石破内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成28年3月11日

(平成28年3月11日(金) 9:01~9:18  於:中央合同庁舎第8号館1階S106会見室)

1.発言要旨


 おはようございます。
 本日の閣議におきまして、「国家戦略特別区域法の一部を改正する法律案」及び「第6次地方分権一括法案」―正式には「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」というのでありますが―を決定したところであります。
 特区改正法案は今月末までを期限とする集中取組期間の集大成として、「企業の農地取得の特例(農地法の特例)」や「過疎地等での自家用自動車の活用拡大(道路運送法の特例)」など農業の競争力強化や観光客を含めた外国人の受入れ、医療イノベーションの推進に関わる7項目の規制緩和事項を盛り込んだものであります。
 第6次地方分権一括法案は、昨年12月に閣議決定した「平成27年の地方からの提案等に関する対応方針」を踏まえ、地方版ハローワークの創設をはじめ15法律について所要の改正を行うものであります。
 両法案とも今国会において御審議を賜りまして、速やかに成立をさせていただきたいと、かように考えている次第であります。
 本日12時より8号館8階特別大会議室におきまして、「生涯活躍のまち形成支援チーム」―いわゆる日本版CCRCでありますが―第1回会合を開催いたします。これは、まち・ひと・しごと創生総合戦略に基づきまして関係府省が連携し、地方公共団体の「生涯活躍のまち」構想に関する事業の具体化に向けた取組の支援を通じ、事業の普及、横展開を図るために設置するものであります。この構想の実現に向けました地方公共団体の取組が一層円滑に進められるよう議論を進めるということであります。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)これまでも度々お聞きしたことで恐縮なんですけれども、二つの法案が閣議決定されたということで、今、内容の御説明をいただきましたけれども、この法案を成立させることの意義というか重要さというのは大臣、どの当たりを感じていらっしゃるでしょう。
(答)特区改正法案につきましては、これは今まで随分と議論もありました。かなり根源的な、哲学的なといっても良いのかもしれないが、企業の農地取得の特例についてであります。これはあくまで特区ではありますが、今までそのようなことは認められないのだという御議論も随分ございました。ここは多くの方々にいろいろな御議論もいただき、このような取組というものを行うということについて、いろんな方面からの検討を加えた上で、このようなものになっているものであります。
 あるいは、道路運送法の特例もどのようにして過疎地において、つまり過疎地においても農業においてもそうなのですけれども、非常に情勢が変わっている。急変というか激変というか、と言っても良い状況だと思っております。農地はどんどん荒廃をしていくわけで、担い手というのはどんどん減っていくわけで、あるいは過疎化もものすごく進んでおって、公共交通の利便性というものも非常に低下をしているものであります。
 そうすると、特例を認めることの意義というのは、すなわち時代の変化に対応出来るかどうかという意味合いを持ったものだと思っておりまして、それを実証してみたいというふうに思うものであります。
 地方版ハローワークも、これも何年議論してきたものです。ILO条約に抵触をするとか、これまた労使ともに団体の方は望んでいないとか、いろんな話があって前に進まなかったものでありますが、それが実際に職を求める人、求職・求人、職を求める人も働く人を求める側もどちらにとっても良いものなのかという視点が、私からすると少し希薄であったのかなという気がいたしております。それもこういう形で法案というものになっているわけでありまして、国会を通じましていろんな議論が交わされて、このことの意義というものが広く理解をされ、そして、この時代の激変に我が国が対応出来るようになれば良いなというふうに思っておるところでございます。
(問)東日本大震災から5年になります。地域ではこの5年が節目なんですけれども、この節目が終わると更に風化が進んでしまうのではないかという懸念もあるようです。大臣、まずこの5年の受け止めと、この5年後、政治家としてどのように津波や原発事故の被災地へ関わっていかれようと思われますでしょうか。
(答)あの日のことは、もう忘れようと思っても忘れられない。それぞれ皆様方にとっての3.11というのをお持ちだと思います。私はあのとき、野党自民党の政調会長をいたしておりましたが、ちょうどあの日は名古屋にいたんです。名古屋の市会議員選挙をやっていまして、金曜日でしたが最終日の1日前ということで早くからあちらこちらで演説をしておって、2時40何分でしたかしら、ものすごく揺れたのですが、経験したことのない揺れでした。私は阪神淡路大震災のときはたまたま鳥取県にいたのですが、そのときよりも揺れたなという感じがありました。何が起こったかよく分からない、実際そうであったと思います。その次の予定は新潟県でしたから、セントレア空港に行ったところで何が起こっているのかということ、もちろん正確に把握をしたわけではないがとんでもないことが起こっているということで、一応新潟県までは行ったんですが急遽東京に帰ることとしました。何とか伊丹まで飛び、その夜は大阪に泊まったのですが東京といろんな連絡をとり、翌日の3月12日朝一番の飛行機で羽田に来て、そのまま党本部に行って、朝の8時過ぎだったと思いますが、そのときから谷垣総裁の下で、とにかく緊急に何をするんだという議論を始めて、あの後一月ぐらいはほとんど不眠不休であったという記憶があります。
 まず、復興庁というものを作らねばならないと。そして、何よりも対策基本法というものを作らねばならないということで、当時の菅官邸と1日何度も何度もやり取りをした。復興基本法を書き、そして、復興庁を作る、また設置法案を書き、また被災地とも何度も往復し、自民党の駐車場というのは物資を運ぶトラックが随分停まり、議員がそれに乗って被災地に行くということもずっと数カ月続けたものであります。
 私も1か月半後ぐらいには、女川の避難所というのに1晩泊まって、実際に被災地の方々といろんな話をさせていただきました。要は災害の発生というのは不可避のものであって、そのときにどういう法律で対応し、どういう組織で対応し、そして、どういうような資金で、これは増税という議論もあったし、あるいは長期の国債という議論もあったし、要は法律を書き、組織を作り、そして復興に必要な資金というものを調達をしということが基本なのですが、やはりそこにおけるスピード感というものがもっとあったら良かったのになという感じは持っております。
 もちろん今回の災害は大津波、そして原発事故という、これまた悲惨な災害でありましたが、阪神淡路大震災とは全く違う形での災害であったわけで、そういうことに対する備えというか、安全神話みたいなものにかなりとらわれていたところがあって十分ではなかったという反省は、当時から今に至るまで持っておるところであります。
 風評被害と風化という二つの風という表現を使うんだそうでありますが、そういうものにどう対応していくのか。修学旅行が減ってしまった、お客様が減ってしまったということで、これは風評被害に近いものかもしれませんが、それにどう対応するのか。風化というのはやはり常に常に意識的にリマインドしていかなければいけないものだと思っています、やはり人間、つらくて悲しくて苦しいことは忘れたいという心理的な要因がございますので、それは自らリマインドしていかねばならないものです。
 実際、今、避難したところで新しい生活が定着をしている、しかし、そこで帰還出来るようになった、そこにおいて心理的ないろんな葛藤もあるんだろうと思います。ですから、我々が被災者は今、何を考えておられるのだろうか、どうすれば被災者の方々の気持ちを理解した上で―理解って決して上からの目線で言っているつもりはないのですが―いろんな対策をするのかということを常に考えねばならないことであります。
 原発については、世界で一番安全で安心だという基準というものをきちんと遵守をしながら、東海村の事故があったときに梶山静六先生が、自分は原発を推進してきたけれども、安全神話に浸かっていなかっただろうかと、ものすごく示唆に富んだ論文を書かれたのですが、当時の私たちはそれを余り真剣に受け止めることがなかったということについての反省も強く持っておるところであります。ですから、災害は必ず来るわけで、それに対して本当に今度はどれだけスピーディーに、適切に対応出来るかということを考えるとともに、今もこの時点でも、つらい、苦しい思いをしている人たちの心情というものをどれだけ正確に私どもが把握して対応するかということだと思っております。
(問)先の、先日の衆議院の地方創生特別委員会での議論で、地方版総合戦略に関連して、シンクタンクに丸投げをしたという自治体が40以上あるというような一部の報道が引合いに出されて質疑が行われたわけですけれども、この実態について政府としては、どのような把握をされているんでしょうか。
(答)先般の委員会におきまして、今、御指摘のような、これは町村ではなくて市を対象に日経グローカルという雑誌がアンケートをされたということであります。そこにおいて、回答があった770団体、市のうちのほとんどだと思いますが、770団体のうちで6%に当たる48団体が地方版総合戦略の策定業務を全て委託したというふうにお答えになったということで、私はかなり驚いたのであります。これは事実であるとすれば、それはゆゆしきことであるということで、かねてから、もうこれは回数にすれば何千回と言ったんですかね、「産官学金労言」という、そういうコンサルに頼ることなく地域でそういういろんな人的資源をフル動員をして作ってくださいねといったのだけども、何でこんなことになるのだということで、かなり私としては強い衝撃を受けました。ですから、事務方より、この48団体に対しまして、民間コンサルティング企業への委託状況についてお話を承らせていただいたということでございます。
 その結果、この戦略の策定自体を全て委託したというようなところはゼロであったと。48団体が全て委託したと、こう報道には出ているわけですが、聞いてみると、そんなことはしていませんということで、その全てを委託したのはゼロでありましたということです。
 何でこんなことになるのか、日経グローカルが発出したメールなんでしょうけど、文書において、回答によっては市町村名あるいは市長名というものを公にすることもありますよとまで断って、そうやってやっているわけですから、それに回答しておきながら、全然そんなことはやっていませんというのは、何でこんなことが起こるんでしょうということであります。どうも推測するに、あるいはお話を承るに、これがウエブサイトでのアンケート調査であったものですから、回答された方が、この質問が正確に何を聞いているんだということがよく理解出来ていなかったという話もございました。市町村におきましては、もういろんなアンケートって山ほど来るわけですよね。報道機関からも来るし、あるいは関係の行政からも来るしということで、どうも、ましてやウェブで来たということもあって、何を聞かれているのか、どう回答して良いのかよく分からなくて、その場で回答してしまいましたみたいなことではなかったのかと。これは何しろ、どこの市だと出ているものですから、それもそれぞれの市において、これ、一体どういうことというお話がなされて、うち、そんなことはやっていませんというところが全てだったわけで、それは趣旨を御理解いただいていたのだなと思うと同時に、それぞれの自治体においていろんな御議論がなされるのだなというふうに思っております。

(以上)