甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成27年10月20日

(平成27年10月20日(火) 10:37~10:53  於:合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 TPPの大筋合意直後から主要な品目について、関税交渉の結果を公表し、御説明してまいりました。
 品目の数が膨大なために、全ての品目の公表には至っておりませんでしたが、各国及び関係省庁と公表のための準備を鋭意進めてまいりました。
 本日、公表の準備が整いましたので、全ての品目について関税交渉の結果を公表いたします。詳細につきましては、この後に事務方に説明させますが、私からは概要について説明申し上げます。
 我が国の関税撤廃率は品目ベース、貿易額ベースともに95%であります。我が国以外の11か国は、99%ないし100%となっております。
 品目ベースの関税撤廃率の内訳は、農林水産品につきましては、我が国は81.0%、我が国以外の11か国全体では98.5%であります。
 また工業製品につきましては、我が国は100%、我が国以外の11か国全体では99.9%であります。
 今回の公表内容につきましては、内閣官房及び関係省庁のホームページで公表するとともに、説明会などの場におきまして、国民の皆様に丁寧に説明してまいります。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)TPPについてなのですけれども、関税撤廃率95%ということなのですけれども、これで日本経済への効果というものは、どういったものが期待されるのか、改めて、マイナス効果もあれば、それも含めて教えていただけますでしょうか。
(答)TPPは、21世紀型の世界基準となるべき共通ルールを作るということ、そして、貿易に対して高い自由化を達成すること、この2点で構成されています。経済の4割を占める国が作る基準でありますし、ウィン・ウィンの関係になっている、1か国が得をする分だけよそが損をするということではない、貿易や投資が拡大していく中で障害物が外されて、それぞれの国がウィン・ウィンの関係になっていくという構成になっております。でありますから、拡大するFTAであり、それはまさに世界基準たり得ると思っております。
 具体的な総合対策や試算につきましては、今、準備をしておるわけであります。対策本部におきまして、対策がまとめられるのは、11月下旬あたりだと思います。そして年内には、TPPの経済効果についてのまとめの説明ができるのではないかと思っています。
(問)今、大臣のおっしゃった関税撤廃率95%、この意味合いといいますか、これは高いのか低いのか。あと農産品分野での重要5品目の保護等々あったと思うのですけれども、その中で国益を守り切れたということでしたけれども、この数字受け止め方というのをお願いいたします。
(答)数字を比較していただくと分かるとおり、工業品、農産品含めまして、日本以外はほぼ100%であります。新興国も含めて、そういう数字になっています。そういう中で95%の評価であります。工業品については、日本は100%、これは、極めて高い野心であり、参加国中一番の数字だと思います。ルールにつきましても、各種投資や通商を阻んでいるルールを改善している点については、日本は優等生だと思います。
 一方で、農産品に限って言いますと、自由化率は一番低いということになります。これは数字が示しているとおりであります。我々は、重要5品目を中心に、国会決議というものがあります。国会を通していく上で、野心の高さと国会決議との整合性を高い水準でとっていかなければならない。その結果がこうであると思っております。
 バランスのとれた通商協定であります。それは農産品の中だけの評価ではなくて、工業製品と農産品との関係、あるいはルールでどこまで野心的になっているかというところと、物の貿易との関係、いろいろ総合的に考えていきますと、あるいは先進国と途上国とのバランス、体力に見合った開放度合い等々、そういう点を考えていくと、全体としてバランスは総合的にとれていると思います。
 そういう中で、重要5品目は農水委員会決議をしっかり念頭に置いて、その上で、野心をどう高く上げていくかという結果として、この数字になったと思っております。
(問)重要5項目、品目でいうと586品目で、そのうちの、それなりの割合については、今回、最終的には関税が撤廃されるという形になっていると思うのですけれども、改めてになりますが、重要5項目の何割かについては、関税が撤廃されたことの結果と、その国会決議との整合性というのはどのように考えていらっしゃいますか。
(答)重要5品目のコア部分については、しっかり守っていくことができたと思っております。幾つかについて、関税撤廃措置がとられています。これは、輸入実績が極めて小さいであるとか、あるいは国産品との代替性が低いとか、そういう基準で、日本の農業の主要な点をどう守るかということと、あるいは輸入実績が小さい、あるいは代替性が低いということについて精査した結果、その基準で関税をなくすことができるのではないかという判断で取り組んできた。全体としての比率でいえば、日本はこのTPPの意味をしっかり受け止めながら、守るべきは守ったということが、数字が示していると思っております。
(問)TPPですが、一部では政府として補正予算を編成する方針を固めたとの報道がありますが、その事実関係に絡む話なのですけれども、農業者の不安を払拭する視点も含めて、長期的な視点による国内対策の検討とは別個に、短期的に必要な対策について補正予算で措置するお考え、その必要性や規模についてお考えをお聞かせください。
(答)総合対策本部の基本方針、総理基本方針の中に、国民の不安を払拭すると。不安の幅はいろいろあるかと思います。日本が持っている公的医療保険制度が浸食されるのではないかと。こういうことは絶対にありません。これは事実関係としてお知らせしていくということと、それから事実関係として関税が下がっていく、あるいは撤廃されていく中での不安と、それから、逆に攻めに打って出るための対応がとれるかとれないかということに対する不安もあろうかと思います。
 影響をしっかり精査して、どういう政策が必要かを検討した上で、短期、中長期に何をなすべきかということが浮かび上がってくるかと思います。
 総合対策がまとまる中で、どういう対応が必要か、どのくらいの規模が必要か、どのくらいの期間が必要か、それらが明らかになってくると思っております。
(問)重要5品目以外も、かなりの部分が関税撤廃になって、重要5品目だけに注目が集まっていただけに、ほかの部分でかなりびっくりしたという声もあるのですが、大臣はこの辺については、どういう手当てをお考えになっていらっしゃるでしょうか。
(答)手当てというか、そこも関税の率が低いもの、例えば野菜は3%、4%というようなもの、10%以内について、為替の変動の方が、影響が大きいのではないか。この3年間の間に50%変動したわけであります。そういうこと等を勘案して、影響の低い、あるいは乗り切れる体力がある、強化策をどうするかはまた別問題ですけれども、そういうことを含めて、関税の削減あるいは撤廃を対処したと御理解いただければと思います。
(問)TPPの詳細は明かされたのですが、少し変わってTPP成立の見通しについて、米国で大統領予備選も本格化しつつある中、反対する有力候補もいて、そういった中でいつ頃成立するか、現時点での見通しをお聞かせください。
(答)TPP交渉のそれぞれ否定的な意見を持っていらっしゃる方の発言は、例えば自分のところの選挙区に関しては、こういう問題がもっととれていればよかったとか、あるいは、自分の関係する業界では、これがもっと重要だというような発言が非常に多いと思います。
 TPP全体が、アメリカにとってプラスかマイナスか、TPPがあった方がいいのか、ない方がいいのか、それを総合的に検討すれば、あった方がいいというのは当たり前であります。
 ない世界にアメリカが戻ったときにはどうなるのかということと、私が関係者に発信しているのは、このTPPを通じて、アメリカがアジアの、経済におけるアジアの正会員になれるのではないですかと。そこは大きな足掛かりになり、また、大統領がおっしゃっているように、世界基準というのは、我々が公平、公正、透明な視点で作っていくのだと、それが世界のためであるということの実行に、極めて大きな足掛かりになるのではないかと思います。
 一つの部品ごとに見れば、ここは不満足だという点は、当然、どこの国にもあるのであります。1か国が100%の満足をする協定というのは、残りの国にとっては全く魅力のない協定であり、誰も入らないということですから。誰もが入りたくなる、しかも参加者が皆ウィン・ウィンになるというところを求めていかなければならない。それはできたと思っております。
 それを評価すれば、アメリカが間違いなく賢明な判断をすると思います。
(問)成立の時期については、来年の春ぐらいにまとまりそうなのか、それとも年末までいきそうなのか。
(答)加盟国全てがサインをするということが、まず大事であります。それはアメリカのいわゆる90日ルール、議会に通知されたときから起算すれば、いつという時期が出てくるわけであります。そこを注目していただきたいと思います。
 議会に告知するためには、中身がきちんと精査されなければならないと、その作業中だと思います。

(以上)