古川内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成24年6月15日

(平成24年6月15日(金) 9:10~9:37  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

おはようございます。皆さんは、朝御飯はパンですか、御飯ですか。どちらですか。我が家では、私と娘は御飯派で家内と息子はパン派でございますけれども、今パンを食べる人、御飯を食べる人、それぞれ好みで多様化しておりますけれども、皆さん御存じのように、今政府を挙げて食と農林漁業の再生に全力を尽くしております。特に今年度からの5カ年は集中的に取り組んでいるわけでございます。皆さん御存じかと思いますが、日本で消費される小麦の多くは輸入されておりまして、中でもパンや中華麺に適した強力系の小麦の国内生産は春まき小麦が主で単位当たりの収穫量が少なくて雨や病気にも弱いと、こうした理由のために国内需要の1%にとどまっております。こうした状況を何とか打開をしていこうということで、パンを食べる人も増えていますから、それも自分たちのところでその原料をつくっていけないかという思いもあったのだと思いますが、13年の開発期間を経て「ゆめちから」という秋まき小麦で単位当たり収穫量が見込めて病気等にも強い国産初の本格的なパン用小麦が誕生いたして、今年の夏に収穫される24年度産からは本格栽培が開始をされております。
この「ゆめちから」は、我が国の食料自給率を高めるという目標、食と農林漁業再生のための基本方針・行動計画においても記載されておりますけれども、そうした視点からも大きな可能性を秘めているものだと考えております。
また、「ゆめちから」が広がっていくためには生産者の皆さん方が安心して生産に取り組めるように、国産小麦を使ったパンや中華麺といったものの普及や生産者や消費者との繋がりが深まっていくことが非常に大事なことだと思っております。
こうした取組を、皆さんの中でも報道もされたところもありますけれども、率先して行って、試験的ということでありますけれども、今月1カ月に限って、実際にこの「ゆめちから」を使ってパンを製造しているところがございますので、こうした「ゆめちから」を原料として、実際にパンにして届けている、製造販売している現場を明日視察させていただいて、関係者と意見交換を行う予定であります。
これまでの関係者の皆さん方の長年にわたる努力の成果が「ゆめちから」という新たな国産の小麦の開発につながって、使われていくことが広がっていきますと、我が国の食と農業の再生にもつながっていくものであります。そうした視点から、この「ゆめちから」につきましては、24年度から戸別所得補償制度におきましても、普通小麦の交付単価に加算をすることといたしております。そうした点で政府としても力を入れておる品目でございますので、一度この現場を、今月いっぱいに限ってのことなのですから、少し慌ただしいスケジュールでありますけれども、明日訪問させていただいて、現場の皆さんと関係者の皆さんと意見交換を行う予定であります。
詳細については、張り出しを御覧いただければと思っております。私からは以上であります。

2.質疑応答

(問)一体改革のことでお聞きいたします。昨晩、本日の未明ですけれども、民主党と自民党の間で自民党の社会保障制度改革基本法案をベースにして修正した上で大筋合意するということですけれども、まずこれについて、大臣はどのように御評価されますでしょうか。
(答)私も報道等で伺っておりますが、正に政党間で行われている協議であります。まだ調整中だと聞いておりますので、政府としてコメントすることは差し控えさせていただきたいと思っております。引き続き協議の動きを見守ってまいりたいと思っております。
(問)民主党の看板政策であります最低保障年金や後期高齢者の廃止などを棚上げするというふうな解釈で報道されていると思いますけれども、この棚上げという解釈についてはどのようにお考えですか。
(答)そもそもこの協議は今国会に提案をしている7法案について協議をしていただいていると認識をいたしております。今御指摘のあった新年金制度や後期高齢者医療制度については、まだ法案は提案していないわけであります。そして、これから党内でも議論して、そして検討を進めていくことになっていたものでありますので、前もたしか、この場で申し上げたかと思いますけれども、実際に大きな改革を実行するためには、それぞれ各党いろいろな考え方がある。それは当然だと思いますが、最終的には党派を超えた合意形成を作っていかなければいけないと思っています。  実は12年前のちょうど2000年にも政府・与党が5年毎にやっておりました年金の制度の見直し改革が間もなく近づいてくる今のような段階で、年金改革の議論が出るたびに必ず制度を変えれば従来の制度と新しい改革後のものを比較すれば必ず得をする人もあれば損をする人もある。ですから、その損得の議論にのっていきますと、いわばそこを活用すれば政争の具にできてしまうところがありますので、常に過去を振り返りますと、そうしたことがあった。そうしたことも踏まえて、社会保障は政争の具にしないで、国民の皆さんが将来にわたって安心できる制度を構築していくことが大事だと思います。  そのためには、こうした問題については、与党や野党など立場を越えて超党派で合意形成をする努力が大変重要です。  実際にスウェーデンなどで年金改革が実現をしたのも、スウェーデンも過去、何度も社会保障が政争の具になったり、あるいは選挙の争点になって、そのために政治も、政権も不安定になりますし、また同時にそうやって対立していると結局抜本的な改革はなかなかできないことがしばらく続いて、そうしたことはやめなければいけないだろうと、そうした考え方から、党派を超えたテーブル、協議の場をつくって、そこでスウェーデンの場合、7年近く協議したのだと思いますが、かなり長い期間にわたって協議を行って、その出てきた結論が1999年から実施をされている新しい年金制度です。この協議が始まったときと協議が終わって実際に新しい制度をスタートするときとは、政権を担当している政党が変わっているのですけれども、一緒に協議をしてきて決めたものだからということで実行に移されているということでありました。  当時、私も与野党双方のこうした社会保障の制度改革に携わっていました。特に我が党の場合には、亡くなられた今井澄参議院議員、自民党ですと、今は引退されましたけれども、津島雄二議員、公明党ですと今いらっしゃる坂口議員、このお三方が中心になって、すべての会派の皆さんに声をかけてスウェーデンからこうした取組を行ってきた国会議員の人を呼んで、どういう経緯でスウェーデンのような、党派を超えたテーブルをつくったのか、その経緯はどうだったのか、その結果はどうなったのかなどをヒアリングしたりなど、みんなでそうした形でやれないかということを2000年ぐらいのころ、当時今井澄先生は、もう既にがんが発覚をして闘病もされておられましたけれどもやっておりました。社会保障の問題はどこかでそうした党派を超えた合意形成というものをしていかなければいけない。そういった意味で、私ども民主党が提案をしている新しい年金制度はスウェーデン型をベースにしていますけれども、私たちが目指したのは年金制度の仕組みもそうですけれども、それ以上に大事だと私たちが考えたのは、そうしたスウェーデンのように、年金制度のような社会保障の問題について政争の具にしないで党派を超えて合意形成をしていくスウェーデン型の合意形成のモデルを是非実現をしていかなければいけないということです。そうした中で初めて抜本改革も実現ができるのだと思います。そうした思いに立って2004年のときの提案をした年金改革の抜本改革法案の中でもこういう案を我々は提案をするけれども、具体的に最終的に決めるのは、国会に置いた党派を超えた協議会ですよということは当時から言ってきたわけであります。そういった意味では、残念ながら2000年のときには、そうした議論が途中で頓挫をして結局、時の政権与党が自分たちの中で決めたものを国会に出してくる形になって、また対立の構図になった過去の経緯があります。やはりそうした2000年のころの今は亡くなられた今井先生や、そうした方々の先人たちに思いをいたしても、今日ちょうど閣議で、今の日本の高齢化の進捗についての報告もありましたけれども、本格的な超高齢社会はどんどんと進んでいる。特に、もう団塊の世代の皆さん方が65歳以上の高齢者にこれから入っていって、毎年ここ3年ぐらいは100万人以上65歳以上の人たちが増えていく。逆に言えば、勤労世代の人数が100万人以上減っていく状況にあるわけでありますから、こうした状況の中で一日も早く、長期にわたって持続可能な社会保障制度を構築することは、どの党派に関わらず大事なことだと考えているわけでありますし、それをやっていかななければいけないのだと思います。  そうした歩みに進んでいくことは非常に大事なことであって、今行われている協議でこうした私たちがもうずっと前から目指してきた社会保障の問題を政争の具には使わないで、国民の皆さん方のために、将来の日本のために実のあるものにしていくと、そうしたものにつながっていくことを私は個人として強く期待をしたいと思っておりますし、是非そういう方向に進んでもらいたいと思っております。
(問)確認ですが、与野党で合意形成の協議の場ができたので、大臣としては棚上げだと考えていないという解釈でよろしいのでしょうか。
(答)繰り返しになりますけれども、この部分について私どもは、今法案として出している7法案については協議をして修正をするべきところは修正するということをやっているわけであります。今はねじれ国会の中でありますから、物事を前に進めていくためには、やはり与野党間で合意形成をしなければ、対立していては結局何も前に進まないことになります。やはり政権与党としての責任は、一つずつ物事を前に進めていくことにあるわけでありますから、そういった意味では提案をしている7法案について、しっかり協議をしてお互いに折り合えるところは折り合って前に進めていくことは大事なことだと思います。そのことはきちんとやられていると思います。  その上で中長期的な社会保障改革の部分については、引き続き検討を進めることにもともとなっているわけで、それについて社会保障国民会議を設置して、提案をいただこう、そこで議論しようという提案については、今正に協議をされているところでありますけれども、そこで議論することは私は先送りや棚上げということではないと思っております。
(問)この秋で政権交代から3年になりますけれども、大事な年金の協議含めて、与野党合意形成の協議の場をつくるのに3年近くの年月は必要だったのでしょうか。もうちょっと早くやることはできなかったのでしょうか。
(答)私が国家戦略室長のときに、最終的には官房副長官になったときでありますけれども、新年金制度に関する7つの原則を提案させていただいて、そこでこうした提案をもとに、是非、与野党を超えた協議をしたいということは、その中でも提案もさせていただきました。しかし、残念ながら、それ以降、私たちは新しい制度を前提とし、今回の協議の中でも自民党さんや公明党さんは現行制度を前提とされ、入り口のところでずっとなかなか折り合いがつかない状況で来たのが現状だと思います。  しかし、今そこのところについては、お互いの中でいろいろと最終的な協議が続いている方向でありますから、それぞれ私は、社会保障についての考え方について、各党様々な意見があることは、否定するものではないと思います。むしろ、そうした意見があっていい、しかし、将来を考えれば、どこかで党派を越えてその意見をまとめていって長期にわたって安定した仕組みをつくっていくところに進んでいくためには、党派を超えた協議をするテーブルにみんなで一緒につくことが大事だと思いますので、様々な紆余曲折はあったかと思いますが、ようやくそういうところに近づいてきているのではないかと思っております。
(問)宇宙開発のことでお尋ねします。  昨日内閣委員会で内閣府設置法の審議があったかと思います。その中でJAXAの組織改編も盛り込まれているわけですけれども、今日、衆議院本会議での審議に移ったと伺っておりますが、昨日の審議の結果とそれのどういうふうに受け止めていらっしゃるかということと、今後国会を通ったということになれば宇宙戦略室の設置があると思うのですが、これの見通しを教えていただけますでしょうか。
(答)宇宙の政策の司令塔をつくることについては、もともと超党派の議員立法で成立をした宇宙基本法をベースにして私ども政府としても作業を進めてきて提案をしたものであります。ですから、もともと与党や野党などではないベースがありましたので、一日でも早く、審議をしてもらいたいと思っていたわけなのですが、なかなか国会の状況がそれを許さずにここの段階に来てしまったわけでありますけれども、昨日、内閣委員会で御審議をいただいて可決していただいた。今日、衆議院の本会議でも賛成多数で可決して参議院に送っていただけることになると思っています。  一日も早く参議院でも御審議をいただいて、成立していただきたいと希望いたしております。  そうした国会での法案の成立を受けて、できるだけ速やかにこの法案に基づいた組織の設置を進めてまいりたいと考えております。
(問)あともう一点なのですが、宇宙戦略室のこれからの仕事に関わってくることだと思うのですけれども、先月日本のロケットが初めて外国の、韓国の衛星を受注して打ち上げたことは御存じかと思うのですけれども、その中でJAXAの関係の皆さんや、あるいは三菱重工の皆さんから、まだまだコストがかかるという指摘があって、やはりもう少し1機当たりのコストの安い次期基幹ロケットの開発が必要なのではないかという意見が多いのですけれども、これについて大臣はどのようにお考えでしょうか。
(答)各国とも宇宙開発については、大変競争が熾烈になってきております。この先頭を走っているアメリカも、NASAが様々なサポートなどもして先日も御存じのように民間企業のスペースX社がドラゴンという自社のロケットを発射して国際宇宙ステーションとのドッキングにも成功した、そういう実績も出てきているのですね。これも、要はコストを削減して、そして競争力を強めるという取組でないかと思っております。そういった意味では日本も官需だけではなくて民間需要も含めた需要の拡大をしていくことがコスト削減のためにも大事だと思っています。もちろん、コスト削減のためには、様々な研究開発なども大事だと思いますけれども、同時に日本の場合には打ち上げの回数が少ないなど、需要の部分の問題もあります。こうしたところについては海外の需要などを取り組んでいくことを含め、その点について官民で連携をしていくことによって、宇宙産業のすそ野、マーケットを広げていくことが非常に大事だと思っています。  この宇宙システムについては、皆さん御存じだと思いますが、パッケージ型インフラ輸出の関係閣僚会合の中でもその国家として重点的に取り組んでいく一分野として位置づけておりますので、そうした取組を加速することによって、コストも下げていって、競争力のある状況をつくり上げていきたいと思っております。
(問)今日、日銀の金融政策決定会合がありますけれども、週末にギリシャの議会の再選挙があって、この結果次第では、例えば各国の主要中銀が協調して行動するという海外の報道も出ているのですが、日銀及び各国の主要銀行の対応について御期待されていること、求めていることが一つと、週明けG20サミットがロスカボスで開かれますが、これについてどういった対応が必要か、これについて御期待されていることをお願いします。
(答)今日、金融政策決定会合が開かれる状況にございますので、今の時点で政府としてコメントすることは差し控えさせていただきたいと思うのですが、一般論として常に日銀に政府として期待をいたしていることは、日銀がお決めになった当面の目途としている消費者物価上昇率1%の一日も早い実現に向けて適切かつ果断な金融政策を行っていただきたいということであります。  今お話がございましたように、この日曜日に行われますギリシャの総選挙も踏まえて、市場等も様子見といいますか、センシティブになっているかと思います。この点については、各国政府、また中央銀行も含め、市場の安定確保のためには、マーケットの状況等について、しっかり注視をしていかなければいけないと思っておりますし、ヨーロッパのそうした不安定については、まずヨーロッパにおいてしっかり連携した適切な措置をとることを強く期待をしたいと思っております。

(以上)