甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成27年11月16日

(平成27年11月16日(月) 9:49~10:18  於:合同庁舎8号館1階S101・103会見室)

1.発言要旨

 本日公表いたしました2015年7-9月期GDP速報は、実質成長率は前期比年率でマイナスの0.8%となりました。
 この要因といたしましては、実質賃金が改善する中で、個人消費が底堅い動きとなった一方、設備投資は、企業収益が改善しているにもかかわらず、2四半期連続のマイナスとなりました。在庫調整が進展をする中で、在庫投資がGDPに対してマイナスの寄与となったことも加わりまして、全体としてマイナス成長となりました。
 なお、在庫を除いた最終需要の寄与度は前期比年率でプラスの1.4%となりました。また、名目成長率は、前期比年率でプラスの0.1%、前年同期比ではプラスの3.1%となっております。
 つまり、名目はかなり伸びて、実質が少しマイナスということであります。
 ただし、最近の我が国経済の現状については、一部に弱さが見られるものの、企業収益は過去最高水準にあり、雇用・所得環境の改善が続くなど、緩やかな回復基調が続いております。今後につきましては、海外経済の下振れなどリスク要因はあるものの、各種政策の効果もありまして、景気は緩やかに回復に向かうことが期待されます。具体的には、労働需給が引き締まりつつあるなかで、賃上げの継続・拡大によりまして、所得環境の改善が続き、個人消費は持ち直していくと見込まれます。また、設備投資につきましても、企業収益の改善等を背景に、増加していくことが期待されます。これは、是非そうありたいと思っております。
 政府といたしましては、GDP600兆円の実現に向けて緊急に実施すべき対応策を今月中に取りまとめまして、「一億総活躍国民会議」で月末までに取りまとめる緊急対策に反映いたします。また、TPPを真に我が国の経済再生、地方創生に直結をするものとするため、今月下旬を目途に、「総合的なTPP関連政策大綱」を策定いたします。これらの施策を着実に推進するとともに、過去最高の企業収益を賃金や設備投資に結びつけることで経済の好循環を更に加速・拡大をしてまいります。
 引き続き経済動向を注視しまして、機動的な経済財政運営によって万全を期してまいりたいと考えております。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)3点お伺いさせてください。まず、7-9月期の受け止めですけれども、4-6月期が出た8月の時点では、大臣はそのマイナスは一時的な部分がかなり大きいとおっしゃっていたのですけれども、7-9月期はそのときの想定よりも回復は遅れていると見るのか、それとも順調に回復に向かったと見るのでしょうか。
(答)順調とまで言い切るかどうかは別として、トレンドとしては回復に向かいつつあると思います。
 先程申し上げましたけれども、実質GDPが年率換算マイナス0.8%と言いました。これは在庫が、流通在庫、製品在庫が減っております。
 これは、在庫の議論は毎回あるのですけれども、消費が若干伸びて、在庫が減っているということは、在庫調整の面があります。仮に在庫がプラス・マイナスゼロだとしますと、GDPはおよそプラスの1.4%という数字になりますので。これはトレンドとして悪い方向ではないと思います。
 賃金は上がっております。1人当たり実質賃金も毎勤統計でプラスになって、連続プラスになっているわけです。
 ここで問題は、設備投資が相変わらず、力強さがないということです。ですから、企業経営者のマインドがデフレから脱し切れていないというのは相変わらずだと思います。
 何度もこうした場面で私は訴えておりますけれども、企業収益が過去最高になっていて、設備のビンテージが古くなっていて、なおかつ投資をしないという経営判断は何を考えていらっしゃるのですかということだと思います。
 従来から、日本という市場が人口減少でシュリンクしていく中で、増産投資をする経営者はいないという話がありました。これは、2つの点で間違っていると思います。
 まず、第1点で申し上げているのは、ビンテージが古くなっているということは、生産性が悪くなっている機械で競争しているわけです。生産性革命と言っている以上、生産性を引き上げる、高付加価値化する武装をしてくださいということです。
 加えて、TPPが大筋合意をいたしました。ということは、日本国内と同じような条件で商売ができる地域がはるかに拡大しますということです。これは世界の4割の市場は、日本国内とほぼ同等のやり方、ルール、投資の仕方で展開できるような環境ができてくるわけでありますから、正に、タイムラグはあるでしょうけれど、増産ということについてもですね、国内市場だけを見据えていては経営判断を誤ると思います。
 ですから、順序としては、生産性を上げる投資、それから研究開発投資。実は、研究開発投資は、設備投資に現状のGDP統計の仕組みではカウントされてないわけですけれども、新しい世界標準の統計の取り方によりますと、研究開発投資が設備投資にちゃんとカウントされていきます。
 ですから、研究開発投資部分は、企業は前向きに取り組んでいると思いますが、申し上げていますとおり、第4次産業革命にいかに対処するかの、競争が既に始まっているわけでありますから、原資が世界で一番豊富な日本経済は、先取り投資というものをしっかりしていくと、これが経営者の判断の分かれ目になると思っております。
(問)今後の見通しで10-12月期はプラスに転じると見てらっしゃいますでしょうか。
(答)もちろんそう思っております。
(問)今回のマイナス成長を受けて、補正予算などでの景気対策の必要性については、どうお考えでしょうか。
(答)補正予算を組むときに、純粋景気対策では何をするかということになると、恐らく景気対策を主張される方々は、公共事業をどんどん出せということになるのだと思います。人手が足りません。そこで、もちろん遅延要因になっているわけであります。そして、資材の調達が厳しい。技術者が足りない、資材が足りない中で、需要だけ増やしていくとコストが上がるということになります。
 ここは、今の日本経済の回復過程がどういう構成局面にあるかということを正しく認識して対処することが必要だと思っております。
 競争力を強化する、例えば中小企業の競争力を強化するという視点や、あるいは、地方の魅力を増すなどです。地方の魅力を増すということは、1次産業、農業を中心として攻めの農政、要するに攻めていく力をつくるための整備、それに対してどう前向きに取り組むか、そのような視点が大事だと思います。
 補正は当然あると思いますが、それはTPPを受けて農業を成長産業に、構造改革をしていくための整備をどうするかなど、あるいは、一億総活躍で地域にアベノミクスの恩恵をどう行き渡らせるか、労働力不足が叫ばれている中で仕事と子育てを両立させる、希望出生率1.8をどう環境整備していくか、あるいは介護のために離職をせざるを得ないという環境を払拭していくためにどういう施設整備をしていくか、人的整備をしていくかということ、それらを中心に組まれる補正だと思っております。
(問)GDPの推計に使われる家計調査での統計に対して、経済財政諮問会議でサンプルの偏りという問題点が指摘されていると思うのですけれども、政府として、今後統計の精度の向上に努めていくということだと思うのですけれども、今回、今日発表された数字の精度や正確性はどのようにお考えでしょうか。
(答)今御指摘のとおり、厚生労働省や総務省のサンプル調査がありますけれども、両省での乖離や、あるいは家計調査でもサンプルが入れ替わります。入れ替わりのときの継続性がないということで、その時点で落差が出て統計の信頼性に疑問が出るということが指摘されてきましたから、今、統計委員会に指示しまして、より実態をビビッドに反映できるような統計方法がどうあるべきかということは、今、私が指示を出しているところであります。今後は、より実体経済を正確に反映した統計となっていくと思います。
 今までがいい加減ということではありませんが、サンプルの継続性がなかったり、その前の調査と今回の調査が全く違う人を対象にしているという、つなぎ目はありますから、そういう点の問題点を是正できればと思っています。
(問)先程の10-12月期に回復というかプラスに向かうだろうとおっしゃったと思うのですけれども、それは外需というより、やはり内需の消費なり設備投資なりが順調に回復していくからと、そのような捉え方をなされているということでよろしいでしょうか。
(答)今、官民対話を進めています。かなり強く政府側から問題点と努力すべき点を指摘しています。これは、景気、経済というのは基本的に民間のものです。政府が行うのは着火材と、あとは環境整備です。本体は民間経済です。民間経済が政府の方向だけ見ているのでは、どこの国の経済もよくなりません。やるべきことは提示していますし、問題点は把握されていますから、あとは何度も何度も言っていますけれども、踏み出すということです。それをやらないと、やらない企業の業績はもっと悪くなりますよということをどこまでトップが認識できるかだと思います。
 内部留保が三百数十兆円と言われます。それに対して設備にかわっているもの、そして海外企業等、経営戦略としてM&Aで組み込んでいる株式も、三百数十兆円の中にあるのだと、それをよく分かって言っているわけです。それをさっぴいても、現預金を中心に200兆円以上が積み上がっているわけです。それを我々は指摘しているわけであります。賃上げを昨年以上に強力にやっていくということは、自身に返ってくる政策であるということを民間企業の経営者が理解しないと、このデフレの脱却はできないわけでありますので、それを我々はこうして強く訴えていますし、官民対話でも強く後押しをしていきたいと思います。
(問)先程のお答えで、補正の話なのですけれども、需要対策としてGDPギャップを埋めるような意味での対策ということは考えていないということでいいということですか。
(答)現時点では、一億総活躍とTPP対応で、結果的にそこを押し上げる部分は出てくると思います。ただ、純粋景気対策としてそこに焦点を合わせて何の需要を追加するというのは、今日の時点ではまだ検討しておりません。今回の数字等も含めて、補正を編成する段にどういう構成にするかというのはこれからの話だと思います。
(問)今日の大臣のお話の中にもありましたが、海外のリスク要因というのがあります。それは多分2つぐらいあると思うのですけれども、1つは昨日あったフランスのテロ事件があったと思います。これの心理的効果や、若しくはそこに対する輸出に依存している中国の状況等々を踏まえて、どれぐらいのリスクがあり得るとお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
(答)これは、まだそれに対して算定したことはありませんけれども、やはり観光地その他へのインバウンドについての影響は出ると思います。ただし、各国が力を合わせて、テロ対策により強固に取り組むという対応もなされるでありましょうから、できるだけその影響を一時的なものにとどめていくといく努力をしていくことになろうかと思います。
(問)賃金ですが、このようにある程度期待できるというのは、連合等でそんなに高い要求は出していませんけれども、実際に妥結するまではやはり官民対話等でということでしょうか。
(答)連合はデフレ時代に、まずは雇用という考え方がかなり定着していて、そこからなかなか脱し切れていないと思います。我々は経済の好循環を回していくということが至上命題であるという認識をいたしております。でありますから、2020年を過ぎた辺りに、今の500兆円を600兆円にするためには、平均でいっても3%の成長をしなければならないと。それに見合った賃上げや投資が行われるということは当然必要でありますから、それを強く訴えているわけであります。それをどれくらい経営者側が理解していただけるか。官民対話やこうした会見の場を通じて、引き続き強く訴えていきたいと思います。
 連合が控え目な数字をされるのは、どういう意図かよく分かりませんけれども、それをオーバーライドする主張を我々はしたいと思います。
(問)GDPが、4-6月期、7-9月期と2期連続、実質マイナスになったことで、15年度の政府の経済成長見通しは1.5%だったと思うのですけれども、その達成というのは極めて困難になったのではないかということですが、大臣の見方を教えていただけますでしょうか。
(答)年央試算のGDP、実質1.5%、名目2.9%を達成するには、相当野心的な数字が、残り2四半期必要だということはよく承知しております。
(問)まだ今の時点では、難しくなったということまでは。
(答)なかなか大変です。
(問)一点目が補正予算の規模ですが、2012年度10兆円、13年度5兆円、14年度3兆円といった中で、どれくらいの規模が適当なのか。
 2点目が、賃上げで、よく2%ぐらい昇給があったという説明と、一方でボーナスが2.8%前年比でマイナスだったといった中で、どのような賃上げを求めていきたいかという点。
 最後に、2四半期連続で、0.7%、0.8%のマイナスということで、非常に小さいのですけれども、民間ではこれを一般的に、2四半期連続のマイナスであれば、それはリセッションと定義するわけですが、大臣としてそういう評価についてどう思われるか。
(答)補正の規模は、今、私が言及するのは時期尚早と思いますが、税収の上振れ等々の、使えるお金の上限とそれから財政再建の中期目標との整合性、これは密接に関係しております。日本国債の信認にも関わりますし、政府の姿勢の信頼性ということもありますから、これはしっかりと整合性をとっていきたいと思っております。その中で、どういう規模になるかということになろうかと思います。
 それから、賃上げについては、基本的に定昇以外の部分でどこまで確保できるかということだと思います。定昇は、年長者の人が、かなり高給な人が外れて、それが入れ替わるということですから、賃金総額としては変わらないということになりますから、ですから、一時金やベアというのが非常に大事になってくると思っております。
 ボーナスが下がった、上がったという話がありますけれども、あれは統計上の問題で、経団連や連合の数字からしますと、あのような数字にはなっていないということで、あれは毎月勤労統計の数字です。先程来、話が出ていますけど、毎月勤労統計のサンプルの取り方が、継続サンプルになっていないので、その人が前に幾らもらっていたかというのは出てこないのです。だから、対象が違うということがありますから、それによってボーナス総額が減ったということは、一概に言えないと思います。そこは、統計をより継続性あるものにしていきたいと思っております。
 それから、2四半期連続でマイナス、わずかではありますけれども、マイナス0.7%、そしてマイナス0.8%となっております。前四半期の改定値はマイナス0.7%です。ですから、前四半期は一次速報値のマイナス1.6%から、二次速報値ではマイナス1.2%になって、今期はマイナス0.7%になったので、この次はプラスになればいいなと思っていますけれども、まあ、それは冗談ですけれども、わずかにマイナスが続いています。
 ただ、先程申し上げたように、消費が少し伸びて在庫が減っています。在庫調整の側面もある。在庫を抜きでみていきますと、プラスの1.4%になっているわけです。前期比も在庫の影響を外して見てみますと、前期はマイナス1.6%、今期はプラス1.4%ということになります。でありますから、この在庫の寄与が前向きの調整ということを期待したいと思います。
(問)先程大臣が、連合の会長もデフレマインドから脱却していないのではないかとおっしゃっていましたが、仮に大臣が連合の会長だったら、何%ぐらいの要求をされるのかということを教えてください。
(答)当然、やはり3%は目指してもらいたいですね。

(以上)