中塚内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成24年12月26日

(平成24年12月26日(水) 9:23~9:44  於:金融庁会見室)

1.発言要旨

 本年10月1日に金融担当大臣に就任いたしまして、約3か月間ということでございます。この間、副大臣、大臣政務官、そして金融庁、内閣府の皆さんのお力添えをいただきながら、その職責を全うすることに全精力を傾けてまいりました。
 3年3か月にわたる民主党政権の金融行政ですけれども、やはり100年に1度と言われたリーマン・ショック後の厳しい経済状況の中で始まりました。また、その後も、欧州の財政・金融問題等を背景とする不透明な金融情勢がございましたし、1,000年に1度と言われる東日本大震災の発生など、いろいろな困難に直面したところであります。こういった課題に対しては、中小企業金融の円滑化に向けた取組み、それから震災後の被災者支援などに代表されるように、それぞれの課題に積極的かつ真摯に対応してきたと思っております。
 特に、中小企業金融の円滑化でありますが、積極的に取り組んでまいりました。金融機関が貸付条件の変更等に積極的に対応するなど、何より借り手のことを親身に考えて対応するようになったことは大きな成果であると、そう思っております。私自身も、在任期間中、「中小企業の経営支援のための政策パッケージ」に掲げた施策を推進するとともに、円滑化法の期限到来後の検査・監督の方針について、「金融担当大臣談話」を公表するなどの取組みを進めてまいりました。また、中小企業の金融支援を通じて地域経済を活性化させるという、非常に金融庁としては野心的な取組みであったと思っておりますが、そうした取組みに貢献することが出来たと考えております。
 また、AIJ問題、公募増資インサイダー問題など、我が国市場の信頼性を揺るがしかねない事案も生じましたが、これらについて、法令に則って厳正・公正に対処するということが出来ました。我が国市場の信頼性確保に向け、しっかりとした対応を行ってきたところでございます。私自身の手で、その再発防止策について、法改正まで実現出来なかったのは心残りでありますが、インサイダー取引規制については、金融審議会の「インサイダー取引規制に関するワーキング・グループ」が、25日に報告書を取りまとめ、公表したところでありまして、再発防止策の検討も進んでおります。こうした取組みも、民主党政権下での大きな成果の一つではないかと思っておりますし、また、これらのほか、不透明な国際経済情勢の中での金融システムの安定確保、それから経済成長への貢献などの課題にも、重点的に取り組んでまいりました。今申し上げた課題は、全て引き続き重要であると考えております。今後も取組みが継続され、我が国経済と金融・資本市場の発展につながることを期待したいと思っております。
 また、内閣府特命担当大臣として、男女共同参画、少子化対策、「新しい公共」にも取り組んでまいりました。男女共同参画については、いろいろなポジティブアクションに向けたレールを引くことが出来たと思っております。それから、少子化対策でありますが、子ども・子育て会議は、来年4月からのスタートということですけれども、社会保障制度改革国民会議も立ち上げることが出来ました。それから、「新しい公共」についても、一番、民主党らしい政策ということだと思いますが、第9回の会議を開催し、第10回まで予定はしておったのですが、選挙の事情等があって、それが出来なかったということについて残念に思っておりますが、全ての人に居場所と出番のある社会を創るというこの私どもの理念は、きっと後の世から評価されることになるだろうと、そう思っております。
 それから、担当しておりました共生社会政策の中でも、特に自殺者数でありますが、ここ14年間ですか、3万人の大台を割ることがなかったわけでありますが、まだまだ高止まりしているとはいえ、今年、平成24年、3万人を割る見込みであるということについて、これも私どもの取組みが、徐々にではあるが表れていると、そう思っております。
 いずれにいたしましても、いろいろな課題に取り組んでまいりました。その成果については、きっと時を経ないと確定しないとも思っておりますけれども、精一杯、真摯に取り組んできたつもりであります。ぜひ後の政権にも引き継いでいただければと、そう思っております。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)今、ざっと振り返っていただきましたけれども、これが最後の会見になりますが、率直な心境を心情的な部分から、今どんなお気持ちでいらっしゃるか、個人の部分も含めてお聞かせ願いたいのですけれども。
(答)そうですね、3か月弱ということでありました。本当に、大臣ということでいろいろな経験をさせていただいて、ありがたいことだと思っています。大臣になったこと自体もびっくりしましたけれども、今申し上げた政策課題に取り組めたこと、それから例えば解散決定の閣議書に署名したり、本日も総辞職の決定書に署名いたしてまいりましたが、大臣といいましてもこういうことが経験できる大臣というのは、なかなかいないだろうと思っておるところであります。
 さっきも申し上げましたが、年末ですので、これから本来であれば予算や税制改正をやっていかなければいかぬ季節でありますし、また次の国会への法案提出等々も準備していかなければいけないという時期ですけれども、それらについて案は作ったわけですが、実際に関われないということについては、本当に心残りで残念に思っています。
(問)先ほどいろいろ振り返られたのですけれども、この3年あまりの民主党、国民新党の金融行政について、一番評価して挙げてよいのではないかという点を一つ、それから一番悔いが残っている心残りな点を一つ挙げていただきたいのですが。
(答)評価されるべきというか、やはり功績というのは、中小企業の金融円滑化であったろうと思います。これは、法律も作ったわけでありますが、そもそもは非常に私どもの政権がスタートした時の経済的な地合いが悪い中で出来た法律でありましたが、3年3か月を経まして、ある意味、金融機関のビジネスモデルを変えていただくということでもあったと思っています。日本の金融機関は、不良債権処理という長いトンネルを越えてきました。その上で、これからはぜひお金を貸せる金融機関になってもらわなきゃいかぬ、そういう思いで取り組んでまいりましたので、金融機関が借り手のことを親身に考えるようになったということについて、これは大きな功績であろうと思っております。
 それからもう一つは、金融不正事案です。AIJとか公募増資インサイダーの問題ですけれども、どちらかというとパッシブな感じではありますが、ただ、こういう起こった事案について、法令に則って厳正に対処することが出来たということについては、私は、これは一つの大きな功績であろうと思っております。とにかく、「公正・透明であってこそ活力が生まれる」という、その信念に基づいて行ってきたところであります。
 心残りは、この中小企業金融の円滑化について申し上げれば、政策パッケージです。資金繰りだけでは、やはり良くならないところというのがあります。そこをどう抜本的に立て直していくのかということについては、まだ現実、今、いろいろな手立てを講じてはおりますが、道半ばの感が私自身はございます。
 それと、金融不正事案につきましても、これも再発防止策の部分はこれから法令改正が待っているわけで、そこのところについても心残りがあるということです。
(問)金融円滑化法、これは国民新党の働きかけ、亀井静香(元金融担当)大臣の時に導入したものですが、今、光の部分をおっしゃったと思いますけれども、陰の部分、本来倒産してやり直すべき企業の再生を遅らせた、あるいは日本の産業構造を10年遅らせたといった厳しい指摘が出ていますけれども、これについてはどうお答えになりますか。
(答)当初は、ちょうど3年ぐらい前だったと思いますが、モラトリアム法案と呼ばれておったと思います。そういう考え方からスタートし、金融機関に条件変更を促す、そういう法律になったわけでありますが、どんな制度も必ずや功罪両面はあると思っておりますし、今、御指摘のような意見があるということは承知いたしております。
 ただ、それを補っても余りあるぐらいの功があったと思っておりますし、御指摘のような点も踏まえ、来年3月で法律自体は終了した上で、事業の再生等に軸足を移していくという決定をしたわけです。ですので、その事業再生に向けた、より一層の取組みが求められると、そう思っています。
(問)今のお話は、利用件数がおよそ30万件にも及んでいて、実際は、やはり政策パッケージもなかなか思い通りに進んでいない点もあると思うのですけれども、今後についてどうすべきか、次の政権が決めることであるとは思うのですけれども、中塚さんとしてどう思われるでしょうか。
(答)政策パッケージを策定し、更にそれを強化していかなければならぬということで、先月の経済対策の中にも盛り込んだところであります。新しい政権の皆さんが、この件についてどういうお考えをされるのかということは、私自身は承知いたしておりませんけれども、でも、実際、資金繰りだけでは良くならないところがあるというのは事実なわけで、そこのところはしっかりと対応していただきたいと思っています。
(問)時価会計のことでお伺いしたいのですけれども、現在はペンディングという状況になっておりますが、時価会計というのは、ある意味、欧米の方で利益を先食いすることを認めるような会計制度だと思いますが、製造業、今、連綿と続くようなモノ作りをしている企業が多い日本において、利益ということを最優先するような会計制度に、今後、国際社会、国際経済、グローバル化が進む中でどう向き合っていけばよいのか、お考えを聞かせてもらえますか。
(答)まず、会計制度のみならずですけれども、私は、日本にとって国際化は避けられない課題であると思っておりますし、国際化を先取りしていかなければいけないと思っています。もちろん、今言われている時価会計についても、良い面もあれば悪い面もあるということでしょうが、国際会計基準を採用することにより資金調達が容易になるといった良い面もあります。
 いずれにしても、大事なことは、国際化を先取りするという意味において、そのルール作りにも日本が関わっていくということが大切だろうと、私は思っています。そうやって、新しいルール作りに積極的に日本が参加し、関与することによって、マイナスの面があるとするならば、それを解消するように努力していくということ、これが政治家の仕事ではないでしょうか。
(問)中塚さんの次の目標、明日からどうされるのかお聞かせ願いたいのですが。
(答)そうですね、明日から・・・。やりたいことは、私自身が政治の道に入ることになったきっかけは、学生の時に比叡山延暦寺に居候(いそうろう)しておったということがあるのですが、一度、その比叡山延暦寺の方に行ってお経でも上げてこようかなと、そう思っていますね。それからあともう一つは、ちょっと風邪でも引いてみたいなと思っています。忙しくて、風邪を引く暇もなかったので。
(問)昨日、(民主党の)新しい代表に海江田さんが選ばれましたが、前野田政権の総括をされて、次期の民主党を再生するということではあまり聞かれなかったのですけれども、改めて、中塚さんとして、この野田政権の総括というのを、もう一度聞かせていただけないでしょうか。
(答)野田政権のみならず、民主党政権ということでもよいと思うのですけれども、やはりやってきた政策の方向性というのは間違っていなかったと思っています。昨日の代表候補お2人も、そのこと自体が間違っていたとはおっしゃっていなかったと理解いたしておりますが、ただ、一方で、やはり党運営そのものといったところについては、今回のやはり選挙の敗因の大きな部分を占めていると思っています。3年4か月前に政権を代えていただいたわけですけれども、その時、もちろん私どもの政策に御期待をいただいたから、あれだけの御支持をいただいたということだと思うのですが、その御支持をいただいた背景は、個別政策の実現ということももちろんですが、この日本を取り巻く閉塞感みたいなものを何とか打破してほしい、そういう思いがきっとあってのことだと思うのです。
 一方で、民主党政権が、この3年4か月の間、政権を運営してきたわけですけれども、閉塞感を打破するはずの民主党政権が、閉塞感そのものになってしまったといった面があるのではないかと私は思っておって、やはり正に、なぜそうなったのかということについては、そんなに急いで答えを出す必要もないと思います。じっくりと考えて答えを出した上で、新たなスタートを切るようにしていただけたらなと思っています。
 どうもお世話になりました。ありがとうございました。

(以上)