが、RESASの基本的な操作方法について学ぶ基礎編のみを開講いたしますけれども、10月から始まります後期におきましては、基礎編で学んだ内容を生かして実際に自治体を分析し、政策アイデアの提案まで行う発展編も開講されるものであります。
 使用する教材・カリキュラムは、他の教育機関でも使用していただけるよう、今年の秋、WEBサイト上で提供を開始するということでありまして、今回の開講いたします授業につきましては、定員を大幅に超える受講希望があったということを聞いておるところであります。是非取材をいただければ有り難いというふうに思っております。
 これは昨年、全国の高校や大学を対象としてRESASを使って地域について学んでいただく出前講座を実施したものでありますが、この中で金沢大学に参りました際、平成28年度より共通教育科目を刷新するに当たり、是非ともRESASについて学び活用する授業を開講したいというお話を頂いたものであります。
 当方といたしましてもRESASについて体系立てた学習が出来る教材・カリキュラムを教育機関に対して提供することを検討しておりましたので、今回の連携に至ったということであります。
 あちらこちらでこういう取組が実際に動き出したということは、大勢の方々の御努力によるものであって、大変に有り難いことだと思っております。
 以上です。

2.質疑応答

(問)創生基本方針にも書いてありますけれども、ローカルイノベーションの実現に向けた取組についてお尋ねします。
 中小企業の海外展開を支援する専門家組織として「グローバル・ネットワーク協議会」というのが昨日発足しました。国際的な市場で活躍する投資家ですとか企業の創業者など、そうそうたるメンバーが顔をそろえているわけですけれども、この協議会に期待すること、どんなことを期待されるのかお願いします。
(答)昨日の早朝でありますが、これはシリコンバレーとテレビ電話でつなぐ関係上、昨日の早朝になったというふうに聞いております。伊藤補佐官が出席をして、経産省においてこの「グローバル・ネットワーク協議会」の発足式を行ったところであります。
 今年2月に金沢で第3回の「地域しごと創生会議」をやりましたが、私から地域企業によるグローバル展開、つまりいろんな技術はあるんだけど、これをどうやって世界に売ったらいいかというのがある。あるいは、それがどれほど世界に需要のあるものなのかというのが、作ってみたはいいけれど、どこにどのように売ったらいいのかということがなかなかよく分からないというのがたくさんあるだろうというふうに思っております。
 したがいまして、産業と学官金―学問そして行政・官庁、金融機関―の連携によって先導的なプロジェクトを毎年200程度を目安に5年間で1,000支援していくということを今年2月に金沢での第3回の「地域しごと創生会議」で申し上げたものでございます。
 そういうような取組も、声だけ上げていてもしようもないので、そういうことをやってくれる組織というものが必要だろうということで、そういう方面に通暁(つうぎょう)された方、実際にそういうビジネスに携わり、そういうようなことで業績を上げてこられた方々、人数的に25名というふうに聞いておりますが、そういう方々をコーディネーターとしてここに参画をしていただくと。地域200のプロジェクトについて、先ほど申し上げたような、どのようにして事業展開するか、世界に売るかということをサポートするべく、7月を目途にそういうことを始めたいということで発足をしたものでございます。
 これは先般決定した「まち・ひと・しごと創生基本方針2016」に基づくものでありまして、私が着任以来、全国あちらこちら歩いてみて、これはすごいねという技術は幾つも拝見いたしました。そういうところに対して、この協議会のメンバーの方々がそれをサポートし、コーディネートし、それを世界に向けて展開をしていくということを加速度的に具体化したいというふうに思っておるところでございまして、そういう意味で、昨日の発足というのは大変意味のあるものだというふうに私自身承知をいたしておるところでございます。
(問)一昨日、京都府知事が文化庁の移転早期実現ということで要望に行かれたと思うんですけれども、知事はその時期について東京五輪までには実現してほしいということを記者団に要請を語られたんですけれども、大臣の認識としてはやはりそういう日程感というのはあるんでしょうか。
(答)このときまでにということを決定したということはございません。もちろん早い方が良いわけですけれども、拙速は避けるべきということもまた一方において事実であります。京都として受け入れるに当たり、もちろん国の機関が移転するわけですから、基本的には国の財源でやるべきものですが、京都財界、そういう方々、あるいは京都府、京都市、そういうところから自発的にサポートするということをもちろん妨げるものではない、むしろ歓迎するところであります。財政的にどういうことなのか、そして、そこへ移った場合に職員が喜んでいくということでなければいけないのであって、東京から離れるのか、嫌だなというような思いを持たせないということは極めて重要なことで、そうするとお父さんだけ単身で行きましたということよりは、家族皆さんで行っていただき、京都の市民になってということが大事であります。
 かてて加えて、単に移動するだけではなくて、そこに移動して、どのように新しい文化行政並びに文化財行政を展開をしていくのかということについても、単に省庁の地方移転だと。これをもって民間の本社機能の移転を慫慂 (しょうよう)するのだなどということだけではなくて、中身の問題ですから、その中身を詰めて、それが詰められれば早いに越したことはないということでございます。ですから、オリンピックということが論理的連関性を持つかどうかは分かりませんけれど、日本が変わっていくということを示す一つの事例にはなると思っておりますので、オリンピックというものを念頭には置きますが、そのときまでにという具体的なスケジュールは今あるわけではございません。
(問)あと地方創生の推進交付金についても同じように要望があって、対象事業の拡大ということで強く求められたと思うんですが、これについてはどういうふうに考えていらっしゃるでしょうか。
(答)対象事業の拡大というのが何を指しているのか、基本的にこの交付金はいろんな、例えば経産省なら経産省、農水省なら農水省、厚労省なら厚労省のメニューに載っていれば、それでやってもらえば良いわけです。そういう国の既存のメニューにはないけれど、こういうことをやってみたい。あるいは、こういうこととこういうことをつなぎ合わせてプラスアルファの形で相乗効果を図りたいとか、そういうことを対象としているので、メニューの拡大ということが何を指しているのか。例えばこれで公共事業をやりたいとかそういうお話をされても、それは違うセクションの話でしょうということになります。あるいは、単に現金を給付をするというような、例えば私の町に来てくれたらば幾ら差し上げますよとか、私の町で就業してくれたら幾ら払いますよというような、実に現物・現金給付型のものを認めろと言われますと、それは確かに良いことかもしれないが、そうすると全国全ての自治体が、うちに来てくれたら100万円とかということを始められるというのは、少し地方創生の趣旨とは異なるのではないか。それは独自の財源をもって、それぞれの自治体でやっていただくべき筋合いのものではないだろうかというふうに思っております。
 ですから、メニューの拡大というのは何を指しているのか、それがこの地方創生の趣旨というものに合致をするものなのか何なのか、それはよく精査をする必要があるだろうと思っておって、仮にハード事業を全部認めよとか、あるいは現金給付型のものを認めよとかいうのをメニューの拡大と言われると、少し趣旨と違うような気が私自身はいたしております。地方にそういうようなニーズがあることはよく承知をいたしております。
(問)参議院選挙に関連してお伺いいたします。大臣が取り組まれている地方創生についても国民の評価が出されると思いますけれども、現状取り組まれている地方創生について大臣自身は今どういう状況にあって、国民のどういう評価を期待されるものか教えていただけますでしょうか。
(答)これは毎回同じフレーズを使って恐縮ですが、点はまだ面にはなっていないと。しかし、その点は確実に密になりつつあるというふうに私は認識しておるところでございます。昨日も北海道のある町長がお見えになりましたが、本当にこの事業を使って町を発展させていく。こういうこともやりたい、ああいうこともやりたいという構想をお話しになって、その地方創生の事業と特区の事業というものが、これは一体として考えられるべきものであって、特区を使って、そして交付金を中心とした地方創生事業を使って、こういうふうに町を変えたいんだというようなお話を非常に熱心になさいました。
 昨日、一昨日あたり、そういう全国の自治体の会合が東京であったこともその原因だと思いますが、多くの市町村長が大臣室においでになりますけれど、これやってみたい、あれやってみたいというのが随分と増えてきたなというふうに思っております。地方をずっと回っておっても、これ、すごいよねという気付きというか驚きというか、それの頻度が間違いなく上がってきたという感じを私は持っております。かつてであれば、5か所視察すれば、そういう、これすごいよねというのが一つか二つだったのが、それが三つ、四つになってきたような気がしております。
 要は地方創生というのは、戦後連綿と続いてきた公共事業とか企業誘致というものをコアといたします地方の振興というものを別なやり方に変えていくものなので、それが一朝一夕にがらっと変わったというようなことはそもそもございません。その地域の自治体の長であり、あるいは職員であり、あるいは議会であり、地域の方々でありというのが、こういうことなんだというふうに気付いていただいて変わっていく。それが地方創生なのだと思います。
 それから、夕べも九州大学出身の方々のグループと地方創生について随分お話をしたんですけれど、そういうことなんですねという反応がありました。やはり地方創生とはどういうことなのか、今までの地域・地方発展策と何が違うのかということが全国に広がるまで、もう少し努力が必要だと思っておって、地方創生とはこういうことなんだと、福岡においても九州においても、いろんな事例がございます。その点を密にし、面になるということを今度の参議院選挙で、抽象、漠たることを語っても仕方がないので、例えば大分県の佐伯市に行けば佐伯市でどういうことがあるんだと。あるいは別府市に行けば別府市でどういうことがあるんだと。福岡県の久留米市に行けば久留米市でどういうことがあるんだと。抽象、漠たることから地方創生が計画段階から実行段階に入ったというのは正しくそういうことで、参議院選挙は国政選挙ではございますが、それぞれの地域において地方創生とは何なのだということを、それぞれの地域の主権者の方々に訴え、それを主導する私どもの政権に対しての御支持を頂きたいということだと理解をいたしておりまして、抽象漠然たる話からより個別具体的なお話を訴えるということに私は重要性を感じておるところでございます。
(問)ありがとうございます。それに関連して一つだけ。
 大臣は地方創生に関連して東京一極集中の是正を掲げていらっしゃいますけれども、実際のデータとしてはまだ東京への人口の流入は増加している状況です。これについてはどういうふうにお考えでしょうか。
(答)これは国会で累次答弁もいたしておりますが、東京に人口が集中する原因は何なのだということは、それだけではありませんけれど、18歳のときと22歳のときに人口集中が起こるわけです。例えば秋田なら秋田、佐賀なら佐賀で、高校生で大学進学希望の方々がいらっしゃる。それが地元ではそれを受け入れるだけのキャパシティーを持ちませんので、当然外へ出る。それを受け入れるのが、例えば佐賀で言えば、九州大学というのもあるでしょうし、九州の他の大学もあるでしょうけれども、そういう受入れのキャパを一番有しているのは東京でございますから、18歳で人口移動が起こると。
 もう一つは、それで移動した人たちが地方へ帰らないで東京にとどまるのみならず、他の地方の大学を卒業された方々が東京で就職すると、この2回の山があるわけでございます。
 ですから、人口集中の原因はそこが一番多いと。それが1年や2年で解決するということは構造的にあり得ないことでございます。東京一極集中の正体はこれなのだということが明確になっておるわけで、だとするならば、地方において大学の定員を増やすとか、そんなことは簡単に出来るはずはない。だから、そこにおいて地方において学ぶということをどれだけ可能性として広げることが出来るかということがございましょう。
 もう一つは、東京で就学した人たちが、その学問を終えて地方に帰るときに、これも記者会見で申し上げておりますように、地方創生インターンシップというのをスタートさせようと思っております。これはそれぞれの地元の経済界、あるいは行政の協力なくして出来ることではありませんが、広島なら広島、岡山なら岡山で、うちにこんな企業があると。これは就業条件かくのごとしとか、給与体系かくのごとしとか、そういうことを東京の学生さんにきちんと知らせるのみならず、インターンシップでもほとんどが東京とか大阪とかそういうところで行われているのであって、地方の企業でインターンシップをしたという話を私は寡聞にして存じません。そういうものを単位として認定するということも今、具体的に検討しておるわけでありますが、そこにおいて、そういう機会を作る。地方の企業に就職するという、そういうことを更に推進していきたいし、それに奨学金を組み合わせてやっていくということは相当の可能性を持つものではないだろうか。
 さらに、まだ50代、60代の元気なうちから地方に移住をし、コミュニティを作り、そこに新しい産業を創出するというようなCCRCの取組は、まだ具体化しておりません。法律がやっと通ったところであって、今、そういうような体制を作るべく、この間も山梨県に行ったときに都留市の例を聞きましたが、それがこれから具体化し始める。あるいは、インターネットを使って富山県の幾つかの例を、地方でインターネットを使って仕事をすることによって、地方で仕事ができるということはこれから、今、だんだん広がりつつありますけれど、これが本当に東京への人口集中を止める、そういうことの役割は更に期待をされるところであって、そういうことが一つ一つ具体化していくことによって、初めて人口集中は止まるのだということだと思っています。
 今まで東京に人口が集中して困ったなと。地方から人が出ていって困ったなと。さてどうしようかということが、その疑問のままで、問題意識のままで終わっていたのが、具体的にこれをこうするのだということが明確になってきた。これから実際に東京への人口集中が止まり、そして地方への回帰が始まっていくということが確実に形になっていくように更に努力をすることが必要だと思っております。

(以上)