山本内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成25年5月24日

(平成25年5月24日(金) 9:11~9:36  於:合同庁舎4号館7階742会議室)

1.発言要旨

 先ほど、安倍総理をヘッドとするIT総合戦略本部を開催いたしまして、これまでのIT総合戦略本部、IT戦略起草委員会等の議論を踏まえて、安倍ビジョンとしての新たなIT戦略の取りまとめを行いました。
 本日の本部でいただいた主な御意見について何点か紹介をさせていただきたいと思います。
 まず一つは、「戦略自体はこれまでにない非常に力強い内容となっている」というのがありました。更には、「戦略を作っただけではなくて、誰が、いつ、何をするのかを明確にし、着実に実行に移すことが大事だ」と、こういう視点の意見もありました。加えて、「PDCAサイクルを回して取組をしっかりとフォローアップして、取組が進んでいない場合には、その原因を突き止めて改善していくことが重要だ」と、こんな御意見もいただきました。「PDCAサイクルを回すことは、その時々の時世の流れに応じて機敏に対応していく観点からも大事だ」と、こういうことで、一言で言うと、「もうお題目だけではなくて、書いたことをきちんと実行できるかどうかだ」と、こういう意見が圧倒的に多かったように思います。中身の受け止めについては、かなり高い評価をいただいたと思います。
 戦略の詳細については、後ほど行うプレゼンテーションの中でもう少し詳しく説明をさせていただきたいと思います。
 今日もう一つお知らせがありまして、先日から開催しております「領土・主権をめぐる内外発信に関する有識者懇談会」ですが、来週28日の火曜日に第3回の会合を開くことになりました。前回の会合では、尖閣諸島をめぐる情勢に関する内外発信をテーマに活発な御議論をいただきましたけれども、次回の第3回会合では、今度は竹島問題をテーマに取り上げて、内外発信をどうやっていくかということを御議論いただきたいと思っております。
 我が国の領土・主権をめぐる情勢に関して、より効果的な内外発信を行っていく上で、中身の濃い御議論をいただけるものと期待しています。
 それから、領土担当大臣としてもう一言申し上げたいと思いますが、23日に日本人歴史家が韓国側から竹島を訪問したという報道に接しました。これも我が国政府としては、外務省のホームページ等を通じて、「我が国の国民が、韓国の出入国手続に従って竹島に入域すると、こういうことはまるで竹島に対する韓国の領有権を認めたかのような誤解を与えかねないので、これは自粛をしてください」と申し上げてきたわけですけれども、こうした我が国政府の一貫した立場に基づいて、21日でしょうか、釜山の総領事館から、その邦人の方に対して、竹島への上陸計画を中止するようにお願いをしたと承知をしております。この方が竹島に上陸したということは、領土担当大臣として極めて遺憾だと思います。
 その行動の背景に何があるのかよく理解できないんですが、改めて思ったことは、こういうことが起こらないように、やはり竹島問題についての国内啓発を領土担当大臣としてしっかりやっていきたいなと、こういう気持ちを新たにいたしました。
 ということで、今日は第61回のIT総合戦略本部の結果について御報告をさせていただきたいと思います。
 今日議論した話は、今度の新しい安倍内閣のITビジョンということで、「世界最先端IT国家創造宣言(案)」と、こういうタイトルにさせていただきました。ほぼこのタイトルで御了解をいただいたと思っています。
 一言で言うと、今までのITビジョンは、IT戦略本部決定だったんですけれども、今回は私の強い希望で、官房長官の御理解もいただいて閣議決定にさせていただきたいと思っています。この閣議決定をもって、その安倍内閣の新しいITビジョンが、そのまま安倍総理の「世界最先端IT国家創造宣言」になると、こういう形で是非とも運ばせていただきたいと思っています。
 背景を簡単に御説明いたします。
 基本的に、この総合戦略の背景にあるのは、このままだとITで世界に遅れをとってしまう。ITは成長戦略のコアなんですけれども、その成長戦略の中心にITを据える競争でも他国の後塵(こうじん)を拝してしまうと、こういう危機感がありまして、「世界最先端のIT国家を造らなくてはならない」と、これは安倍総理からの御指示ですけれども、総理の認識もこういうことだと思います。
 これが安倍政権の新時代のITビジョンなんだということで、もう一回言いますが、「世界最先端IT国家創造宣言」、いい響きだなと思っているんですけど、こういう形にしました。これは私の強い希望でこういうふうにさせていただきました。デジタル何とかジャパンとかサイバー何とかジャパンとか、いろいろなアイデアもあって、それはそれで一つの考え方かもしれませんけれども、今回はこういうタイトルでよかったのではないかと思っています。
 この「世界最先端IT国家創造宣言(案)」ですけれども、スライドで今回の戦略のこれが構成となります。第Ⅰ章では基本理念、第Ⅱ、第Ⅲ章で目指すべき社会の姿と、それを実現するための取組、第Ⅳ章では利活用の裾野拡大を推進するための基盤強化で、最後に本戦略の推進体制・推進方策と、こういう形になっております。
 もうちょっと具体的に言いますが、スライド4なんですけれども、戦略の基本理念についてですが、成長戦略の柱であるIT戦略によって、現在の経済社会の閉塞を打破して日本の再生に貢献すること。また、過去、利用者視点の欠如や省庁間連携が不十分だったと、こういう反省も踏まえてIT総合戦略本部、政府CIOが横串で通すと、ここですね、省庁の縦割りを打破する。横串で通して縦割りを打破し、IT政策を前進させる。そして、世界最高水準のIT利活用社会を実現すると、こういうことになっております。この基本理念の部分が、実は情念として非常に大事なところだと思っています。ここにしっかりと危機感を書き込んで、その危機感に基づいてやるべきことをきちっとやらなければいけないと、こういう理念を強く打ち出させていただきました。
 これが目指すべき社会の姿ということで、本戦略の推進によって、目指すべき社会・姿を産業、それから社会生活、行政と三つの柱で提示をさせていただいております。
 公共データの民間開放、これは一番のキーだと思いますが、そのためのポータルサイトを早急に立ち上げるということです。2015年度末に、他の先進国と同水準の公開内容を実現する。2015年度末には、これは総理の方からも今日お話をしていただきましたが、他の先進国と同水準の公開内容を実現するということです。
 また、パーソナルデータの取扱いについては、これは速やかに検討組織を設置し、年内には制度見直し方針の策定をさせていただきたいと思っております。
 農業においては、ITデータを活用した新たな生産方式の構築を図る他、オープンイノベーションの推進等にも取り組むということにしております。
 このスライド6は、社会・生活面です。
 医療につきましては、これは在宅でも安心して医療・介護サービスを受けることができるように、医療連携ネットワークを2018年度までに全国展開したいと考えています。
 また、2020年度までには、国内の重要インフラ等の20%は、これはセンサー等の活用によって点検・補修を実施したいと思います。
 その他、エネルギーマネジメントの実現とか、あるいはITS(高度道路交通システム)の推進による世界で最も安全な道路交通社会の実現とか、あるいは2020年にはテレワークの導入企業を2012年度比の3倍にすると、このように推進するという目標を掲げさせていただきました。
 次に、行政の自己変革ということで、政府情報システムの改革については、この2018年度までに現在のシステム数、1,500あるわけですが、これを半数まで削減する。2021年度を目途に、原則クラウド化をして運用コストの3割減を目指すという目標を掲げました。
 更には、政府のIT投資管理の効率化を図るとともに、投資状況を見える化するということで、日本版の「ITダッシュボード」、この整備もしっかりやって、2014年度からは運用を開始させていただきたいと思っています。
 8枚目のスライドになりますが、これは利活用を支える基盤です。このIT利活用の裾野拡大というのも、かなり私の強い思い入れもありまして入れていただきましたが、人材育成・教育では、2010年代中に全ての小・中学校等で教育環境のIT化を実現したいということ。それから、初等教育から社会人に至るまで、年代層別にITリテラシーの向上に向けた取組を推進していきたいと思います。
 更に言うと、大規模災害時にも利活用可能な強靱(きょうじん)なITインフラ環境を確保したい。
 更に、「サイバーセキュリティ戦略」に沿って、必要な取組を推進するとともに、研究開発についてもしっかりと推進をしていくということでございます。
 ここは推進体制・推進方策ということですが、本戦略のPDCAサイクルを回す。このPDCAサイクルの必要性は、今日も再三強調されていましたが、このPDCAサイクルを回すためにIT総合戦略本部の下に、政府CIOを中心に専門調査会を設置します。
 可能な限りKPI(重要業績評価指標)を設定して推進管理を行うということにしたいと思います。
 IT利用の裾野拡大の観点から、規制制度改革集中アクションプラン、これは極めて重要な試みだと思っているのですが、これを策定したいと思います。規制改革会議の方にももちろん頑張っていただいているわけですが、しっかりと連携というか連絡もとりながら、こちらはこちらとしてきちっと規制改革集中アクションプランというのを作って、しっかり提言をし、実行に移していきたいと思っています。
 併せて、利活用の推進をするための法的措置、IT利活用の基本法も、これもしっかりと検討させていただきたいと思います。どこかで私の下にこの基本法を考えるチームを作りたいと個人的には考えています。
 更に、政策資源を集中させて、国家プロジェクトとしてIT利活用の成功モデルを実証していきたいと考えております。
 以上、これが宣言の概要ですけれども、今後、IT総合戦略本部としての案を取りまとめて、パブリックコメントを行い、6月中には本戦略をIT総合戦略本部決定、そして、先ほど申し上げたとおり閣議決定にしたいということを考えております。
 いずれにせよ、これを絵に描いた餅にしないように、IT総合戦略本部と今日の参議院本会議で何とか成立させていただきたいなと担当大臣としては思っているんですが、政府CIO法案ができて、新しい政府CIOが作られれば、しっかりとこの新しい政府CIOをバックアップしながら横串を刺していくと、各省束ねて推進していくということでしっかりと取り組んでまいりたいと思います。
 以上、「最先端IT国家創造宣言」について御説明をさせていただきました。
 何か御質問があれば、何でもお受けしたいと思います。

2.質疑応答

(問)朝日新聞の瀬川ですけれども、人材育成のところで、技術者の育成、専門家の育成についてはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
(答)これは、ちょっと細かい中身は後で少し事務方に聞いていただければと思うんですけれども、まず、世界最先端のIT社会を作るわけですから、当然高度な人材育成というものは必要だと思いますので、いろいろな研究機関等々とも協力をしながら進めていかなければいけませんし、特にシステム改修等々については、遠藤CIOもおられますけれども、やはりIT人材といいますか、政府のIT発注力というものもしっかり上げていかなければいけないということで、いろいろな問題意識を織り込んでおりますし、少し細かいことは後で聞いていただければと思いますけれども、そこら辺も力を入れていきたいと思います。
(問)科学新聞の中村ですけれども、いくつかあるのですが、パーソナルデータの取扱いについて検討組織を設けると、これはIT戦略本部の方に設けるという意味でしょうか。
(答)そうです、IT総合戦略本部の下に何らかのワーキンググループなのか、どういう組織にするか考えたいと思いますが、これをしっかり設けたいと。やはりパーソナルデータというか、個人情報保護、これをきちんとやっていかないといけないと思うんですが、同時に、ここをどういうふうに規制改革していくかということはIT利活用拡大に直結しているわけですよね。これは、規制改革会議の方でも、今日、稲田大臣がしっかりやっていきますと、規制改革の取組をきちっとやっていきますとおっしゃったんですが、それはそれとしてやっていただいて、我々は我々として本部の下にきちっと組織を設けて、このアクションプランを年末までにまとめると、これは実は大きなポイントだと思っています。
(問)それと、例えば先週の閣議後会見で紹介していたNICT(情報通信研究機構)のサイバー攻撃を管理するシステム、ああいうのは通信事業法の通信の秘密の保持に関わるために、例えばインターネットサービスプロバイダーなんかは使えないわけですよね。つまり、そういう個人情報の保護と安全保障の部分等、難しい問題も含めてここで検討してロードマップの中に加えられるという。
(答)何を議論するかという、まだ具体的な話はきちっと決めていませんけれども、いずれにせよ、今言った個人情報に係るいろいろな規制について議論をすると、いろいろな議論が出てくると思いますが、今の段階でどれとどれということは申し上げられませんけれども、幅広く議論することになると思います。
(問)琉球新報の松堂といいます。沖縄で国が行っている基地周辺の防犯対策事業なんですが、認可外保育園が助成の対象外になっているということを御存じでしたでしょうか。
(答)ちょっとよく、中身の詳細が分からないので、確認をしてみたいと思います。
(問)沖縄担当大臣として、この問題でできることとかあれば教えてください。
(答)そうですね、少し調べてからコメントさせていただこうと思います。
(問)毎日新聞の齋藤と申しますが、IT戦略の中で、子供から社会人とか高齢者まで年代別にITの知識を普及するための取組をという項目がありましたけれども、ずっとここ10年間ぐらい情報の授業というのが高校で取り入れられたりとかというふうに知識の普及というのは図られている一方で、ITリテラシーの面であまり子供たちが、携帯に使いこなされるというか、使えるけど、知識としてあまり普及していない現状というのがあると思うんですけれども、具体的に世界最先端のIT国家を目指すに当たって、例えば、情報の授業、情報を受験科目にするとか、そういうもっと知識の普及を図るための具体的な取組というのはお考えがありますか。
(答)各年代別にしっかりITを活用してもらうというのは、まさにIT利活用の裾野の拡大であって、たぶんこの報告書の中にも出てくるんですけれども、インフラ整備については、最初のe-Japan構想等々でかなりいったと、ブロードバンドなんかについても。しかし、利活用の裾野の拡大の部分がちょっと遅れてしまったということで、そういう意味で言うと、各年代にやはりITをきちっと使ってもらうということは大事だと思います。どうやってやっていくかというのは、もちろん教育の問題等々もあると思いますけれども、これからフォローアップは、ここで分科会も作ってそれぞれやっていくことになると思いますので、そこら辺でもっと具体的な話が出てくるかなと思います。現時点での話は、少し細かい話は、ロードマップはありましたかね。

(事務方)今後作ることに。

(答)そうですよね、分科会等々で。
(問)朝日新聞の大野です。竹島の先ほどの邦人が入った話なんですけれども、これは何人が入って、これ、自粛を申し入れたというのは、どのような形で申し入れたのか。
(答)それは、官房長官にまとめて聞いていただければと思うので、事実関係も含めてですね。とにかく行く前に釜山の領事館だったでしょうか、やはり御本人に行かないでほしいという話はされたようですね。
 何度も言うように、極めて遺憾です。こういうことが起こらないためにも、やはり竹島問題の国内啓発というのは本当に必要だなと思います。
(問)今の質問に関連しまして、国内啓発が必要だというのは、竹島に行かないようにするために必要だとお考えだと思うんですけど、具体的にどういう啓発をすればそういうことが防げるというふうに。
(答)今回のケースの背景はよく分からないんですけど、要は、行かないようにするとか、今回行かないようにするとかじゃなくて、やはりできるだけ多くの国民の方々に、竹島問題の経緯を分かってもらうと、釈迦(しゃか)に説法ですけれども、あらゆる意味で、国際法的にも、歴史の事実に照らしても日本の領土なので、そういうことを一人でも多くの国民の方々に分かっていただくと、結果としてこういうことが起こりにくくなるのではないかと、こういうことです。
(問)すみません、質問変わりまして、閣僚のお一人として聞きたいんですけど、株、昨日1,000円近く下がって、今日は1万5,000円、一時回復するなど乱高下しています。政権として、経済再生が一番の柱だと思うんですが、実際、IT戦略とかも成長戦略に反映させて、これから経済の再生を図っていきたいというふうに大臣もお考えだと思うので、こういう株の乱高下について、閣僚の一人としてどのようにお考えでしょうか。
(答)私、経済担当閣僚じゃないので、一つ一つの現象についてコメントすることは差し控えたいと思いますが、いずれにせよ、私は安倍内閣の成長戦略、安倍内閣の経済政策は正しいと、そう思っています。
(問)山陰中央新報の井上といいます。今の竹島のお話と、要は、有識者懇談会の1回目、2回目で、次3回目ですが、3回目、どういったポイントで重点的にやっていこうというお考えがあれば改めて。
(答)重点的にというか、かなり自由に闊達な議論をしていただければいいんだと思うんですね。おそらく今回も全員出席で、100%出席していただいて、私も全ての議論に参加していますから、とにかく自由闊達(じゆうかったつ)にやっていただくと。おそらく前と同じように、竹島問題についてプレゼンをやっていただいて、それについて自由に議論をする。どうやって内外発信をしていけばいいのかと、もうこれに尽きると思います。
(問)今のに関連するんですけれども、領土問題に関する対外発信、民主党政権の時に、玄葉大臣とかもフランスのテレビとかに出ておっしゃっていたと思うんですけれども、民主党政権の時の対外発信についての評価というのをお聞かせ願えますでしょうか。
(答)あまり前政権がどうだこうだと言うつもりはないので、あえてそういう話はしたくないと思うんですが、いずれにせよ、現時点でいろいろ国際情勢も変わっていっていますし、やはりいろいろな発信が他の国からも出ていますから、外務省も相当私は頑張っていると思います、限られた資源ではね。何とか各大使館でオピニオンリーダーに働きかけたり、それなりの反応も各国のメディアからあると思うんですね。ただ、十分かというと、やはりそこは十分ではないと。だから、この領土・主権対策企画調整室を作って、この内外発信を助けるということで、過去の政権がどうのこうのじゃなくて、やはり今の状況を踏まえて、この部分が不十分だということなので、領土担当大臣として、何度も言いますが、外務大臣とよく平仄(ひょうそく)を合わせながら対外発信について力を入れていきたいと思います。
 よろしいですか、ありがとうございました。

・説明資料(PDF形式:479KB)

(以上)