前原内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成24年12月26日

(平成24年12月26日(水) 9:29~9:50  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

おはようございます。
先程、閣議がございまして、総辞職の署名をしてまいりました。総理からはこの3年3カ月、また、野田政権に対しての、自らの評価というものがございまして、我々に対しての御礼がございました。私といたしましては、10月1日にこの仕事に就いて、解散が11月16日になりますので、正味1カ月半、また、今までということにすると3カ月弱でございますけれども、それなりの仕事は果たせたのではないかと思っております。いずれにいたしましても、皆様方には大変お世話になったことを御礼申し上げて、冒頭のあいさつといたします。ありがとうございました。

2.質疑応答

(問)2つ、両方とも漠然とした質問ですが、3年3カ月をどう振り返るかということと、今後4年間、前原大臣本人としての抱負をお願いいたします。
(答)3年3カ月、これは強がりでも何でもなく、全く悔いなし、そして、やれることはやらせていただいたという満足感でいっぱいであります。まず1年間、国土交通大臣をやらせていただき、政権交代の機運というのが直後からありましたので、そういう面では仕事が大変できたと思っております。日本航空の再生、そしてダム事業含めての公共事業の評価軸の見直しの中で、1年目は15.3%の削減、羽田の国際化、そして国際コンテナ戦略港湾、国際バルク戦略港湾の選定、関空・伊丹の統合、そしてオープンスカイ協定を結べたということ、観光の取組をしっかり行った中で、インバウンドが過去最高になったということ、また、インフラパッケージ輸出の仕組みをしっかり整えて、成果を挙げてきたということ、外務大臣の時は、半年間でありましたけれども、鳩山政権で傷ついた日米関係を立て直すということが私の最大の課題でございまして、尖閣を日米安全保障条約第5条の範囲の中であるという言質をアメリカ政府から取りつけて、それが今でも生きていること、また、そういったことを踏まえて日米関係の改善、修復というのは半年間では十分できたのではないかと思っております。
また、国土交通大臣から引き続きやってきた経済外交、資源外交を含めて、レアアース獲得契約、そしてインフラパッケージ輸出の充実、こういったものができたのではないか。また、ODAのあり方の見直しということも道筋としてはできたのではないかと思っております。
それから、政調会長のときは復興予算、社会保障・税の一体改革、TPPに関する党内取りまとめ、そして電力改革、環境エネルギー政策の取りまとめ、こういった党内をまとめることは極めて重要かつ大変なことでありましたけれども、そういった仕事もできたと思っております。
また、この仕事に就いてからは、原子力委員会の改組のあり方、グリーン政策大綱、予算編成の基本方針、科学技術政策や経済財政政策への関与、特に日銀の金融政策決定会合に3回出席したこと、また、様々な根回しも含めて日銀との連携ができたということについては、私は一定の評価をしているところであります。
いずれにいたしましても、野党の期間が長くあって、いつかは与党だという思いでやってきた中で、自分自身としては、そういった経験を生かして、3年3カ月、満足できる活動ができたのではないかと思います。
民主主義というのは、いつ政権が変わるか分からない。そのために野党であってもしっかりと準備をしておくということが大事でありますので、これからは様々な、また、何らかの立場に就いたときに、しっかりと国家国民のために仕事ができるように、これからも精進をしていきたいと考えております。
(問)今おっしゃられたように確かに実績の部分がたくさんあったと思うのですけれども、結果として、今回の衆議院選挙で大敗されたわけで、反省されるとすれば、どういうところがあったのか、党の中枢、政権の中枢におられた立場として、こうしておけばよかったというようなことがありましたら、教えてください。
(答)私が地元、そして全国を回って感じたのは、民主党に対する期待から失望へ変わった大きなポイントというのは2つあったのではないか。1つは、常に党内ががたがたしてまとまらない、何かこの党は一致できないのかというような、いつもそういう目で見られ続けてきた。現に社会保障・税の一体改革では、私にも大きな責任がありますけれども、党で考え方をまとめて離党者を大量に生んだという中で、民主党に対するガバナンスといいますか、大きな政権与党としての統治能力に対するクエスチョンというものが国民の中にあったのではないかということが一つ。あとは、野党の時代にマニフェストをまとめて、実際に政権をとって、それをやっていくということは大変難しいことではありますけれども、果たして、十分にその努力が司、司でやられたのかということ、結果的にそれが十二分にできていない。できた成果もございますけれども、国民からすれば、約束違反、公約違反、マニフェスト違反ととられた面もあったという中で、マニフェスト政治の難しさ、そして我々の努力不足、こういったものが期待から失望に大きく変わったのではないかと思っております。
この経験もしっかり生かしていかないといけないなと思っております。会社の組織と違って、当然ながら一国一城の主ですから、上司が決めたら下の者は従わなくてはいけないという仕組みになっていないわけでありますが、それを超えて、やはりガバナンス能力、統治能力をしっかりと身につけないと、私は民主党というか、今のグループ、仲間が再び国民から信頼を得るというのはなかなか難しいのではないかと思っておりますので、それも我々の反省材料としてゼロからスタートしなくてはいけないと考えております。
(問)民主党ですけれども、再生には一番何が必要だと、今、お考えですか。
(答)私はかなり危機的だと思います。解党的出直しということをよく言いますけれども、二大政党の一角を占めているという甘い認識はもう私は持つべきではない、今回の比例の得票を見ると、第3党、維新の方が多かったわけで、もちろん小選挙区ではある程度の候補者がいて、地盤がある人もいますけれども、国民全体の意識からすると、二大政党の一角を占めているという、うぬぼれた考え方はもう捨てなくてはいけない。それぐらいの私は厳しい出発になろうかと思っております。
したがいまして、国会で自民党ともちろん対峙をしていくわけでありますけれども、今後の参議院議員選挙、あるいは各種自治体選挙、こういうものも踏まえて、相当ドラスティックに戦略的に取り組んでいかなければ、放っておいたらまた振り子が戻るみたいに民主党に期待が集まると考えるのは、私は甘過ぎると思います。むしろ民主党以外に期待を持つ受け皿ができつつあるという認識の中で、どうしてこの党を立て直すのか、そしてもう一度、政権政党の座につくためには、あらゆる戦略、戦術をどのようにつくり上げて実行していくのか、それぐらい考えないといけない。自然体でこの政権が再生されると思ったら大間違いで、むしろ自然体でいたら本当になくなるという認識を私は持つべきではないかと思っています。
(問)今後、野党としての責任を果たすということになるわけですけれども、今、新しい政権は大胆な金融緩和と財政出動で2%のインフレにするという非常に強力な姿勢でやっていますけれども、これについてはどういう評価、どういう対応をされていきますか。
(答)私もこの1カ月半、日銀の金融政策決定会合、あるいは日銀との様々な協議の中で、公式、非公式の協議の中で、デフレの脱却、円高基調の是正、これは喫緊の課題であると申し上げてきた。したがって、更なる強力な金融緩和を求めるというスタンスでまいりました。私がポジションについたときには77円台だったと思いますけれども、80円台にはなったということであります。ですから、円高基調は是正をされている。そのことによって株価も上がっているということについては、良い方向であると思いますけれども、どこでこれをうまくマネジメントするかということが、今後、政権としては至難の技になってくるのではないかと思います。私が申し上げることではありませんが、為替レートでは、やはり適正水準というのがあるわけでして、この適正水準に本当におさめられるのかどうなのかということと、あくまでも金融緩和というのは、デフレ脱却、インフレ期待というものの中でのものであり、その緩和された金融状況が、実際に経済の体質改善に使われないと、全く意味がない。ここが、これから大事なところになってくるのではないかと思っております。これから政権を担われる安部政権が、単なる金融緩和、物価目標だけでおっしゃっているとは思いません。私も勉強不足かもしれませんが、金融緩和というものは手段であって、目的ではない。目的はそういう緩和された金融環境の中で、どうやって日本経済の体質転換が行われるのかと、正に筋肉質の体質になって、新たな時代に対応できるような成長エンジンを持つ経済に変えていくのか、あるいは諸問題に対応できるような対応に変わっていくのか、そこが大事でありますので、是非そこを見失わないようにしていただきたい。
その観点からすると、デフレ脱却ももちろん、借金をしてお金を使えばデフレ脱却のための大きな要因になりますけれども、しかし、例えば、復旧・復興を含めて本当に必要な公共事業ならまだしも、私も国交大臣を1年間やって、今後の日本は大変だなと思ったのは、この間の笹子トンネルの天井板の崩落事故、そしてその後、高速道路は3兆円の補修費が要るのではないかと言われていますが、公共事業というのは、やったら終わりではないのですね。つまり、維持管理に莫大なお金がかかっているし、今まで、戦後積み上げてきたインフラの修繕、維持管理というのは莫大なものになってきているということを考えると、私は新たな公共事業で景気を刺激してということよりは、正にもしやるのであれば、必要なところに公共投資をしっかり行っていただく。そして、むしろ公共投資と同様に、先程申し上げたような、経済の体質改善となる、これを促すような、これからは例えば、脱原発、風力、あるいは地熱というものになると、系統、送電網が必要でありますので、こういうものを呼び水となるようなところにお金を使い、民間のお金も含めて入ってくる中で、将来の日本の、正に良い意味での先行投資になるというものにしっかりとお金を使っていただきたいと思いますし、野党としてそういった議論をこれから国会の論戦の中でしっかりと主張していきたいと考えております。
(問)民主党の話で、海江田代表、細野幹事長という体制の評価と、結果的には今、前原大臣は民主党内だと最大グループになるわけですけれども、そのグループを束ねる者として、今後どういうふうに支えていくかということをお願いします。
(答)先程申し上げたように、党の一体性というのが極めて大事だと。私や他の方にも立候補の要請があったわけでありますけれども、しかし、この3年3カ月、閣内、あるいは党の役職をやらせていただいた人間として、結果的に、前回は308議席獲得した議席が今回57しか取れなかったという責任は、やはり私も連帯責任として負わなくてはいけないと思っております。そういう意味において、今回、出馬をするということはいたしませんでしたし、誰に投票したかということについても、申し上げないといったことは、正にこの新たな執行部、誰がやられるにしても、先程申し上げたように、二大政党制の一極を占めているというのはもう幻想になっている。我々は、下手をすれば消え去る運命にある党であると。これをいかに存在感を持たせて、そして、いま一度国民の期待をいただいて、政権政党に変わっていくかということは、並大抵の努力ではないと思います。そういう意味では、海江田新代表、細野新幹事長は大変な御苦労をされると思います。どんな立場にあっても、我々はそれを支えていくということが大事なことだと思いますので、しっかりと支えていきたい。そしてまた、建設的な意見をしっかりと執行部には申し上げていきたいと考えております。
(問)今、建設的な意見という話があったのですけれども、昨日、馬淵さんが民主党再生のプロセスを語ったと思うのですけれども、もし前原大臣の思う再建のプロセスみたいなものがあれば教えてもらいたいのですけれども。
(答)今回、私は代表を目指していなかったので、そんな馬淵さんのように整理をされたお話ができるかどうか分かりませんが、二つあると思います。一つは、やはり国会での対応もさることながら、この3年3カ月の総括をしっかりする。なぜ我々は308議席から57議席まで減ったのか、先程私個人としては悔いなしと、やれることはやったと、そして成果も出したと、恐らくそういう方もおられると思うのですけれども、トータルの評価としては極めて低かった。やはりその総括なくしては新たな再生はできない。だから、この総括は、私はまず何よりも大事だと思います。それからもう一つは、来年の参議院議員選挙、都議会議員選挙に勝つというのはなかなか難しいですけれども、どうやって踏みとどまれるか。特に参議院議員選挙は、一人区が31ありますので、自公政権がよほどの失敗をされない限りは、まだ勢いはある程度あると思うのですね。その中で、この参議院議員選挙の一人区対策というのは、私は野党共闘というものをしっかりやっていくしかないと思っております。これをやるためには政策というものがないと、野合と言われるわけでありますから、しっかり野党で国会での共闘、政策共闘、そして候補者の調整、こういったものがしっかりできるかどうか、当面の海江田新体制へ私がお願いをするとすれば、この二つをしっかりやってもらいたいと思います。
(問)今までのこと、これからのことも含めて、現在の心境を一言で言うとどういった心境でしょうか。
(答)心境は本当にすっきりしているというか、この冬空の晴天のように、雲一つないという、本当にそういう気持ちであります。仲間とともに民主党のためなど小さなことではなくて、これからも日本のためにしっかりと歩みを進めていきたい。今回、7万2,170人の方が、私に投票していただきました。この方のみならず、民主党にも900万人以上の方が比例代表で投票していただいたわけですから、こういった方々からしっかりと、もう一度再生をしろというお気持ちをいただいたと思いますので、今は本当に晴れ晴れとした気持ちでありますけれども、これからまたしっかりと気持ちを引き締め直して、一から頑張らせていただきたいと思っております。

(以上)