山本内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成25年11月5日

(平成25年11月5日(火) 9:19~9:35  於:合同庁舎4号館7階742会議室)

1.発言要旨

 閣議そのものについては特に御報告することはありませんが、本日の閣議で国会同意が必要な人事案について同意を求める旨の決定を行いました。総合科学技術会議では7名の有識者議員のうち、中鉢良治議員の後任として新たに株式会社日立製作所執行役社長の中西宏明氏を提示しています。中西氏は同社において通信情報分野を中心に技術開発の現場で活躍するとともに、日立ヨーロッパ社社長、国際事業部長、北米総代表等を歴任して、同社事業のグローバル展開に中心的な役割を果たしています。今、同社の社長として経営者として大変手腕を発揮しておられます。国会においても速やかに御審議をいただいて御了承いただけるようにお願いしたいと思っております。
 さて、今日、の新聞に最先端研究についての基金の話が載っていまして、事実関係はよく分からないんですが、ImPACT(革新的研究開発推進プログラム)、今日これから簡単にプレゼンさせていただきますが、ImPACTは既に閣議決定で創設することが決まっております。今、一生懸命中身について我々も詰めているんですが、この記事を読んで、中身が事実かどうかよく分かりませんが、ますますこのImPACTを実現させなければいけないという強い思いを持ったということだけお話をさせていただきたいと思います。
 今日、プレゼンさせていただきますが、ImPACTの話ですが、図らずも非常にタイムリーなプレゼンになったなと思います。
 革新的研究開発推進プログラム、いろいろ書いてありますが、ImPACTという名前にしました。今日はこれについて中身を改めて説明させていただきたいと思います。
 ImPACTは、米国国防高等研究計画局(DARPA)を参考にしています。ハイリスク、ハイインパクトな研究開発に資金を支援する。プログラムマネージャーの能力を最大限に生かすというところが、DARPAの一番の特徴です。
 例えば、インターネット、この原型はDARPAからできていて、これはARPANETと言うんですがDARPAから生まれました。
 無人走行、今いろいろプロジェクト、実験を行っていますが、この自律型の無人車両というのも実はDARPAからいろいろと流れができています。それから、会話型のインターフェース、インターネットで、声で注文するというものですが、Siriというソフト、これも実はDARPAから生まれてきているということで、この革新的なイノベーションを作るというDARPAをImPACTのモデルにしています。もう一回言いますが、大胆な権限をプログラムマネージャーにしっかり渡していくということで、いろいろなところから人材を集めて革新的イノベーションの実現を目指すということになっています。
 これまでのDARPAにおけるプログラムマネージャー達の活躍を少し見ていただきたいんですが、少しずつこのプロジェクターの中身が進化していることにも注目をいただきたいと思います。
 60年代、このDARPAの部長だったリックライダーがネット社会というものを、コンピューターとネットワークを駆使するというネット社会を頭に描いたんです。このリックライダーのネット社会を受け継いで、ロバート・テイラーというDARPA部長がコンピューターの相互接続というアイデアを出してきて、ここでネットワークをつなぐということになりました。
 ロバート・テイラーが引き抜いてきたのが、このローレンス・ロバーツという人なんですが、この人は66年から73年にDARPAの部長ですが、パケット通信技術、これは画期的だったんですが、分散型ネットワーク実現のためにパケット通信技術に注目して、ここにARPAのシステム、それを更に引き継いだロバート・カーンが先程言ったARPAネットワークというものをしっかり作って、これでインターネットが爆発的に世界に広がって社会が変わったということがあります。そのくらいPM(プログラムマネージャー)というのは大事だということです。
 このDARPAはプログラムマネージャー、多様な人材、ハイリスク、ハイインパクト、これがうまく循環するような仕組みになっていまして、言い方を変えれば産官学のチャレンジャーがどんどん出てきて、人材のハブができて、それが起業しやすい風土の醸成になっていく。このような流れを作るということで、実はImPACTも同じようなイメージを描いています。
 ImPACTは正にチャレンジ精神に火をつけるということで、これはCSTP(総合科学技術会議)にハート型を書いたんですが、ここに火をつけるということで、これからImPACTで私が矢を放つわけです。更にこの火が回りを照らすと何が起こるかというと、実はこのようなハイリスク、ハイリターンな仕組みができることによって、このような才能のある人たちが集まってくる。優れたアイデアをもった産官学の人材がここに集まってくる。
 更には、このような挑戦ができるということになれば、どんどん起業しやすい、起業しようという人たちがどんどん出てくるということで、先程言ったチャレンジャーと人材のハブと起業しやすい風土の醸成というものがうまく循環して回るようになる。ImPACTの灯台の火の中にみんなが集まってくるという、このような流れを是非作りたいと思っています。
 ImPACTはまずチャレンジャーを作る、そこから人材のハブが生まれる。そこから起業しやすい風土が生まれるということで、これは一つの触媒です。このような形で是非ImPACTを作りたいと。「起業、創業の精神に満ちあふれた国へ」というのは正に安倍総理が描いている科学技術イノベーションが経済に貢献する流れだと思っています。
 日本でも非連続イノベーションの事例というものがあるんです。青色LEDの研究開発なんですが、かつては純粋な青色の発光のLEDは実現不可能だと言われていました。そこで名古屋大学の赤﨑先生(赤﨑勇元教授)が出てきて、89年にガリウムナイトライド(窒化ガリウム)の結晶化に成功して、これが世界初の青色発光LEDになりました。日亜化学工業が93年に実用化する。更に豊田合成チームも95年に成功する。実は、このLEDの研究開発ではPMがあまり注目されてないんですが、プログラムマネージャーがものすごく大きな役割を果たした。このような実例もあります。
 イノベーションに向けたCSTPの2大戦略、何度も言っていますが、SIPとImPACT、SIPは戦略的イノベーション創造プログラムということなんですが、この二つが今の私が大臣になってからのCSTP強化の2大戦略、特にイノベーションに向けた戦略だといっていいと思います。
 SIPはどういうものかと言うと、少し簡単に概念の違いを説明したいと思います。SIPは従来の成長路線とありますが、これをSIPで加速して、新しい市場を作る。これが一言で言うとSIPのコンセプトです。ImPACTはどういうことかというと、少し次元の違うベクトルが上がっていって、新しい市場を作る。今までの市場を変えて市場を置き換えるというようなイメージだと思います。更に、ブレークスルーが生まれると、新しい科学技術イノベーションの発明がここで出てきて、先程のインターネットではないんでが、ここに革新的な進歩が生まれる。
 SIPは府省、産学官が一体となって、一気通貫で基礎研究から出口まで行うということですが、SIPのテーマは一つだけ簡単に紹介します。これは総合科学技術会議で官邸で総理の前でも少しプレゼンさせていただいたんですが、パワーエレクトロニクスというものがありますが、パワエレは皆さん聞いたことがあるでしょうか。半導体を使って電圧、電流、周波数を制御する技術ですが、これがインバーター搭載で省エネに非常に役に立つということで、例えばインバーター・エアコン、3割の消費電力を減らすことに成功しています。そして、更に炭化ケイ素を使っているんですが、鉄道車両、消費電力4割削減に成功しているということです。
 研究開発を出口まで行うには、とにかくこの府省、産学官が一体的な取組をして、それを加速していかなければいけないということで、これは関係各省しっかりまとめていくということなんですが、研究全体、プロジェクト全体を加速させるということです。
 ImPACTはハイリスク、ハイインパクトなんです。ですから、非連続的イノベーション。先程言ったこの図を思い出していただきたいんですが、これはSIPだけではなく、ImPACTが必要だということを強調しておきたいと思います。
 ImPACTのテーマ、これも少し簡単に紹介します。例えば、ImPACTはどのようなテーマなのか。非連続的イノベーションとはどのようなことなのか。例えば、皆さんの中で、病院まで検査に行くのは面倒くさいなと。そういう人がいると思います。影があるので、再検査しましょうという、また行かなければいけないわけです。
 例えばこのプログラムマネージャーがガンを嗅ぎ分ける犬を見つけてくるとします。犬は今までの研究で呼気を嗅ぎ分けるという能力があって、肺ガンとかの検知率は90%という研究結果が出ています。イヌを何万匹も連れてきて訓練して広げるというのは、極めて難しいですよね。ただ、犬の鼻の技術をもし人工的に模倣できるとすれば、例えばスマホに息を吹きかけてガンかどうか、検知する。息を吹きかけると、ガンだ。このような形でスマホでもしかすると肺ガンとかが検知できるかもしれない。いつでもどこでもどんなものでも息を吐くだけで検知できるという、そのようなことも不可能ではない。
 ただし、ImPACT、ハイリスク、ハイリターンですから、これだけのことをクリアしていかなければいけない。社会的インフラも大事だし、膨大な知見データが必要です。息を吐くだけでガンを見つけるということになると。それから、犬の鼻を人工的に模倣するというのは、なかなか難易度が高い。これがImPACTなんです。このような解決すべき課題が多い。革新的イノベーションにしっかり総合科学技術会議の目利きでお金をつけられるかどうかということだと思います。
 もう一つは、ImPACTのテーマと書いてありますが、無人航空機システム、天候が悪いと飛行機が飛べない。ところが、無人航空機システムなら、特に最近は災害が多い、車も家もトラックも落ちてひどいことになっていますが、こんな感じになっていますが、トビみたいにくるくる回りながら、自律飛行していろいろなことを知らせる。災害現場はどこなのか。例えば、被災者が何を必要としているのか。行方不明の捜索、避難誘導、救援物資、このようなことをもしかしたら各地から全国に急行できるような、本当にトビのような無人航空機システムが作れれば、これは災害大国日本にとって画期的なことなのではないかと思います。ここにもやはりいろいろな課題があって、やはりいろいろな技術的ハードルを越えていかなければいけないと、こういうことです。
 これは、総理の所信表明にもありましたが、チャレンジして失敗してもこれは前進の足跡だと。失敗を恐れて何もしないのは最低だ、ということになっています。新しいことをやろうとする人はしっかり後押しする。すなわち起業家がどんどん生まれてくる日本にする。そのことが実は成長につながるという、総理の言うImPACT、総理の言う国を作るためにこのImPACTは小さな触媒になる。すなわちImPACTを行うということは、科学技術イノベーションを起こす人材を作り、更に総理の言う起業しやすい国にするための足がかりになると思っていまして、是非これを発信してImPACTを応援してもらいたいということで、火をつけたりすると、赤くなったりして、いろいろスタッフがプレゼンに工夫をしてくれたということを皆さんに分かっていただきたいと思います。毎回、このようにして発信していきたいと思いますが、是非このImPACTには注目をしていただきたいと思います。
 最後にもう一回言いますが、作ることは閣議決定で決まっています。中身も我々がPMをどのように位置付けるかを含めて考えています。ImPACTで応援するいろいろなプロジェクトのイメージは今言ったようなことです。財源のメカニズム等々ありますが、担当大臣としていろいろな動きをにらみながら、是非ImPACTを実現させていきたいと思います。以上です。
 何か御質問があれば、これに関することではなくてもいいです。

2.質疑応答

(問)科学新聞の中村です。ImPACTについてなんですけれども、まず予算規模は、以前ここの場でお聞きしたときに、2,700億と前よりは取りたいなというようなことはあの当時は言っていたんですけれども、今の感触として予算規模はどのくらいを想定されていますか。
(答)あまり具体的なことを言わない方がいいのかなと思うんですが、それはある程度規模がないといけないと思います。前回、FIRSTという前例がありますから、やはりFIRSTに見劣りしないようなImPACTを作りたいなと担当大臣としてはそう思っています。
(問)あともう一つ、予算の使い勝手がいろいろな研究費の面で言われているんですけれども、そうすると基金化とか、そういうことも想定されているのでしょうか。
(答)そうですね。それもあまり今のところ細かく言わない方がいいと思うんですが、もちろん前回のFIRST(最先端研究開発支援プログラム)とは違いますが、FIRSTの仕組みもいいところは取り入れて、参考にしながら制度設計を今一生懸命行っています。
 次回、このような形でどんどん進化させていきますので、だんだん短く、更に研ぎ澄ませて行きたいと思いますが、これは多分12月に向けて科学技術イノベーション政策を考えていく上では、このSIPとImPACTは大きな課題になっていくと思うので、是非注目をしていただければと思います。
 よろしいでしょうか、ありがとうございました。

・説明資料(PDF形式:912KB)

(以上)