石破内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成27年12月18日

(平成27年12月18日(金) 10:20~11:01  於:中央合同庁舎第8号館1階S106会見室)

1.発言要旨


 先ほど第8回まち・ひと・しごと創生会議を開催いたしたところであります。有識者の皆様方の御意見を頂戴いたしました。総合戦略改定案のポイントでありますが、まず基本目標やKPI達成に向けた進捗状況の検証、その次に政策パッケージ・個別施策について情勢の推移による必要な見直し、次に、地方の取組に対する情報、人材、財政支援を、精査・拡充するということについて盛り込んだものであります。地方創生の深化につき取り組むということにいたしております。詳細については後ほど事務方から説明させますが、要は計画立案段階から実行段階に移るということでございます。その点をよく念頭に置きながら改定をいたしたものでございます。
 次に、「政府関係機関の地方移転に係る対応方針」についてであります。前回11月6日の有識者会議におきまして示されました「今後の検討方向」に沿いまして、11月から12月にかけ提案道府県、地元関係者と関係政府機関・所管府省庁との間で意見交換の場を設けるなどし、精力的に検討を進めてまいったものでありますが、昨日17日に開催されました有識者会議での御意見を頂きながら、研究機関・研修機関につきまして49の御提案を、具体的な検討を進めていくものとして整理をしたものであります。機関数で見ますと、御提案があった61機関のうち約4割に当たる23機関が、具体的な検討を進めていくものとして整理をされたものであります。今回は研究・研修機関を中心とした取りまとめを行ったものでありますが、中央省庁につきましては主要論点を整理いたしております。今後この対応方針にのっとり今年度末までに検討を進め、成案を得るというものでございます。
 最後に、いわゆるシティーマネージャーとも言っておりますが、地方創生人材支援制度についてでございます。1年間取り組んでまいりまして、各市町村におきましても地方版総合戦略の策定が進み、これから実行の段階に移行するものでありますが、政府といたしましても、ヒト・チエ・カネの3つの面から地方創生版3本の矢を構築し、目に見える地方創生の実現に向けて、各市町村の取組を支えていくということであります。
 地方創生人材支援制度につきましては、都道府県を通じまして派遣を御希望になる市町村の募集を、10月23日から12月11日まで行ったものであります。90の市町村から応募がありました。具体の市町村名はお手元の資料のとおりであります。同時に本日12月18日から1月29日まで、市町村への派遣を希望する人材の募集を行います。今後、派遣希望市町村につきましては地方創生に関する取組姿勢、施策の方向等を確認いたします。派遣希望人材につきましては、熱意や専門性等を確認いたした上でマッチングを行い、来年度当初からの派遣を目指したいと、かように考えておるところでございます。
 私からは以上であります。

2.質疑応答

(問)政府関係機関の移転についてなんですが、今回は独法などの研究機関とか研修機関を中心に、ある意味絞り込んだ形になりましたけれども、一方で中央省庁のほうは、まだこれからといった形になっていますが、中央省庁の移転に関して大臣はどのような方針で臨まれるんでしょうか。
(答)今から予断を持ってあれこれ申し上げるべきことではございませんが、これは地方の側から、こういうものはどうだということで御提案を頂くというやり方をとっております。このやり方はいかがなものであろうかという御指摘もないわけではありませんが、その地域から見ないと分からないものというものがあります。その地域でいろいろな行政を日々やりながら、こういうものが我々の地域にあったら良いなと、それが日本全体のためにもなるなというような意識を、お持ちのところがあると思うのです。逆に、中央からやりますと、そういうものと適合しないことが起こりますので、まず地方の側から御提案を頂く、それが我が地域に来ることによって、国の行政ですから公平性というものが強く要求されるものであります。しかし、同時に、国の行政であっても公平性のみが至上の価値ではない。その地域にあるものを生かしていくことによって、それが日本全体が裨益(ひえき)をするもの、すなわち現場に近い感覚というものからどうも離れているものがあるのではないだろうか、現場に近い感覚をシェアすることによって行政を進める、それが日本全体にプラスになるというものがあるのかないのかということだと思っております。
 もう一つは、これだけ情報網が発達した。これだけ交通網が発達した。20年前、30年前は、テレワークなどというのは考えられなかった話であって、せいぜい電話とファクスぐらいのものだったわけです。それが今やリアルタイムでフェイス・トゥ・フェイスというのか、それは通信網を通じての話ですが、いろいろな会議もできるようになった。20年前に比べて新幹線であるとか航空機であるとかそういう移動手段も、格段の進歩を遂げているわけで、そうすると公平性・公正性を保ちながら現場に近い感覚をシェアすることによって、より有効な行政が展開できるものがあるのではないかということでございます。
 ですから地方の考えと中央の考えというものがきちんと整理をされて、どちらが国の利益に資するものなのか、昨日の政府関係機関移転に関する有識者会議でも申し上げましたが、それが国の利益なのか霞が関の利益なのかということが問われるのだと思っております。それが国全体の利益なのだということがきちんと確認されれば、それは積極的に行うのが当然のことではないかと思っておりますし、逆に言えば、それが国の利益にならないということであれば、それは御要望があったとしてもそれが実現することはないという、至極当たり前のお話でございます。
(問)昨日消費者庁が、徳島県の移転案に反対する集会を開きまして約60人が参加していました。徳島県の神山町には、以前、小泉前政務官も役所の方を派遣するなどして、可能性を感じるというような受け止めだったと思いますが、こうした反対集会については、どのようにお感じになっていらっしゃいますでしょうか。
(答)それは集会・結社の自由がありますから、いかなる集会も妨げられるものではございません。先ほどの御質問にもお答えいたしましたが、消費者というのは北海道から九州・沖縄までおられるのであって、消費者というものに近いというか、正しく消費者目線に立った行政を展開するにおいて、徳島県というところにいかなる優位性があるものであろうか、そしてまた、小泉前政務官が行かれ、私も徳島県には何度もお邪魔しておりますし、神山町の方々のお話も何度も聞いてまいりました。特にそういう通信網が発達している、さればこそサテライトオフィスを開く企業あるいは、企業そのものを移転するIT関連の会社、それによって多くの人材がその地域に集まっている、それによってにぎわいが創出されているということもございます。
 ですから徳島県へ移ることが日本全体のためなのだというお話なのか、そこの会合の内容を私は全く存じませんが、いやいや、それは日本全体のためではないのだということでどういう議論が行われたか、それがまた広く大勢の方々に了知されることによって、本当に国民全体の利益になるものはどっちなんだろうということで、議論が深まるという点においては、そういう集会があるのも良いことだと思っております。
(問)大臣自身としては、消費者庁の徳島県への移転ということに関しては、どの程度の可能性というか感じていらっしゃいますでしょうか。
(答)ですからそれは任にある者として、可能性が5割だの4割だのということを申し上げる立場にはございません。しかし、今、河野大臣がお試し移転というんですか、そういう形で実際に行ってごらんと。行きもしないで良いの悪いの言っても始まらないでしょうということであります。また、消費者庁という新しくできた官庁であって、そこの人員構成がどのようなものなのかということもあるでしょう。
 私はこれはいつも申し上げるんですけれども、国民の審判を受ける者のみが責任を負い得る者であると。責任を負い得る者のみが決断ができるのだということでございます。責任を負えない者は決断をする立場を有しません。国務大臣として消費者庁を統括しておられるところの河野大臣が、実際にお試し移転というものをやってみる。そのことによって本当にそこにおいて、公平・公正かつ消費者の立場に立った行政というものが展開できるというような得心(とくしん)を、河野大臣が得られたとするならば、そういう前進があるだろうと。政治家のやり方とはそういうものであって、私は河野大臣のそういうような行動というのか物事の進め方には、心から敬意を表するものであります。
(問)今日あったこの一部移転の検討、研究機関・研修機関のほうなんですけれども、一部移転の検討の項目を読むと、ただ連携するだけで一部移転という定義に捉えているのかと思うのもあるんですが、一部移転、この移転という言葉の定義について大臣はどうお考えか、お願いします。
(答)それは、これを何のためにやっているのかということに尽きるんだと思っております。そこにおいて機能が移転する。それは物的なものもございましょう、人的なものもございましょう。そこに移ることによって、例えばそこに学問が集積している、産業が集積している。そこに一部が移ることによって、それが日本全体に波及していくものであるということになるとするならば、それは物的にも人的にも移転をするのが当然であって、そういうことによって数を稼ごうとか、そういうけちなことを考えているわけではありません。そういう日本全体にプラスになるかどうかということは、いやしくも政府の研究機関というものを移転する以上、当然議論されてしかるべきことでございます。
 ですからそういう人も移らないと、物も移らないと、ただ連携をするのだ、だからこれも1つのカウントだというような、そういう数を稼ぐなどということは考えておりません。それがどれだけ国民の利益に資するものなのかという点において、この議論は進められるべきものでございます。
(問)またそこで、普通の人が考えると、多分一部移転、移転という言葉というのは、多分実際に人が例えば移るということをイメージするんだと思います、普通に考えれば。だけど、例えば人が移らないで物だけ移るとか、連携拠点を作るということだけでも、例えば一部移転という定義に当てはまりますか。
(答)それが国民の利益に資するものであれば、そういうことになります。ですが、普通に考えれば、そこにおいて研究される方が移る、あるいはそこに行くことによって、繰り返して申し上げますが、そこにそういうような機能が移ることによって、どれだけ日本全体に利益が及ぶかということです。そして更にイノベーションというものがそこにおいてできる。ですから今、首都圏にあるそういう研究機関の一部が機能として移っていく。そこにおいてシナジー効果があって、新しい技術、新しい研究というものがイノベーションを起こしていく。こういうことが目的なので、一体そういうことが起こりましたか起こりませんかということが、問われるべきものだと思っております。ですから移転の数を稼ぐという話じゃなくて、そこにおいて本当にイノベーションが起こり、国民全体の利益に資するということが主眼なのであって、そういう連携だけしました、でも何も起こりませんでした、ということでは何のためにやったのかということが問われるものでございます。
(問)例えば研究機関とか、多分、今のおっしゃっているお話はよく分かるのですけれども、例えば中央省庁の文化庁なり消費者庁なりが、例えば移転するという場合、その移転の定義というのは、例えば組織、まるごとというか、また一部も含めて移るということのイメージなのでしょうか。
(答)私、実際、文化庁で仕事をしたこともないし、消費者庁で仕事をしたこともないので、その組織について、完全に知悉(ちしつ)しているわけではございません。
 ですが、全体が移るという考え方と、それぞれの文化庁や消費者庁に限りません。それは全ての省庁がそうなのですが、それはいろいろな機能になっているわけでございます。その全部にふさわしいところがあれば、それはそれが一番よろしいのでしょうし、これはこの部分はうちに来ても、なかなか日本全体のためにならないと。だけどもこの部分が来ることは、日本全体のためになるということは論理的に当然あり得ることだと思っております。
 ですから移転したことによって、国民全体の利益が損なわれるようなことであれば、それは本末転倒というべきものでございましょう。そこにおいてはいろいろな可能性があるものであって、さればこそ、基本的な方向性は示しましたが、来年の3月まで議論を重ねて成案を得たいというふうに思っておるものでございます。
(問)昨日の全国知事会議で、知事会が沖縄県の提案で、基地問題の協議組織を立ち上げるという方針を決めました。これについて、大臣、どう御覧になりますでしょうか。
(答)すみません。よく内容を存じませんが、知事会の中に基地移転の協議会を作るという話ですか。
(問)基地移転というか、基地問題全般についての協議組織を作ると。知事会の中に。
(答)そうですか。それは知事会がお決めになったことに、私がとやかく言うべきではありませんけれども、私は、これは、立場を離れて申し上げます。国務大臣として申し上げているのではありません。安全保障を長くやってきた者として申し上げます。
 基地の負担というのは何なのだろうかということを考えたときに、それは騒音であり、土地が取られているということであり、いろいろなことがございます。
 沖縄県にある機能というものを、本当に沖縄県でなければだめですかというお話は、それは日本全体で議論されるべきものだと思っております。
 それから、あちらこちら返還が進みまして、専用区域の8割近くが沖縄県に集中しているという状況、これは本当に必然なのかということでございます。
 沖縄県が果たしている機能の中で、ほかで代替できるものはないだろうかということであって、安全保障を語るときに、常に問題となるのは、時間と距離の壁というものでございます。
 技術の発達によって、時間と距離の壁というものが低くなったとするならば、他にもあるのではありませんかという考え方は、あるべきものだと思っております。他でも代替できるものがあるのに沖縄県にあるとするならば、それはやはり国全体で分け合っていくというのが政府の方針なのであって、ですからさればこそ、空中給油機の岩国市への移転とか、あるいは訓練の全国への分散ということが行われてきているものであって、今回の知事会の決定というものが、政府の方針とかなり整合しているものではないかなというふうに、私は思っております。
(問)一方で国の国防、防衛政策を地方団体が、どういうことができるのかというのは、なかなか不透明なところもあると思うのですけれども、大臣はどんな役割を期待されますでしょうか。
(答)防衛政策は、一にかかって中央政府が決めるということなのでございます。しかしながら、その地域の方々が基地というものを受け入れるに当たっては、住民の方々の御理解とか、あるいはどういう場所が提供できるかとか、そういう地方行政というものと密接に連関するものが当然あって、そこは地方の考え方と国の考え方、これは国の専権事項なのだということではなくて、そこにおいて土地を使うとか、住民の方々の御理解を得るとか、そうことにおいて役割を果たされる地方とのコラボレーションという言葉で言ってしまうとどうかと思いますが、それは各々の権限というものを認識しながら、国としては移転したい、地方としては反対であるということから、また一歩前に進むということが望まれるのではないでしょうか。
 そういうような意識というものを持たれた自治体の長の方々、それはこれが実現できる、できない、それはいろいろな専門的な議論があるのですが、例えば橋下さんが大阪の知事であったときに、大阪のいろいろな自衛隊の施設に沖縄のものを引き受けるべきではないかというような発言をなさったというように記憶いたしておりますが、それが実現する、しないは別の話ですよ。でもそういうような発言というものがその地域の行政の責任者である知事から出るということは、それなりに意味のあることだと思っております。
 最終決定権限が地域の長にあるわけではございませんが、その果たす役割というのは、大きなものがあると思っております。
(問)改定総合戦略のKPIについて、1点お伺いします。
 現在、政府の財政健全化計画での各歳出改革項目について、それぞれKPIの設定が検討されていまして、ただ健全化計画においては、最終目標として、2020年度に基礎的財政収支を黒字化するなどの目標があるわけですが、そして総合戦略においては、基本目標、政策パッケージ、各政策ごとに体系的にKPIを設定されていて、これは言うのはやさしいのですが、実際にKPIを設定してPDCAを回していくというのは大変な作業かと思うのですが、改定総合戦略における最大のKPIというのは、大臣はどのように考えていらっしゃいますか。
(答)これが最大で、これが最小というか、そういうようなものを私自身、断定的に申し上げることはできません。
 ただ私が思っているのは、いろいろな数値目標はございますが、それは例えばGDPを600兆円に上げるということを考えたときに、これは資料で既にお示ししておるところですが、労働生産性というのは、東京都から沖縄県、鳥取県まで相当の差があります。
 そうであれば、そこをどうやって上げていくことができるのか。まさしくそういうポテンシャルは地方のほうが、より持っているのではないだろうかということでございます。
 ですからいろいろな目標というものがございまして、それは全てこの国の労働生産性を上げる、そのことだけが自己目的ではないし、GDPだけが自己目的ではないのだけれども、そこにおいて、人の流れというものが、東京一極集中からそういう稼ぐ力を持った地方に移転していき、その地域の方々の生活が向上していくということが、大事なのではないでしょうか。
 ですから、一番でいえば、それは人の流れを作るということだと思っております。東京一極集中から地域に人の流れが起き、それは何によって起きるかといえば、いろいろな生産性が高くなり、人々の暮らしが向上する。であるからこそ地域に人が移っていくということだと思っております。
 私は一番大事なのは人の流れを作り出すということであり、そこの根底にあるのは、いかにして地域の人々の暮らしが豊かになるかということだと思っております。
(問)地方創生においては総合戦略と併せて、人口ビジョンというものを提示されていて、その中で50年後も人口1億人を維持すると。国民の希望する出生率1.8ということも、ビジョンの中で示されていると思うのですが、それはあくまでも国としてのビジョンであって、目標ではないという整理になっているかと思います。
 そこは人口50年後も1億人を維持するということが、出生率と関連性があって、そこは非常にデリケートな問題なので、ということがあっての整理かと思いますが、一方で、総理が一億総活躍社会を掲げられて、その中で50年後も人口1億人を目指すということを明言されて、そこにおいて、希望出生率という、希望という言葉が付いていますが、希望出生率1.8を目指すという目標を設定されているわけですけれども、地方創生において人口1億人を維持する、希望出生率1.8を実現するということは、あくまでも目標ではないという整理でよろしいでしょうか。
(答)それは数字として目標にすることではないということは、かねてから縷々(るる)申し上げておるところでございます。ですが、それぞれの方々の御希望をかなえるとするならば、この1.8ということなのだろう。
 それを阻害している要因というのは何なのだろうか。行政として、それは中央の行政もあれば地方の行政もあります。そこは今まで、ともすれば、出生率だって都道府県別で考えて、一番高い沖縄県と一番低い東京都まですごい差があるわけで、既にお示ししておりますが、同じ県におきましても、市町村によってすごくばらつきがあるわけで、そこにおいて何がそういう希望を妨げているのだろうか。
 本当は子供って2人以上欲しいというふうにお思いの方があって、政府として2人とか3人とかということが言えるわけがない。ですけれども、それを御希望があるのに、それを妨げているとすれば、そうなのでしょう。だからそうなっているのでしょう。それを行政としていかにして取り除いていくか、改善していくかということによって1.8を実現する、そういう論法でございます。
(問)受け止め物なのですけれども、橋下市長が本日で任期満了という形で、政界引退というふうに言っております。待望論もあるのですけれども、もし大臣、受け止めなどがあれば教えていただきたいのが1点と、もう一つすみません。産経新聞の昨日の前ソウル支局長の無罪判決で、もし受け止めがあれば教えて頂きたい、という2点お願いできればと思うのですが。
(答)それは、政治家の出処進退というものは、政治家が個人の責任において判断することですから、私があれこれ申し上げることではございません。
 またその受け止めというものは、現在のところ、大阪府の府民の方々、そして今日まで行政を担当してこられた大阪市民の方々がなさるものだというふうに考えております。
 それからそれが地域政党というものが何なのか。それがまた国政全体に与える影響はどうなのか。いろいろな考え方があるのだろうと思います。
 ただ橋下徹氏が大阪府知事に就任されて以来、いろいろな議論が巻き起こったということは間違いない事実でございまして、それについて政治家が、あるいは主権者たる国民がいろいろな思いを持って、いろいろな議論が進んでいったということだと思っております。
 ですから、それは述べ始めれば1時間でも2時間でも述べますが、私として申し上げるのは橋下さんが提起されたいろいろな問題ということが、これから先、日本全体にプラスになるようにというのは、発信を受け止める側の我々の責任でもあるというふうに思っておるところでございます。
 産経新聞のソウル支局長の無罪判決につきましては、それは他の国の司法の判断でございますので、我が国の主権を体現する行政府の長たる国務大臣の私が発言することではございません。
(問)シティーマネージャーというか、公務員などの派遣についてお尋ねしますけれども、今年度の実績として、聞き取り調査などをされて、非常に実績が上がっているという評価をされたと思うのですけれども、その一方で来年度、170ぐらいを確か想定されていたと思うのですが、こうした中で90の市町村からしか要望が上がっていないということをどう思われますかということが1点と、あと、来年度から民間の方も対象に派遣されるということですけれども、そこの意義について改めてお願いできますでしょうか。
(答)この数は、どうしてこうなったかということは、悉皆(しっかい)調査をしているわけではございませんので、ここはよく分かりません。ただ、幾つかサンプル的にお話を承ってみますと、総合戦略は出来たと。やっぱり総合戦略を作るに当たって、そういう人の能力を活用したかったが、総合戦略を作ったので、財政も厳しいこともこれあり、とかいうのがあるらしい。あるいは、去年要望したのだけれども、それは国からは人材の派遣がかなわなかったと。私どものほうからお願いした部分もあるのですが、府とか道とか県とかにお願いをして、そういうところから人材を得て充足というか、そういう状況にあるので、今年はあえてお願いをしなかったとか、いろんな御事情があるやに承っております。私たちもこういうところへ派遣をすると良いのにというところがないわけではございません。ですけども、御要望というものが第一であって、国のほうから押しつけるようなこともできません、地方創生というのはそういうものなので。いろんな御事情がおありなのだろうと思いますけれど、今の派遣している人たちがまだ任期があるわけですね。そこにまた加えて、それだけの方々の応募があったということは、それをポジティブに評価すべきものだと思っております。
(問)民間の方の派遣については。
(答)民間の方の派遣の意義、それはやはり国のいろんな施策に通用した人が良いなという価値観がある一方において、市役所であれ町役場であれ、下手すると町長さん以下、職員の方全てが就職してこの方ずっとそこの役場にいますよと、市役所にいますよというのがないわけではない。そうすると、民間の感覚って全然分からないわけですよね。私は市役所一筋何十年とか、役場一筋何十年というのは、それなりに立派な価値観だと思いますが、民間の価値観というものを入れてみよう、あるいは東京には限りませんが、そういういわゆる地方ではないところの考え方から地方を見るとどうなるだろうか。そういう観点から、民間の視点の活用というのはとても意義のあることだと思っております。ですから、そういうものに価値を見出して、そういう人が良いなというか、あるいは国家公務員が良いと思っていたけども、他の地域の民間の人材の成功例を見て、うちもそれに切り替えてみようとか、そういうものがこれから先も起こってくるのだと思います。
(問)政府機関移転に関して、先ほどの質問と少し重なってしまうと思うんですけれども、今回一部移転ですとか、新しい考え方が出てきたりですとか、研究研修機関の移転の方向性というのがある程度決まってきたという話があったと思うんですけれども、これまでの有識者会議の議論も含めて、政府機関移転に関する議論の進捗状況について、石破大臣はどのように評価されているのか教えてください。
(答)これはこの話は前もしましたが、平成の初期に竹下内閣において行われた地方移転というのは、首都中枢の地価の高騰を抑制するということが大きな政策目的で、横浜市でありますとか、今はさいたま市というんですか、大宮新都心に移るとかというのが多かったわけです。そうすると、政府機関の地方移転というのは実はもう太政官制度が始まって以来とは言わないが、すごく長い期間実現をしてこなかったものだと思っています。そもそもの発端は、本社の機能の一部移転というものを民間企業にお願いをしておきながら、政府は全く動きませんということでは、それはちょっと通らないんじゃないですかと。民間にはお願いしておきながら、政府は全く動きません、別格なのだという話にはならないでしょうと。民間にお願いするからには、政府の側もということでありました。結論がどうなるかはまだ今、予断をもって申し上げることではありませんが、その議論が動き始めたということ。そして、政治が恣意(しい)によって行うものではなく、有識者の方々の公平・公正な議論というものが行われ、そこにおいて透明性が確保され、地方と中央との間にいろんなやりとりが行われということに大きな意味があったのだというふうに考えております。
 ですから、これは何度も同じことを言って申しわけないんですけれども、それが国全体のプラスになるかどうかということが一番の中核でございます。地域が発展するということはもちろんありますけれども、国の機関ですから、それがそうであると同時に、そうであることによって地域にイノベーションが起こり産業が発達し、人々がやってきて、それが日本全体にも広がっていくということがきちんと立証されるということになれば、それは積極的に行うべきものだと思っております。
 今まで地方の方々から東京一極集中は困ったものだというお話はずっと出ていたのですけれども、全く前に進まなかった。それがこういう形で進み始めたということに大きな意義があるのではないかと、私はこれに携わっていただいた多くの方々に感謝の意を込めて、このように考えておるところでございます。
(問)ちょっとまた話題が変わって衆議院議員の選挙制度改革についてお伺いします。
 議長の諮問機関が、衆議院のほうで定数10削減を示していて、減らすところが主に地方の、首都圏以外の主に東北地方とか、そういうところが選挙の定員数を減らすという話になっています。該当の県の例えば議員の方からは、地方創生を掲げているときに地方の民意を反映するべき議員の数を減らすとは何事だという意見もあるんですが、この意見に対して大臣はどのようにお考えでしょう。
(答)それは党内にいろんな意見があるんでしょう。私が幹事長のときに、議長は伊吹文明幹事長でしたが、これは各党で協議もしました。民主党のみならず、共産さん、社民さん、小さな政党の方々全て入れて協議をしたけども、結論を得なかったものであります。そうであればと、議長の下にそういう会議を作りましょうということで、各党の一致を見たものでございます。もちろん共産党さんは最後まで反対しておられましたけれど。そこで議長の下で作り、いろんな議論がなされ、そういうものが出てきたわけですから、それはそれで尊重されなければならないのであって、そうであれば、みんなで議長の下に作ってくださいといったことは何だったんですかということになるわけでございます。
 地方創生という観点から申し上げれば、これは私はやはりこの所管大臣でもございますが、地方のいろいろな利益を実現していくというのは、地方の責任、権限によって行われるものではないかという地方分権論であります。憲法の規定によりまして、国会議員は国民全体の代表者であって地域の代表者ではないと、後段は書いてあるわけじゃありませんが、そういうふうに憲法に定められておって、それによって最高裁の判決が出ているということから考えれば、憲法の趣旨というものを体現したときに、そこにおいてどう考えるべきなんだろう、そこにおいて地方の議員を減らすことをけしからないのだという話なのか。いやいやと、国会議員は国民全体の代表者なのであって、地域のいろいろな事情というものを代表するのは、それは地域の首長であるべきだという議論を加速をするとか、そこは憲法をどう考えるかというお話に帰着するんだと思います。それはもう全国一の人口最少県の私からいえば、地方の議員を減らすとは何事だみたいなお話になるのですけど、ことは憲法論なので、我々がこの憲法の趣旨をどう考えるのかということなんだと思います。それと地域のいろいろな事情というものを最大限に反映して地方創生をどう実現するかという話がリンクするのかしないのかということは、これから先、党内でのいろんな議論があって結論が出される。ですから、法の下の平等をきちんと実現するということと地方創生を実現するということをどのようにして整合をとってアウフヘーベンしていくかという議論がこれから先、行われるのであって、私として価値観を交えて申し上げるものではございません。

(以上)