山本内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成25年11月26日

(平成25年11月26日(火) 9:08~9:28  於:合同庁舎4号館7階742会議室)

1.発言要旨

 閣議について御報告することは特にありません。
 今日は、中国の国防部が東シナ海上空に防空識別区を設定して、この当該区域内を飛行する航空機が中国側の命令に従わなければならないと、こういう旨を発表いたしましたが、それについて領土担当大臣としての見解を述べたいと思います。
 11月23日に中国側が発表した、いわゆる「東シナ海防空識別区」については、東シナ海における現状を一方的に変更しようとするものであり、様々な問題があるが、特に、領土担当大臣の立場から述べると、我が国固有の領土である尖閣諸島の領空があたかも「中国の領空」であるかのごとき表示をしていることについては、我が国として到底受け入れることはできないと考えております。強く遺憾の意を表明したいと思います。
 政府としては、引き続き、中国による「力」を背景とした現状変更の試みには、我が国の領土・領海・領空は断固として守り抜くとの決意で、毅然(きぜん)かつ冷静に対処していくこととしております。領土担当大臣としては、今後とも尖閣諸島に関する我が国の立場についての正確な理解が国内外に一層広く浸透していくよう、鋭意努力をしていきたいと思います。
 先般、「領土・主権をめぐる内外発信の強化に向けたイニシアティブ」というものを打ち出しましたが、ある意味でタイムリーだったと思っていまして、今回のことについても、現状を一方的に力で変更しようとしているのは中国であるということを効果的にしっかりと内外に理解をしてもらうような発信を先般作ったメカニズムを通じて考えていきたいと思います。
 冒頭はそれだけなんですが、今日も簡単にプレゼンを行いたいと思いますが、新たな研究開発法人制度についての議論がいよいよ佳境に差しかかってきました。
 一つ申し上げたいのは、これは「科学技術イノベーション総合戦略」、それから「日本再興戦略」、更には「骨太の方針」で世界最高水準の制度を作るということを閣議決定していまして、これは安倍内閣の方針であり、総理の意思だと思っています。今、研究開発法人制度についてのいろいろな議論を聞いていますと、ブログにも書いたんですが、やはり大事な視点を一つ忘れているのではないかと思うんです。安倍内閣の方針として打ち出した世界最高水準の研究開発法人を作る、これがやはり最大のポイントであって、そのために、例えば独法の下で新しい研究開発法人制度を作ってできるならばそうすればよいし、できないのであれば、その枠を超えた新たな研究開発法人を作るということであって、ここが一番のポイントだということを申し上げておきたいと思います。
 それから、行革の立場からいろいろな意見をおっしゃる方々の主張はよく理解をしているつもりですし、独法制度は決して否定するつもりはありません。私も下村大臣も、独法制度は定型的な業務を効率化するということについては優れた仕組みだと思っています。ただ、例えば、いくつかの研究開発法人が独法を出て作られたとしても、それ自体がいわゆる独法制度全体を崩壊させるとか、その存在意義を失わせるとか、そういうことはないと思っていますので、まず申し上げておきたいと思います。
 下村大臣と私は、世界最高水準の研究開発法人は、今の独立行政法人制度の下ではできないと思っています。先程少し申し上げましたが、まず基本思想が違う。独法制度は、英国のエージェンシー制度をモデルにしたということで、「企画と実施の分離」が基本思想になっています。定型的な業務の効率化を図る質を上げるということについて言えば、いわゆる民間の効率化の原理を行政に一応持ち込んだということで、これは優れたシステムだと思っています。
 これに対して新たな、我々が考えている新法人制度、研究開発法人は、これはグローバルな情勢、状況を踏まえて、主務大臣と新法人が密接に連携して創造的な研究開発を推進する、これが基本姿勢ですから、元々哲学が違うということがあります。
 それから、目標、評価等制度の根幹が違う。
 先程申し上げたとおり、定常的な業務を定量的に目標設定、達成度評価するというものが独法制度ですが、我々が考えている新しい法人の制度は、成果を最大化するということが一番のキーで、この創造的な仕事を国際的、専門的、課題解決の視点から目標設定して、評価も先を見越した評価にするということですから、目標とか評価制度の根幹も違う。
 それから、新しい制度は、これからいろいろな議論をしなければいけませんが、例えば、総合科学技術会議がきっちりと関与をするということで、例えば、いくつかの新しい研究開発法人が独法の外に作られたとしても、いわゆる独法の仕組みが届かないから野放図にお金が使われるというようなことはありません。それはしっかりときちんと適切に運営管理する仕組みを作ればよいということだと思っています。
 もう一つは、現場が課題に直面している。
 独法制度も、いろいろな進化を遂げてきていると思いますが、やはり10年以上経っても、現場の研究者とか独法のリーダーからは悲鳴が上がっているわけです。今のままではなかなかグローバルな環境で戦えないと。こういう理由から、下村大臣と私は、新しい研究開発法人は、独法制度の下では、これは難しいと。先程申し上げましたが、世界最高水準の研究開発法人を作るということが目的ですから、我々は今の状況では、独法下では、これはできないと考えているということです。
 これは、新法人のあり方ということを書かせていただいていますが、先程言った厳格なガバナンスということで、自由にさせると、より新しい研究開発法人に自由に活動してもらうということですが、それには当然責任が伴うわけで、これは何か独法の外に新しい研究開発法人を作ると、何となく管理も緩くなって自由になってぬるま湯につかるようなイメージがあるかもしれませんが逆で、むしろこれは厳しい競争研究下に置かれるということなんです。グローバル競争の環境の中に置かれた研究開発法人が成果が出なければ、トップは替ってもらうということですから、むしろ私は厳しい状況になるのではないかと思っています。
 グローバル・スタンダードの研究開発法人と書きましたが、科学技術に国境はありません。これはノーベル賞級の一流研究者の世界ということは、グローバルに活躍するスポーツ選手のような世界ですから、この新しい法人を独法制度下に置くというのは、一流のスポーツ選手を一般の人と同じように扱うというもので、私はこれはナンセンスだと思っています。
 定型的な業務の実施を旨とする今の独法制度の下では、優秀な人材に思い切った待遇を与えられない。先程申し上げたとおり、独法制度自体の意義はあると思いますが、この研究開発について言うと、やはり優秀な人材をどんどん海外に流出してしまうんですね。
 例えば、A研究員の例と書いてありますが、日本国内の研究開発法人から海外、オーストラリアへ転出しました。日本での条件、年収840万円、オーストラリアの条件、1,600万円なんですね。給与は倍です。研究室も拡大、グループリーダーに昇任、これでヘッドハンティングされてしまいました。
 B研究員の例。名前は出しません。これは日本の国内の研究開発法人からシンガポールの大学に転出しました。日本では主任研究員、研究費100万円。シンガポールでは1億円ですから、研究費100倍、常勤採用、グループリーダーに昇任して、子弟に対するインターナショナルスクールの学費の補助もあったと、こういう形でどんどんヘッドハンティングをされてしまうということなんです。
 数々の研究現場からいろいろな話がありますが、ざっと見ていただければいいので、一つひとつ解説はしませんが、やはりグローバルで戦える研究開発法人にするためには、最新の設備をタイムリーに調達できるような仕組みが必要だと。やはり自己収入が出たときには、それを再投資できるようなインセンティブもないと。もう一回言いますが、世界最高水準の研究開発法人としてなかなか世界では戦えないということです。
 ということで、これから政府内、党内でもいろいろな議論がありますが、もちろん行革は大事だと思いますし、独法下に置くべきだという方々ともきちんと論理的に議論をして一つの方向性を見出したいと思います。もう一度言いますが、目的は世界最高水準の研究開発法人を作ることですから、これはやはり科学技術イノベーションを成長戦略の中心に据えた安倍内閣でしかできないと思いますし、これを機に是非ブレークスルーを果たしていきたいと思っています。
 以上です。何か御質問があればお受けしたいと思います。

2.質疑応答

(問)NHKの高野です。 最初の中国の防空識別圏に関連してなんですが、具体的に、今、中国もいろいろな形で情報発信をしてきているかと思うんですが、具体的にこの関係でどういうふうに日本としての情報発信をしていきたいと考えていますか。
(答)まず、中国政府に対しては、外交ルートを通じて抗議をしていると。総理も、昨日の決算委員会で、撤回を求めるという話もしていますし、これはきちんと外交ルートで今しっかり中国側に申入れをしているんだと理解をしています。
 私の領土担当大臣の立場からいくと、先般、発表した「領土・主権をめぐる内外発信の強化に向けたイニシアティブ」の中で今月末に「領土・主権をめぐる内外発信に関する総合調整会議」が立ち上がるわけですから、こういう事例をしっかりと踏まえて、もう一回言いますが、やはり現状を変更しようとしている、力で変更しようとしているのは、日本ではなくて中国側だということをしっかり発信をしていきたいと思います。そういう意味で、先程申し上げたとおり、今回のイニシアティブはタイムリーだったと思いますし、やはり一番のポイントは、アメリカ政府がすぐに反応していますから、こういう同じ感覚を持った、例えば第三者、いろいろなところと連携をしながら、日本の立場を内外に発信していく。最初の調整会議で当然話題になると思いますし、それを踏まえてどうやって効果的にこのことを内外に発信をしていくかということをきちんと議論したいと思います。
(問)科学新聞の中村です。研究開発法人のことなんですが、次の通常国会に法案を出されるということでしたけど、その後、実際にこの法人が立ち上がるのはいつ頃なのでしょうか。
(答)それは今の段階ではいつということは申し上げられないと思うんですが、少なくとも今の流れからいけば、12月に新しい独法についての閣議決定を行うということになっています。そこで大きな方向性を閣議決定をして、それを踏まえておそらく次の国会に法案を出すという流れになるのではないかと思います。そこに向けてきちんとこの新しい研究開発法人を独法制度の枠の外に作ると、世界最高水準の研究開発法人を独法制度の枠の外に作ると、こういう流れを作らなければいけないと考えています。
(問)その際、既存の37研究開発法人あるかと思うんですけれども、それの全てが移行するのか、それともある程度選抜されるのか。選抜するとしたら、どういうふうな考え方で選抜していこうとお考えでしょうか。
(答)そこはこれからいろいろ議論のあるところなので、あまりここで申し上げることは控えたいと思いますが、まず一つは、全部を移行させるとは考えていません。先程申し上げたとおり、独法制度自体は定型的な業務をしっかりと監視、監督をする、効率化するという点では優れた仕組みだと思っていますから、独法制度全体をひっくり返すようなことは考えていません。ですから、今の研究開発法人は全部新しい仕組みに移行させるというよりは、おそらく今どこがどうのということは適切ではないと思いますが、世界最高水準のグローバルな研究開発法人になれる可能性のあるところをきちんとした基準に基づいて選抜するという形になるのではないかなと思います。今、数がどうとか言うつもりはありませんが、全部移行するという話ではないと思います。
(問)時事通信の浅見です。今のに関連してなんですけれども、行革側は、これは独法の中だと、大臣がおっしゃっているように、新たな研究開発法人を作った方がいいと、議論が今のところだと平行線だと思うんですが、どこで落としどころというか話合いというか結論を導く御予定ですか。
(答)今どこでどのように決着するかというのはよくわかりませんが、少なくとも行革は大事だと思いますし、政府も党も行革側の方々の立場もよくわかります。でも、もう一回言いますが、世界最高水準の研究開発法人を創設するというのは、内閣の意思として決めたことですから、私と下村大臣は、今の状況で、どんなによい研究開発を独法下で行ったとしても、これが本当にグローバル競争で勝ち抜けるような研究環境を与えられるとは思っていません。ですから、やはり独法の枠から離れたところで最高水準の研究開発法人を創設する。なおかつ、この研究開発法人は、独法から離れたからものすごく、例えば野放図にお金を使ってしまうとか、そういう形にするつもりは全くありません。やはり新しいきちんとした枠組みの中で機能させるようにする。ただ、この研究開発法人は、従来の独法下にあった研究開発法人とは違う哲学で作らなければいけない。研究を最大化するということですね、研究の成果を最大化するということと、もう一回言いますが、グローバルに戦える研究開発法人にするということだと思います。どこで落ちるかというのはよくわかりませんけれども、きちっと徹底的に議論をして、お互いに納得できる結論というか方針を出すということは私は可能だと思っています。
(問)この件で、例えば稲田大臣と下村大臣と三者なり、誰か別の方を加えた、そういうような話合いの場を設けるつもりはありますか。
(答)話合いの場というか、この話というのは関係各省が全部かかわってきますから、これからおそらく方針を出すためには、いろいろなところと話合いをしていかなければいけないと思います。それは事務方もそうですし、場合によっては、閣僚のレベルでもいろいろな議論をしていかなければいけないと思います。
(問)フジテレビの鹿嶋です。中国の関連に戻ってすみません。こうした日本側の抗議というか撤回の要請に対して中国側は、そういう道理はないんだということを言っていて、むしろ、ことさらに騒ぎ立てているのは日本側だという主張をしているんですけれども、こういう平行線のやりとりがいろいろな案件であるんですけれども、こういった現状に対してはどのように対応して、この会議が今後あるということもわかりますけども、中国側がこういう対応をしてきた場合にどういった反応を対応していくのかというのは具体的にもっとありますでしょうか。
(答)中国側への対応は、これは極めて外交戦略上の判断なので、総理にいろいろ判断をしてもらう、あるいは外務大臣にきちんと行動してもらうということだと思いますが、領土担当大臣の立場からすると、今おっしゃったように、いろいろ平行線の主張はあるということですが、やはり日本側の主張が実は正しいんだという雰囲気はだんだん出てきていると思うんですね。やはり今回のことも、アメリカ政府がすぐ反応したように、どう考えても理解しにくい行動だと思うんです。やはり一方的に緊張感を高めると言われても仕方のない行動だと思うので、こういう機会を捉えて日本の立場が正しいということを内外発信していくということは外交的にも極めて大事だと思いますから。もう一回言いますが、おそらく最初の総合調整会議でもこの話題が出ると思いますから、これに対してどのように発信のカウンターを打っていくか、日本の立場を理解してもらうためのカウンター発信をしていくかということは十二分に議論していきたいと思います。
 ありがとうございました。

・説明資料(PDF形式:264KB)

(以上)