石破内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成27年12月25日

(平成27年12月25日(金) 10:33~10:55  於:中央合同庁舎第8号館1階S106会見室)

1.発言要旨


 本年最後かと存じます。1年ありがとうございました。
 お手元に、地方創生人材に関する検討会の資料をお配りをしておるところでありますが、6月末に決定しました「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」の中で、地方創生人材プランの策定を位置付けたものであります。
 これを受けまして、これまで有識者の皆様に御議論いただいてきたのでありますが、本日は、このプランの事務局案をお示しし御議論いただくということにしております。
 これは、地方創生人材育成に向けた連携の場の形成と、地方創生カレッジ(仮称)の創設を主な内容といたしております。本日の御議論を踏まえた上で、この地方創生人材プランを公表したいと思っております。
 会議が終わりましたら、事務方よりブリーフィングをいたさせます。どうぞ、詳細はそちらでお尋ねをいただきたいと存じます。
 私からは以上でございます。

2.質疑応答

(問)本年最後の閣議ということでお尋ねしますけれども、地方創生担当大臣に去年9月に就任されて、今年一年間、地域の活性化などに取り組んでこられましたけれども、この一年をどう総括されるかということと、来年に向けた抱負などがありましたらお願いいたします。
(答)一応ファクトだけ申し上げますと、法律でいきますと、史上最長でありました第189回通常国会におきまして地方創生関連法案では、第5次地方分権一括法、地域再生法の一部を改正する法律、国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律、この3本が成立をしたところであります。
 国家戦略特区につきましては、この一年で98の事業を認定したということでありまして、成田市の医学部新設、大田区や大阪府の旅館業法の特例、あるいは愛知県の公設民営学校、神奈川県の外国人家事支援人材等々が98事業の中身であります。
 また、12月15日の特区諮問会議におきまして、広島県・今治市、千葉市、北九州市の3区域を3次指定として決定をいたしました。更なる規制改革に意欲的に取り組んでまいりたいと思っております。
 分権につきましては、これはこの間申し上げたとおりでありまして、ハローワーク等々、成果が得られたものというふうに考えております。
 要は、計画段階から実行段階へという年であったと思います。来年から本格的な地方創生事業というのが始まるわけであります。もちろん分権も特区も進めていかなければいけないことでありますが、全てに共通しているのは、何のためにこれをやるのというお話が、国民の皆様方にどれだけ御理解をいただけるかということだと思っております。
 特区にしても分権にしても、もっと手が挙がって良いだろうというふうに思います。これは、変えていかなければいけないのではないかというようなことは、日々の問題意識によるものでありまして、そういうような、知恵は現場にありという決まりきったことを申し上げるつもりもありませんが、そういうことなのですね。そういうような発意というものを私どもとしてはお願いし、国民の福祉増進に資するものであれば、積極的にやってまいりたいと思います。
 また、地方創生につきましては、地域がそれぞれの経済を、産業構造も含めですが、どのように分析をするのかというところからスタートしなければなりません。この一年あちらこちらの自治体を拝見して、本当にそういう取組が進んでいるところというものは虚心坦懐(きょしんたんかい)に、本当に敬意を持って接するところであります。そういうところは、いかにして生産性を上げるか、そして良質な雇用を維持するか、そして所得の増大を図るかということをきちんと戦略を持ってやっているということを強く実感をいたします。
 他方、そういう意識が余り希薄であって、地方版総合戦略を作れという話なので作りましたと、さあ、これで交付金が幾ら来ますかというようなところもあるかもしれません。やはり意識がどれだけ変わっていくかということであって、そういうような自治体、あるいは自治体と一緒にやろうという市民の方々、それは着実に増えつつあると思っております。ですから、来年は、これを更に加速するものにしたい。
 いつも点は密になりつつあるが、まだ面ではないという言い方をしてまいりましたが、密はその度を上げつつあると思っております。それが面となっていくように努力をしていかなければならないし、それは、どこかで量的変化、質的変化を来すものだと思っていて、これがだんだんと積み重ねることによって、ああ、なるほど、こういうことなんだというふうに世の中が変わるような、そういうようなことに向けて努力をしたいなというふうに今思っておるところでございます。
 以上です。
(問)関連なんですけれども、まさに自治体の意識改革という意味では、これまで先進的な事例をいろいろ見ていらっしゃって、それをいかに横展開するかということが最大の課題だと思うんですが、そこを国としてできることというのは、来年はどういったことだとお考えでしょうか。
(答)これはですね、やはりこういうモデルとなるような事例がありますよということを、余り大部のものを作っても読めないんだと思うんですよ。だから、サマリーみたいな、ダイジェスト版みたいなものを用意をし、詳細はこちらをご覧くださいみたいなことは、今もやっています。これは、私どものみならず、例えば農林水産省においても、経済産業省においても、国土交通省においても、いろいろなところでそれをやっているのですけれども、こんなに厚いと、さあ、どうやって読んだら良いんだろうみたいなところがあって、それをどうすれば、ああ、なるほど、こういうことなんだと。
 例えば、産業連関表というものを用いて、それぞれの自治体の経済を分析して、どのようにして所得を上げ、雇用の質を改善するかということが一つ一つストーリーになっていて、なるほど、なるほど、そうだよねと言って、こちらが非常に深く共感をするところもあります。
 例えば、昨日、帯広市が来られましたが、この間、北海道でやった会議においても、帯広市から非常に明快なプレゼンがあったところなのですけれど、なるほど、こういうことなのかというふうなことに気付いていただけるような、そういう気付きのための手引というのか、そういうものを作らなければいけないかもしれないと思います。
 それからもう一つ、この間の地域別の少子化の会議でも出た話ですが、やはり政務があちこち回るわけですが、日本全体がと言っても、なかなかピンと実感がこないところがあって、これは私も心がけなければいけないことだと思いますが、例えば、A県B市というところに行ったときに、日本全体はこうなんですけれども、おたくの市はこうなっていますよ、ここの町はこうなっていますよというふうに、聞いている人が総論-総論はかなり御理解いただいたと思うんですけれども、それを自分の町に当てはめてみたらどうなんだろうかというふうなところまで、私どもが全国を回る際に、単に1時間の講演ですとか30分の講演ですとか、それをこなせばいいというものではないので、一体何を理解してもらうためにここへ行くのかという問題意識を強く持っていかなければいけないなと。これは、事務方の皆さんのいろいろなお知恵を、力を得て、政務が果たしていくべき責任かなというふうに思っておるところでございます。
 だから、この普遍化というのか、横展開という言葉が良いのかわかりませんが、それをしていくために、やはりもう一工夫要るんだろうというふうに思いますし、そこは6団体、あるいは与党、自民党・公明党のそれぞれの該当する組織があるわけですから、そこを使ってやっていきたいというふうに思っております。何か良いお知恵があったらば教えてください。
 併せて、メディアの方々に、どうすればわかりやすく報じていただけるかということも更に心がけてまいりたいと思っております。
(問)今年の年頭の会見で大臣にお伺いしたことで、戦後70年であるということをお伺いしました。そのとき、大臣、先の大戦を体験された方々の気持ちをちゃんと聞いた上で憲法改正へ向かう国の大きな変革に取り組んでいきたいというような趣旨のことを発言されていらっしゃいました。戦後70年という観点からこの一年を振り返られてどうお感じになられるのか。それから、安保法制の論議という形ではありましたけれども、憲法問題に関して非常に国民の関心が高まりました。このことの意義についてお願いします。
(答)所管外でございますから、そういう立場で申し上げることをまずおことわりをしておきたいと思います。
 戦後70年ということでした。今年は安保法制の審議、あるいはそれに随伴いたしますというか、それと深く関わるといいますか、憲法の論議等々があって、確かに多くの議論は行われたのだけれども、そこにおいて法案も成立しました。これから周知すべく努めなければいけないし、まさしくそれが運用においてどうなのかということも詰めていかなければいけないのですが、何か一定のコンセンサスのようなものが国民で得られたかというと、私の実感としては、更なる努力が必要かなという気がいたしておるところでございます。
 やはり今の憲法というものが、どのような過程で出来たものであるのか。それは法的にもそうです。よく日本国憲法無効論みたいなことを唱えられる方がありますが、私は全くそのような立場には立っておりません。どういうような時代背景の中で出来たものなのか、それは日本国が主権を持っていないときにできた憲法なのですよということが大前提としてあるわけで、そこからお話は始まるんだろうというふうに思っております。その前に無効であるとか何とか言われても、それはかなり議論としては厳しいものがあるのではないだろうか。今の日本国憲法が果たしてきたいろいろな役割というものを率直に評価をしながら、なおその出来た時代背景と今はどれだけ違うかというと、当たり前の話ですけど、独立していない、主権がない時代から独立して主権を持つに至ったという昭和20年代のお話があって、そしてまた国際情勢が大きく変化をし、国民の権利意識等々が大きく変化する中にあって、今の時代に合うものは何なのか、そして当然のことですが、これも絶対に変えてはならないものは何なのかということについて、更に深い議論が必要なんだろうというふうに私自身は強く認識をしておるところでございます。
 後段は何でしたか。
(問)憲法問題が国民の関心を呼んだことについて。
(答)これはですね、国民が憲法に関心をお持ちになるというのはとても良いことだと思っております。ここも、例えば立憲主義とは何かということについて、それぞれが異なる理解をして、その異なる理解のもとに議論が平行線ということは余り好ましいことだと思っておりません。
 教科書的な立憲主義とは何かというお話と、この自衛権のお話でいえば、最初は個別的自衛権というものも認めないという立場に立っていた。今回、集団的自衛権というものは違憲であるとおっしゃる方々は、じゃあ、個別的自衛権はどうなんでしょうと、あのときの議論に照らしてどうなんでしょうと、それは立憲主義との関連においてどうなんでしょうというような極めてロジカルな話、これは価値判断を交えないロジカルな話でございますが、そこにおいて議論を整理する必要があるのかなというふうに私自身は思っております。
 ただ、小学校、中学校で憲法の基礎は習うわけで、高等学校でもある程度習いますが、大学において本当に憲法の授業というのを受けた人と、経済とか文学とかそういうことをやられた方々と、そこは少し違うところがあって、ここをどうしようかということだと思います。ですから、憲法についてのテクニカルタームというのか、基礎的な言葉についての価値観を交えない議論というものをすることによって、より理解は深まるのであって、基礎的な理解に齟齬(そご)があるまま議論を進めても、それはいたずらに時間が過ぎるだけなので、いいとか悪いとか価値観を捨象して申し上げますと、そういう基礎的なことについての共通の理解というものをまず持つように、私自身は、有権者の方々に対してよくお話をしていく責任があると思っております。
 いずれにいたしましても、この法案は、今の憲法の範囲内で成立をしたものなのであって、そこが憲法に照らして疑義ありというような、そういう議論は本当に丁寧に丁寧に御説明をしていきながら御理解を得る努力は今後もしなければならないと考えております。
(問)今のお話の中で、絶対変えてはならないものは何かという議論が必要だというような御趣旨の御発言がありましたけれども、大臣御自身は、憲法で絶対に変えてはならないところはどこだというふうにお感じになっていらっしゃいますか。
(答)それは当然、平和主義と基本的人権の尊重、そして国民主権というもの、これはもう絶対に変えてはならないものでございます。これはもう教科書どおりのことでございます。
(問)冒頭、大臣としての一年の総括と来年の抱負の質問が出ましたけれども、一方で、自民党衆院議員として、今年は自身の水月会を結成されたという一つの節目だったと思うんですけれども、そこから結成後3カ月経って、改めて結成して良かったなと思うところと、若しくはもう少しこうした活動が出来れば良かったなというような反省点みたいなものがもしありましたら伺えますでしょうか。
(答)どこかの派閥を継承したわけではございませんので、全くゼロからの立ち上げという意味で試行錯誤のことが多かったというふうには思っております。それは一にかかって私の責めに帰するべきものでございます。
 その中で、水月会の議論の中で、やはりそれぞれのジャンルにおいて、例えば、法律ということであれば若狭さんや山下さんや、あるいは門山さんや、法律にきちんと通暁した人がいる。あるいは社会保障でいえば鴨下さんであるとか田村さんであるとか、まさしくプロがいる。金融であれば、弁護士でもありますが山本さんや、あるいは大学教授もやっていた伊藤さんとか、あるいは実業に通じた平さんであるとか、あるいは中央政府でいろいろな行政経験を積んできた赤沢さんであるとか、あるいは舞立さんであるとか等々、言い始めたら切りがないんだけど、そういう、まさしくこの人がエキスパートだという人たちがいてくださる。そして、常に週1回の会においてはそういう議論が行われるということは、きちんと政策について議論しようという本来の政策集団としての機能が果たせつつあるかなというふうに思っております。
 これも会の設立の趣旨の一つでもありますが、選挙に強い集団でなければいけない。これから先、国民の皆様方に御負担もお願いせねばならないという中にあって、やはりあの人の言うことだったらという意味での選挙に強い。単に勝てば良いというものではありませんから、選挙に勝ち、議席を得るというのはあくまで手段ですから、そういう国民に御負担をお願いしなければ、この国がサステナブルでないということに鑑みれば、選挙に強い集団でなければいけないということで、私のみならず、お互いで助け合っていくということもこの3カ月で随分出来たというふうに思っております。
 昨日も、ある議員が来ておっしゃっていましたが、いよいよ来年はそういうことを議論から、その議論を戦わせた上で収れんさせていくということをしていかなければならんのではないだろうか。それは、これも立ち上げたときに申し上げたことだと思いますが、自民党員の皆様方に御判断をお願いするに足る政策を作っていくのは、そんなに半年や1年で出来るものではないだろうと。それは長大な時間と濃密な議論を必要とするものなのであって、そのスタートにしたいということをおっしゃってくださった方が昨日おられましたが、そういうふうにして所属の方がそう思っていただけるのはありがたいことだというふうに思っておるところでございます。
 自民党のあらゆるそういう集団は、当然、現政権を全力で支えるという意味においても、それぞれが持ち場持ち場で党あるいは政府あるいは国会の場において、我々の今の政権を支えるために精一杯の努力をしたと思っておりまして、来年はそれを更に深化させる、そういう年にしたいなと思っておるところでございます。

(以上)