前原内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成24年10月30日

(平成24年10月30日(火) 15:16~15:41  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

二つございまして、まず本日日銀の政策決定会合に出席をいたしました。そして、今回は政府と日本銀行の間で、デフレ脱却に向けた取組に関する文書をまとめました。今月初めに大臣に就任して以来、デフレ脱却が10年以上にわたって実現をしていないと、こういう状況に大変強い危機感を持っておりまして、この度、デフレ脱却に向けた政府・日銀の決意と、両者一体となった取組を内外に明確に示す文書を作ることができたと考えております。
特にデフレからの早期脱却を政府・日銀共通の課題として確認をし、連名の文書として、内外に明確な形で共同して表明、発表することは、これまでになかったことでございまして、10年以上にわたる我が国経済の課題であるデフレ脱却に向けた重要な一歩になると考えております。
二つ目は、関連いたしますけれども、デフレ脱却をするためには、今回政府と日銀との間で文書を取りまとめたわけでありますけれども、日銀の金融緩和だけに頼るのではなくて、政府自身もデフレ脱却に向けた努力をしていかなくてはいけないということをお互い確認をしたわけであります。
その一つといたしまして、今回我が国の投資市場の中で、規模が大きいものの十分に活用されていない不動産とインフラ分野、特に不動産につきましては約470兆円、インフラ分野は730兆円の規模でありますけれども、そのうちREITやPFIの活用によって市場化されているものは、それぞれ9兆円、4.7兆円にすぎないということを受けまして、この度、私のもとに不動産、インフラ投資分野に関する有識者会議を立ち上げまして、1,400兆円と言われる個人の金融資産、これを不動産の証券市場、あるいはPFI、PPP、こういったものに、どうすれば、より振り向けることができるかということについての取組をできれば年内いっぱいにまとめて、実行するためのメニューをしっかりと作っていただくという有識者会議を立ち上げましたので、皆さん方に御報告をさせていただきます。
私からは以上です。

2.質疑応答

(問)このデフレ脱却に向けた取組についてという文書なのですが、これは前原大臣御持論のいわゆる日銀と政府のアコードの一種なのでしょうか、まずその点を教えてください。
(答)アコードの定義というのがどういうものかというのはいろいろ解釈があると思いますけれども、いずれにしましても、この文書はデフレからの早期脱却を政府・日銀の共通課題にして、両者が一体となって、最大限の取組として行う決意を共通理解という形で内外に対して共同して表明、発表するものであるということで、文書として取りまとめることは、これは初めてであるということでありまして、この文書にのっとって、しっかりお互いが役割を果たす中で、繰り返しになりますけれども、今までの我々の感覚からすると、デフレからの早期脱却ということと、そして一体となってこの課題の達成に最大限の努力を行うということをお互いが意思表明をするということに私は意味があると、そう考えております。
(問)大臣の考えるアコードというか、感覚からすると、これは共通の努力目標というか、共通理解であって、いわゆるアコードに当たらないということでよろしいですか。
(答)当たらないとは申し上げていません。アコードというのがどういう定義なのかということについては、いろいろ意見があるという前提で、今申し上げたように、共通の認識として文書にまとめて署名をしたと、そしてその共通目標に向かって、早期にデフレからの脱却と、そして最大限の努力をお互いに求めているという点で、私は政府・日銀のより一体的な取組によって担保されるのではないかと思っております。
(問)11兆円の金融緩和というふうに、今ヘッドラインだけしか読んでないのですが、これが現在のデフレ、あるいは景気状況を考えて、大臣から見て十分なのか、あるいはそれ以外の感想をお持ちなのか、教えてください。
(答)白川総裁と少しお話をいたしまして、白川総裁がこの総裁の任に就かれて、もう4年半近くになるわけでありますけれども、2カ月連続で金融緩和をやったのは初めてですということはおっしゃっておられました。
 議論された中身については、我々は事前も事後も公表しないということになっておりますので、この中身についても私からコメントをすることはございませんけれども、あくまでも我々の目標は、早期のデフレ脱却ということ、そして物価上昇率の中長期の安定した目標は、2%以下のプラスの領域で、当面1%を目途として、これを早期に達成するということで、お互い文書まで結んだわけでありますので、それに向けて日銀も強力な金融緩和を推進していただくということと同時に、我々も成長戦略の実施、実行などを踏まえて、お互いが役割を果たすということが大事なことではないかと思っております。
(問)この文書の中で、「デフレから早期に脱却」、この「早期に」という言葉は、今まで政府の公式的な文書、国会答弁などで勢いで出たというのはあったかと思うのですけれども、公式の文書では政府・日銀とも初めてだと思うのですが、この「早期」というのは、どれぐらいのタイムスパンで考えていらっしゃるのか。総理は総裁選の期間中ではありますが、1年以内とおっしゃいましたが、大臣というか、政府側としては「早期」というのはどれぐらいの認識なのかというのをお聞かせください。
(答)おっしゃるように、このデフレ脱却から、「デフレから早期に脱却し」という「早期に」という言葉と「この課題の達成に最大限の努力を行う」ということについては、新たな言葉であり、より強い意思表明というものをお互いに示しているという理解であります。
 ただ、どのぐらいのスパンなのかということを問われれば、いついつまでですという限定をすることは、これは世界経済情勢等も踏まえてのことになりますし、難しいと思いますけれども、冗長な感覚の中で、いずれ達成されればいいということではなくて、早期にということをお互いが確認をした意味は極めて大きいと、私はそう考えております。
(問)これまでも政府と日銀は緊密に連携をされてきたとおっしゃっていたと思いますけれども、今回これを結んだことによって、日銀の金融緩和の態度が変わるとお考えでしょうか。変わるのであれば、どのように変わるのかと期待されていらっしゃるのか、お願いいたします。
(答)あくまでも金融政策を決められるのは、日銀でございまして、日銀法においても日銀の独立性というものは、しっかりと明記をされているわけであります。したがって、どのような政策をとられるかということについては、これは日銀が御判断をされることになろうかと思います。
 他方で、今回の取りまとめた文書というものについては、日銀総裁、財務大臣、そして私が署名をして、共通認識という形で、世の中に明らかにするということでございます。そういう意味では、このデフレからの早期脱却、そしてこの課題に向けての最大限の努力をお互いやっていくという意味においては、それぞれが私は重い責務を負って、共通目標に向かって努力をするということが確認できたと思っております。それぞれがその認識に立って、やれることをやるということに尽きるのではないかと考えております。
(問)今回、合意文書を交わすということは、大臣から提案されたことなのでしょうか、もしそうであれば、どうしてこういう提案をされたのかというのを改めてお願いいたします。
(答)政府と日銀の間で話をする中で、今までも緊密に連携をとってまいりました。ただ、やはりデフレ脱却というものを日銀、政府とも共通の認識として持っているのだということを内外にしっかりとお示しをする。そして、その強い決意というものを我々はしっかりと示すということが大事だということの中で、こういった文書を我々がまとめたということでございます。お互いの了解の中で、この文書をまとめたということでございます。
(問)どちらかが言い始めたということではないということなのでしょうか。
(答)繰り返しになりますけれども、今までも政府と日銀は緊密な連携をとっていたと思います。ただ、やはり今の我々の最大の目標というのは、早期のデフレ脱却であると先程御質問があったことにお答えをしましたように、デフレ脱却ということについては、共通認識でありましたけれども、例えば「早期に」という言葉で、よりこのタイムスパンというものを短く捉えるということの努力目標と、そして最大限の努力をこの課題を解決するために払っていくということをお互いが文書をもって確認をしたということは、今まで意思疎通をやっていたわけでありますけれども、より強固なお互いの共通認識というものを共有できたのではないかと考えているところであります。
(問)先程、スパンについては、具体的なことは言えないという話でしたけれども、その視野の向こうには、消費税の引上げというのもあるのではないかと思うのですが、それについてどう思いますか。
(答)もちろん消費税の引上げということについては、2014年4月の半年前でありますので、来年の10月頃に最終的な判断を行うということになろうかというふうに思っております。その判断をする際に、しっかりとデフレ脱却、そして景気の上向きというものをしっかりと実現をさせておきたいという思いがあるのは事実でございますが、消費税を上げるために景気を良くするということが目的ではなくて、我々としては、10年以上苦しんできたこのデフレ状況から、何とか早期に脱却をしたいという思いがあります。
また、こういうデフレ状況が続く中で、消費の低迷、そして日本の経済の足腰が弱くなっていくということは、決してこれは放置していいことではないということの中で、我々はやることでありまして、もちろん消費税を上げる判断のときに景気が上向いているという状況の中で、この財政赤字の違う意味でのリスクというものをしっかりとマネジメントするために、我々は2014年4月に8%、15年10月に10%これはしっかり実現をするように努力をしていきたいというふうに思いますけれども、それ以上にやはり長年の課題であるデフレ脱却というものを早期に実現をさせたいと、こういう思いが政府・日銀の共通した理解であるということを文書でもって内外に示したいということで、取りまとめたものでございます。
(問)今回の11兆円に加えて、貸出しの増加を支援するための資金供給の枠組みというのが新しく創設されました。これは何か当面大体15兆円ぐらいと日銀は言っているので、大体合わせると26兆円ぐらいの規模になると思います。
先程の11兆円に限らず、両方合わせたものについての評価を一つお願いします。
(答)金融政策の中身について、お決めになるのは日銀でございますので、私からは評価するということは、これは遠慮したいというふうに思っておりますが、ただ政府・日銀の共通認識として、金融が緩和した状態が必要十分条件ではない、つまりは金融が緩和した状況の中で、しっかりそれが金融機関から先に本当にニーズのあるところに貸出しをされて、そしてそれが例えば企業の設備投資、あるいは前向きな経営のための資金として使われるということが大事であって、単なる金融が緩和した状態だけで我々は座視をするわけにはいかないということでありますので、そういう意味合いにおいて、その金融緩和というものがしっかりと銀行の貸出しに資するような取組を日銀がなされている、あるいは今回その骨子を決められて、それをできるだけ早くに実行に移すということを決められたことについては、私は高く評価をしております。
(問)先程あった質問とかぶるのですけれども、この共通文書を取りまとめたタイミングについてなのですけれども、大臣がいつもおっしゃっているように、CPIがなかなか日銀の言っているレベルに達していないという問題意識がずっとあって、これでこのタイミングで結んだということなのか、ここ数カ月にわたって、経済の統計、指標がだんだん落ちてきているというのがあると思うのですけれども、そういった現状を踏まえて、新たにやろうというふうに考えたのか、その辺どういうふうに見たらいいでしょうか。
(答)お互いのやはり共通認識というものを前提に結ばれた文書であると、そういう御理解をいただければありがたいと思います。つまりは日銀の最大の目標は物価安定であると、そして物価安定については、日銀自身が2月の政策決定会合において、2%以下のプラスの領域、当面は1%を目途にということでありますけれども、なかなかそれがまだ実現できるような状況ではないということであります。
また、金融緩和だけでデフレが脱却できるかというと、そうではありません。やはり経済政策、あるいは産業の構造転換、成長戦略への重点投資、様々な施策というものが相まって、達成できるものであるということで、お互い意見交換はしていたわけでありますけれども、そういう共通の認識というものをより強固に内外にお示しをするということの中で、今回文書を作るだけではなくて、「早期に」という文言をお互いに確認をする。あるいは最大限の努力をデフレ脱却、つまりはこの課題達成のために行うという意思もお互いが示したということで、これはお互いの今までの問題意識というものの中で、まとめられたものであるという認識をしていただければありがたいと思います。
(問)冒頭、大臣は2点お話があったうち、後半の政府として取り組むことということで、不動産とインフラというお話があったと思いますが、これも期間が早期というのは、まだ時間、余り期間が決まってないのか、もしくは決まってないとするとどのぐらいのめどというか、内容など、その辺のことをお聞かせください。
(答)私は、国交大臣を1年やらせていただいて、そして特にこのJ-REIT市場というものがリーマンショックの後、急激に落ち込んで、そしてなかなか戻ってこないということに危機感を持っておりました。
今、若干戻りつつございますし、今回の日銀の政策決定の中にも、一部ではありますけれども、100億円という額ではありますけれども、J-REITの積み増しと、買い増しということが記されているわけであります。
大事なポイントは、やはり民間の資金というものが1,400兆円あると言われている中で、あるいは世界のお金を日本に取り入れていくために、やはり不動産の証券化市場というものをより活性化をさせていくというところで、何が問題なのか。私は国交大臣のときに解決策を一つの案として出したのが不動産特定共同事業法ということで、つまりは倒産隔離を行った上で、建て替えもできると。つまりは今もJ-REITの市場では、既存の建物を証券化してということでありますけれども、耐震性とか、あるいは環境性能、省エネ性能を高めるということをむしろ民間の資金を入れてやっていこうと思えば、新たな仕組みというのは必要だと思うのですね。
ですから、不動産特定共同事業法の改正も一つでありますけれども、ほかに何かないだろうかと、あるいはJ-REITの国際化ということも、これは業界団体からは要望として受けているわけでございまして、様々な要望をこの日本の不動産、証券市場、あるいはPFI、PPPの取組というものに資するものを有識者でしっかりと御検討いただいて、まとめるスパンは年内で、そしてその年内でまとめた上で、それに対する施策、法改正が必要なものについては法改正のための準備を行うということで、取組を行いたいと。
繰り返しになりますけれども、デフレ脱却というのは単に日銀に任せるだけではなくて、政府がしっかりとした取組をすることが大事だということの問題意識の中で、まずはこういう有識者会議を立ち上げさせていただいたということでございます。
(問)少し観点が変わる話なのですけれども、民主党から更に2人離党届が出るなど、国会のほうで厳しさが増しております。閣僚からは、選挙目当てという批判も出ている中で、重要閣僚であり、さらにグループの長である大臣としての現状認識と、あと政府・与党に今何が求められているのかというのを改めて御意見あれば教えてほしいのですけれども。
(答)私は、野田総理から第3次内閣改造に当たって、いわゆる内閣機能の強化という中で、この職を拝命したと思っております。その意味においては、私自身がやれることをしっかりとやるということに尽きるのだろうと思っております。
評価というのは、そんな短期間で出るものではないと思っておりますけれども、私が担わせていただいている役割の中でも、様々な重要な案件がございます。例えば、この経済財政担当としては、いかにデフレから脱却するかということと同時に、足下の経済が弱含みになっている状況の中で、総理から御指示をいただいた緊急経済対策、まずは第1弾として予備費を活用するものを行い、そして遅くとも11月中に経済対策をまとめろと、こういう御指示をいただきましたので、それをしっかりとやることが大事でございますし、また同時に原発ゼロを2030年代に目指すということの中で、グリーン政策大綱を年内にまとめ、原子力委員会のあり方をしっかりとまとめ、そしてエネルギー・環境会議というものを議長として運営していく中で、正にこういった様々な脱原発、再生エネルギー拡大、省エネ、節電を広めていく中での工程管理をしっかりやっていくということも大事でございますし、また同時に国家戦略室中心に予算編成の基本方針をまとめて、そして日本再生戦略で重点分野と置いたグリーン、ライフ、そして6次産業化を中心とする成長分野をいかに伸ばすかということには、1日の停滞も許されないと、こう思っておりますので、とにかく仕事をしっかりする中で、結果がどのスパンで出てくるかということを余り考えずに、やるべきことをしっかりとやらせていただくということで、責務を果たしたいと考えております。

(以上)