甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成26年1月14日

(平成26年1月14日(火) 10:38~11:01  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 私から1点報告をさせていただきます。
 先週の会見でもちょっと触れましたけれども、15日水曜日付で内閣府に経済財政諮問会議民間議員室というものを発足させていただきます。人事については御手元の資料の通りであります。詳細については、経済財政運営担当にお尋ねをいただきたいと思います。
 私からは以上であります。

2.質疑応答

(問)サントリーがアメリカの蒸留酒最大手の大型買収を決めたのですけれども、感想がございましたら聞かせていただけますでしょうか。
(答)結論から言えば、大いに期待いたしております。今、グローバル競争の時代に入っておりますから、日本国内でベスト3とかベスト5という競争ではなくて、世界の中で3指に入るとか、5指に入るという競争になっているわけであります。日本の大手事業者は、世界の大手事業者になるための努力とトライをしていただきたいと思います。
(問)国際収支についてお伺いしたいのですけれども、今日発表された11月の国際収支で、過去最大の赤字となりました。大きな要因としては、円安によるエネルギー関係の輸入額が膨らんだことと、輸出がなかなか円安にもかかわらず思ったほど伸びてこないことかと思われますけれども、大臣としては今回の過去最大の赤字という結果についてどのように受け止めていらっしゃいますでしょうか。
(答)これは今までも申し上げてきましたけれども、これからも注意が必要だと思います。貿易収支、経常収支、国際収支、どれも基本は貿易収支の黒字で、その貿易立国の原点が今若干揺らいでいるわけであります。最大の原因は原発全停止による代替エネルギーの輸入、この輸入に円安が拍車をかけているということになります。そして、御指摘の通り、円安で輸出環境がよくなっているにもかかわらず、思ったほどスピーディに輸出が拡大していかない。もちろん輸入の増と輸出の増の関係にはタイムラグがあることは御案内の通りであります。
 できるだけ輸出環境の整備に取り組んで、まず貿易収支の赤字幅を詰めていく。そして、投資収支をしっかり上げていくということに取り組んでいかなければならないと思います。放置いたしますと、財政資金を海外に頼るというアメリカ型になっていくわけでありまして、基軸通貨国だから比較的容易にできていることをそうでない国がやらなければならないという状態になってくるわけであります。これは深刻に受け止めて、根本原因を解消していくということに取り組まなければならないと思います。
(問)週末に大臣はテレビの御出演で消費税率10%になったときの経済対策のことについて触れられましたけれども、改めて経済対策の時期と、今考える規模感、それを決める仕組みとか、そういうところについてお話をいただけますでしょうか。
(答)今、日本にとっての喫緊の課題というのは、経済成長と財政再建、社会保障の安定的な推進、これを同時にやっていくことであります。そこでアベノミクスを通じて持続的経済成長の絵図を書いている。そうした中で、消費税が経済に負担を与えないというか、消費税の負担を乗り越える強い経済を作っていく。そういうことで財政再建も、あるいは社会保障の安定的財源も確保するということで、非常に難しい幾つかの案件を同時に関連して解決していこうということに取り組んでいるわけであります。
 そこで、大事なのは、一つの政策導入が他の政策の腰を折ってしまわないということであります。それぞれが政策目的に従って進んでいくことが大事でありますから、大事なことは、消費税を引き上げることを通じて、景気の腰折れをしてしまわない、つまり中長期にわたる安定的な経済成長を確保するということの障害にならないような手立てを打つことが大事なことであります。
 でありますから、5%から8%に今年4月に引上げがありますけれども、総理は極めて慎重な判断をし、いろいろなシミュレーションをした中でしっかりとした経済対策を打っていけば、この回復過程の中では落ち込みを乗り越えて成長軌道に戻せるという見通しがついたから判断をされたわけであります。極めて短期間の間に更に2%上げるということは、言ってみれば、病み上がりの体力が回復したかしないか、その判断ができない中で、更に負荷をかけるということは、また元の状態に戻ってしまうという危険性がありますから、そこの判断は極めて慎重にされると思っております。5%から8%に上げる以上の慎重な判断と対応をもって、8%から10%の判断をされるというふうに思っております。
(問)時期については、今年の年末の予算編成の過程の前までというというお話だったと思うのですけれども。
(答)物理的、技術的な見地から判断しますと、法律上は半年前の判断とありますけれども、次なる半年前というのは、予算が審議中か、予算が成立したかの時点での判断であります。そうしますと、その時点だと、予算の組み直しという可能性が出てきます。そういう技術的な問題を考えると、年末ぎりぎりが予算編成上の影響を与えないということになります。ただその時点で、きちんと判断ができるほどしっかりした数字が出てくれば、一番いいというふうに思いますが、そこは3%国民負担が上がった後の姿が、どういうふうになっているかということをしっかり見極める必要があると思いますから、判断をされる場合には、12月ぎりぎりの時点がタイミングなのかなというふうにも考えております。
(問)先ほど発表された経済財政諮問会議の民間議員室について改めてですけれども、これを設置された意味と、民間の会社の方も入っていらっしゃるのですけれども、この組織に期待されることをお願いいたします。
(答)経済財政諮問会議について、各界を代表する識者の方に入っていただいておりますが、産業競争力会議がかなりとんがった人が多い関係で、相対的に割とおとなしいという評価があります。予定調和型ではないのかというような心配もなされているわけであります。政府とかけ離れたことをやってもらっても困るのでありますけれども、いわゆる岩盤を打ち破るような提言は必要であります。そこで、民間議員が考えていらっしゃることが、より制約なく提案できるような環境を作る必要があると考えたわけであります。そこで民間議員に専属するスタッフを作って、予定調和というような評価がないような体制をとりたいと考えていた次第です。
(問)というところで期待していたのですけれども、室長が役所の方というのがちょっと気になるのですけれども、この辺はいかがでしょうか。
(答)私の下のスタッフというのは、経済財政に関わる、全省庁俯瞰して、その上に立って関係省庁に対して指示を出すというポジションであります。私自身そういうつもりで関係大臣にいろいろな指示や要請をしてきた経緯がございます。その私の思いをしっかり受けているメンバーでありますから、まず調整ありきということのスタンスはとらないというふうに確信いたしております。
(問)消費税の関連でもう一つお尋ねしたいのですけれども、財政健全化のためには予定通りの日程で引き上げることがベストというふうにお考えかどうか聞かせていただけますか。
(答)財政健全化は、景気の腰折れがない前提です。つまり消費税収入が増えました、法人税収、所得税収等々は減りました、ということでは元も子もないわけでありますから、その消費税以外の税収が減額にならないという経済の足腰の強さを保ちながら負荷をかけていくということになるわけであります。その頃合いをしっかりと、しかも正確に見定めるということが必要だということを考えております。
(問)先日の会見で、細川護熙さんが東京都知事選に出られるというので、「殿、御乱心」という言葉はあったのですけれども、その後で原発の話等々があって、細川さんと原発を結びつけた報道もあったかと思うのですけれども、真意の方をお願いします。
(答)細川元総理の経歴は、国政に出られて、国政の中でやはりこれからは地方自治だということで知事選に挑戦をされた。しかし、知事選をやってみてやはり国が変わらなければということで、また国だと、しかも天下をとることが必要だということで、天下をとられたわけです。それで諸々のことを解決するために取り組まれるのかと思ったら、8カ月で投げ出してしまわれたわけでありまして、もう煩わしい浮世とはおさらばで、晴耕雨読の生活を送ると宣言されたわけです。ある面うらやましいと思ったのでありますけれども、そうした隠とん生活を送っておられたと思ったら、突然また煩わしい世界に行くのだということで、殿様の気まぐれには我々のような人間はなかなかついていけないなということを思って、「殿、御乱心」と申し上げたのでありまして、なかなか何をお考えになっていらっしゃるのかよくわからないということですね。
 原発の問題はこれとまた別問題で、やはりエネルギー政策というのはオールジャパンで考えなければならないところであります。安全なエネルギー、これはもう大前提であります。そして、低廉なエネルギー、そしてこれを安定的に、言ってみれば1個のことだけ考えれば済むということではなくて、総合判断をするということであります。
 どこか1箇所の地域が、自分のところは自分のところでやるのだから、よそに送る必要はないということで、例えば太陽光や風力を自分の分だけ発電し、他へ送るのを拒否してしまったら、オールジャパンで展開できないわけであります。あるいは、発電した不安定電力を調整しないで送り出していたら、全体としてはバランスが狂ってしまって、大停電ということが起きるわけであります。日本全土を総合調整する必要があるということは、日本全土を見られる主体が責任を持って進めていくことであって、地方選の選挙の争点とは異なることであるのではないですかと思っております。
(問)先ほどの経済財政諮問会議の関係ですけれども、大臣の問題意識の中で、なかなかエッジのきいた提言が出てこないというものがあったかとは思うのですけれども、今年のテーマの中で最も経済財政諮問会議に期待するテーマ、ここを重点的にやってほしいとエッジのきいたものを出して、存在感のあるものを出してきてほしいとお考えになっているものは何でしょうか。
(答)幾つかあります。例えば社会保障で言えば、医療と介護、しかも地域でのケア、これをどうやってトータルに運営していくかというのが課題なわけです。
 私も昨年の暮れに病気をしまして痛感しましたことは、やはり高度機能病院に風邪で受診するという人が出ると、高度医療を必要としている人の時間がそれだけ取られてしまうわけです。だからそこはそれぞれの機能分化と連携というのが必要だなと痛感いたしました。でありますから、必要な人に高度医療がいくように、それから地域ケアが必要な人には地域ケアがいくように、この連携が必要なのであります。分化と連携です。
 恐らく6月の改定のときに盛り込まれるのは、非営利型のホールディングカンパニーというのがあります。いわゆる持ち株会社というのは、いろいろな部門をやっている企業が経営統合するために経営部門を一元化するという方式がありますが、例えば医療法人とか、福祉法人をまとめてホールディングするということは、今できません。そういう非営利型ホールディングカンパニーを通じて、医療と介護、地域ケアをトータルに機能分化して連携するということが進んでいくことは、必要な手当てが必要なところに行くということになっていくと思います。これが医療、介護の分野だと思います。
 そして、働き方の分野では、限定正社員ということについて、やはり社会的認知を与える必要があると思います。フルタイムで働く者にしか社会保障の環境は整わないというのはおかしいので、それ以外の選択だと派遣とかパートしかない。それについては社会保障環境が著しく劣後する、こういう働き方はいけないと思います。
 それから、日本は今後30年、50年、どうやって国力を維持していくのか。これは極めて大事なことでありまして、そのために日本は科学技術を振興し、常にイノベーションは日本から生まれるという国にしなければならない、というのが私の政治家になって以来の思いであります。そのために司令塔機能を名実ともに強化する。これは省庁別に重複しているような研究についてより効果的にやっていく。重複している部分はどこか。穴があいている部分はどこか。それを俯瞰するところがないところが問題だったわけです。その問題提起をする。
 それから、もう1点は、国の基礎研究と企業の実用化研究をどうやってシームレスにつないでいくか。それが、基礎から実用化に向けて極めてタイムラグがなく市場に製品やサービスをデビューさせることにつながっていくわけであります。この課題に取り組んで、きちんとした設計図を作ってもらいたいと思っております。
 あるいは、農業は社会性の部分と産業の部分という二面性があります。特に産業の部分については、六次産業化についてどういうスムーズな仕組みができるか。農業法人はどうあるべきか、農業委員会はどうあるべきか、あるいは農協はどうあるべきか。これから20年、30年先を見越して、農業が強固な産業として生まれ変わっていくために、基本設計をしていかなければならないということがあろうかと思います。そういう30年後、50年後に日本が世界に冠たるリーディングカントリーとして立っているには何をするべきか。日本は軍事大国にはなれません。交渉力には、軍事力はもちろんありますけれども、経済力というのがあります。だとしたら、やはり強固な経済立国として立っていくために、基本的に何を考えるべきか。伸ばすべき産業は何か、それを伸ばすために根本的に仕組みをどう変えていくか、ということに取り組んでいきたいと思います。
 昨年、病気をしまして、自分が政治家として生きている間に何をすべきかということをよく考えました。それはやはり、我々の次の世代、その次の世代にも、やはり国家が世界に冠たる経済大国として歩んでいくことであると、そういうことを考えまして、そのために必要な手当てはとにかく自分が政治家であるうちに打っておこうという思いに至ったわけです。

(以上)