古川内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成24年8月24日

(平成24年8月24日(金) 9:24~9:48  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

おはようございます。
最初に、私から週末の視察について申し上げます。
エネルギー問題で原発からグリーンへの大きな方向性を実現する。そのためには、日本再生戦略でも最重要戦略としてまとめたグリーン成長戦略を実現していかなければいけない。さらには、日本再生戦略でも最重要な課題の一つとして、農林漁業を挙げているわけでございますけれども、そうしたグリーンと農林漁業が連携している、そうした取組も行われている中部地方の企業の視察を行う予定でございます。
具体的には、明日、25日土曜日は、岐阜県恵那市にあるゼロエネルギー住宅を視察する予定であります。また、明後日の26日日曜日には、愛知県豊橋市、田原市にあります風力、水力発電のモノづくり企業や太陽光発電など積極的に取り入れた先進的な農業を行っている現場を視察する予定でございます。
私たちが目指す新しい分散ネットワーク型のエネルギー社会、そして地域が活力を取り戻していくためには、国民の皆様方一人一人の参加が不可欠であります。そうした国民参加の取組をしていただいている事例を直接拝見させていただいて、こうした戦略をさらに加速、そして強力に推し進めていきたいと思っております。
私からは以上です。

2.質疑応答

(問)エネルギー・環境戦略について2点ほどお伺いさせてください。
 まず1点目です。今回の国民的議論では、非常に多様な手法で国民の声を集められました。やり方の中で、例えば、専門家会議では、討論型世論調査について、男女差の問題、あるいは、専門家の説明が十分だったか、そもそも準備は十分にできたのか、いろいろな疑問点も提出されました。国民的議論をとりあえずこれまでやってきて、やり方としてベストだったのか、これ以上は政府としては難しかった、ベストを尽くしたのだというような大臣の思いを聞かせてください。
(答)いつも申し上げておりますけれども、今回のエネルギーに関する議論は、従来のような専門家だけでエネルギー政策を決めるというあり方から、私たちが目指す新しいエネルギー社会というのが、一人一人の国民の皆さん方の参加が不可欠であり、私たちが目指す分散ネットワーク型のエネルギー構造を実現するためには、国民の皆さん方の参加が不可欠である、そうした考え方に立って行っているものです。さらには先日の検討会合で申し上げましたが、私ども政権交代以来、熟議の民主主義というあり方について、こうした私たち国民の皆さんの代表として選ばれている議員でありますけれども、議員だけの議論ではなくて、国民の皆様方の様々な意見、議論をどう深めていくのか、そうした様々な取組を行っております。
行政刷新会議における事業仕分けを公開で行うのも、正にそういった意味での一つの取組であって、大きな政権交代以来、取り組んでいる国民の皆様方にも御参加をいただいて政策について議論し、そして、また考えを深め、そのもとで最終的な判断は代表として選ばれている私どもが責任をもって決めていこうという取組を行っている。その一環でもございますし、また、今回は先程申し上げましたように、これからつくろうとしているエネルギー社会が国民の皆様方の参加が不可欠である、そうした視点から取り組んできたものであります。
そういった意味では、いろいろ御批判もあろうかと思いますけれども、同時にこういう取組を行ったということは大変画期的だという評価もいただいております。こうした国民参加のあり方、そして熟議の民主主義のあり方については何がベストということはないかと思います。やはり常に国民の皆さん方ともコミュニケーションしていきながら深化をさせていく取組だと考えております。
今回の国民的な議論も、その過程の中で皆さんからいただく意見を私ども最初から何か決めて一切聞きませんということではなくて、皆さんの意見も取り入れていきながら改善を進めていって、そういう形の中で行ってきた。
しかも、こうした取組はこれで終わりではなくて、これからも実際に新たなエネルギー構造をつくっていく中では、国民の皆さんに参加していただかなければいけないわけですから、これからもいろんな形で国民の皆さん方の意見を聞いていく、そうした一つの過程、ステップだと思います。
私どもとしてできる限りの最善を尽くさせていただいたと考えております。
(問)もう一つは、党との関係です。エネルギー調査会が昨日、前原政調会長が言われたようですけれど、かなり日程を詰めて議論をされていく、会期末までに意見をまとめたいということなのですけど、政府がまとめるエネルギー・環境戦略と党の調査会がまとめる結論の整合性はどうなるのかということと、党が決めるタイミングよりも政府が決めるタイミングが早いということに今はなっていますが、このタイミングについてはどういうふうにお考えなのか教えてください。
(答)私どもとしては、なるべく早く取りまとめを行っていきたいと思っております。ですから、昨日も前原政調会長とも意見交換をさせていただきました。党のお考えを伺わせていただいて、日程感については私どもとしては8月中を目処にまとめたいという話も申し上げました。
最終的にどのタイミングでどういう形で決定するかについては、今後ともしっかり党と連携をとっていきながら決めていきたいと思っております。
(問)今、言及のあった党と連携をとっていきながら日程感を最終的に決定するというのは、党との話し合いの中で政府としての決定を8月中にすることにはこだわらないと、そういう理解でよろしいですか。
(答)私どもとしては、8月中にまとめたいという一つの目処を持っているというお話は申し上げました。
ただ、昨日の段階でそれは困るから待ってくれなどそういう話ではなくて、お互いにこれから議論を深めていくわけでありますから、議論の深まりも含めてお互いにしっかり検討していきましょうと。ただ、党とバラバラにやるということではなくて、最終的なところはお互いに政府と党との間でしっかり話をして決めていこうということになっているところであります。
(問)国民的議論について、集計中のものもありますけれども、一通り集計が出ている。原発ゼロシナリオというのが大勢を占めるという結果になっていますけれども、ここで改めて経済財政政策担当大臣として、経済への影響という意味でお伺いしたいのですが、少し前になりますけど、枝野経済産業大臣が原発ゼロのシナリオが経済にプラスであるというような発言をされたこともあります。それに対してエコノミストからすると、やはり火力発電の燃料調達コストとか考えると、経済の下押しになるという分析が多いとこちらでは把握しておるのですが、経済財政政策担当大臣として、原発ゼロを採用した際の経済への影響についてどのように把握されているか、どういう御認識かをお聞かせください。
(答)原発ゼロを採用したという話のところですけど、突然ゼロになるということを考えているわけではないのだと思います。枝野大臣の記者会見全体を見ておりませんので、報道されている一部分だけで、その前後どういう関係で枝野大臣がそういうお話をされたかというのは承知いたしておりません。枝野大臣のコメントに対して直接何か申し上げるということは、責任が持てませんので申し上げませんけれども、多分、私は枝野大臣が言われた趣旨というのを考えるとすれば、原発からグリーンへ原発の依存度はだんだん低減させていく一方で、再生可能エネルギーの普及や省エネ、また蓄エネルギーなどを促進していく。
グリーン成長戦略は、日本再生戦略の中でも最重要戦略として位置づけているわけであります。エネルギー関係の分野というのは、これまであまり大きな投資もされてこなかった分野でもありますので、潜在的に可能性がある分野でもあると私たちは見ております。だからこそ、グリーン成長戦略を再生戦略の中でも最重要の戦略として位置づけたわけであります。
そういう視点から考えていきますと、先日の会見でも申し上げましたが、エネルギー構造改革は情報通信革命にも非常に似ている部分はあるのではないかと。構造からして、総括原価主義や発送電の分離は正に通信回線の開放ということにつながるかと思います。そういうことを考えてみますと、例えばアメリカが長期の経済の低迷からいわばIT革命を発端にして、新たな成長路線に乗っていったということが歴史的な事実としてはあるわけであります。
このエネルギーの分野、特にグリーン成長に関わる分野というのは、手順をしっかり踏んでいって、そして必要なところの環境の整備やあるいは規制改革なども行われて、そして投資というものも入ってくるようになってくれば、大きなイノベーションが起きて、経済が新たな成長をしていく、そういうエンジンになる潜在力というものを十分秘めていると考えています。
私どもはこの再生可能エネルギーなどに係る部分の一面ではコストとも言えるところはあるかと思いますけれども、同時にこれは投資であって、グリーン成長戦略のまとめの中でも、制約をバネにして成長していくのだという大きな方針を示させていただいております。70年代の石油ショックの後を考えてみますと、制約がある中で日本の企業などは効率化を進めていくことがその後の競争力を大変高める効果につながったわけであります。
そういった意味では、目先のところで見ますとコストであったところが中長期で考えると競争力強化にもつながっていった。ですから、今回私たちが目指している大きなエネルギー構造改革は、目の前のところにいくとかなりの投資が必要になってくると思います。しかし、その投資をすることによって、分散ネットワーク型のエネルギー構造ができて、しかもきちんと需要に合わせて供給も行われるような非常に効率的なエネルギー社会ができれば、エネルギー効率の観点からしても、非常に高い効率性を持ち、またそういう再生可能エネルギーなどが中心で普及していくことになれば、化石燃料の値段の高騰などにも影響を受けにくくなるという意味では経済的にも好ましいところがあると思います。
したがって、そういう目の前のコストという面は当然ありますけれども、中長期に日本の経済構造をより効率的、そして安定的にしていくという意味では、やり方をきちんとやっていかなければいけないと思っています。そういうやり方をきちんと順を踏んでやっていけば、そうした新しい競争力のある経済構造になっていくベースというものをつくれる可能性は十分あるのではないかと私は考えております。
(問)大臣はこの前の会見でも繰り返しおっしゃっていましたけれども、原発をゼロにすることを目指すという考え方ですけれども、原発をゼロにするべきだという考えの最大の理由はどういう理由なのでしょうか。
(答)それは多くの国民の皆さん方が事故を受けて、原発に依存しない社会をつくっていきたいと、それは私も共有をしております。
その後、先週私も福島の事故のサイトも訪問させていただきました。また、さらには避難をされている皆さん方にもお話も伺い、そして避難区域の中も見てまいりました。放射能の問題さえなければ、風景は全く変わっていない中で、ふるさとを追われて、いつ帰れるか分からないというような不安を持っていらっしゃる方々が大勢いるという状況、そしてまた風景を見ても、放射能のことを除けば、全く以前と変わらない福島のあの辺りですと、日本のふるさとの原風景のようなものが広がっている。しかし、そこに放射能の不安、また放射能の濃度の問題から人が住めないような状況が今もあって、またこれも続いていく。
そういう状況を考えていきますと、将来的にずっと永久に原子力に依存するというエネルギー構造というものは、好ましくはない。ここは将来的に原子力に依存しない社会をつくっていくべきではないかと、私自身もそうした現場を見て、そしてそうしたふるさとを追われた皆様方のお話も伺って、そうした思いを共有させていただきました。
そういった意味では、原発を無くしていく方向、一日にしてそれは実現するわけではありませんけれども、私の思いとしてはそうした方向を目指して努力をしていきたいと考えているということであります。
(問)そういう理由だとすると、一日も早く、明日というわけにはいかないでしょうけれども、できる限り早くゼロにするというのが大臣の思いということでいいのですか。
(答)できるだけ早くゼロにできればしたいと思っておりますけれども、一日にしてできるわけではないと思います。先程のお話にもありましたけれども、様々な影響も踏まえ、そしてまた手順も踏んで行っていくことが大事であって、そうした丁寧な順を踏んで着実に原子力の依存度を減らしていくということを足下からきちんとやっていくことが極めて大事なことだと思っています。
(問)大臣は福島にも訪問されて、今、思いを共有されたということなのですが、一方で福島では、まだ汚染土の最終処分場が今仮置き場としてあって、最近鹿児島の南大隅町が最終候補地として挙がっていますが、この候補地についてはいつ決まるのでしょうか。
(答)そこのところは全く所管しておりませんし、聞いておりませんので、そのことについては何かお答えをする材料を持っておりません。
(問)となりますと、他に候補地として挙がっているところがあるのかということと、あと最終処分場の今後の見通しが何かあれば教えてください。
(答)そこも同じですけれども、今、そこのところについて私自身が担当しているわけでないので、情報は持ち合わせておりません。
(問)マイナンバー法案について、先般自民党の幹部が今の国会での成立にはこだわらないという考えを示しました。その理由として、低所得者対策がどういったことになるのか分からないのでということなのですが、であるならば、国民会議を速やかに設置して、そこで議論を行うべきだと思うのですけれども、それも解散の後、新政権でということが自民党の主張になっています。
3党合意をしているにもかかわらず、自民党がこういった態度に出ているということについて、所管大臣としてどのようにお考えになりますか。
(答)大変残念で遺憾に思っております。そもそもこのマイナンバー法案は、社会保障制度のあり方や税制のあり方についてどういう制度を考えるに当たっても、共通の情報化時代の制度的なインフラであるという認識、いわば一体改革の内容いかんに関わらず、必要なインフラであるという認識が与野党であったはずであります。だからこそ、実は一体改革法案と一緒に審議ではなくて、内閣委員会でやりましょうということに国会ではなったのではないかと理解をしております。
給付付き税額控除をやるための話だろうという、そういう認識では自民党の皆さんもなかったはずだと思っておりますし、今もお話がありましたように、そういうことも含めて議論をやるべきだということであれば、一日も早く国民会議を開催して、その場で議論するということが必要ではないかと思います。
国民会議については、1年を目途にして、1年以内に結論を出すということになっているわけでありますから、一日も早くスタートをして議論をすることが大事ではないかと。社会保障のあり方について、しっかり議論をしていく、そして方向性をきちんとお示しをすることがその社会保障の裏づけとなる財源として、消費税の引き上げをお願いする、その前提としては必要不可欠なことであって、そうした議論は一日も早くやるべきであると思っています。
(問)関連ですけれども、この件もあって、今国会がかなり空転している状況でして、予算委員会は開かれていますけれども、自民党は来週にも総理大臣に対する問責決議案を提出しようという構えを見せています。
3党合意はしていますけれども、そうなれば今国会、本当に空転して何も決まらないという事態になってしまいますけれども、そうした今自民党、野党の対応について、どういうふうにお考えになりますか。
(答)大変残念に思います。今のねじれ国会の中で、これまで何度も問責を出して、それで国会を止めるということが続いてきました。これは私たちが野党の時代も行ってきたことであり、実はもとの原因は我々自身であるといえば、正にそのとおりであります。そうした手法を行ってきた、そのことを野党になった自民党の皆さんは繰り返しておられる。おまえたちがやってきたことだろうと言うのかもしれませんが、しかしここは政権交代が起きる政治体制のもとでは、かつての55年体制のような与党と野党が固定化している時代とは全く違っているのだと思うのです。
55年体制が終わって、政権交代のある政治体制に変わった中での与党と野党との関係というのは、それ以前とは変わらなければいけない。残念ながら、私たち自身の責任でもありますけれども、まだ国会の中は政権交代がある政治体制になっているにもかかわらず、いまだに55年体制と同じようなやり方で国会の運営が残念ながら行われているところがあるのではないかと思います。
与野党の議員、党派に関わらず、新しい時代に合わせた国会のあり方、運営のあり方はどうあるべきなのか、そのことを真摯に議論して、そして結論を出して、新しい国会の運営のあり方をお互いに決めていかないと結果的に、政治に対する国民の皆様方の不信感をますます膨らませることになってしまっているのではないかと、私は大変に危惧をいたしております。

(以上)