山本内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成25年9月10日

(平成25年9月10日(火) 14:53~15:17  於:合同庁舎4号館7階742会議室)

1.発言要旨

 閣議については発言はありませんでしたが、フィリピン共和国の訪問について概要を配るという形にさせていただきました。これについては、後程プレゼンをさせていただきたいと思っています。
 今日は、安倍総理の方から先程のオリンピック関係の会議でもありましたが、やはりチームジャパンの勝利だというお話があって、国民が一丸になれば夢は実現できるというメッセージがあって、それに大変感銘を受けました。やはり安倍内閣は一丸となって日本再興を果たしていかなければいけないと改めて心に強く誓いました。今日は本当に大臣になってから一番うれしい日の一つで、今度の東京招致で東京が2020年のオリンピック、パラリンピックの開催地に決まったということで、これはやはり日本人にものすごく大きな勇気を与えると思いますし、東北の復興にも大きな力になると思いますし、何よりも日本の国際的な発信力がまだあるということを改めて認識して自信を取り戻したという感じがしました。これを契機に閣僚の一人としてしっかり安倍政権を支え、日本再生のために頑張っていきたいと思います。
 明日11日から12日の日程で中国の大連を訪問することになりました。大連で開催されるサマーダボス会議に出席して科学技術・イノベーション政策における優先事項とか、あるいは科学技術・ITを通じた経済発展等について意見交換を行いたいと考えております。同会議のサイドイベントとして日本の官民が連携して開催するジャパンナイトにも出席をする予定です。おそらくセッションの一つはビックデータになると思いますが、中身がまだ詳細、流れはよく分かりませんが、ビックデータについてパネリストを務めるということになると思いますし、このサマーダボスには約90カ国から1,500名以上のグローバル企業代表者、政策担当者、学識経験者等が参加するという会議ですから、確か閣僚が参加するのは初めてだと思います。私と下村大臣の2人で行きますが、是非この機会に少しでも日本のことをアピールさせてもらおうと考えております。
 フィリピン出張についてお話をさせていただきたいと思います。
 3日から5日まで2泊3日、実質2日間という感じだったんですが、スービック地区、クラーク地区、この経済特区を視察させていただきました。地図で示されているとおりクラーク地区はフィリピンの首都マニラの北方80キロに位置して、マニラから車で2時間程度かかりました。スービック地区はクラーク地区から南西に約50キロ程度離れていまして、マニラの北西に位置しています。スービック地区へはクラーク地区から車で約1時間。マニラからは3時間程度かかりました。マニラ、クラーク間、クラーク、スービック間は、それぞれ高速道路で結ばれておりまして、そのうちクラークとスービック間の高速道路は日本のODAで建設されています。
 スービック地区においては、まず現地の日系企業関係者7名と意見交換を行いました。更には現地政府機関であるスービック湾の首都圏庁を訪問して、米軍基地返還後の跡地利用についてブリーフィングを受けるとともに、同庁のガルシア長官とも意見交換を行いました。なお、時間の都合上、車の中からでありますが、中心街、旧米軍居留施設、港湾施設、スービックベイの国際空港の視察もしっかりと行わせていただきました。
 スービック地区においては、ここに進出している代表的な日系企業を訪問させていただきました。日立ターミナルメカトロニクス・フィリピン社、ここで活動状況についてのブリーフィングを受けるとともに、ATM関連の機器を製造しているんですが、この工程も視察させていただきました。
 それから、クラーク地区の視察においても現地政府機関であるクラーク開発公社を訪問して、これもスービック地区と同様に米軍基地返還後の跡地利用についてしっかりとブリーフィングを受けるとともに、同社のトップのトゥガデ長官とも意見交換を行いました。更に、トゥガデ長官から直接案内をいただいたんですが、クラーク国際空港の新しいターミナルビルの視察もさせていただきました。
 クラーク地区においてもここに進出している代表的な日系企業、ヨコハマタイヤ・フィリピン社の視察をさせていただいて、このフィリピンの活動状況に関するブリーフィング、あるいはタイヤ製造の工程の視察も行わせていただきました。
 両地区の視察を通じて感じたことですが、これは港湾・空港といった基礎的なインフラ施設のみならず居住施設とかあるいは安全面の配慮について、米軍のシステムを引き継ぐと同時に企業誘致とか観光、レジャー産業の振興等について、戦略的に取り組んでいるということでした。
 更に、日系企業の関係者、これはスービックに入る前にも現地日系企業の幹部の方々7、8名と懇談したんですが、全員がフィリピンの労働力の質の高さについて言及していました。英語はとにかくできる。つまり一人一人の従業員とコミュニケーションができる。それぞれの会社が中国とかタイにも支社を持っているところもあったんですが、とにかく英語ができるということは非常に強みだと。素直で明るくて真面目。非常に日本の文化と親和性があるのではないかという話がありまして、やはり日本とフィリピンの間には関係を発展させるためのポジティブな要素が多いなという気がいたしました。
 最も大きな目的は、スービック、それからクラークの経済特区の視察だったんですが、加えて領土担当大臣、海洋担当大臣としてフィリピンの外務大臣、国防大臣との会談を9月4日と5日にわたって行いました。デルロサリオ外務大臣は大統領候補の一人でもありますが、このデルロサリオ外務大臣と会談いたしました。まず私の方から領土・主権をめぐる情勢について日本の立場を説明して、そこではっきり言ったのは、とにかく力を背景とした現状変更の試みは許されない。法の支配が早期に確立されることが重要であるというメッセージを国際社会に発信していくことが重要だということを申し上げて、デルロサリオ外務大臣も同感だと、協力して国際社会に発信していきましょうということになりました。
 尖閣をめぐる問題についても尖閣が日本の領土であると、500パーセント日本の領土だということをしっかり説明させていただきました。
 同様に国防大臣ともいろいろな話をさせていただきましたが、会談の詳しい中身を言うといろいろ差しさわりがあるんですが、フィリピン側からもいろいろ海洋をめぐる問題について詳細な説明をいただきました。ガズミン国防大臣とも一致したのはとにかく南シナ海、東シナ海、この問題はやはり関連している。やはり海洋秩序ということについて言うと法の支配が早期に確立されることが重要だと。これはやはり日本とフィリピンがスクラムを組んで国際社会に訴えていきましょうと。このタイミングでフィリピンの外務大臣、国防大臣と会って、こういうメッセージを改めて発信できたというのは実は大変私は意味があったと思っています。
 フィリピン出張に関して最後に申し上げますと、フィリピンの質の高い労働力と日本の成長戦略、これをどうやって結び付けていくかということは、これは真剣に考えた方がいいなと思いました。フィリピンは、釈迦(しゃか)に説法ですが、国民の1割、1,000万人が海外にある意味で言うと出稼ぎに出ている。海外で就労して、その安定した送金がASEAN主要国の中でも最も高い経済成長率を維持しているフィリピンの経済を支えている。しかも労働力の質が高い。英語ができて、非常に明るくて真面目。なおかつフィリピンが今や世界有数の親日国ということもあって、しかも平均年齢23歳、人口ボーナスが40年続く、日本とは少し対照的な社会構造なんですが、ここら辺を踏まえて日本とフィリピンの関係、協力関係、特に成長戦略におけるフィリピンの労働力というものを活用するやり方というものを少し考えた方がいいのではないかと思いましたし、これは内閣の中でも発信をしていきたいと思っています。
 続いて、EEZ(排他的経済水域)等の管理に係る包括的な法体系の整備に向けた検討についてお話をしたいと思います。
 国連海洋法条約では、領海、これは基線から12海里までの海域ですが、領海に接続する水域であって、基線から200海里までの海域を排他的経済水域と呼んでいます。皆さんよく御存知だと思います。大陸棚については地形いかんにかかわらず、200海里まで認められているということですが、地形が一定の要件を満たせば200海里を超えて延長が可能ということになっています。EEZ及び大陸棚の沿岸国は、漁業資源、それから鉱業資源といった天然資源の探査等についての主権的権利を有する。更には人工島の設置・利用、環境保護等についての管轄権を有するということになっています。
 平成19年には海洋に関する海洋基本法が制定されて、基本理念等をここでしっかりと定めた、海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進することを目的にした海洋基本法が制定されました。この19条で、国はEEZ等の開発等の推進等のために必要な措置を講ずることとされています。
 平成25年4月ですが、この総合海洋政策本部の会合を経て、新たな海洋基本計画が閣議決定されました。旧海洋基本計画は平成20年3月に作成されましたが、本年4月には今後5年間の海洋政策の指針となる新たな海洋基本計画を閣議決定したということです。新たな海洋基本計画においては、ここに書いてあるとおりEEZ等の開発等を推進するために海域管理にかかる包括的な法体系の整備を進めること等が盛り込まれております。
 もともと欧米諸国とか近隣諸国においては、以下のような法制度が存在している。つまりほとんどの国々でこうした法制度は既に存在しているということなんです。御覧の表にあるとおり、アメリカ、ドイツ、英国、カナダ、豪州、中国においてもEEZを対象とした法制度が確立されています。今般の検討に当たっては、こうした他国の法制度を参考にしつつ、検討を進めていく必要があると考えています。
 今般の検討に当たっては、管理の目的、方策、取組体制、スケジュール等を定めた海域の適切な管理のあり方に関する方針を策定すると。この方針に基づいて、以下の観点を総合的に勘案しながら、海域管理に係る包括的な法体系の整備を進めるということになっていまして、海洋権益の保全とか、そこに書いてあります開発等と環境保全の調和とか、利用が重複する場合の円滑な調整手法の構築、海洋調査の推進、海洋情報の一元化・公開等と、こういう点を踏まえながら、しっかり検討を行ってまいりたいと思います。
 こうした検討を行うために、総合海洋政策本部参与会議の下に、この「EEZ等の海域管理のあり方」PTを設置いたしまして、9月5日に第1回の会合を開催いたしました。今後は、EEZの開発等の推進のために、EEZ等の管理のあり方に関する方針、法制度等について検討していきたいと思います。9月以降、合計7回程度開催をし、年度内を目途に意見を取りまとめたいと、今、こういう方針を考えております。
 この「EEZ等の海域管理のあり方」PTの構成員は、以上、ここに書かれたとおりです。国際法とか海洋政策等、様々な分野の専門家に御参加をいただいて、今検討を進めております。
 これについては、海洋政策担当大臣として、海洋基本計画策定の際に、政府がこの包括法の策定に踏み込むということについて、私も実は強くプッシュをいたしまして、検討するのではなくて、この包括法を整備すると海洋基本計画に書かれていますので、これは当然法制化に向けて、これから議論が進んでいくということになると思います。
 以上、今日はプレゼンを二つ行いましたが、何か御質問があれば、何でもお受けしたいと思います。

2.質疑応答

(問)沖縄タイムス、吉川ですけれども、フィリピンの視察の方で、米軍の基地の跡地利用を視察されたと思うんですが、今後、沖縄では嘉手納以南、返還予定されていますが、それにどう視察したことが生かせるかとか、大臣の頭の中のアイデアとか、何か考えたことがありましたら。
(答)そうですね、やはり参考になる点と、少し状況が違う点と、両方あると思うんですが、先程申し上げたとおり、例えば経済特区の中で行っている税制優遇の措置とか、あるいは観光・レジャー産業を総合的に戦略的に組み合わせて地域振興を図っていくとか、投資を呼び込んでいくとか、そういう手法はやはり跡地利用にも生かせるのではないかなという気はします。
(問)もう1点なんですが、昨日、ちょうど宜野湾市長が来て、西普天間地区の返還は2014年末、それを想定して要請があったと思うんですけれども、それについて大臣の方から、要請を受けての今後の跡地利用の方向性とか、具体的な何か話とかは出たんでしょうか。
(答)あまり意見交換の詳しい中身は、申し上げるのは控えたいと思いますが、やはり跡地利用を、特に西普天間はその一つのモデル地域みたいになるので、是非国としてもより大きな協力をいただきたいと、こういう話があったので、そこはしっかり受け止めて、いろいろと協力関係を作っていきましょうと、こういう話でした。
(問)時事通信の浅見です。11、12日で大連訪問されるということですが、今回の訪問で、例えば向こうの官僚の方とお会いになられたりとか、この日程以外で誰か会うとか、有識者と話すということはありますでしょうか。
(答)そうですね、特に例えば中国の閣僚とか、そういうクラスの方との会談は予定されていないと思いますが、まだ最終的に全部固まっていないので、わかりません。はっきりしていることは、セッションで、おそらくビッグデータとかIT政策に関するセッションでパネリストを務めるということと、あと、おそらく非公開のセッションのようなところで、やはり議論に加わると。それとあと、ジャパンナイトで発言をするというようなところは決まっていると思いますが、詳細については、まだ固まっていないところもあります。
(問)あともう1点、尖閣国有化からもう1年を迎えることになりますけれども、一応領土担当大臣として受け止めを一言。
(答)一言しか申し上げることはないので、尖閣は間違いなく歴史的にも国際法上も日本の領土であるということと、それから、これはフィリピンの外務大臣、国防大臣にも御説明をしましたが、いかなる国であっても、やはり力で現状を変えると、こういうことは許されないと。日本はとにかく国際法に則って、平和的にこの問題を解決しようとしていると。だから、こちらから対決をエスカレートするようなことはしないと申し上げたんですが、その立場をしっかりと維持して日本の立場を内外に発信していくと、これに尽きると思います。
(問)共同の野見山です。EEZの包括法の件ですけれども、この整備の意義について、改めて大臣からお考えをお聞かせください。
 あと、年度末に意見を集約してということで、早ければもう来年の通常国会提出とか、そういったところをにらんでという流れになっていきそうなんでしょうか。
(答)EEZ包括法を作る必要性というのは言うまでもないと思うんですが、やはり海洋権益というものがものすごく重要になってきて、日本の国益にも直接関係があると。なおかつ、例えば海洋エネルギーとか海洋資源の開発というのは、安倍内閣の成長戦略にも結びついていくと。いろんなことを考えると、今までは個別法で対応していたんですが、やはりEEZの包括法が必要ではないかと。それはどこの国がどうとかいうことではなくて、先程御説明をしたように、ほとんどの国が同じような法律を持っているわけなので、そこにやはり乗り遅れないようにきちんとした、日本としてもEEZをよりきちんと管理していく法律を作るということは必要だと思います。ですから、それについては担当大臣として、この海洋基本計画に盛り込む上で、かなり私は強く主張して盛り込ませていただきました。
 これについては今、参与会議でいろいろと、このPTで議論もしていますし、党の方では、この海洋基本法の生みの親の一人である武見敬三参議院議員が、自民党の宇宙・海洋開発特別委員会の副委員長で、多分プロジェクトチームか何かを作られると思うので、そちらの動きも見ながら、いろいろと進んでいくことになると思います。ですから、今いつ、例えば来年の通常国会で法案化できるかどうかということは、なかなか時期については言えないと思いますが、もう一回言いますが、海洋基本計画の中にも書き込んでありますので、これは必ず、どういう形になるにせよ、閣法(内閣提出法案)であろうと、議員立法であろうと、これは法制化をしていくと、これが政府の方針だと思います。
(問)毎日新聞、朝日といいます。中国への出張の関係で伺いたいんですけれども、9月11日というのは尖閣国有化から1年ですけれども、最近、ここ数日も、中国の尖閣周辺での活動活発化していると思うんですが、そのタイミングで中国に行かれるというのは、領土担当大臣というお立場だと思うんですけれども、中国が領有権主張の声を高めている状況の中で、その日に中国に行かれるというのは適切かどうかという辺り、御見解をちょっとお願いします。
(答)まず第一に、今度のサマーダボスには領土担当大臣として行くわけではありません。サマーダボスに参加するということについては、主に科学技術政策の分野から、やはりいろいろ日本の考え方をインプットしようと、そう思っています。
(問)領土担当大臣もされているわけですけれども、そのお立場で、その日に中国に行かれるということは特に問題ないと。
(答)もう全く問題ないと思います。現地で別に領土問題について発信するとか、そういうことは全く考えていません。このサマーダボスで、日本の科学技術政策、特にアベノミクスの大事な柱である成長戦略に直結していますから、その観点から発信をしたいと。もちろんIT担当大臣でもあるので、その成長戦略という観点では、ITのことについても触れようと思います。
(問)くどくてすみません。ということは、領土担当大臣として、特に誤ったメッセージが発せられるというふうなこととか御心配は。
(答)誤ったメッセージって何。
(問)その領有権問題に対する日本の姿勢として、中国は尖閣諸島を自分たちのものだという主張をされていると思うんですけれども、対する日本の領土担当大臣はどういう意見かというのも注目されると思うんですけれども、その時に中国に行かれて、中国でそういう領土とか発信はされないと思うんですけれども、そのこと自体が中国に対して何か誤ったメッセージを発するとか、そういう御心配とかは。
(答)それはないと思います、全く。向こうから招待されましたので。
 よろしいですか。ありがとうございました。

・説明資料(PDF形式:400KB)

(以上)