石破内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成27年10月6日

(平成27年10月6日(火) 9:45~10:25  於:合同庁舎8号館1階S106会見室)

1.発言要旨


 まず第1点、地方創生の取組状況に係るモニタリング調査結果についてであります。お手元のとおり、その調査結果を取りまとめたものを公表いたします。
 金融機関でありますが、8割が地方公共団体と接触をしているということであります。この結果、ほぼ全ての地方公共団体との接触が図られている。金融機関の7割が戦略策定に関与することとなっておりまして、地方公共団体の9割が、金融機関からの参画を得ているという結果でございます。
 このような金融機関を含みます「産官学金労言」という、もう何百回言ったか分かりませんが、このような取組を官民協働で進めていきたいというふうに考えておるわけでございまして、詳細については、またお問い合わせください。
 次に、国家戦略特区に関する提案募集の実施につきましては、本日より開始をいたすものであります。本日より10月30日金曜日までが募集期間であります。
 今回の募集の結果は、年内に予定しております地方創生特区第2弾の指定に向けて参考にいたします。
 9月1日より施行しております改正特区法で追加をいたしました規制改革事項や、「日本再興戦略改訂2015」において記載をしております規制改革事項などを活用したいという地方自治体等には積極的に御提案をいただきたいと考えております。
 積極的に御提案をいただけるための方策は、私どもとして出来る限り実行してまいりたいと思っておるところでありますし、また、選定に至る過程につきましても、可能な限り分かりやすく御了知いただくような工夫も更に進めてまいりたいと思っておるところであります。
 次に、RESASシステムの高校、大学への出前講座を実施いたします。一般の方々、とりわけ地域の未来を担っていただきます学生の皆様への普及にも力を入れたいと考えておるわけでございまして、今後、政府担当者が、御希望の高校や大学を訪問する出前講座を実施していきたいと考えております。御要望があれば、可能な限り、我々の方で出向いていって御説明をし、御理解をいただくということであります。
 本日16時より17時50分まで、品川区にございます品川女子学院で、1年生、2年生の方-高校生ですが-を対象といたしました出前講座を開催するものであります。これは、今後、茨城大学、茨城県の茨城大学でございますが、ここで開催をいたします。日時は、10月14日水曜日に説明会を行います。10月28日に進捗状況についてのフォローを行います。10月14日、10月28日、2日間行うものであります。場所は、水戸市にございます茨城大学の人文学部。ここにおきましては、シティーマネージャーを常陸大宮で務めております西野由希子先生が主体となって進めているものでございます。10月16日金曜日には、世田谷区にございます昭和女子大学で開催をいたします。というようなことで、やはり高校生、大学生の方が主体的に考えていくというのは極めて大事なことでありまして、明年の参議院選挙より18歳から有権者になるわけでございますが、そういう若い世代の方々が、これから先どういうような日本にしていくか、どういうような地域にしていくか、やはりどうしても人口構成からいいまして、シニアな方々のほうが多くなる。そして、そういう方々にいろいろな富が集まっているということ。この仕組みを変えていかなければいけないわけですが、それは、若い世代の方々が状況を正確に把握し、そしてまた積極的に御発言をいただくということが極めて大事だと思っております。そういう意味からも、この出前講座というのは極めて意義のあるものでございまして、先ほど申し上げましたように、御要望があれば、これから先、あちらこちらからそういう話が出てくるだろうと思います。もちろん人的資源に限りはありますが、私どもとして積極的にそれに対応していき、若い世代の方々のそういう意識というものを生かして、又は覚醒をさせて、この国の形というものを変えていくことは極めて有意義なことだというふうに承知をいたしておるところでございます。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)冒頭の点からまずお伺いしたいのですが、モニタリング調査結果ですけれども、金融機関7割が関与していて、9割の自治体に参画しているということですけれども、大臣、まずこの数字の評価についていただきたいのが1点と、今回、「産官学金労言」の取組をしていますが、一方で、シンクタンクの自治体の総合戦略作りの参画もひとつ課題となっていると思うのですが、基礎的なアンケート調査等をされる自治体も多いと思うのですけれども、いわゆる丸投げのような状況を調査されているのか、若しくはされるお考え等はないのかお伺いします。
(答)これだけの金融機関が参画をしていただけるということは、なかなか良い数字になってきたなというふうに思っております。やはり商売をしたことがある人でないと分からない。つまり、これも何十回も言いましたが、貸借対照表とか損益計算書が読めて、そして、資金繰り表が書けるというのが、金融機関に勤める人間の基礎なのですけれど、自治体において、経営という概念がどれだけあるだろうか。行政からの金が切れたら、もうおしまいということであればどうにもならないので、初動資金というものは行政によるとしても、その後それがビジネスとして回っていくのかという視点は極めて重要なことだということが一つ。
 もう一つは、自治体相互の連携ということを申しておりますが、なかなかそれは言うは易く行うは難しいことでございます。金融機関というのは、それはそこの支店だけで回っているわけではなくて、そこの取引先がどこにあり、そこにもまた同種の同じ金融機関がある。ですから、自治体の圏域を越えて取り組んでいかなければ、金融機関は成り立たないことになっております。また、近年は、金融機関相互の連携-合併まで至るかどうかは別として-経営統合等々も急速に進んでいるところでございます。そうすると、ともすれば、自分のまちだけに目が行ってしまうような自治体が、金融機関のいろいろなアドバイスによって、そこにはRESASの果たす役割が極めて大きいと思っておりますが、それで地域間連携ということ、そして、いわゆる国に対して補助金をと、そしてまた、企業を誘致するというだけではなくて、そこから一歩昇華した形の取組を行うことについて、金融機関の参画というのは極めて意義があるということだと思っております。
 「地方版総合戦略」作りについては、今の段階で、シンクタンクに頼みましたかというようなことをいちいちお尋ねをするということは、それはやり過ぎなのだと思っております。ただ、これから先、「地方版総合戦略」というものが上がってきて、それを私どものほうで拝見をさせていただき、議論をしていく過程において、どういうプロセスでこれを作りましたかということは、当然極めて重要な要素として勘案されるものでございます。ですので、どういう過程においてこれができたものだろうかということは当然お書きをいただくわけでありますし、そこから出てきたものをどのようにしてその地域における「産官学金労言」の議論に付し、そして、どのような形でKPIを設定しということは、それは当然拝見をし、議論をさせていただくことになりますので、ひょっとしたら、そういう丸投げ、言い方は良くないですけど、そういうところが出てこないという保証はない。だけども、それは、本当にその地域を考えたときに、それはA町をB町に変えて、少し数字を入れかえればどこでも通用しますよというようなことでは駄目なのですということを、その地域の主権者たる有権者の方々にも御理解いただくということは大事なことかなというふうに思います。
(問)先ほど大臣、丸投げ的なところが出てこない保証はないということですけれども、やはり大臣、就任されてからずっと危機だということで、住民の皆様に、危機感を感じ取って自ら考えてほしいということをおっしゃっていると思うのですけれども、その際に、地方を回られていて、そういった危機感とかを、ぱっと彼らが考えるようになるのは、何が一番響くとお思いでしょうか。というのは、RESASとかでデータを見せて周知していくことで、そういった考えを養っていこうと思っているのでしょうけれども、それでもまだ足りないようなところで今、丸投げの地域も出ていると思うのですけれども、さらにもう一歩深く彼らが考えるようになるにはどうしたらいいというふうにお考えでしょうか。
(答)それは、一言でお答えするのは難しいのですけれども、やはりよそから見るとどう見えるのかという視点と、若い世代から見るとどう見えるのかという、その視点が大事なのだと私は思っております。危機だ、危機だと言っても、今の状態で何が悪いのだという方々がおられるのではないだろうか。言い方は気を付けなければいけませんけれども、当面何らの不都合を感じていない。それが次の世代には一体どうなってしまうのだろうか。自分たちの世代はそれでいいかもしれない。だけども、次の世代の人たちが、もうこういうところではとてもじゃないが、自分の将来はないので、外へ出ようと思うか、そこの若い世代の人たちが、これをこう変えれば、自分たちはここに住むことができるはずだ。そうであるならば、こうあらねばならないという発言ができるかどうかだと思います。
 地方都市というのは、どうしても若い世代は黙っておれとか、よそ者は黙っておれとか、そういうところがございます。それが嫌になって外へ出るという若い人はいっぱいいます。そこに外から見たらどう見えるのだろう、ここはこうしたほうがいいじゃないですか、ああしたほうがいいじゃないですかと言うと、最初は、何が悪いのだという話になるのだけど、でも、外から見ればいろいろな、そこに住んでいる人たちが当たり前だと思うことがそうじゃないということに気付くということが一つあります。
 もう一つは、若い世代の投票率も低い。若い世代の方々が議会において占めている-これは女性もそうなのですけど-割合が低い。そうすると、なかなか行政に反映されないということが起こるのですけど、若い世代の方あるいは女性の方々が、発言をするような、そういう状況を作っていくというのはとても大事なことなのだと思っております。ですから、最初のころよく言っていました、地域を変えるのは「よそ者であり、若者であり、ばか者である」ということを去年の就任の当初は随分申し上げました。それで変わってきているところは、やはりそういう取組が実ってきたところではないかと思っております。ですから、「産官学金労言」なのであり、KPIなのであり、PDCAなのだということで、やはり変わっていくためには、そういう「よそ者、若者、ばか者」という人たちが発言するような状況をどう作るかだということが肝要だと思います。
(問)所管外なのですけど、TPPの大筋合意について伺いたいと思います。総理の参加表明から2年半を経て、昨日のアメリカでの会合で大筋合意しました。大臣は、党の幹事長時代から、党の対策本部のトップに立って議論も主導してきたと思うのですけれども、この時間結構掛かりましたけれども、大筋合意に至ったことに対しての所感を1点伺いたいのと、あと1点は、輸出産業などからは歓迎する声がありますけれども、特に、農業であったり畜産業からは、国内産業保護の観点から不安の声が強いという中において、当然、今後の地方創生ともリンクしてくるテーマだと思うのですけれども、政府として今後どういった課題があると考えられていらっしゃるかという2点伺えますでしょうか。
(答)非常に長い期間だったと思います。私は、農林水産大臣のときに、WTOの交渉に携わった経験がございますが、このWTOという枠組みから一歩出た形で、つまり、WTOというのは百何十カ国参加しているわけですが、TPPという新しい枠組みの中で議論が行われた。ですから、大変な時間が掛かったように見えますけど、WTOは、一体、いつ、何が決まるのだと、1国でも反対したらおしまいみたいなことでしたから、それがTPPという新しい枠組みの中で、これだけの時間をかけても一定の成果が得られたということについては、関係の方々が、甘利大臣をはじめとして大変な御努力をされた結果だと思います。
 輸出については、これは多言を要しませんが、いわゆる農業分野に関して申し上げれば、例外なき関税の撤廃ということが今回の結果を見れば回避されたということだと思います。そこは我が党の公約、あるいは委員会決議、国会決議の枠内で、この交渉の大筋合意を見たということは極めて大きな意義があると思います。
 一方において、ガット・ウルグアイラウンドのときに6兆円という多額のお金を納税者の方々の御負担によって投じて、それでどのように変わったのかという検証はもちろん政府部内でしていることでありますが、ガット・ウルグアイラウンドで構造改革が劇的に進んだという評価を全面的になすことはかなり難しいという反省を私自身、農政に携わってきた者として持っているところでございます。
 今回のキーワードは、幹事長時代にこれは申し上げたことですが、再生産が可能なのかどうかということでございます。それは、どのように構造を変え、どのようにして再生産を可能にするのかということでなければいけないのであって、それは、例えば、合衆国から入ってくる米の量というものが更に増えるということになれば、どのようにしてそれが農業の構成を変え、すなわち、近年の状況というのは、最後までこれは大丈夫だろうと言われていた2種兼業農家が恐ろしい勢いで減り始めているということは、もうこれは前からそうなるだろうなと、私は別に先見の明でも何でもないのですが、思っていたのだけれども、2種兼業農家、極めて強いと言われていた、それももう辞めていく人が増えていく。そうすると、どのようにして農地の集積が起こり、規模の拡大によってコストダウンがなされということが実行されていかなければ、これは再生産ということはできません。それは、牛でも豚でもそうなのであって、どのようにして再生産を可能にするのか、そして、その過程において生ずるいろいろな軋轢をどのようにして回避をしていくかということは、もうこれで待ったなしの形で進んでいくということになるだろうと思っております。ですから、例外なき関税撤廃ということは回避されたのだということは、有権者の方々、農家の方々に言えることですが、これから先何が起こっていくのか、それに対してどのように対処をしていくのかというのは、どういう方々の再生産を可能とし、地方創生の観点から農業・農村、漁業・漁村、林業・山村というものを守っていくのかということを政府全体の中で議論をし、答えを出すということであります。ですから、それへ向けての方策というのは、大体みんなこういう方向なのだろうというのは分かってきているのだけれども、それをどのように実行するかという、そういう実行段階を時限性を持って、KPIというものを念頭に置きながらやっていくということによって、地方創生と今回のTPPというもの、これは、地方に対する投資が高まるということが更に望ましいことでありまして、そこを展望しながら、ほら、これでできたよ、公約守ったでしょうということは当然のことですけれども、そこから先、もう一歩二歩踏み込むことが時間的な制約を持ちながら必要なことだと思います。
(問)明日、内閣改造が行われる予定ですけれども、地方創生担当大臣としてこの一年、地方各地を精力的に視察されていましたけれども、大臣として新たな地方創生というジャンルに取り組まれた一年を振り返ってみての思いと、今後留任されるかどうかは別として、今後なすべき課題というのも山積していると思いますけれども、それについて、すみません、お願いします。
(答)随分と地方は回らせていただきました。私のみならず補佐官、副大臣、政務官、あるいは事務方も手分けをして、今までこれだけ地方創生ということをテーマとして政務が回ったということは、私はなかったと思っています。もちろん農林水産大臣は農林水産大臣で、経済産業大臣は経済産業大臣で回っているとは思うのですけれど、これを今まで連綿として続けてきた、国から補助金をもらい交付税をもらい、そして企業誘致を行いという、そういう今までのパターンからどのようにして脱却をしていくかということは、それぞれの地方地方の持っている潜在的な可能性を最大限に引き出し、労働生産性を上げていく。それは、地方において、人手不足が起こっているという、こういう状況だからこそできることではないでしょうか。そんなことは今までほとんどやったことがないお話なのですが、全国回ってみて、もうどこがどこということは申し上げませんが、そういう事例が、本当に感激するような事例がたくさんある。それは、カリスマ首長がいたからと、カリスマ経営者がいたからと、カリスマ商店街理事長がいたからで片付けられていたことが多いと思うのです。それは、うちはそんなことできっこないよ。いや、そうではないでしょうと。「横展開」という言葉は私は余り好きではないのだけど、それをどうやったらば自分たちのところもできるだろうかということが、役場であれ、それが民間であれ、それがだんだんと広まってきたなという感じを持っております。
 そして、ともすれば東京対それ以外という対立構図で論じられがちだったものが、そうではないのだと、東京の持っているいろいろな力というものを最大限引き出すためには、負荷を低減させなければならない。東京の負荷を低減させるということが、地方の潜在的な可能性を引き出すということと整合したときに、これは動き始めるのだということだと思います。
 RESASシステム等々によって、今年、来年、再来年は良いけれど、5年先、10年先、我が町はどうなってしまうのということを若い世代の方々が気付くことによって、これは大きな動きになっていくのであって、そこのところをもうあと一押しか二押し必要なのだと。でも、流れは大体決まってきた。そして、点が密になりつつあって、これからどなたが担当されるか、それは別としても、それを点を面にしていくという取組が進んでいくのだと思っております。
 ですから、この1年間いろいろとやってきて、もちろん試行錯誤もございましたが、不可逆性を持つきっかけは、出来つつあるのではないだろうか。それはもう、大臣がどんなにわーわー騒ごうとですね、政府がどんなに旗を振ろうと、その地域の方々、あるいは住民の方々が、そうだねと言ってもらわなければ動かない。そこにもう相当な努力が必要だというのが、今の感じであります。
(問)大村智さんがノーベル医学・生理学賞を受賞されました。山梨の地元でもかなり歓迎する話、向きがあるみたいですけれども、これは大臣どう、御所感があればお願いします。
 あと、ラグビーのワールドカップで、過去7回の大会で1回しか勝ったことのなかった日本代表が2回勝つという結果が今、出ています。2019年日本大会では地方において地方都市開催をすごく期待する動きがあるようですけれども、大臣どのように、期待があればお願いします。
(答)やっぱり立派な方が世の中にはおられるのだということで、それは先生のいろいろなこれまでの歩みというのを、昨日、今日、いろいろな報道で拝見をいたしました。学校を出られて、定時制の高校で教鞭をとられて、そこで工場で勤めていた方が夜、勉強に来ると。まだその手が機械の油、作業の油等々で汚れていても、勉強するのだという、そういう人たちを見て、自分はこれでいいのかというふうに思われた、それが今日の先生の原動力になってきたというお話を聞いて、やはりこう、そういう時代があったのだということだと思います。
 別にそのノスタルジックに、昔は良かったねと、そういう人を見習いなさいというつもりはないのだけど、やはりそういうような、自分が、先生が親御さんから教えられた、人の役に立つ仕事をしなさいということ。やはり、そういうものはこれから先も生きていくのではないのだろうかなという気がします。
 どうやって自分が人の役に立てるかという、そういうのがノーベル賞として評価をされた。やはりこう、自分さえ良ければいいのだ、今さえ良ければいいのだということは、誰の心にもあることで、もちろん私もそういうところあるのです。ですけれど、ああいう立派な方の取組、私は研究の内容は全然理解できませんので、そういうことについて言及はいたしませんが、人の役に立ちたいという、そういう思いでここまで来られたという、そしてまた地元の韮崎に、みんなに喜んでもらいたくて、幾ら投じられたのか知りませんが、温泉を掘られて、そこに御多忙の中、月に1回か2回行って地元の人たちと語らう。そこは常に地元を忘れずという気持ちも先生にはあるわけで、そういうような日本人の生きざまとして、これから若い人たちが、すてきだなと、自分たちもそうありたいなと、そして我々シニアな人間もまだまだ、自らを振り返って足らざるところはありはせんかなということに、いろんな意識を呼び覚ましていただいたことに、私は一番感激をしているところであります。
 やはりこう、ラグビーで、勝てっこないと言われていたものがああやって勝てる、それはやはりこう、努力なのだろうと思います。だから、もう駄目なのだというふうに思うのではなくて、もう口で言うのはすごく簡単なことなのですけれど、努力をするということはこんなにすばらしいことなのだよねという思いが、何となくこう、しらけとか、あきらめとか、そういう言葉が横溢(おういつ)しがちであった日本に、新たな意識の呼び覚ましというものをもたらすと良いなというふうに思っております。
(問)一つ前の改造の関連の質問にちょっと戻ってしまうのですけれども、先ほど大臣は、点を面に展開する必要がこれから出てくるのではないかと、そのためには特にその住民の意識というものが大事だというお話がありましたけれども、明日改造がありまして、その次に地方創生担当大臣、どなたがされるかは別として、御本人の続投ということも含めて、それはさておきですね。次にその大臣として、地方創生の指揮をとられる方には、どういった資質が必要であるとお考えでしょうか。
(答)そんな偉そうなことを私は言えません。資質について言及するほど、自分がそれに値するものだと思ったこともありません。
 ですけれど、それは地域地域の方が、政府というものを身近に感じていただくことが大事なのだと思っています。何かその、政府が何か言って、都道府県庁が何か言って、で、その市役所とか町役場が何か言って、それでその住民の方々に話が伝わると、何だかすごい距離的に遠いような感じがあると思うのですね。実感からいっても遠いような気がすると思うのですね。
 その一人一人の方々が、本当に政府の取組を我が事として身近に感じていただくというのは、大事なことではないだろうか。それは、政府のやっていることって、俺たちの、私たちの実感と違うよねって思われてしまうと、どんなに立派なことを言っても、それは成就しないのだと思っております。
 ともすれば、住民と日本政府というかな、中央政府というか、それは余り身近ではなかったのではないだろうか。選挙のときだけ登場していろんなことを言いますが、それ、次の選挙までどうなったのということは往々にしてあることで、それから、余りあちこち飛びはねるんじゃないというような、そういうような御批判があることも承知をしていますが、私はそれぞれの取り組む人たち、住民の方々が政府を身近に感じていただける、そして実際に実感と乖離(かいり)があったときに、そこは違うのではないのですかということ。もちろん首長の方々も大切です。議員の方々も大切です。ですけれど、それを選んでいる住民の方々が、そうだよねって思っていただける。それは地方創生に限らず、全てのジャンルにおいて必要なことではないでしょうか。
 それは今まで、これは経済に限らず他のこともそうなのですけれど、人口は増えると、経済は成長すると、地価は上がるというような前提の下に日本のシステムは組まれているわけであって、それは年金などがそうです。そういう前提の下に、この賦課方式というシステムが成り立ち、税金を投入するといっても、それはみんなの負担に決まっているわけですから、やはりそれは幾つかの前提の下に成り立ってきてワークしてきたシステムだ。それが、前提が変わったからには、取組自体を変えないとということが、その一人一人の人に実感として分かってもらえるかというと、なかなか分からない。
 だから、なぜこういうような取組をしているのということを、遠いあさってのほうから降ってくるのではなくて、近くにいて、ああそうなんだと思ってくれる人をどれだけ増やすかということは、地方創生担当に限らずどの分野でも必要なのかなという気はしております。
(問)改めて、初代地方創生担当大臣として1年余りやってこられましたけれども、少し今の質問とかぶってしまうのですが、続投するかは分からないですが、課題として引き継ぐべきものが、大臣、あれば教えていただきたいのとですね。
 あと、この1年、例えば官庁の縦割りの打破ですとか、いろいろなものを掲げてこられましたけれども、大臣として取り組んだ中で、予想外に難しかったこと、なかなかその達成出来なかったことを含めて、教えていただきたいと思います。
(答)それは、幾つもあるのですけれど、縦割りの打破というのはですね、ずっとこう、去年の秋の国会から言われている話でした。いろんな知事さんや市町村長さんがおいでになって、縦割りの打破っておっしゃるのです。ですけれど、知事さんと市長さんと、その県庁にも市役所にも縦割りはありませんかというと、そうだよねということになる。それはそのそれぞれの省庁が、それぞれの設置法によって所掌事項が明確であり、法に基づいて官庁が置かれ、所掌事務を執行しているわけで、それは縦割りに決まっているのですよね。
 そうすると、縦割りの打破ということを幾ら声高に言っても、そうするとそれぞれの省庁の設置法から変えてかからなければいけないということは、かなり橋本行革にも匹敵するような目がくらみそうな話だと思います。
 それはそれで対応するにしても、むしろその縦割りの弊害、バラマキの弊害というものが、どうしたら除去できるかという話でいかないと、縦割りの打破、縦割りの打破と言っても、それはスローガンだけが先行することになりはしないだろうか。
 だとすると、同じような事業というものをできるだけ整理・統合していくということ。要はそのユーザーフレンドリーということが、まだうまくいっていないのではないのかなと。その、ユーザーというのは、第一義的には地方自治体みたいに見えますけれど、それがその後ろにいる納税者、有権者にとってどうなのだと。ユーザーというのは実はそういう人たちなのであってですね。そういうその、決まりきった符丁(ふちょう)というのかシステムというのか、そういう中で動いてきたものを変えるというのは、やはりユーザーフレンドリーの視点から、この縦割りの弊害をどう除去するのというのは、私はかなり道半ばという感じがしております。
 もう一つはその、すごく難しい話なのですけれども、それは総務省の所掌ですと言えばそれまでなのですが、この「結果平等」を志向している地方交付税のシステムというのをどう変えていくのかということだと思います。
 それは、財源保障機能を持っているわけで、それはいかなる自治体であっても、最終的には、財政的にはかなり担保される。財政破綻を起こしたところというのは、それは見てみればかなりめちゃくちゃな運営をしているところなのであってですね。やはりその、この地方交付税をどのように変えていくのかということに踏み込んでいかないと、出来ないことはたくさんあると思っておりますが、ここは私もそういういろいろな文献を読み、考えてはいるのですけれども、そういう問題意識を持った方々が地方交付税制度の在り方をこう変えていく、そして補助金も、もらったらそれでおしまいということではなくて、一つの投資だと思うのですね。補助金は投資であるという、そういう意識は余り自治体にもないし、受ける側にもない。だけれども、補助金は投資である限りは、いかにしてそれが回収されるか。
 で、投資であるとするならば、それが発現する効果は何なのか。例えば、街中のいろいろな仕組みを変えていくための投資と、すごく、こう、そこから離れたところの道路を改修するための投資ということを考えたときに、それは生む効果は違うのだと思います。じゃあ、その遠く離れたところの道は直さなくていいのかというと、それは決してそんなことにならない。だけれども、そこをいかにして、そのアウフヘーベンというのか止揚して、その地域の方々に説明していくかということを考えたときに、このやり方もある、あのやり方もあるではなくて、例えばコンパクトシティーであれば、これをやらないと、この市はサステナブルではないのだ。小さな拠点もこれをやらないと、ここの村はサステナブルではないのだということを、どれだけ理解して説明できるかという、そのスキルの問題と、労力をどれだけかけるかということなのだと思います。
 すごく雑駁(ざっぱく)なことを言っていて恐縮なのですけれど、この、やればやるほど地方創生という取組は、できたらいいね、ではない。これをやらないと、その地域も国家全体も次の時代につなぐことができないのだという危機意識を、もう少し共有するための努力は必要かなという気はしております。

(以上)