前原内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成24年10月1日

(平成24年10月1日(月) 22:13~22:37  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

よろしくお願いいたします。
特に私からお話をすることはございませんので、自由に御質問ください。

2.質疑応答

(問)大臣御就任おめでとうございます。
 先程官邸での記者会見で、デフレ脱却に向けた切れ目のない政策が必要だということをおっしゃられましたけれども、足下の経済情勢についての御認識と補正予算の必要性について、御見解をお願いいたします。
(答)日本を取り巻く状況というのは、極めて厳しい状況であると思っています。アメリカの景気も足踏みが続いておりますし、またヨーロッパ、中国という日本にとっての大きな貿易相手国についても、経済状況が極めて厳しい状況にあると、そういう認識でおりまして、特にこの外需については厳しいという判断を下さざるを得ないと思っております。
他方、国内においては復興需要も含めて、足下はある程度はしっかりしているのではないかと思いますけれども、しかしながら予断を許せるような状況ではないと思っております。したがって、しっかりとした切れ目のない財政、あるいは金融政策をしっかりやっていくということ、あるいは政府が対外的にお約束をしている様々な施策については、しっかりと実行していくことが大事なことではないかと思っております。
補正予算につきましては、現段階で予断を持ってやる、やらないという状況にはないと思っております。もちろん最終的には総理の御判断によるわけでありますけれども、経済財政を見通す責任ある立場からすると、もう少し状況を見た上で、必要かどうかということについては、しっかりと総理とも御相談をしたいと思っているところであります。
補正予算を組むか組まないかということについて、政治的なテーマにもなる、つまりは解散時期などにも関わってくる政治的なテーマでございますので、我々としては、そういうものを一切廃して、日本の置かれている経済状況をしっかりと把握をした上で、その情報を総理にお伝えをし、総理は的確に大局に立って御判断をいただけるものと思っております。
(問)革新的エネルギー・環境戦略なのですが、政府の戦略に民主党の提言に入ってなかった再処理事業の継続が入っていまして、それについては各方面から矛盾が指摘されています。
党の提言を取りまとめた当事者の前原大臣として、政府の担当大臣になったことで、政府がまとめた戦略を今後不断の検証と見直しをしていくというものを明記されていますが、どのように検証、見直ししていかれるおつもりでしょうか。
(答)政調会長として、党のエネルギー・環境戦略というものを取りまとめました。原発ゼロを目指してということでありますが、このゼロという意味については、原発稼働ゼロとともに、いわゆる廃棄物、使用済み燃料も含めてゼロを目指すということでありまして、この両方が達成されなければ原発ゼロにはならないという認識でいるところでございます。
党としてまとめましたのが2030年代の原発ゼロを目指すということでございますけれども、これは両方の意味において我々は目指すと言っております。そして、その根底にあるのが三つの柱でございまして、一つが原発の40年運転ルールというものを厳格に適用する。そして、新たにできました原子力規制委員会によって、お墨つきが付いたもののみ再稼働させるということ、そして新規の原発建設は行わない、こういうことでございました。
もちろん我々はそれを目指してしっかりやっていきたいと思いますけれども、他方で今までむしろ原発の比率を高めていくのだと、CO2排出なども含めて、原発の比率を高めていくのだという政府の政策に協力をしていただいてきた様々な利害関係者、ステークホルダーがおられます。これは原発立地県、自治体、あるいは再処理工場というものの誘致をしてもらった青森県六ヶ所村、こういったところがありますし、同時に非核保有国でありながら、日本の再処理を認めてきた諸外国、アメリカは原子力協定を結んでおりますし、また日本の使用済み燃料を再処理してくれていたイギリスやフランス、こういったところがございます。
したがって、方向転換をしていくに当たっては、今まで協力をしてくれた様々なステークホルダーとしっかりと話をしながら、進めていかなくてはいけないということも現実的な対応としては、必要ではないかと思っております。
そういう意味においては、私は党の立場から政府に入ったわけであり、党でまとめた政策については、参考にして政府として考え方をまとめてもらいたいといって出したものを踏まえて、政府として決めたものでございますので、政府に入った者としては、政府の今の方針をしっかりと踏まえた中で、しかし原発ゼロを目指すということについては、しっかりと方向性をにらみながら、だからこそ年内にまとめるグリーン政策大綱などを工程表として、ロードマップとして、多くの方々が御納得をいただけるものに仕上げていき、経済界などの懸念というものを払拭していくということも大事なことではないかと考えております。
(問)先程、切れ目のない金融政策もやっていくと言われたのですけれども、政調会長のときの会見で、政府・日銀の連携に関して、アコードをつくることが望ましい。そのアコードの中には、外債購入も含めてしっかりと対応するということが書かれるべきであると思っていると、つい先日の会見でもおっしゃっていたと思うのですが、大臣になられて、政府・日銀の連携のあり方については、どのように進めていくべきとお考えでしょうか。
(答)党の政調会長として、より緊密な目標の共有、そして政府と中央銀行の協力というものが望ましいということを申し上げたわけでありますし、それがしっかりできないのであれば、いわゆる協定のようなもの、アコードを作って、共通の目標として、しっかりより明確に進めていくべきであるということを申し上げたのも事実でございます。
先般、日銀は新たな金融緩和を行いまして、基金の拡大などを行っているわけでございます。それを政府としてどう判断をしていくのかということは、今度私は政府の責任者の1人になったわけでございますので、自分の考え方、あるいは党としての考え方はしっかりと腹の中には持ちながらも、他の政府の関係者、財務省、あるいは最終的には総理と相談をしながら、日銀の取組が果たしてしっかりしているのかどうなのかということについては、連携をして決めていかなくてはいけないと思っております。また外債購入につきましても、私は検討課題の1つだと思っています。いろいろな立場の人がいるとは思っておりますけれども、金融緩和を進めていく上での有力な材料の一つだと思っております。
いずれにしても、行き過ぎた円高をしっかり是正をしていかなければ、私は日本の物づくりというものが成り立たない、今の円高水準は行き過ぎていると思っておりますので、私がこの立場についた以上は、今まで以上に厳しく、日銀が本当に2月14日の政策目標を実行する気構えがあるのかどうなのかといったことを厳しく見ながら、他の政策責任者とも相談をしながら、まだまだ足りないということであれば、しっかりと対応を促すような発言をしていきたい。また、発言のみならず、それが実行されるように主体的に考えてまいりたいと考えています。
(問)今の質問に関連してお伺いいたします。
今日、日銀短観が3四半期ぶりに大企業・製造業が悪化しました。この足下の景気、海外の軟調と相まって、このまま景気後退局面に入るのではないかという懸念もあります。そのことの足下の景気の見方について、改めて教えてください。
(答)先程もお答えをしたように、外的要因というのは、なかなか良いものが見当たらないと思っております。ヨーロッパにつきましても、ドラギ総裁の発言を好感して、一息はついていたと思っておりますけれども、先行きどうなるか分からない状況にあるということもしかり、またアメリカ、中国の経済状況というものも芳しくない。また、短期的で済ませなくてはいけないと思っておりますけれども、今の日中関係に関わる交流人口、あるいは物流の停滞を考えると、外的要因については厳しいという判断をとらざるを得ないし、そういうものが経済活動を行っている方々の心理状況に影を落としているのではないかと思っております。
他方、先程申し上げたように、復興需要をしっかり積み上げていくということと同時に、日本再生戦略の着実な実行、予算の執行、そしてまた必要があれば来年10月に消費税を上げるかどうかという最終判断をくだすのに当たって、しっかりと上げられるような状況をというのが今日の総理の指示の一つでございますので、そういうことも踏まえながら、全体を見渡して対応していくということが大事なことであろうと、考えております。
(問)エネルギーについて伺います。
田中真紀子大臣が核燃料サイクルと原発ゼロが矛盾しているのではないかというような発言もありましたが、田中真紀子大臣が持たれているもんじゅの問題もエネルギー・環境会議の課題になってくると思うのですが、これの廃止や核燃サイクルも含めて、先行きについて御見解を教えてください。
(答)軽々に矛盾と言うべきではないと思っているのですね。つまりは、今までは核燃料サイクルというものが実現をできた暁には、使用済み燃料を再利用して、そして使い続けることができるということを前提に、原発を稼働させていたわけでありますけれども、かといって高速増殖炉が実用炉として完成していたのかというと、完成していなかったわけです。完成できるだろうという前提の中で今までやってきた。あるいは他の切り口から見ると、最終処分地というものを決めずにやってきて、そして中間貯蔵ということで、言ってみればお茶を濁してきたというのが今までの政策ではなかったかと思っています。
それが今回の福島第一原発の事故によって、国民の意識が大きく変わった。この放射能、あるいは原子力というものは、人間の手に負えないものではないか。今回の事故でも、まだ30万人以上の方が避難所生活を強いられている、あるいはあの事故というものがもっとひどければ、首都圏3,000万人避難計画というものも内部で検討されたと伺っております。そういう事故になると、本当に日本の経済どころか、日本の国家の存続ということも危ぶまれたような極めて重大な事故が起きたということで、そういう経験を国民全体が感じ取って、そして先般の討論型アンケートにおいては、8割以上の方が2030年には原発ゼロを選択すべきであるということをおっしゃったという民意は、私は重いと思いますし、また国民がそう感ずる気持ちは痛いほど私は共有するものであります。
したがって、党としても、政府としても、原発ゼロを目指すということを目標に掲げて、しかしリードタイムを長くとって、そして様々な不確定要素もあるだろうということの中で、ステークホルダーとの話し合いの中で、柔軟性を持ちながら議論をしていこうということで、その一つとしてのいわゆる核燃料サイクル、もんじゅの話もあるのだろうと思っていますので、すべて今までもできていないものを前提に、できるからといってやっていたのであって、完成した形で最終処分地もないし、やっていたわけではないということから考えると、方向転換をしてもそれが矛盾というのではなくて、今まで決めてこなかったことについて、問題点が露呈した。しかし、今まで協力をしてくださったステークホルダーに対しては、最大限の敬意を表しつつ、そしてじっくりと話し合いとそのための時間をかけて、我々は問題解決をしていくということでありますので、単純に矛盾と言うのは、いささか少し乱暴な意見ではないかと、私は感じております。
(問)先程の官邸での会見で、いかに国力を上げるかが重要だとおっしゃいました。諸外国ではイノベーション政策のために、資金の投入、あるいは規制の緩和など、いろいろなことを総合的にやっているのですが、大臣としてはどの辺に、例えば科学技術など、そういう点でどの辺に力を入れて進めていかれたいと思いますか。
(答)私がこの世界に入りましたきっかけというのは、浪人時代に読んだ「国際政治」という新書本だったのですね。これは我が恩師の高坂正堯先生、国際政治学者でありますけれども、高坂先生の著書でございました。この高坂先生の著書の中に、国としての三つの体系というものが書かれております。
一つは価値の体系、言いかえればイデオロギーと言ってもいいかもしれません。資本主義や、あるいは共産主義、社会主義といったどういう価値に基づいて国というものを成り立たせるかということ。
それから、二つ目は力の体系、軍事力などに置きかえてもいいのではないかと思います。
そして、三つ目が利益の体系、これが私は正に大事に考えている経済の力というものなのですね。
ですから、経済力、我々は軍事力を高める中で、もちろん最低限の国を守るための自衛の防衛力というものをこれからも持ち続けるということは、大事なことではありますけれども、もっと大事なことは、経済力をいかに高めるかということです。しかも日本は今、制約要因が幾つかあって、人口減少、少子高齢化、莫大な財政赤字、そして長引くデフレと、こういう制約要因があって、国力を上げようと思えば、今までのような財政出動に頼った経済政策というものからは、なかなかいい知恵は出てこないのではないか。
私は国交大臣のときに、羽田の国際化や、あるいはコンセッションということで、公設民営、例えば伊丹と関空をくっつけて、そして地べたは国が管理するけれども、その運営権を民間に任せる中で、長期債もチャラにしていくというような考え方、あるいは対外的なビザの発行要件を緩和して、インバウンドを増やす観光などをすすめてまいりました。
それから、生前贈与の非課税枠を500万円から1,500万円に拡大をして、そして住宅の着工を何とか持ち上げるということをやる。つまり民間のお金をいかに入れていく中で、経済というものを動かしていくのかということを私は基本的に考えていくべきだろうと思っておりましたし、それをやってまいりました。
そして、今回政調会長として日本再生戦略の前提となる党としての考え方をまとめるに当たって、三つの柱、グリーン、ライフ、それから6次産業、これについては特に力を入れて、伸ばしていこうではないかということを日本再生戦略の中に入れていただくように、古川大臣にお願いをいたしました。
だからこそ、その手始めとして25年度の概算要求の組みかえ基準では、グリーンについては4倍まで、ライフについては2倍、他の成長産業については1.5倍と、こういうようなことで、選択と集中の中で伸ばす分野、特にこれからはライフイノベーション、グリーンイノベーション、そして6次産業化だと、特に力を入れていくということで、手始めとして、それにめり張りをつけるような概算要求基準、組みかえ基準もつくったわけでありました。そういう今までの自民党政権下では景気が悪くなったら、借金して公共事業だということではない経済活性化策というものをしっかり考えると同時に、話に出てますように、金融をどうとらえていくのかということの中で、政府と中央銀行が一体となって、この物価上昇率をプラスにしていく、デフレ脱却のための取組をしていくということが大事なことなのではないか。
そのための様々な施策の推進、立案、そして今までまとめたことをどうフォローアップして、本当にできているかどうかということ、絵にかいた餅にしないための取組をこの任にある限りやらせていただきたいと思っています。
(問)原子力委員会のあり方についてですが、あり方の検討の場を設けるとありますけれども、いつ頃までに答えを出さなければいけないとお考えかというのを伺いたいのと、加えて原子力委員会が担ってきた原子力政策大綱は、今策定作業を中断していますけれども、今後の進め方が引き続き原子力委員会につくってもらうのか、グリーン政策大綱との兼ね合いでどうすべきか、お考えをお聞かせいただけたらと思います。
(答)グリーン政策大綱の柱は、正に自然再生エネルギーをどのように具体的に増やしていくのかということが中心になってくると思っています。
他方、この原子力委員会については、先程官邸での記者会見でも申し上げたように、今日いただいた指示書では、まずは原子力について人材や技術の維持、強化策を国の責務として策定するとともに、原子力委員会のあり方に関する検討を行い、組織の廃止、改変も含めて抜本的に見直すとされていますので、いつまでに、あるいはどういう方向性、考え方のもとでということは、今ありません。白地の状態から、これについては今日指示をいただいたわけでありますので、専門家、あるいは他の役所を含めて相談をしながらまとめていきたいと考えております。

(以上)