古川内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成24年5月11日

(平成24年5月11日(金) 10:17~10:46  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

おはようございます。まず、私から最初に3点申し上げます。
昨日の国家戦略会議後の記者会見でも申し上げましたけれども、今朝の閣僚懇におきまして、日本再生戦略の策定について私から発言をいたしました。
簡単にその内容を御紹介いたします。日本再生戦略を日本の経済社会を真に再生させる実効性のある戦略とするためには、まずは新成長戦略の工程表から実施が遅れているものは早急に対応し、実施したが効果の発現していない政策は、ボトルネック解消策を講じる必要があります。さらに国民に対して、政府の取組が明らかになるよう各年度に実施する施策内容を明示するとともに、原則として施策の成果目標を数値で設定し、その達成度を軸に評価を行い、その後の取組に反映していく仕組みを確立することが重要であります。今後、日本再生戦略の策定に向けて、政務官級の会合で検討を加速させていくので、こうした観点も踏まえ、大臣各位におかれては、日本再生戦略の取りまとめに御協力をお願いする旨の発言をいたしました。また総理からも、日本再生戦略の策定に向けて、閣僚に対して検討を加速するようにと指示がございました。
2点目でございます。今回、日本酒・焼酎の国家戦略として、「ENJOY JAPANESE KOKUSHU」プロジェクトを立ち上げることといたしましたので、御報告いたします。
日本酒・焼酎は、日本の国酒であり、日本の気候風土、日本人の忍耐強さ、丁寧さ、繊細さを象徴した、いわば日本らしさの結晶であります。また、日本酒・焼酎は、地域活性化や外国人観光客集客にとっても重要であるほか、日本食だけでなく、他国料理との相性の良さも認識されるようになっております。
国酒と称されてまいりました日本酒・焼酎の魅力とは裏腹に、それぞれ個別の酒蔵や関係省庁とか関係機関等による取組は行われてまいりましたけれども、日本酒・焼酎が海外で広く愛飲をされている、輸出も少し伸びたという報道もありましたけれども、劇的に伸びているという状況には至っておりません。また我が国の国内に目を転じましても、ワインなど高級洋酒のブランド価値を評価するムードが見られる一方で、日本酒や焼酎の魅力の認知は、一部ファン層に限定されているきらいもありまして、社会全体としての認知度は必ずしも高くないものと思われます。人口減少や適正飲酒推進といった環境の下で、日本らしさの結晶であります日本酒・焼酎の潜在力を引き出し、地域発日本再生の救世主と、また異文化との架け橋とするために、個々の酒蔵等の会社や関係省庁、関係機関等の取組をサポートしていくものとして、オールジャパンで官民が連携して、日本酒・焼酎の魅力の認知度向上と輸出促進等に取り組むときが到来したのではないかと、こうした思いからこのプロジェクト発足を決意した次第であります。
行政というのは縦割りラインで仕事をいたしますけれども、これまでも国家戦略室におきましては、行政のイノベーションの一環として個別のプロジェクトを決めて、そのプロジェクトのリーダーを決めチームをつくり、そして関係する他の省庁や外の人も集めてプロジェクト型で仕事をするということをやってまいりましたが、このENJOY JAPANESE KOKUSHUプロジェクトも、そうしたプロジェクトチーム方式でやってまいりたいと思っております。
具体的には、様々な分野の有識者で構成するENJOY JAPANESE KOKUSHU推進協議会を立ち上げて、幅広い観点から議論し、具体的方策を迅速に打ち出して、実行に移してまいりたいと考えております。また、直ちにできることといたしましては、政府などが主催する行事での日本酒や焼酎の効果的活用や、各省庁から所管機関、産業界への各種行事での日本酒・焼酎の活用要請等をお願いしようと考えております。このプロジェクトにつきましては、酒類産業の所管大臣である安住財務大臣とも密接に連携して取り組んでまいるつもりであります。
このENJOY JAPANESE KOKUSHUプロジェクトは、大きく示せば三つの視点から効果があると考え、取り組んでいきたいと思っております。一つは成長戦略、もう一つは地域活性化、そして3番目が日本文化の振興であります。
成長戦略でいいますと、クールジャパンの一つだと私は思いますけれども、クールジャパンというと、ポップカルチャーや漫画などに目が行きがちなところがありますけれども、この国酒はじめ日本の伝統文化は世界が大変注目をしている、そして格好いいと言われるものはたくさんあります。私は、国酒、日本酒や焼酎もそういった一つではないかと思っています。御存知のように、フランスは国策としてワインを大々的に国際展開をして、今やワインは別にフランスだけのものではないですけれども、やっぱりワインといえばフランス、これだけでも大変大きな輸出産業になっているわけであります。そういった意味では、日本酒や焼酎、日本の文化の結晶でありますこうした国酒を、フランスがワインを国を挙げて世界に売り込んでいったように、日本もフランスのワインに負けないぐらいに売り込みをしていくことは、成長戦略にもつながると思っております。
また、2点目の地域活性化で申し上げますと、地域活性化に大事なことは、それぞれの地域で核となる人や組織だと考えておりますけれども、酒蔵などは、それぞれの地域でこれまでも中心的な存在として取り組んできた方々や組織が多いと思っております。こうした地域の核となってきたような酒蔵が輸出の促進などを通じて元気になり、地域活性化の核をつくっていくことにつながると思います。また、今回目指しているのは、酒蔵で出している大吟醸など大変おいしく、なかなか日本でも手に入れることが難しいようなお酒も含め、おいしいお酒を海外に売り出していこうということです。私も、かつてアメリカにいたときに、いわゆる大衆酒のようなものはアメリカでもつくったりしてスーパーでも売っておりますけれども、そういうものだけでなくて、日本の中で様々な酒蔵が工夫を凝らして銘酒、あるいは大変有名な焼酎などをつくっています。本当においしいものを世界に売り出していく。有名になれば、私たちが海外に行ったときにワインのシャトーを訪ねるように、日本に来た人たちが酒蔵を訪ねていくということにもなってくると思います。そのことは、国内での観光を促進することにもつながっていくと考えております。
さらに、日本文化振興ということで考えますと、日本酒であれば、当然この原料はお米であります。米づくりは正に日本の文化、伝統でありますが、お米の御飯での消費量は、将来的にどんどん大きくなっていく状況ではありません。そういう中で、むしろお米をお酒に変えていくというのは、付加価値を高めるということにつながっていくわけでありますから、この生産量が増えれば、その原料である米づくりにもいい影響、効果を与えていくということになってまいりますし、また、日本酒あるいは焼酎などのお酒をつくる過程そのものが、いわば日本文化、そして伝統の象徴と言ってもいいと思います。そうしたことを守っていくことにも繋がってまいります。さらに、おいしい日本酒あるいは焼酎をつくるためには、おいしい水が重要でありまして、日本の水、これを守っていくということにもつながっていく。そういった意味で日本の文化振興にもつながると思います。
成長戦略、地域活性化、日本文化の振興、こうした大きな複合的な効果の期待できるENJOY JAPANESE KOKUSHUプロジェクトを、官民挙げてオールジャパンで進めていきたいと思っております。そして、先程申し上げましたように日本食だけでなくて、ほかの国の料理、特にフレンチやイタリアン、今はワインセラーがどこでもありますけれども、それが世界中でどこに行ってもワインセラーに日本酒や焼酎が並ぶような状況を是非つくっていきたいと思っております。
3点目でございますが、週末の出張について申し上げます。
今度の日曜日、5月13日に仙台を訪問いたしまして、東北大学において東北メディカル・メガバンク計画関連施設等の視察及び里見総長はじめ東北大学関係者との意見交換を行う予定であります。この東北メディカル・メガバンク計画につきましては、昨日の国家戦略会議でも議論になりました。正に国を挙げてやるものだという意見も昨日ありましたので、私も国家戦略担当大臣として、このメディカル・メガバンク構想の現状、そして今後の進め方について自分の目で見、そして耳で聞いてきたいと思っております。
また、同日、日本学術会議及び日本化学会が共同して主催します第14回国際コロイド・界面科学者連盟国際会議の開会式が、天皇・皇后両陛下の御臨席の下、開催されます。私も科学技術政策担当大臣として出席する予定であります。
私からは以上であります。

2.質疑応答

(問)国酒のプロジェクトについてなのですけれども、そのスケジュール感や、どれくらいの頻度で開くなど、そういった点についてお願いしたいのですけれども。
(答)協議会はできるだけ早く、今月中にでも開いてまいりたいと思っています。先程申し上げましたように、やれることから具体的なことを実行に移していきたいと思っております。
(問)これは、報告書をまとめるなどそういうものではないという認識でいいのですか。
(答)何か議論してまとめるということではなくて、実行に移していくということが中心になってくると思います。
(問)あともう1点は、海外への売り込みなど、そういった目的や狙いもあると今伺ったのですけれども、今のところ、これに書いてある内容を見ると、政府の主催行事などで使って呼び掛けるということ以外には、例えばどんなことが考えられるのでしょうか。
(答)既に今までも国際会議等の場などでも日本酒などをPRしてまいりました。私が、是非これはもっと国として促進したらいいのではないかと感じるようになった一つのきっかけは、ダボス会議で毎年、ジャパン・ナイトというものを、ここ数年はジェトロさんが中心になって開催をしておりますが、数年前に日本酒をたくさん持っていって皆さんにも試してもらう企画をやりましたが、大変人気があって、本当は並べておくだけで飲んでもらうつもりはなかったものまで、みんなお客さんに飲まれてしまったこともありました。それ以降、毎年そうやって日本酒を持ち込んで行っておりますが、非常に評判がいい。ダボス会議の場合にはヨーロッパの方々が中心ではありますけれども、もともと日本酒や焼酎などはアジアの人たちの口には合うのではないかと思っていたのですが、それだけではなくてヨーロッパの人たちの口にも合う。そういった意味では、相当可能性があるものではないかと思ってまいりました。 したがいまして、様々な国際会議や国際的なイベント、そういう機会などでもこうしたことを行ってまいりたいと思っていますし、これまでもインドの大使館などで日本酒や焼酎の国酒をPRするイベントが行われ、また韓国などでもそういうものが開かれていると伺っております。在外の公館などでもいろいろな機会に、例えば天皇誕生日のときなどに、その国の人たちを招いてのレセプション、夜会が開かれたりしています。そういうようないろいろな機会に国酒の魅力をPRしていくと、そうしたことをやっていきたいと思っています。
(問)今のお酒の関連なのですが、何度かおいしいお酒ということをおっしゃいましたけれども、大臣の考えるおいしいお酒というのは、どういうお酒なのでしょうか。
(答)私は下戸で飲めないので、それは飲む方に聞いていただいたほうがいいと思うのですが、よくソムリエの方や、あるいは大変いろいろな味の分かる方にすると、日本のお酒は、ワインに負けないぐらいのおいしさがある。ワインよりも日本のお酒のほうがおいしいと言われる方もあるということを聞いております。そういった意味では、私たちが高いお金を出しているワインに負けないようなお酒はいろいろな地域でいろいろな皆さん方が工夫してつくっていらっしゃると思いますから、そういったものを選ぶのはやはり消費者の皆さんですから、消費者の皆さんに、日本だけではなくて世界的にみんながおいしいと思うようなものを是非売り込んでいきたい。 ですから、おいしい、まずいをこの私が決めることではなくて、選ぶのはあくまで消費者の皆さん方ですから、今申し上げましたけれども、是非私は近いうちにそういうこともやりたいなと思っているのは、ソムリエの皆さんに、特に日本のソムリエだけではなくて、外国の、例えば本場のフランスのソムリエの人たちにも日本酒、焼酎などをテイスティングしてもらって、そういう方々にワインと同じようにレーティングをしてもらうというようなことがあってもいいのではないかなと思っておりますが、そういう形で消費者の皆さんがおいしいと思うようなものが世界に出ていくという状況をつくっていきたいと思っております。
(問)もう一点なのですけれども、今日で東日本大震災から数えて14カ月目になると思うのですけれども、かねがね大臣は、復興需要が続いている間に民需を引き出すということをおっしゃっていますが、改めて今振り返ったときに、その民間需要をうまく引き出せる方向に行っているのかどうかというのは、どういうふうにお考えでしょうか。
(答)正にそうしたことをしっかりやっていくためにも、昨日の国家戦略会議で、新成長戦略、これは2020年までに実現をするというものでありますけれども、2年が経過した段階で、そして震災や原発事故、そうしたことを踏まえての状況変化に対応して新成長戦略をもう一度再編・強化する日本再生戦略の策定を今行っているわけでありますから、それに合わせてフォローアップというものを行ったわけであります。 皆様方からは、1割しか成果が出ていないという厳しい御評価もいただいておりますが、私たちはあえてそこは厳しく、自分たちがやってきたことでもチェックをすることによって、ただ実行しましたということだけでなくて、具体的な成果を出すというところまでしっかり追い求めていかなければいけないということで、この2年たったところで昨日、国家戦略会議でも確認をして、その具体的な成果をきちんと出していくための数値目標など指標をつくっていこうということを決めたところであります。 こうしたことをこれからもしっかり取り組んでいくことによって、復興需要が継続している間に新たな民需主導の経済成長に向けて、展開ができるような状況をつくっていきたいと思っております。今日、立ち上げを発表させていただいたENJOY JAPANESE KOKUSHUプロジェクトも、そうした取組の一つの一環と考えていただいていいのではないかと思います。
(問)ギリシャもあのような状況で、今日若干株は反発しているようですけれども、昨日も9,000円を一時割れたり、円高もまた進んだりという状況で、なかなか民間の人が思い切って何かをやるという状況にはないと思うのですけれども、その点、どうお考えなのでしょうか。
(答)先日、出張の後の会見でも申し上げましたけれども、外の人たちから見ると、日本にはたくさんいいこともあるし、そしてまた力もある。日本人は必要以上に自分たちを卑下しているというか、ネガティブに考えているのではないかと、そういう声をブラジルやシリコンバレーなどでも伺いました。また、昨日の国家戦略会議の中のお話でも、もう少し日本が自信を持ってもいいのではないかというような発言も民間議員の方からも出ました。 もちろん様々な困難に直面しているということは事実でありますが、同時に、それを克服するための新たな取組がいろいろな形でスタートし始めています。例えば、私が関わっていますエネルギー・環境の分野で言えば、この7月から始まる固定価格買い取り制度、先日、買い取り価格の発表がされて、今パブリックコメントされているところでありますけれども、こうしたグリーン成長、新たな再生可能エネルギーを大きく促進させていく思い切った取組もスタートしてまいります。今までになかった新しい取組が、今、動き始めています。そうしたことについて、私たち自身、足元のところで動いていることを、しっかり自分たちも自信を持って進めていくということが大事ではないかなと思っています。
(問)需給検証委員会なのですが、昨日の会議でほぼ需給関係の数字的なものについては固まったと思うのですが、4月23日のスタートのときに9電力で0.4%不足でした。それが若干、コンマ数%の改善をしたということで、当初は電力会社の信頼がなかなか低くて、政府が見直せば大分圧縮できるのではないかという見方もあったと思うのですが、そういった需給検証委員会のこれまでやってきたことについての大臣の考えをお聞かせください。
(答)需給検証委員会がスタートする前にも申し上げたと思うのですが、コスト等検証委員会と同じように、すべてのデータ、数字を明らかにして、そしてまた、議論の経過もすべてオープンにする新しいやり方で取り組んでまいりました。今回の場合、この需給の数字については、今後の夏の節電にも非常に関わる話であります。すべての国民の皆様方に関わる話で、大変関心の高いお話でもありましたので、できるだけ多くの委員の方にこの議論に御参加をいただきたいということで、海外に行っておられる委員の方にもインターネットで御参加をいただき、長時間にわたってこれまで議論を進めてきております。そういう中で出されてきた数字についての一定の理解の方向は、今だんだん見えつつあるのではないかなと思っております。 明日も引き続き議論をすることになってまいりますけれども、隠したりしているわけではなく、きちんとオープンに議論され、そして数字についてもみんなが納得できるような数字が出てくる。そうしたものがベースとなって、今後、夏の節電に向けての取組を考えていくということに入っていくわけでありますから、そういった意味では、これまでの一つの行政のやり方を変えていく、コスト等検証委員会のときもそうでありますけれども、新しい取組として私どもは取り組んできたと思っております。
(問)同じ需給検証委員会なのですが、当初のスタート時は、大飯原発3、4号機が再稼働しない前提で議論を進めていこうという認識だったと私は覚えているのですが、昨日の会合で、大飯原発3、4号機が再稼働した場合の需給関係で、関電管内はほぼ電力不足は解消するぐらいのレベルまでなるというような資料が唐突に出され、委員の求めに応じて出したという説明だったので、地元、関西から、二者択一を選ぶようなものだということで大分反発を招いているようですが、そのことについて大臣のお考えをお聞かせください。
(答)ずっとこの委員会を聞いていただいていれば、唐突ではないということは御理解をいただけるのではないかと思います。今お話がございましたように、需給検証委員会では再稼働を前提とせずに、この夏の需給見通しの検証を進めてまいりました。昨日出た資料は、この議論の中で委員から、仮に大飯原発が稼働した場合の計画について示すべきだという指摘があって、委員会運営を見ていただければ分かりますけれども、委員から指摘があったことについては、できる限りそれは対応するということで、委員からの指摘に対しては、この点だけではなくて、あらゆる指摘についてできる限りそれは対応する。その一環として昨日、委員からの指摘に基づいて計算をしたものを回答したものであります。したがって、委員会自体が再起動を前提とした議論をしたことは全くありません。あくまでこれは、その委員の求めに応じて回答したということであります。
(問)先程の日本酒のプロジェクトの件ですが、輸出に当たって、例えば関税や、今まだ放射能の関係で、輸出する際にいろいろ資料を提出しなければいけないような困難さ、難しさもあるかと思うのですが、そういった輸出・貿易環境の改善などについても、このプロジェクトの一環として進められたりすることはお考えでしょうか。
(答)お酒、国酒だけではなくて、一般的に日本へのそうした風評被害が今まだあることは事実でありますから、そのことによって輸出制限をかけている国がまだ相当あります。こうした輸出制限を一日も早く解いてもらうように、輸出環境が良い状況をつくっていくことは、政府として、別にこのお酒にかかわらず、常日ごろ取り組んでいかなければいけない問題だと思っております。

(以上)