石破内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成27年9月1日

(平成27年9月1日(火) 9:52~10:18  於:合同庁舎8号館S106会見室)

1.発言要旨


 おはようございます。
 幾つかの報道では取り上げていただいたところでありますが、オーストリアへ出張させていただき、今朝羽田へ帰ったところでございます。いわゆる2泊4日という極めて厳しい日程でしたが、関係の皆様方の大変な御尽力をいただきまして、極めて有意義な出張になったと私自身思っておるところであります。
 一つは、オーストリアの林業というものに、私自身、農林水産大臣のときから強い関心を持っておりましたが、実際に伐採現場というのを見て、極めて効率的な伐採作業が行われている、そしてまた、林道網が極めて整備をされているということであります。その伐採現場あるいはCLT(Cross Laminated Timber)の極めて大規模な工場というものを視察をいたしました。御案内の方も多いかと思いますが、真庭市におきまして銘建工業さんというCLT協会の会長さんですが、この方が経営されるCLTの工場がありますが、日本でも同様のことが可能であるというふうに認識をしたところであります。その前に、グラーツ工科大学と日本CLT協会との間でこれからのいろいろな提携を行うという協定に調印をみたところであります。
 その後、翌日、日曜日になりますが、実際にCLTで建築をされました教会でありますとか、あるいは高齢者の方々の施設でありますとか、そういうものを視察いたしました。実際にCLTを使って極めて短い工期で機能性の高い、そしてまた安全なものが建築をされている。それは火災に対しても、あるいは地震に対してもそうでありますが、そういう技術というものを目の当たりにしたところであります。
 その後移動いたしまして、アルプバッハというところでございますが、これはチロル地方なのですけれども、日本ではグリーンツーリズムということが言われておりますが、いわゆる農村を活用した観光というのはこういうものだということをつぶさに見てまいりました。そこには、オーストリアも多くの人たちが外国から来るわけですが、どのような人に対して、どのような観光を提供するかということは極めてきめ細かく行われておりました。お子さんを連れた御夫婦が1週間最低でも滞在する。その間、子供さんは子供さんで、親御さんは親御さんで自然の中でいろいろなことを学び、あるいは楽しみということで観光の在り方、今、オーストリアの観光客はスイスよりも多いということでありまして、それは本当に大変な努力の上に今日のオーストリアの農村観光があるということを学んだところであります。
 その後、アルプバッハにおきましてオーストリアの大統領あるいは外務大臣-外務大臣は29歳なのですが-あるいは国防大臣、農林大臣等々、あるいはクロアチアの大統領でありますとかアメリカの大使でありますとか、そういう方々がEUの中の格差問題についていろいろな会議を持っておられました。ちょうどその現場でございましたので、多くの人たちとお話をすることができましたが、特にルプレヒター農林大臣、向こうは農林環境水利大臣というのでありまして、日本でいえば、あそこは海がないので農林、そして環境、それから水利といえば、日本でいえば国土交通省河川局(現 水管理・国土保全局)のようなものでしょうか、そういうところを束ねる大臣でございますが、その方が非常に懇切丁寧にいろいろな現場を案内していただき、あるいは長時間の会談も行うことができたところであります。
 その後、大統領閣下と30分ぐらいお話をする機会がございました。そこにおいて、オーストリアと日本との関係等々お話をしたところでありますし、大統領閣下から、日本の安全保障法制についての御質問がございましたので、政府の立場というものをお話をしたところであります。
 オーストリアにつきましては以上であります。御尽力いただいた方々に心から厚く御礼を申し上げます。
 また、政府関係機関の地方移転についてでありますが、3月から提案の募集を行ってまいりました。8月末日、昨日が提出期限でございましたが、1都3県、つまり東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県以外の43道府県のうち、鹿児島県を除きます全ての道府県から御提案がございました。内訳は、国の機関が27機関、独立行政法人が42法人であります。今後は、先日、有識者会議で御議論いただきました評価・検討のポイントに沿いまして、道府県及び関係府省庁等に資料を御用意いただきました上で、9月中旬以降、事務局で関係の方々よりヒアリングを行い、適宜、有識者の御意見を聞きながら論点を整理いたします。その後年末にかけまして、地方の御提案に対します評価と対応方針案を取りまとめ、その後更に調整を重ねて、平成27年度に政府関係機関移転の基本方針を決定してまいりたいと、このように考えておるところでございます。
 今整理中でございますので、整理ができ次第、恐らく本日中に皆様方に27国の機関、42独立行政法人につきましての内容についてお知らせをすることができるということでございます。現在整理中でございますので、御容赦を賜りたいと存じます。
 以上です。

2.質疑応答

(問)冒頭、CLTなのですけれども、実際に御視察されて、岡山県真庭市も御視察されていると思うのですけど、今回の視察によって総合戦略にまた書き込み方を変えていかれると思いますけれども、具体的に日本国内でこうした建物を建てていかれる具体的な方針を決められていくと思うのですけれども、大臣としては、スケジュール的には、感覚的にはどういうお考えをお持ちなのか、また、これに必要な、例えば法整備ですとか政令ですとかというものが各種あると思うのですけれども、どういったお考えで進めていかれるか、もう一度お願いいたします。
(答)これは、主に林野庁と国土交通省住宅局が一体となって今対応方針というものを作っておるところでございます。正直言って、今までは林野庁は林野庁、国交省は国交省というようなところがございましたが、正しく極めて珍しいことだと思いますが、一体となってその整備に向けて努力をしておるところであります。
 2020年の東京オリンピックというものを視野に入れました場合に、やはり3年、これは国会でも答弁をしたところでございますが、実際にそれが法的に可能である、技術的に可能であるということを、27年度を含めますと3年間で確定をするべく鋭意作業を進めておるところでございます。実際に実証試験におきまして、阪神・淡路と同程度の震災があった場合に、十分それに耐えられるというような実証データは出ておりますが、今後、建築基準法そのものの改正が必要なのか、政令レベルにおいて可能なのかということは、これは法制局とも御相談をしながら詰めていくことになります。また、阪神・淡路大震災以上のものであったらどうかとか、そういうような検討がなされるものと考えております。
 また、仮にCLTというものが技術的に、あるいは法的に可能になったとしても、それが国産材によるCLTなのか、外材によるCLTなのか、それはどちらでも可能ということになります。その際、オーストリアにおきましては、いわゆるドイツトウヒというそういうような材を使っておるわけでございますが、日本の場合にスギを使いましたとしますれば、それが経費的にどうなのか、あるいは乾燥に要する時間がどうなのか等々、まだまだ詰めていかねばならない点が多々あろうかと思います。ただ、実際にオーストリアで建築されました高齢者の方々の施設というのは、部屋ごと作るわけですね。部屋ごと工場において作り、それをその場に運んで組み立てるということでございますから、工事現場においていろいろな騒音ですとか、あるいは廃材ですか、そういうようなものが出ない。そして、工期が短いということで、地域に与える負荷というのも少ないものでございます。実際に入ってみて、これが木造ですかとみんなが思うわけですね。あるいは1階、2階部分は鉄筋コンクリートで、その上にCLTを載せるというようなやり方もございますので、今回グラーツ工科大学、これはこの道の最も進んだ研究をしている大学でございますが、それと日本CLT協会の協定の締結をされましたので、このような取組が更に加速をされるものだというふうに考えておるところでございます。
(問)オーストリアの視察に関連ですけれども、大規模に機械化して非常に効率的な林業の現場を見られたということですけれども、一方で、日本の林業は非常に担い手不足などが深刻でありまして、同じようにすることが可能なのかという議論もあると思うのですけど、そのあたりはどうお考えでしょうか。
(答)それは、かの地におきましては、林業というものが、いわゆるファッショナブルになっていますね。格好いい仕事として、特に若い方々が多くそれに携わるようになっているということでございます。
 また、森林の管理にはフォレスタというのでしょうか、森林官、官僚の官ですね、そういうものが任命をされて、計画的な伐採あるいは計画的な植林等々に強い権限を持っているということでございます。
 日本の場合に顧みて、戦後の復興期から70年代に至るまで非常に林業は活況を呈しておりました。それは建築ブームもございましたし、あるいはスギの木1本何千万みたいな、そういうような商売が成り立っておったわけでございますが、ただただ日本の林業が衰退しているのは、外材が入ってきたからだ、おしまいということではないであろうということでございます。
 幸いなことに、戦後植林をしたものが伐採期を迎えておるわけでございまして、木の供給そのものに問題があるわけではございません。そこにおいていかにして効率的な経営を行うということは、かなり徹底したコスト分析というのを行っていかねばなりませんし、同時に流通の形態も、今のように木を切りました。それを木材市場に出しますというような、そういう流通の形態がこれから先もベストなのかといえば、そこにはいろいろな議論があるだろうと思っております。ですから伐採の現場、そして流通の在り方、そしてCLTというものになった場合には、建物の建て方も変わってくるわけでございます。そこにおいていろいろな団体を糾合する形でオーストリアではそういう組織が成り立っているわけでございまして、我が国において、ここは林野庁において詳細な検討をしていただけるものと思いますが、そういう、林野の言葉でいえば川上から川下に至るまでのそういういろいろな団体の連携・統合等々も視野に入れながら、これは私、担当大臣ではございませんので、余りいいかげんなことを言ってはいけませんが、そういうことについて問題意識を持っているところでございます。川上から川下へということは林野の世界でよく言われるところでございますが、実際にそれが具現化できているオーストリアと日本の場合において、やはり徹底的なコストの分析と、そして流通の在り方、それがCLTなるものをこれから先普及させていく上においては決定的に重要なのではないかと私自身認識をしておるところでございます。
(問)大臣、話は変わるのですけれども、明後日の3日で地方創生担当大臣になられてから1年となります。この1年を振り返られまして感想をお聞かせいただければと思います。
(答)地方創生という今までにないそういうポストというものを新設をして、内閣として内政の最重要課題の一つとして取り組むということで1年間及ばずながらやらせていただきました。副大臣あるいは政務官あるいは補佐官、そして総括官を初めとする皆様方が本当によくやっていただいて、この地方創生ということが一つの大きな流れになりつつあるという認識は持っております。
 これはやはり全国に多くの自治体がございます。本当にこの地方創生の考え方を真摯に受け止めて実際にやろうということで、従来のように補助金をください、交付税くださいということではなくて、自分たちのところにおける地方創生の課題というものを咀嚼(そしゃく)をして、地域全体の運動として取り組んでいただいているところというのが、まだ面になっているとは申しませんが、いつも申し上げることですけれども、点は密になりつつあるというふうに思っております。
 これから、冒頭に御紹介しましたように省庁の移転、関係機関の移転というのは、民間企業にお願いしておきながら、では、中央官庁は一体どうなのだということでございます。これから先また本社の移転等々も少しずつ見られるようになりました。今まで公共事業と企業誘致というものに地方はかなり支えられてきたわけですが、その二つに過去のような役割を期待することができない以上は、その地域地域で本当に新しいものを見つけていく、第1次産業あるいはサービス業にそういうような可能性はたくさんあるのだということで、そういう議論があちらこちらで行われるようになったというのは極めて大事なことだというふうに思っております。これが不可逆的な流れとなり、更に加速されるために政府としてまた取り組む必要があるのではないかと思っております。
(問)ありがとうございます。もう一点、地方版の総合戦略が一つの大きな柱だと思うのですけれども、これから各自治体でまとめる作業に入ってきていると思うのですが、国としてどのように連携していって実現に向けていかれるのか、決意のほどをお聞かせいただければと思います。
(答)報道によりますれば、私どもの鳥取県、小さな県でもございますので、何とか全ての自治体が10月にはそれを取りまとめる、全国最速になるかもしれないということでございます。そうしますと、あちらこちらで地方版総合戦略ができる。-何も今回完璧なものができるとは私は、全てがそうなるかどうかは言い切る自信はございません。-ですけれども、そういうような地方版総合戦略を作る、そこにおいては「産官学金労言」といういつも言っている多くの立場の方々がそれに参画をし、今までPDCAなんて聞いたことがない自治体も多かったと思います。そういうような、これも国会でお答えをしていることですが、効果検証を伴わないものをバラマキと言うのだというふうに思っておりまして、きちんとした効果検証がなされる、そして、そこにおいていろいろな数値的な目指すものが明確になるということでございます。
 そして、今まで地方創生人材というのでしょうか、地方に派遣をする場合に中央の官僚、そしてシンクタンクあるいは学者さんということでしたが、それ以外にも門戸を広げて、先般、説明会を行いましたところ、非常に多くの方々がそこにお越しになったということでございます。そういうように幾つも仕組んである地方創生のキーワードというものが、それぞれ具体化しつつあると思います。ただ、世の中みんながうまくいくわけではなくて、そういうことに余り関心を持たれないところもあるのかもしれません。そこはやはり県が全体を統括する形でそういうようなばらつきがないように、県にもこれから先更に役割を果たしていただきたいというふうに思っております。
(問)政府機関の地方移転について、42道府県の提案に関してどういう印象、感想を持たれているかお聞かせください。
(答)先ほど申し上げましたように、1都3県を除いて、鹿児島県を除く全ての道府県から御提案があったということは、極めて有意義なことだったというふうに思っております。それは単に何々が欲しいですということではなくて、それがその地域に来ることが今の地区-主に東京ですが-よりも大きな効果を発現するということについて、それぞれの地域でお考えをいただいております。ですから、それが今までの取組と全く違うところでございまして、今回御提案のあった、まだ全部私も子細に見ているわけではありませんが、42道府県が御提案をなさったものがそういうような説得力のあるものだというふうに期待をするところでございます。
(問)同じく政府機関の地方移転についてなのですけれども、先ほど大臣、42道府県の国の機関27、独法42法人というふうにおっしゃいましたけれども、この中で地方からあった提案を、何らかの要件を満たさなかったということで受理しなかったというのはあるのでしょうか、もしおわかりでしたらお教えください。
(答)受理しなかったというものはございません。そんなものを受理しないとか、そのような四角四面のようなことを私どもは申しません。それぞれからの御提案につきましては、いろいろな御相談が私どもにも寄せられており、要件を満たさないので、こんなものだめというようなものはなかったと承知をいたしております。
(問)政府機関の地方移転なのですけれども、道府県が公表したものの中には、茨城県つくば市に立地する研究機関などかなり多数含まれていて、東京一極集中とは無関係なものも多いと思われるのですが、これらについては今後の扱いについて改めて聞かせていただければと思います。
(答)そういうのが多いかどうかというのは、それは物の見方でございます。つまり、竹下内閣において政府機関の移転をしましたのは、23区の地価高騰を抑制するという目的がございました。今回の場合には、東京に集中しているものを、その後もう平成の初めから27年も経っているわけで、通信網の発達あるいは交通網の発達等々、全く違う状況にございます。東京23区の地価高騰の抑制というようなことが目的なのではありません。東京都に集中しているものを移すことによって、単に移すことに意義があるのではなくて、移したことによって交通網や通信の発達により同等、それ以上の効果が期待できるということが大事なのでございます。ですから、つくば市というのも、今見てみますと幾つかございますが、そこは子細に検討しないと余り軽々なことは言えませんが、つくば市にあるものだからだめという話ではなくて、つくばにあるものが移ることによって、よりその地域が、あるいは日本全体が発展をするということであれば、それはそれで最初からこれは東京の一極集中防止のためだから排除しますというようなことを申し上げるつもりはございません。それは、例えばつくば市にいろいろなものがある。だけど、それが、例えばある産業に特化したものであったとして、そういう産業がほかの地域でより集積が進んでいるとするならば、そこにつくば市から移ったほうがオールジャパンのためであるということは私は全くないとは思いません。ですから、つくば市にあるものだから最初からだめですよというようなことではございませんが、やはり東京都にあるものを移転するということに主眼はございます。主眼はありますが、つくば市だからだめというような形式論理では論じないということでございます。

(以上)