古川内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成24年8月17日

(平成24年8月17日(金) 11:15~11:41  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

おはようございます。
最初に、私から数点、御報告を申し上げます。
まず、内閣府の年央試算につきましてでございます。
今般、内閣府では、最近の経済情勢等を踏まえて、内閣府年央試算を作成し、本日の閣議で配布いたしました。お手元に配布しておりますとおり、24年度のGDP成長率は、実質で2.2%程度、名目で1.9%程度と見込んでおります。我が国経済は緩やかに回復していく見込みをいたしております。また、平成25年度のGDP成長率は、実質で1.7%程度、名目で1.9%程度と見込んでおります。
なお、詳細につきましては、後ほど事務方より説明させていただきます。
2点目でございます。政府CIO制度の推進体制についてでございますが、本日、閣議後、行政改革実行本部が開催されましたが、この場におきまして、併せてIT戦略本部を持ち回り開催し、政府CIO制度の推進体制についてを両本部連名で決定いたしました。
先週8月10日付で、政府CIOにリコージャパン株式会社顧問の遠藤紘一さんを任命したところでありますが、政府CIOの権限規定を法律で整備するまでの間、職務遂行を円滑にできるよう、すべての国務大臣に最大限の協力を求める内容となっております。政府CIOには、平成25年度の概算要求の調整から早速活動していただきますので、各省の協力を得て電子行政を強力に推進していただきたいと考えております。
3点目は、第2回宇宙政策委員会の報告でございます。
去る8月15日に、第2回の宇宙政策委員会が開催されました。当日、委員会開催後に、葛西委員長によりますブリーフィングが行われておりますが、私からもその概要につき簡単に御報告を申し上げます。
委員会では、平成25年度概算要求に当たっての指針となる宇宙開発事業に関する経費の見積りの方針について審議がなされ、一部修正した上で委員会報告として取りまとめることが了承されました。この見積りの方針では、基本認識として、今後の宇宙政策は新技術の獲得一辺倒から脱し、実利用に重点を置き、産業の国際競争力強化や国民生活の質の向上等に資する取組が必要であり、厳しい財政状況を踏まえ、宇宙政策の重点化と効率化を図りながら、メリハリのある予算編成とすべきとの指摘がなされております。こうした基本認識に基づきまして、各分野の事業について、重点化や効率化の方針を提示いたしております。
今日の閣議で、平成25年度予算の概算要求基準が決定されましたので、今回の宇宙政策委員会の報告を受け、私が平成25年度宇宙開発利用に関する経費の見積り方針として取りまとめ、本日中に各省に提示いたします。また、概算要求後には、各省の要求を宇宙政策委員会においてフォローアップを行う予定であります。このようなプロセスを通じて、メリハリのある宇宙関係予算の編成に努めてまいりたいと考えております。
次に、国民的議論の検証に関するスケジュール等につきまして、御報告を申し上げます。
皆様方のお手元に、資料を配布させていただいておりますけれども、月曜日に発表したとおり、エネルギー・環境に関する選択肢の国民議論につきまして、政府としてエネルギー・環境戦略を取りまとめるに当たりまして、エネルギー・環境会議の議長である私が中心となって、まずこの国民的な議論について、専門家の協力を得て検証を行っていくことといたしております。この検証につきましては、来週に第1回の会合を開催いたしますが、それに先立ちまして、国民的議論に関する各種調査結果の公開につきましてのスケジュールをお示しいたしました。配布資料に書かれているとおり、まずは意見聴取会の会場で参加者の皆様から書いていただいたアンケートのすべてと、パブリックコメントの一部につきまして、個人情報等を取り除くという作業がありますので、少し時間がかかっておるのですけれども、それを取り除いた上で、本日中に国家戦略室のホームページにて公表させていただくことといたしました。アンケートについては約1,600件、パブリックコメントの一部につきましては、今日中に1万件を目途に公表させていただきたいと思っております。また、現在、事務局において整理・分析している内容につきましては、できる限り来週開催する検証会合に提示させていただいて、専門家の皆様に御議論いただくべく、今、鋭意作業を行っているところであります。
今後とも、国民の皆様方からいただいた様々な御意見や、あるいは様々な調査、そうした中身につきましては積極的に公表させていただき、エネルギー・環境戦略を取りまとめるに当たっての国民的な議論の検証の透明性をより高めていく努力を行って、取りまとめに向けたプロセスの信頼性向上を図ってまいりたいと考えております。
最後に、8月15日付で株式会社富士通総研の主任研究員であります高橋洋さんを内閣府本府の参与に任命いたしましたので、御報告を申し上げます。
高橋参与は、電力・エネルギー政策や情報通信政策に精通いたしております。原発からグリーンへと、グリーン成長戦略を日本再生戦略の中でも最重要戦略として位置づけました。私は、このグリーン成長戦略を実現するためには、電力システム改革を含めて、大胆な規制制度改革を初めとした大きな改革を行っていかなければいけないと思っておりますけれども、実は、私たちが目指しているこのエネルギー構造改革は、情報通信の改革と非常に似ている部分があるのではないかと考えております。例えば、総括原価方式というのは、かつてNTTも総括原価方式でありました。様々な分野で、このエネルギー構造改革と情報通信の改革というのは似たところもあるであろうと。高橋参与は、そうした視点も持っておられまして、特にこのエネルギー構造改革につきましては、大変精通しておられますので、高橋参与には国家戦略室と連携して、エネルギー構造改革を含めたグリーン成長戦略の推進、この点で御尽力をいただき、私のアドバイザーをお務めいただきたいと考えておりまして、15日付で内閣府本府参与にお願いいたしました。
私からの御報告は以上であります。

2.質疑応答

(問)高橋さんといえば、ドイツの例を参考に再生可能エネルギーの普及や、脱原発の論客の最先鋒だと思うのですが、この方を迎えるということは、大臣、ひいては内閣官房国家戦略室として、脱原発の方向に大きくかじを切っていくことの一つの表れと受け取ってよろしいのでしょうか。
(答)昨日も申し上げましたけれども、原発のない社会を目指していく、原発からグリーンへ、そうした大きな方向性を着実に実現していくことは、福島の現状、そして、ああした事故を二度と起こしてはならない、そうした福島の教訓を踏まえれば、この3月11日以前のエネルギー政策と、それ以降のエネルギー政策というものは、大きく転換していかなければいけない。これはやはり多くの国民の皆さん方も考えていることだと思います。私ども政府としては、そうした大きな方向性というものをしっかり着実に実現していく。そのためには、原発からグリーンへと、グリーン成長戦略をしっかりと実現していくことが、原発への依存度を着実に低減させていって将来なくすためにも、必要不可欠なものだと考えております。
先程、グリーン成長は、情報通信の構造改革の時と、かなり似ている部分があるのではないかと申し上げましたけれども、考えていただきますと、25~26年前で言えば、今のスマートフォンを多くの人が持っているような状況というのは到底想定ができなかったわけでありますけれども、しかし、様々な規制や制度改革のようなものも起きて、この情報通信の分野でイノベーションが生まれ、それが今の状況を生んでいるわけであります。私は、このエネルギー分野も、情報通信と同じように様々な新しい取組を行うことによって、現在では考えられないようなイノベーションが実現して、日本の新たな経済成長のエンジンにもなっていく、そうした可能性を十分秘めていると思います。
高橋さんは、そうしたグリーン成長の部分、電力のシステム改革によって、このエネルギー分野が大きな可能性のある分野である、そうした考え方の下、これまでも様々な御提言などもしておられます。私ども政府が是非実現していきたいと考えているグリーン成長戦略を日本再生戦略の最重要戦略と位置づけて、この分野でのイノベーションを実現し、そのことによってエネルギー社会を変えていく、そして新たな経済成長を実現する、そうした大きなエンジンになっていく。このことが、原発に依存しない社会をつくっていくための必要条件であると考えております。そういった意味でも、この分野において大変知見のある高橋さんに参与として御参加いただき、そうした方向性をより具体化していきたいと考えております。
(問)経済見通しですけれども、2013年度の見通しで名目が実質を上回るという形になっていますけれども、民間の予測に比べると、特に名目が、相当高い数字になっているような気がするのですが、名目がこれだけ伸びるメカニズム、理由を聞かせていただきたいのと、消費税導入前の駆け込み需要をどういう形で見ているのか教えてください。
(答)名目が実質を上回っているということでございますけれども、私どもとしては、現在の雇用、収益環境の持ち直し等を背景にして、平成25年度におきましても、民需を中心に経済は堅調に推移すると考えております。その結果といたしまして、需給ギャップが着実に縮小を続けていって、平成25年度にはGDPデフレーターについてもプラスに転じることを見込んでおります。その結果として、名目成長率が実質成長率を上回る試算をお示しさせていただいているということであります。
2点目の駆け込み需要につきましては、消費税率引き上げに伴います駆け込み需要の大きさは、経済情勢や政策対応等によって変わり得るものでありますから、確たることは申し上げられないと考えております。年央試算におきましては、過去の分析等を参考にして、一定の前提の下に駆け込み需要の大きさを想定して作成しているところであります。
(問)その前提で、どれぐらいの駆け込み需要を見込んでいるわけですか。
(答)過去の分析等を参考にいたしまして、税率1%当たりで、GDP比で0.2%程度の駆け込み需要があると考えておりますので、税率3%分の駆け込み需要の大きさは、GDP比では0.6%程度になると想定いたしております。
(問)グリーンエネルギーの成長ということでお話がされたのですが、その一方で、これから原子力規制のあり方をどうするかという問題が、コインの裏表であると思います。要するに、3月11日以前のエネルギー戦略ということでいうと、原子力規制をどうするかというのも大きな問題です。
今、原子力規制委員会の人事の問題が、ずっと議論されているわけですが、特にエネルギー・環境会議の、今、議長として担当されているということで、原発推進派の人が規制委員会の人事の中心で良いのかどうかという田中俊一委員長候補の件もあるわけですけれども、その件について、古川大臣はどのようにお考えでしょうか。
(答)政府の中で細野大臣を中心に、新しい原子力規制委員会を運営するに当たって、適切な人物を選任して、国会にお示ししたものと考えております。
(問)昨日、古川大臣は、いわき市と郡山市に行かれて、それぞれ富岡町と川内村の避難されている方にお会いされたと思います。その中で、新しいエネルギーの開発のメッカにしたいというお話もありましたが、その一方で、被災されている方からは、今の避難の窮状についての要望がたくさんあったと思います。直接の担当部署ではないかもしれませんが、避難されている方に対する政策が、復興庁を中心にやっていますが、まだまだ足らないと思うのですけれども、昨日の現地視察を踏まえて、どのような対策が急がれると大臣は考えられたでしょうか。
(答)昨日は、復興庁の吉田副大臣にも御同行いただきまして、一緒に様々なお話を伺いました。復興庁としてやるべきことは直ちに手をつけるというお話もいただいております。
私どもも、いろいろなことをやらなければいけないので、皆様方のそうしたお声に十分に応えられていないということは、率直に反省していかなければいけないですけれども、こういう形で聞いたことについては、一つでも二つでも前に進めていく努力をしていかなければいけない。昨日もお話を伺ったところ、復興庁でやるべきことについては、直ちに復興庁でも検討するというお話を、吉田副大臣もしておられました。そうした避難されている皆様方、お住まいの皆さん方とコミュニケーションを丁寧に行っていって、少しでもお声を反映して、お声を受けてきちんと動いていく、そうした努力を続けていくことが極めて重要だと思っております。
(問)補正予算について、前回、大臣はコメントされていますけれども、現時点での分野や規模、時期、消費増税に対するバッファーということでは遅目のほうが良いという見解もあると思いますけれども、早目に手を打ったほうが良いという考え方もあると思いますが、最新の所見をお願いいたします。
(答)この前、申し上げましたけれども、景気の状況や先行きのリスク等を注視しながら、必要な場合には柔軟かつ機動的に対応していくことであって、現時点で何か、いつ、どれくらいの規模など、そういうことは予断を持って申し上げられるお話ではないと思っております。
ただ、やはりやっていかなければいけないことは、復興需要を民間需要中心の景気回復につなげていく、そして、今、デフレ脱却の好機でもありますから、デフレから一日も早く脱却していく、そのためには、様々な政策を機動的に打っていくことが大事だと思います。特に日本再生戦略、中でも、エネルギー構造改革にもつながっていくグリーン成長戦略、この部分が原発からグリーンへと、原発への依存度を減らしていく、原発のない社会を目指していく、そのためには一刻も早く、手をつけていかなければいけないところだと思います。そうしたグリーン成長戦略は、年末にグリーン政策大綱という形でまとめる予定で、今、作業をしておるところでございますけれども、今日も申し上げました高橋さんにも参与になっていただいて、さらにこの部分を具体的にどのような形で詰めていくのかということの検討を加速していきたいと思っています。その過程の中で、規制改革だけではなくて、補正予算等も含めて必要な対応が出てくれば、それについては積極的に行っていきたいと考えております。
(問)先程の数字の確認ですけれども、消費税1%当たり0.2%の押し上げということですけれども、個人消費を0.2%上げるということなのですか、それともGDPですか。
(答)GDPです。
(問)今日、概算要求基準が決定しましたけれども、大臣が今おっしゃっているグリーンに対して4倍要求を認めるなど、重要施策として位置づけられていますが、この点についてお願いします。
(答)今度の予算は、閣議決定した日本再生戦略を、本格的に実施する予算になります。グリーン、ライフ、そして農林漁業、さらにそれを支える中小企業、こうした重点分野に対して、しっかりメリハリのきいた予算編成を行っていくことが極めて重要だと考えております。今回の決められた概算要求の組み替え基準も、そうした視点からまとめられたものと承知いたしております。
(問)高橋参与の任命について1点お願いします。野田総理からも、原発を将来的にゼロにした場合の課題についても検討するようにという指示が出ていますけれども、今、この検討の進捗状況はどうなのかということと、こうした観点からも、高橋さんの任命を受けて、ゼロにした場合の課題などについても専門的な状況で見ていくということでよろしいのでしょうか。
それと、内閣府の参与という話でしたけれども、内閣官房の参与ではないでしょうか。
(答)内閣府の参与です。
(問)内閣府参与でよいのですか。
(答)はい。私、特命担当大臣の仕事をということでありますから。
(問)分かりました。
(答)高橋参与につきましては、先程から申し上げておりますけれども、エネルギー構造改革、グリーン成長を実現するときに、これまでの高橋さんの様々な知見、特に、繰り返し申し上げますけれども、情報通信が25年余りでこれだけ飛躍的に社会が変わって、様々なイノベーションが生まれ、今のような状況になっている。やはりこれから私たちが行おうとしているエネルギー構造改革、特にグリーン成長を中心とするそこの部分は、大きな可能性があるところだと思います。そういった部分で是非、高橋さんにはそうしたこれまでの様々な知見を活かしていただいて、政府としてこれからまとめていくグリーン成長戦略、グリーン政策大綱、この中には発送電分離や、あるいは電力料金をダイナミック・プライシングのような形で大きく変動させて、需要家による需給のバランスをとっていく新たな仕組みなどを、思い切った形でしっかりまとめていきたいと思っております。そうした意味での知見を是非貸していただきたいと思っています。このことをやることが、原発への依存度を着実に下げていって、将来的には原発に依存しない社会を作っていくことにもつながるわけでありますので、原発からグリーンへという方向をしっかりと着実に進めていくためにも、極めて重要なことだと考えております。
そういった意味で申し上げますと、それぞれ原発をゼロにした場合にどういう課題があって、それをどうしたら克服できるのかというところについて言えば、新たな原発に代わるエネルギーというところは、正に高橋参与を初め、国家戦略室でしっかり考えていきたいと思っております。それ以外の部分については、枝野大臣や細野大臣のところで、様々な使用済核燃料の問題などありますので、今、鋭意検討していただいていると思いますから、そうした検討結果も踏まえて、私どもとしてはエネルギー・環境戦略をまとめていきたいと思っております。
(問)大臣の担当外ではありますけれども、今、尖閣諸島の問題をめぐって、日中関係はかなり摩擦が生じていまして、中国は非常に日本にとっては経済的にも重要な国ではありますけれども、現下のような状況を大臣はどういうふうに受け止めていらっしゃるか、政府としてどういうふうに対応していくのかという方針をお願いします。
(答)そもそも尖閣列島については、歴史的に見ても国際法上も我が国固有の領土であって、領有権の問題はそもそも存在していない話であります。今回の措置も、私は、我が国が正に実効的に支配しているからこそ、国内法に基づいてきちんと対応がなされているものと考えていますから、そうした実効支配というものをしっかりと担保していくことが大事なことではないかと思っております。

(以上)