前原内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成24年11月22日

(平成24年11月22日(木) 10:40~11:05  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

おはようございます。私からは特にございません。

2.質疑応答

(問)自民党が次の衆議院選挙の政権公約を発表しまして、日銀法の改正も視野に入れた大胆な金融緩和や集団的自衛権の行使を可能にするようなことを盛り込んでいますけれども、全体を通しての印象などをお聞かせください。
(答)選挙公約をしっかりと各党がまとめて、有権者に理解をしていただき、そして投票先を決めていただくという意味で、各党がそれぞれの考え方をまとめられるということは大変良いことではないかと思っております。
自民党さんの政権公約については、詳しくは見ておりませんが、若干気になったところは、政権をつくれば、尖閣に施設を作るということが書いてあったような記憶がございます。我々、国有化をしたわけでありまして、尖閣が日本固有の領土であることは、国際法的にも歴史的にも見て、疑いの余地は全くないという前提に立ちながら、しかし国有化の趣旨というのは、静かな環境の中で我々は実効支配を続けていくということでございましたので、自民党さんが施設をつくるということについて、私どもとは違うなということと同時に、それが果たしてどういう意味を持つのかということについて、しっかりと議論することが必要ではないかと感じております。
(問)民主党は、09年のマニフェストで掲げたことについて、できなかったことがたくさんあるという批判を受けて、その結果として今のような状態になっているわけですけれども、そういった観点から自民党の政権公約を見られた場合はいかがでしょうか。
(答)人様の評価をする立場ではないと思っておりますが、これから民主党のマニフェストも最終段階になってくると思いますけれども、全くできていない、あるいはできなかったことが多いということについては、もちろんできなかったこともございますけれども、私は過度に批判をされ過ぎているのではないかとはっきり申し上げたいと思います。もちろん一番大きな問題は財源の話だと思いますけれども、3年間で復興予算に回した埋蔵金を入れますと約27兆円を生み出したわけであります。ということは、1年で平均して9兆円ということになれば、満額ではありませんけれども、それなりの財源は見出してきたということは言えるわけでございます。いずれにせよ、ばらまきだという批判をしておられた自民党が、4Kについても、本当にすべてひっくり返せるのかどうなのかということを考えたときには、私はなかなか難しいと思います。
子ども手当については、自公政権の末期には1兆円だったものが2.3兆円まで三党合意で確認をしたわけでありますし、農家への戸別所得補償はかなり定着をしております。高校授業料の無償化も、不可逆的だと思います。また、高速道路無償化の社会実験は、5年間凍結して、復興財源にも回しております。これについては三党合意をしておりますので、そういう意味では、批判をされてはおりますけれども、我々としてすべてをやれていないことについては真摯に反省をしながら、しかし方向性については間違っていないということの中で、しっかり信を問うことが大事なのではないかと思っております。
(問)昨日発表された貿易統計で、貿易赤字が続いて、なおかつ輸出が、特に中国関係が減っているということが示されたのですが、足元の状況についてはどのようにお考えでしょうか。
(答)昨日発表されました貿易統計でございますけれども、輸出数量は、季節調整済み前月比で10月はマイナス2.4%ということでありまして、2カ月連続の減少となっております。
主要地域別に申し上げますと、アジア向けがマイナス1.1%、アメリカ向けがマイナス1.1%、そして影響が大きかったのはEU向けでございまして、EU向けがマイナス11.8%になっております。今、御指摘の中国向け、確かに自動車輸出などは減っておりますけれども、先ほど申し上げたように、アジア向け輸出全体はマイナス1.1%ということで、今回のマイナス幅の拡大に寄与したのはEU向けの輸出が減ったことだと思っております。そういう意味では、ギリシャ支援について、また26日に再度集まりが持たれるということでございまして、やはりヨーロッパの債務危機、そしてヨーロッパ全体の景気後退がどのようにうまくマネジメントされながら、良い方向に転じていくのか。そしてまた、バーナンキFRB議長がおっしゃっているように、アメリカも、「財政の崖」というものをうまく越えながら明るい指標が幾つか出始めておりますけれども、しっかりとした歩みを進めていただく。中国も、高い成長率からは若干数字が落ちていくと思いますけれども、むしろ堅調な成長を求める志向に入っているのではないかと思っております。そういう意味におきましては、それぞれの国がしっかりと経済対策をとりながら、良い回転に持っていけるように努力をしていきたいと思っております。日本も日銀との協力、そして経済対策におきましては、第1弾はやらせていただきまして、第2弾はこの11月にまとめるということになろうかと思いますし、また、全体の経済対策をしっかりと打ち出す中で日本としての役割も果たしていきたいと考えております。
(問)大臣は昨年、政調会長をなさっていたときに、日本国内のTPPへの過度な恐れを「TPPお化け」という言葉を使って言っていらっしゃいましたが、今回の選挙で、またTPPについて国民に説明することになると思うのですが、今も「TPPお化け」というものは、まだ日本に存在しているとお考えでしょうか。それとも、無くなったとしたら、その正体というのは何だとお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
(答)私が「TPPお化け」と申し上げたのは、TPPに日本が加盟をすると国民皆保険が崩れる、そして自由診療が中心になるのではないかという、特に医療分野における話が流布をしておりまして、これについては完全な「TPPお化け」ではないかということを申し上げたわけでありますし、先般、私が予算委員会で答弁をいたしましたけれども、アメリカ自身が国民皆保険を変える、あるいは日本の医療制度の変更を求めるという考え方はないということを言っているわけであります。
私は、国を開いていくという意味においては、覚悟が必要だと思います。もちろんプラスもあればマイナスもあるということで、そして日本の置かれている現状を考えたときに、多くの方々、特にTPPに反対をされている方々は、マイナスになるのではないかという懸念されておりますけれども、私はそこは交渉次第だと思うのですね。交渉に入って、いかに日本のプラスをとれるのか。外交交渉というのは、お互いの国益のぶつかり合いですから、お互いが自分の国に少しでもプラスになるようにという交渉をするのは当たり前でありまして、初めから敗北主義で、交渉に入ったらやられるのだ、負けるのだ、アメリカの言いなりになるのだということであれば、私は本当の交渉にならないと思っております。
そういう意味では、この日米間で今、TPPの協議に向けてのさまざまな交渉がされていますけれども、少なくとも、詳しく内容は申し上げられませんけれども、しっかり日本の国益を守って、そして自由貿易をお互いに進めていくという観点で、何も言われたままに我々がTPPに入ってすべて日本のマイナスになるような状況になるということではなくて、いかに守るべきものを守り、そしてトータルとしてプラスになる仕組みを作っていくために日本が臨むのかという観点に立つことが大事なことではないかと思っております。
(問)今のお話は、選挙中なので、何かTPP参加表明はすべきだというニュアンスに聞こえなくもないのですけれども、そこも含めてお願いします。
(答)マニフェストの議論は党で行われておりますし、少なくとも私が理解をしているのは、総理の所信表明のラインでまとめていただけるのではないかということであります。つまりは、TPP、RCEP、日中韓FTAを同時に進めていく。そして、大きな方向としては、国を開いてグローバルな成長のエネルギーを日本も取り込んでいくということの中で、日本の成長につなげていくということでございますので、私はそういう意味においては、守るべきものはしっかり守った上で国を開いていくという大きな方向性の中で、TPPもその一つとして重要なプラットフォームであるということを申し上げたわけであります。少なくともこの選挙期間中に日米間の話し合いがまとまるとは思っておりません。国益を考えれば、逆に拙速に参加をするということを決めて、日米交渉にマイナスになる、アメリカに足元を見られるということがあってはいけませんので、そういう表明があるとは考えておりません。
(問)自民党マニフェストの話に戻るのですけれども、まず経済のことについて、安倍総裁は、建設国債の引受けは直接ではないという、ややちょっと発言がぶれているのではないかという指摘もありますが、そういうことについて1つと、原発の政策については、再稼働の可否を3年以内に結論と、民主党に比べるとあいまいさが目立つと思うのですけれども、この2点について評価をお願いします。
(答)繰返しになりますけれども、他党のマニフェストの批判をする立場にはないと私は思っております。それは国民が御判断をされることだと思っておりますし、建設国債の直接引受けをやらないというのは当たり前の話であって、これをやると財政規律がゆがむということは先般の記者会見でも申し上げたとおりであります。それをマーケットから買うということであれば、今とどう違うのかなと、今ももうやっておりますし、どう違うのかなということは疑問ではありますけれども、そうおっしゃっているのであれば、それについての懸念は払拭されたということで結構なことではないかと思います。
原発の政策も、さまざまなお考えがあって、我々はとにかく2030年代にあらゆる政策資源を投入してゼロを目指す。やはり自ら意思を持ってそこを目指していくということが大事であり、しかし、きちんとしたリードタイムをとる中で、ステークホルダーの皆さん方との連携をしっかりとって、日本経済にマイナスにならないように、むしろ革新的エネルギーが日本の成長のエンジンとなるようにしっかりリードタイムをとる中で、着実に原発ゼロに進めていくのが民主党の考え方だということを訴えてまいりたいと考えております。
(問)マニフェストに関係してくる話なのですけれども、消費税について、低所得者層へ向けての軽減措置等々というものが結局決まらないまま法律だけは通ってしまったのですけれども、一部、給付つきの税額控除など、いろいろアイデアがあるようなのですけれども、これはマニフェストに何らかの形で盛り込んでいこうというようなお考えはありますか。あるいは、こういう考え方は良くないというようなものがありましたらお願いします。
(答)政調会長であれば今の御質問にはお答えをするのですが、私が政調会長として取りまとめた三党合意をベースに、党としての考え方をおまとめいただければ結構かと思いますので、私から詳細にわたる具体的なことについては言及するのは控えたいと思います。
(問)衆議院選挙の関連なのですけれども、民主党は今回、公認候補を決めるに当たって、申請書に署名を求めるという対応をとっていまして、課題になっている党の一体性を確保したいということが目的だと思うのですが、大臣、その必要性を含めて、今回の対応をどのように感じていらっしゃるかというのをお聞かせいただけますか。
(答)私は、もうサインをして党本部に送りました。やはり党の公認候補として戦う以上は、党が討議を経て決めたものについて、しっかり従って戦うということは大事なことだと思いますし、特に民主党として政党交付金をいただいて、その政党交付金から公認料、あるいは交付金などもいただくわけでありますので、私は当然だと思います。むしろ、お金をもらいながら、そのお金を返さずに他の党に行かれて、他の党の公認で民主党の批判をされている方々の気持ちが私は全く理解できないし、それは政治家以前に人間として許されないことであると思っております。
(問)宇宙開発についてお尋ねしたいのですけれども、先だって宇宙政策委員会で宇宙基本計画の策定に向けた意見をまとめられたのですけれども、その中で気になっているのが、産業振興や安全保障など、そういったものを重視していって、一方で、これまで日本が力を入れてきた有人宇宙活動、あるいは、はやぶさ2の後継機などの宇宙探査、こういったものは、割と優先度が低いような位置づけになっているのですけれども、そういった内容について前原大臣の御感想や御意見などをお聞かせください。
(答)今の宇宙政策委員会のメンバーは、私が鳩山政権のときに宇宙担当大臣であったときに有識者会議としてお願いした方々が、ほとんど入っていただいております。そして、有識者会議の中で私がお願いをしたのは、研究開発も極めて重要である。しかし、これからは、その研究開発で日本が得た基盤というものを利用へと拡大をしていかなくてはいけないというお話をさせていただきまして、そういう意味では、安全保障のみならずさまざまな行政分野への活用、そしてまた産業利用にウイングを広げていただくということは大変重要なことではないかと思いますし、これは他国との協力ということにも、これからよりつながっていけるのではないかと思います。
2つ目に、宇宙に常にアクセスができると。日本はそういう能力がございますけれども、その能力を持たないけれども、しかし衛星を持って、そして、例えば自然災害対策、あるいは交通渋滞対策などに活用したいという国々はたくさんあるわけですから、そういった我々が持っている宇宙へのアクセスのツールを他国にもしっかりと商業ベースで活用していただく中で、より開発の方向性に持っていくということも大事なことだと思います。2つ目は、今、申し上げたアクセスが常に保たれる状況にならなければいけない。
この2つがお願いをしたことでございますけれども、それプラス、今まで日本がやってきた宇宙にかかわる研究開発、そしてはやぶさなどは、世界でも私は誇れる実績になったと思います。要は約3,000億円という限られた予算の中でどういう重点配分をするかということの中で、もちろん有人飛行、そして、はやぶさなどの後継機についてもしっかりやってまいりたいと思います。ただ、重点を置くのは、より常にアクセスができる、そしてこれからは、宇宙の利用促進に力を入れたということでございまして、その意味での優先順位が変わったと御理解をいただければありがたいと思っております。
(問)貿易赤字の関連なのですけれども、同時に為替市場でかなり急ピッチに円安が進んでおりまして、大臣はこれまで何度も安倍総裁の発言に関連して、投機への懸念ということを表明されていらっしゃいますけれども、今回のこの円安の背景として、例えば貿易赤字が続いていること、経常黒字幅が縮小していることなど、そういった構造変化が何らか影響を与えている可能性についてのお考えをお聞かせいただけますか。
(答)この為替の問題というのは両面考えなくてはいけないと思います。1つは、特に輸出産業、あるいはインバウンドの観光分野においては、円高になればなるほど輸出が落ち込む、インバウンドの観光客が減っていくということの中で、日本の経済にとってマイナスになっていくという面があります。他方で、円高であることが輸入価格というもののいわゆる低減につながっているという意味でのプラス要因もある。特に3.11以降、福島第一原発の事故によりまして、今、大飯原発の3号機、4号機しか稼働しておりませんので、その分化石燃料の輸入が多くなってきているという意味において、その点についてはプラスだろうと思っております。
ただ、私はトータルで考えれば、日本の円というのは実態以上に強く見られていた。これはIMFも10%から15%高く評価をされているということを言っているように、高く評価をされ過ぎてきているのではないかと思っております。したがって、私はどのような理由であれ、今の円安傾向については総論として歓迎をいたします。ただし、投機的な動きという情報も耳に入ってくる。そしてまた、貿易統計に見られるような輸出の減少、それに伴う貿易収支の赤字が常態化しないかという懸念もある。また、それがひいては、今までこれだけ莫大な財政赤字を抱えているにもかかわらず低金利で推移してきたというのは、国民が91.5%、日本の国債を引き受けているということと同時に、やはり経常収支の黒字が大きな要因であったと思いますので、構造的な変化になっていないかどうかということについてはしっかり分析をし、そして、その可能性も踏まえて注視をするということが大事なことではないかと思っております。
(問)先日、鳩山元総理が政界の引退を表明されましたが、これまで前原大臣、特に鳩山さんとは長くお仕事をしてきたと思うのですけれども、この引退についての受止めと、政権交代で大きな役割を果たされたと思うのですが、良い点と悪い点、どのように今お考えか、お願いします。
(答)率直な印象を聞かれれば、寂しい思いでいっぱいです。私が初当選をしたときには日本新党で、鳩山元総理はさきがけでいらっしゃいました。同じ会派で、そして19年間大変お世話になりました。特に民主党の創設者の一人でありますし、私は、鳩山元代表にはかなり登用していただきました。一番私がやはり感謝をしているのは、「次の内閣」というものが13年ほど前に初めてできたときに、私、37歳でしたけれども、「次の内閣」の最年少の閣僚として国土交通の担当をさせていただきました。そのときに鳩山元代表と一緒に公共事業を抜本的に見直すという考え方をまとめまして、それが私は小泉さんの公共事業見直しと、そして民主党の「コンクリートから人へ」という考え方につながったと思っておりまして、そういう意味では、この「コンクリートから人へ」、公共事業の抜本的な見直しの道筋をつけられたのが鳩山元総理であろうと思っております。
また、同時に、新しい公共というのは、これから日本に私は生き続けていかなくてはいけないと思っています。居場所と出番というものの中で、公の仕事をあらゆる形で行政のみならず担っていただくという考え方を明確に所信表明の中に入れられて、それを進めてこられたのは鳩山元総理でございます。私は、そういう意味では、さまざまな評価がありますけれども、私としてはやめられることは寂しいし、また、鳩山さんが残してこられた功績も大変大きなものがあるということだけは申し上げたいと思います。

(以上)