森内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成26年9月3日

(平成26年9月3日(水) 12:44~13:14  於:消費者庁6階記者会見室)

1.発言要旨

 一昨年の12月26日に安倍内閣の一員として、女性活力・子育て支援担当大臣、消費者及び食品安全担当大臣、少子化対策・男女共同参画担当大臣など内閣府特命担当大臣を命ぜられ、617日間務めてまいりましたが、本日をもって退任することになりました。消費者担当大臣、少子化担当大臣としては、過去最も長い期間、過去最長の期間を務めさせていただきました。皆様には大変お世話になりましたこと厚く感謝を申し上げます。
 女性活力担当大臣、男女共同参画担当大臣としては、初めての取組が非常に多かったというふうに思っております。まず、役職からして初めての役職、女性活力担当大臣という役職が安倍総理によって創設されました。その下で取り組んできて、初めて待機児童の解消の加速化プランを作成し、予算を獲得し、初めて育児休業給付の引上げをして、世界の中でも最高レベルの育児休業の給付率を実現しました。
 また、初めて公共調達を女性という目線、女性活躍をしている企業に有利にする、又は女性限定の補助金をつくる、これも史上初でございます。そのための指針を策定いたしました。
 また、初めて経済団体へ要請をし、企業取組の見える化を実現いたしました。今、男女共同参画担当大臣のホームページに、各企業に女性活躍についてのデータを載せていただいております。
 また、女性国家公務員の採用・登用の促進にも取り組みました。今までで初めて3倍の速度で、女性官僚の中の管理職への登用が進んでいます。
 男性の意識改革にも取り組みまして、イクボスを研修する取組、また輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会、これも初めてつくらせていただきました。
 また海外への発信でございますが、9月12日から14日まで、国際女性のためのサミットが開かれます。
 少子化対策についても、初めての挑戦を続けてまいりました。少子化対策3本の矢として、今まで取り組まれてこなかった出会いや結婚に対する予算獲得、結婚・妊娠・出産・育児と切れのない支援をするための予算、特に初めて地方で使える交付金というのを創設いたしました。これは、今度の概算要求でも出させていただきました。
 また幼児教育無償化も、今まで自民党が公約に掲げてきても実現できなかったものを初めて実現に踏み出しました。私から呼びかけて、政府・与党連絡調整会議を開催いたしまして、幼稚園の第2子半額、第3子無料、その他、低所得の家庭への無償化の実現をいたしました。
 更に、障害者差別解消法の成立、子どもの貧困対策大綱の策定、危険ドラッグの対応などにも取り組みました。
 消費者行政について申し上げますと、消費者が安心して安全で豊かに暮らすことができる社会の実現に向けて、私が20年間消費者弁護士として取り組んできた経験を生かして、消費者裁判手続特例法など4本の法律を成立させました。
 また、地方消費者行政の強化に取り組みまして、予算も当初予算で獲得することに成功いたしました。
 また、国民生活センターの廃止・見直しなど、これまで指摘されておりました課題についても結論を出すことができました。
 この間、ホテル、レストラン等のメニューに関する不当表示、偽装表示の事件等が発生いたしまして、行政処分としては過去最速の処分も出させていただきました。
 また、原発事故による風評被害対策についても、消費者庁として初めて取り組み、予算も獲得して、全国的な調査も行ってきたところでございます。風評被害の対策については、これまでしっかりとした実態の把握がなされておりませんでしたが、こういった全国調査を3回繰り返してきたことによって、今後の政策の計画が立てられるようになったと思っております。
 特定秘密保護法に関しましては、安倍総理から直々に指示を受け、重要法案である同法の整備、そしてその施行の準備に全力を尽くしてまいりました。今まで必ずしも統一したルールがなかった、こういった国の特別な秘密についての整備でございますが、法律でしっかりと諸外国に肩を並べる整備ができたということ、非常に意義が大きかったと思っています。国民の皆様から寄せられました知る権利への懸念に対しては、諸外国の中でも最も透明性の高い整備ができたと思っております。更に第三者機関の整備に向けて継続して取組がなされることを期待しております。
 各担当分野とも引き続き課題は山積をしておりますが、できることを全力で行うことができたというふうに思っています。後任の大臣の下、国民の期待に応えられるように、また更にしっかり取り組んでいただきたいというふうに希望しております。
 私からは以上でございます。

2.質疑応答

(問)1年8カ月という間お務めになられて最も印象に残っているお仕事と、あと後任大臣に対して、これはやってほしいという御要望があれば教えてください。それから、御自分がどのように今後かかわっていくのかというのをお伺いできればと思います。
(答)そうですね、私は最も印象に残っている分野というよりは、この大臣職自体が、自分の予想外の就任でございましたので、就任したこと自体が自分にとってもサプライズであったということで最も印象に残っております。参議院当選1回での入閣というのは史上初でございましたので、その意味で大きなプレッシャーもございました。
 先ほど稲田政調会長と最後の閣議でお会いをしたときに、2人で手を取り合って話したことは、1年8カ月前に、12月26日に私たち2人が呼び込みをされたときに、やはり2人で手を取り合って話したことでございます。2人とも、まさか自分が大臣になると思っていなかったので、非常に驚いて、これからどのように大臣としてやっていこうかという話を官邸で2人でしたことを、「まるで昨日のようだね」と、稲田政調会長が先ほど私に言ってくれまして、私も、「本当にまるで昨日のようですね」というふうに話をしました。
 それと同時に私は、初めてという修飾語が一番つくのですけれど、1回生での入閣が初めてというほかにも、福島県では女性大臣が初めてでした。東北地方の中でも女性大臣が初めてでした。そのことが私にとっては一番重い責任を感じました。被災地でございますので、原発事故の後の福島県、そして被災地東北から女性で初めて閣僚に入るということが、被災地の女性たち、そして子供たちにとって非常に大きな責任を背負ってなるのだという思いで務めてまいりました。ですので、どの分野におきましても、私は福島県と被災地という視点を忘れずに務めてまいりました。
 例えば、女性の活躍の部分でも、復興における女性の役割ということを見てまいりまして、白書にも書きました。私は、1年目の白書は10冊出しておりまして、2年目の今年はまだ数えていませんが、10冊以上出していると思います。10冊出した大臣も史上初なのですが、その白書の全てに被災地の記載をするように指示を出しまして、被災地の記録を、特に女性と子供の記録を全ての分野、自殺なら自殺、交通事故なら交通事故、障害者なら障害者、全ての白書に入れ込みました。これも初めてです。しかし、私がそれをやったことで後任の大臣もやっていく。そうすると、被災地の記録がずっとこれからも、被災地の障害者が今どうなのか、被災地の子供がどうか、被災地の青少年がどうかということがずっと記録になって残っていくということだというふうに思います。
 もう一つは、国会の答弁回数です。私の答弁回数は2,431回でした。非常に多い答弁を国会で行いましたから、国会対応というものが非常に印象に残っておりまして、よい経験、よい勉強をさせていただいたというふうに思っております。
 数字をいろいろ調べたのですが、閣議の出席回数が168回、記者会見が158回、取材対応が70回、出張は国内、海外合わせて32回というふうになっています。
 1回生でございますので、役所の中でも、大臣室に入ってくる官僚の部下は、全員私よりも年が上でございます。そのような皆さんが、1年生大臣の私をしっかり支えてくださってきたことに非常に感謝をしておりますし、また私も、初めてというふうに言われるからには、思い切ってやろうと思いまして、いろいろなことに、初と言われること、必ずしも霞が関の中では歓迎をされない、前例主義にとっては受け入れられないようなことにも思い切って挑戦をしてきたと思っています。
 以上です。
(問)消費者の関係でいいますと、大臣でいろいろ尽力された景表法の課徴金制度の導入という問題があると思います。今後、法律案を出していくことになると思うのですけども、後任の大臣に望むことがあったらお聞かせください。
(答)私のほうで道筋を決めまして、次の国会で出したいと思っている法案には、課徴金の導入を決めるための景表法の改正案、それからもう一つ、女性活躍推進法というのがございますが、どちらも後任の大臣に頑張っていただきたいなと大きな期待を寄せているところです。
 課徴金につきましては、食品の偽装表示というものが国民に大きな不安を与えました。また、海外に対しても、日本の食というものの信頼を揺るがしかねない事案だと思っています。このことについては、課徴金の制度を長らく消費者庁の中で議論してきた、その蓄積を踏まえてしっかりと導入に進んでいただきたいというふうに思っています。
(問)お世話になりました。
 森大臣は、もともと消費者弁護士として消費者問題に長く取り組んでこられて、消費者庁創設にもかかわったお一人になると思うのですけれども、その経歴から、消費者行政担当大臣を務められた今の率直なお気持ちというのはどのようなものでしょうか。
(答)そうですね、私は消費者弁護士でして、消費者弁護士の場合は、消費者事件による被害者です、被害者の家族です。被害者家族として消費者事件がこの国に起きたときに、泣き寝入りをするしかない、法律が整備されていない、そしてその法律を担当する省庁がないということを身をもって知っていました。そして、そのような多くの同じような消費者被害者、又はその被害者の特に子供たちには全く責任はございませんので、同じような境遇にある子供たちを助け合いと思って弁護士になりました。
 弁護士になりましたが、法律が整備をされていないという現実に突き当たって、法律をつくるために海外に留学し、その後、国会議員になって、国会議員としての公約に消費者庁をつくりますというのを掲げました。
 その後、多くの方の御協力を得て、当時の福田総理の公約の中に、消費者庁創設を掲げていただき、当時の消費者庁設立準備担当大臣が岸田外務大臣でございました。けさも岸田外務大臣とその話をしました。岸田大臣がおつくりになった消費者庁が設立5周年を迎えましたよという話をいたしました。
 そういった意味では、消費者庁という役所が一つできたことによって、消費者関係の法整備が進んできたと思います。特に基本法の整備が進んでまいりました。役所がないときには、問題が起きるたびに対症療法で個別法をつくっていくという方法でしたけども、それをしっかりとまとめるコンプリヘンティブな、そういう法律が契約法、基本法とつくって整備をされてきた。今からはその法律の体系立った整備をもとにして運用をしていくという時代に入ったのだと思います。
 最初に消費者庁と消費者委員会をつくったときに、私が本を書きました。「消費者庁設置法」「消費者委員会設置法」という本でございますけれど、そこに創設したときの思いが書いてあります。それを改めて読み返しますと、当時の福田総理、野田聖子担当大臣との対談や、増田総務大臣、岸田消費者庁設立準備大臣との対談が載っているのですが、そのときに、消費者庁というのが、これから様々な弱い立場の皆さんの救済をしていくために司令塔となって活動していくんだと、横串を通して縦割りの省庁の中に消費者保護という目線を入れていくんだということが掲げてあります。その設立当初の目線を忘れずに、もう一度その視点に立ち直って5周年目、これからの5年間を進んでいってほしいということを先日の5周年の記念の会合でもお話をいたしましたので、このことに関しては、私のライフワークでもございますので、大臣を退任した後も、新しい大臣に対してお支えできることは何でもしていきたいというふうに思っております。
(問)お世話になりました。
 夕方発足する次の内閣では、女性の登用が最大になるのではないかというふうに言われております。そのことに関する森大臣からの期待というか感想を聞かせてください。
(答)まだ総理による組閣の前ですので、私からなかなか申し上げる、私はそのような立場にはないと思っておりますが、女性閣僚が多数生まれるとしたら、大変うれしいというふうに思います。
(問)2点教えていただきたいのですけれども、まず一点目なのですけれども、被災地出身の閣僚としてできなかったこと、もしくは消化不良だったなと思うことを教えていただけますでしょうか。
 あともう一点が、今後、風評被害対策の重要度が更に増すと思うのですけれども、後任の大臣に期待することを教えていただけますでしょうか。
(答)被災地出身の大臣としては、全力で走り抜いたと思っています。大臣に就任するときに官邸に呼び込まれたときに、総理から指示書という紙を渡されるのですけれど、そこに、「女性活力・子育て担当大臣、消費者及び風評被害担当大臣」と書かれておりました。もう一枚指示書がございまして、指示書を2枚渡すということが珍しいようでございますが、もう一枚の指示書にこう書いてあったのです。「全大臣が復興大臣である」と心得て、被災地のことは前例ない取組を全力で行うようにという趣旨のことが書かれておりました。私はその2枚目の指示書のときに見入ってしまいまして、総理からそのときに言葉をかけていただいたのですが、私としては、就任のときに最もうれしかった指示です。ですから、通常の指示書をもらっただけではできなかったことがたくさんできたと思っています。先ほどの白書に全て被災地のページをつくるというのも、もうでき上がって持ってきた下書きをもう一回全部官僚に突き返してやり直しさせることができました。それは、その指示書があったからです。
 また、防災、復興の指針についても、女性目線の指針を初めてつくりました。これは、防災の指針は防災担当大臣の所管ですから、通常であれば私がつくることができません。しかし、その指示書のおかげでつくることができ、古屋大臣も協力してくれました。この女性がどうやって復興、防災にかかわっていくかという指針は、各自治体に送らせていただき、また英文にも訳させていただき、非常に好評いただいております。来月10月行われる国連防災会議でも、女性の目線というものを、失礼いたしました、来月ではなくて来年でございます。来年行われる国連防災会議でも、その女性の目線をしっかりと生かしていきたいと思っております。
 そういった意味で、私のできることは全てやってまいりましたが、被災地の状況というのは刻一刻変わっています。復興のために今後大事になるのは、御指摘のとおり、風評被害の対策や人に対するソフトの政策です。ハード面の道路をつくったり、復興住宅をつくったりすることについては、スピードアップして、将来の予測もつくようになってきました。しかし、これからは子供たちの心のケアや、これからの被災地を担っていく子供たちの教育や、仮設住宅に長く入っていた高齢者の皆様などの身体的なケアや心のケア、放射線に対する不安に対する正しい知識の普及や相談体制などソフト面での体制がこれから重要になってきます。そういう意味では、被災地の状況が時の経過とともに変わっていくことをしっかりと捉えて、これからの新しい内閣では、しっかりと新しい課題にも向き合っていただきたいなと思っておりまして、これからは被災地出身の一国会議員として、被災地の声をしっかりと政府に届ける役割を果たしてまいりたいと思っています。
(問)消費者庁の政策は、空白の時期があったと言われたこともあったのですが、森大臣の就任の機会にかなり、ほとんどの宿題は表面的には解決されたと思います。ですが、消費者安全法は内閣府令に落ちていることがいっぱいあり、当初予算で地方の予算を確保しただけで、その後、準則の課題とかいろいろなものが残っていますが、今後、森まさこ大臣が目指していかなければならない、消費者が今後心して取り組んでいかなければならないと思っていることがありましたら教えてください。
(答)消費者庁の課題は、まだまだあります。まだ5歳です。生まれて5年目、5歳になってやっとよちよち歩きを始めたということだと思います。最初の3年間でまた方向を見失って、おっしゃるとおり空白期間もございました。
 最も残念だったのは、担当大臣が訳10人だったと思いますが、短期間で代わっていって、平均で3カ月ぐらいで代わっていったということです。安倍内閣になりまして1年8カ月、過去最長と先ほど申し上げましたけど、消費者担当大臣も少子化担当大臣も、数カ月ということではなくて1年以上、1年8カ月継続しました。このことによって非常に役所が安定して政策に取り組める環境が整ったというふうに思います。その中で予算を、先ほど予算の話も質問の中にありましたが、予算を立てて、それを執行し、その執行具合を見て反省するところを見直し、またその次の概算要求を立てて出すというところまでやりました。このことが非常に大きな消費者庁としての成長につながったと思います。これから5歳から10歳に向けて消費者庁がしっかりと進んでいかなければなりません。
 板東長官が5周年の挨拶で言いました。骨格が整ってきたので、これからは筋肉をつけてしっかりと動けるように、先ほど私が言った、運用していけるようにということだと思います。その中で今、御指摘のあったような個々の論点がございます。そういった論点についてもしっかりと一つ一つ取り組んでいっていただきたいと思います。
 御指摘の課題以外にも、まだまだ積み残しの課題がございます。私は党に戻りましても、一国会議員として消費者問題にしっかりと取り組んでまいりたいと、政府に対しても意見を申し上げていきたいと思っております。

(以上)