山本内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成26年5月20日

(平成26年5月20日(火) 9:44~10:04  於:合同庁舎8号館1階S106会見室)

1.発言要旨

 お手元にお配りしている資料のとおり、第8回司令塔連携・調整会議を22日の午後5時30分から開催をいたします。今回は3回にわたって実施した各司令塔からのヒアリングを踏まえて、夏頃に予定している提言の取りまとめに向けた議論等を行うということにしております。
 それから、IT政策担当大臣として一言申し上げたいと思いますが、政府が情報セキュリティ政策会議を強化をしていくと、この権限を強化をしていくという報道がありますが、サイバーセキュリティ政策会議を格上げをしてNISC(内閣情報セキュリティセンター)機能を強めていくと、これは非常に今の日本にとっては必要なことだと考えておりまして、先般アメリカに出張した際も、ワシントンで国土安全保障省とか、あるいは国防総省とかNSC(国家安全保障会議)とか、そのようなところをずっと回らせていただいて、アメリカ政府の関係者、ホルドレン大統領補佐官とも会いましたが、ホルドレンさんとはサイバーセキュリティの話ではなかったんですが、サイバー関係のいろいろな意見交換をする中で、サイバー分野に関する調整機能を政府がしっかりと高めていくということは極めて重要だと思っていますので、IT政策担当大臣としてもこの流れを全面的に後押しをしていきたいと考えております。
 今日のプレゼンを行いたいと思います。
 今日は簡単に、近日中に内閣府特命担当大臣として取りまとめ、それから決定を予定している案件について御説明させていただきたいと思います。
 近日中にこれまで行ってきた成果を発信する案件が結構あるんですね。
 まず一つは、科学技術イノベーション総合戦略なんですが、この改定版を6月末に閣議決定を予定しております。ここにいろいろと盛り込むべきものがあるということで、しっかり総合科学技術会議等々で議論していくということになります。
 それから、IT政策については、世界最先端IT国家創造宣言の改定版、これも閣議決定なんですが、これを6月に予定をしております。
 更には、パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱、これも大きな話で、毎回オブザーバーが記者会見というか、議論にわっと押し寄せているんですが、これについて今いろいろと取りまとめの議論に入りつつありますので、このパーソナルデータの利活用に関する制度大綱も6月に決定をする。これを踏まえてIT戦略本部の方で法案を作るということになると思います。
 それから、ITコミュニケーションの活用促進に向けた提言、これもいよいよ佳境を迎えておりまして、5月中にこのコミュニケーション活用についての提言をまとめて発表したいと考えています。
 それから知財戦略ですが、各タスクフォースの議論をまとめてきましたが、知的財産推進計画の2014年版、これは6月に本部決定を予定しています。
 それから総合海洋政策の分野ですが、参与会議の意見書、これは5月下旬ぐらいに出てくるということになっています。
 それから「国境離島の保全、管理及び振興のあり方に関する有識者懇談会」最終提言が6月下旬から7月頃にかけて、これも発表されると、このような流れになっています。
 それから情報セキュリティ、このIT利活用セキュリティ総合戦略推進部会、これは特にサイバーセキュリティをいかに産業競争力に結びつけていくかという視点の中身になってくると思いますが、IT利活用セキュリティの総合戦略についての提言、大体これは7月ぐらいになるということで、今までの1年数カ月の成果がざっとこのように出てくるということだけ少しお知らせをしておきたいと思います。
 それから、これは、総理と官房長官と外務大臣にお渡しをしていまして、これから具体的に外務大臣にも、またお目にかかって働きかけていこうと思っています。内閣府特命担当大臣としての提言をまとめて関係大臣にしっかり働きかけていくという、少し新しい機能に一歩踏み出したいという話をこの記者会見でも言わせていただきましたが、いよいよそれをこれから実行に移していきたいと思います。
 あらためて、もう御覧になった方もいると思うんですが、『国際情報戦を勝ち抜くための日本大使発信強化の方策』、これは領土・主権に係る問題の対外発信を担う中で私が痛感していることなので、領土担当大臣として発信すべき項目だと考えています。
 ざっと説明したいと思います。
 提言の背景なんですが、日中、日韓関係は非常に大事だということ。総理が言っているように、中国とは戦略的互恵関係を作る。日韓関係は最も重要な二国間関係であって、韓国は価値観を共有する非常に重要なパートナーだということは、もうこれは言を待たないということなんですが、それはそれとして両国政府が主権、領土、歴史認識等について事実と違うことを国際社会に発信しているという現実があります。外交リソースでは残念ながら中国に圧倒されている状況もあります。この日本の国益に合致しない動きについては、日本政府として効果的な対抗策を講じると、これは当然のことだと思っていまして、私の領土担当大臣としての1年数カ月、対外発信に関わってASEANに行ったりアメリカに行ったりした経験からいくと、発信力は、これは組織ではなくて個人にあると、つまり大使の人事と任国での活動が国際広報戦略の正に鍵なんだということだと思います。
 今、この限られた予算の中で日本大使は非常に頑張っていると思います。ほとんど全ての大使が各国で奮闘していると思いますが、皆さん御存じのとおり、大使会議が東京で行われた時に、岸田外務大臣にお誘いをいただいて話をさせていただきましたが、人生経験、全人格をフル稼働して現地政府とかメディアに食い込むと、このような気概と覚悟が不可欠だという演説を実はさせていただいたんです。政策の知識とか教養、これは当然ですが、任国にいる日本の大使が、政治家もジャーナリストもそうですが、とにかく相手に一歩でも食い込むと、そのような迫力がないといけないのではないかという話をさせていただきました。
 それから、大使の個人のインセンティブをどんどん上げてもらうということはもちろんなんですが、総理官邸に各国大使の活動をフェアに評価するシステムを作ることが急務だと思います。これは、総理とお目にかかったときもお話をさせていただきました。各国大使に士気とインセンティブを与えると、高い意識と。これが非常に大事だと思います。
 それからもう一つは、大使間の論戦。今おそらく主要国60カ国以上ですか、正確な数はわかりませんが、各国で、中国、任国の、相手国の中国大使と日本大使が主要メディア等々を通じて論戦をしています。領土・主権の問題、歴史の問題等々について論戦をしている。このような中で本当に効果を上げている大使がいれば、それをベストプラクティスとして共有する、これも大事だということです。
 ということで、5つのポイントをここに私の提言の中で挙げたんですね。
 まず、発信力のある大使を任命しなければいけない。
 国際世論形成の観点から言うと、重要な国の大使ということで言うと、アメリカ、英国、これは飛び抜けて重要だと思うんですね。それからベルギー、シンガポール、インド、エチオピア、フランス、ドイツ、このような拠点、少なくともこのような拠点の大使は発信力から見て適材かどうかを十分検討して選任をするべきだと。必ずしも霞が関とか永田町の用語に習熟した人が発信力があるとは限りませんから、そこはしっかり人事の中で見るということだと思うんですね。
 更に、大きな国の大使になるということは、それなりの経験も必要だと思いますし、霞が関とか永田町でのいろいろな交渉力、根回し力等々も必要だと思いますが、少なくともそのような大物大使、例えば非常にベテランの大使を送るという場合でも、発信力の乏しい大使という言い方は少しよくないんですが、弱い大使だったら、やはり次席、三席に強い発信力を持つ人材を充てると、このペアリングの妙を図るということが極めて大事だと思っています。
 それから2番目、これを是非実現してもらいたいと思うんですが、名称大使を作って活用する。
 実は昨日、外務省の方から報告が来たんですが、韓国は、日本海ですね、日本海、向こうは「東海」と言っているんですが、もちろん「日本海」が正しい呼称なんですが、東海担当名称大使という人がいて、この人がかなりフル稼働しているということで、名称大使を活用する。
 やはり発信広報担当を長期滞在させる。例えば、ワシントンに5年、10年、ロンドンに5年、10年そこに配置しておくということだと思うんですね。肩書は大使にするということで、例えばワシントンなんかでも、一番長い大使が今5年ぐらいで、確かアフリカのある国の大使だと思うんですが、その人がいろいろ取りまとめを行っているということも聞きましたが、5年、10年いれば、特にワシントンはシンクタンクがすごく大事ですから、あらゆるシンクタンクの例えば会議に発信をする、人脈を作る、これだけでも全然違うと思います。これは発信と広報に限定する。
 選り抜きの人材を見出す。必ずいますから。これはもちろん外交官経験者なのか、あるいは民間なのか、いろいろなルートで探していけば、必ず選り抜きの人材がいますから、拠点国には最低でも5年、できれば10年。
 女性大使がいいと思います。ワシントン、それからロンドン。安倍内閣は女性の活用を掲げていますから、あらゆる意味で能力があって、非常に魅力がある、魅力があるということは、つまり人を惹きつけるような、すなわち人脈を作れるような魅力のある、能力のある女性を名称大使にしてワシントンとロンドンに置くということを、私はこれは強く領土担当大臣としての経験から、外務大臣にも改めて御提言をしたいと思いますし、この話は、もう一回言いますが、総理にも官房長官にもお伝えしてありますので、必要があればその辺にも働きかけていきたいと思います。
 三つ目、評価とインセンティブなんですよね。
 評価システムは実は確立できるんです。
 例えば、某日本の新聞の記事検索データベースがありますが、各国にありますから、このような記事検索データを使って、その大使がどのくらい登場しているかということはきちんと数値として出せますから。例えば中国大使との比較で定量評価をするということは大事だと思います。
 あるいは現地の日系の企業人のブログ、中にはかなり率直に書いてあるブログもあります。現地の日系企業の活動を応援するということも大使の役割ですから、このようないろいろなルートで評価を探る。
 それから、これも申し上げたいと思うんですが、SNSを大使にも活用してもらう。今度ヒッチンズ大使を直滑降ストリームにお招きします、イギリスの大使。日本語も上手なので日本語で行おうと思っているんですが、ヒッチンズ大使がおっしゃっていましたが、英国ではやはり外交官は、任国の大使はほとんどSNSを使っているんですね。つまりSNSを使うということはどのようなことかというと、何を行っているかということを外に発信せざるを得ない。更に、任国の国民に少しでも近づこうという努力があれば、ツイッターのフォロワーは増えるわけでしょう。フェイスブックの「いいね!」が増えるわけでしょう。ですから、やはりきちんとこれはフェイスブック、ツイッター、これを使ってもらって、常々どのような人と会っているのか、あるいはフォロワーがどのくらいいるかということを確認する。これだけでも全然違うと思います。
 それから、インセンティブの付与。
 先程申し上げましたが、ほとんどの大使は、この限られたリソースの中で非常に頑張っていると思います。ですから常に、皆さんに申し上げたいのは、ネガティブリストではなくてポジティブリストで考えるべきだと思うんです。高い評価を得た大使には、やはりヒューマンタッチが必要だから、総理とか官房長官、所掌大臣、月に1回ぐらい電話を入れて状況を聞く。これは頑張っている、例えば大使館にいろいろなサポートをする。これは制度的にそんな簡単ではありませんから、これだけでも多分大使のインセンティブはおそらく全然違うと思っております。この話も総理にも官房長官にもさせていただきました。
 それから、メディアトレーニング。
 大体大使になる人がメディアトレーニングを受ける必要があるのか、おかしいではないかと言う人もいるかもしれませんが、必要だと思います。
 中国大使との論戦、皆さん御存じだと思うんですが、今年1月、ダボス会議の前に、BBCの某番組で駐イギリス日本大使と駐イギリス中国大使がディベートをしました。もちろん林大臣も頑張っておられたんですが、これ以上コメントしませんが、やはりメディアトレーニングをきちんと行った方がよいと思うんですね。特に拠点国の公使クラスにも、その道のプロによる集中トレーニングを行った方がよいと思います。
 ベストプラクティスの活用。
 先程言いました。徹底的にうまくいっているところ、各国大使の発信の実績効果を検証して、問題点、課題点を洗い出してベストプラクティスを共有する。これをメディアトレーニングにも反映する。これも必ず行った方が私はよいと思っています。
 最後に、メディア関係者の人脈は、これは非常に大事であって、任国の大使がその国のメディアと日頃から人脈を築いていく。特に日本に好意的なメディアとか、特定層に影響力のあるメディア等のルートを開拓する。
 例えば、ある有名なシンクタンクだけと行うとかそのようなことではなくて、もう少しきちんと分析をしていろいろなルートを開拓する必要があると思います。
 それからシンクタンク、拠点国のシンクタンクの話をしましたが、少し関係を総点検した方がいい。例えばイギリスだったらここ、アメリカだったらここではなくて、どこに食い込むべきかロードマップを作成する必要があると思います。
 ということで、この提言をこれから是非内閣府特命担当大臣として政府の各所に働きかけていきたい。まずは外務大臣にお目にかかって、この提言の実現についてお願いをしていきたいと考えております。
 ということで、これで終わりですね。以上です。
 先程申し上げましたとおり、内閣府特命担当大臣としてやはりきちんと発信をし、政策を進めていく上のルートを、やはり新しいルートをどんどん開拓していきたいと思っていまして、知財担当大臣としても、各タスクフォースの提言をまとめて、タスクフォースの提言として私の大臣名で関係大臣に届けるとか、あるいは官邸、総理に直接説明するとか、そのような新しい機能進化に向けて頑張っていきたいと思っています。
 何か御質問があればお受けしたいと思います。

2.質疑応答

(問)NHKの高野です。大使の関連ですけれども、アジア大洋州局の大使に演説をしてから数カ月経ちますが、日本大使の発信力に変化があったと思われる点を教えてください。また、課題は何かありますでしょうか。
(答)それは提言を出しただけなので、まだこれからしっかりと進めていただくように領土担当大臣、領土・主権をめぐる問題の対外発信担当でもありますから、その立場で働きかけていきたいと思いますが、どのような効果がここまでにあったかということはわかりません。
 何度も言っているように、大使も公使もすごく頑張っていると思うんですね。例えば、今回5月の出張でアメリカに行ってきました。ワシントンD.C.に行って佐々江大使に会ってきました。佐々江大使は非常に仕事ができる有能な大使だと思います。非常に頑張っておられるし、アメリカのおそらくいろいろな要所にも食い込んでおられると思うんですね。
 それから、公使にもお二人会ったんですが、筆頭公使の泉さん、この人が中国専門家で、本当に中国のことをよく知っている。そのような視点も持った上で、アメリカで精力的にいろいろな活動をされている。それから山田公使、この人は韓国も中国もアメリカもよく知っている。元々アメリカンスクールだと思いますが、非常に強力だと思いますね。
 私が思ったのは、このような強力なプロフェッショナル外交官の、例えばワシントンだったら体制がある。そこに例えばものすごく優秀な女性名称大使を加えて、この人がずっと長くいて、アメリカのシンクタンクをぐるぐる周りながら発信をし人脈を作る。そのようなことによって、例えばワシントンの強力な体制が更に進化をすると感じました。
(問)関連ですが、女性名称大使についてお伺いしたいんですけれども、こういう実現というのは、省庁の垣根を越えてやるというのはなかなか難しい面もあるかと思うんですが、いつ頃までに、どういう形で実現したいとお考えでしょうか。
(答)それはまだ第1段階目として、内閣府特命担当大臣としての提言を総理と官房長官と外務大臣にお届けをしたところなので、まず鍵は、岸田外務大臣の御理解をいただくということだと思うんですね。ですから、もう一回外務大臣と約束を取って、具体的に是非進めていただきたいということを行いたいと思いますし、岸田外務大臣に御理解をいただかなければ実現しないと思いますから。しかし、そのような過程の中で、もちろん総理にも官邸にもいろいろと働きかけをさせていただきたい。
 評価のシステムを作るには、外務省ではなくて官邸が行うべきだと思いますね。大使の評価は、身内の評価はなかなかできにくいと思いますから、総理が中心になって、あるいは官房長官が中心になって行っていただく。
 おそらくこの提言を出したというニュース、報道されなかったとしても、例えばブログ、外務省での視聴率は非常に高いので、これを書いただけでも相当霞が関では浸透していますから、それだけでももしかすると各国大使のインセンティブを上げることに役立っているのではないか、あるいは本当に目に見える実績をきちんと上げていってもらいたい。それが透明に評価される状況になるということを感じただけでも、一生懸命行っていただいていると思いますが、より一生懸命行っていただけているのではないかと感じています。
 よろしいですか、ありがとうございました。

・説明資料(PDF形式:168KB)

(以上)