古川内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成24年4月17日

(平成24年4月17日(火) 9:50~10:21  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

おはようございます。
冒頭では、まず、先週月曜日の国家戦略会議におきまして次世代の人材育成の議論を行いました。そうした議論を深め、また検証する、そうした趣旨で、先週は1週間、いわば人材ウイークというような形で、人材育成の現場の視察や関係者との意見交換を行いましたので、若干お時間をいただいて御報告をさせていただきたいと思っております。
まず13日の金曜日には、JICAにお邪魔をいたしまして、国家戦略会議の議員でもあります緒方貞子さんと一緒に青年海外協力隊に参加された6人の方と懇談をさせていただきました。ここでは、海外でのこうしたボランティア活動が語学力のみならずコミュニケーション能力、人間力の習得にもつながり、グローバル人材の育成に有効であること、また、ギャップイヤーが実現しますと、その間に協力隊の枠組みを活用して海外ボランティアの経験を積むことによって、グローバルに活躍し得る人材の母集団の拡大につながり得ることなど、今後政策を考える上で大変重要な意見交換を行うことができました。
また、青年協力隊の皆さん方、大変年齢の割にしっかりしておられて、やはり様々厳しい環境の中で鍛えられてくるということが人間をつくるということにつながっているのだなということを皆さんに会って実感をいたしました。
週末の土日には秋田へ訪問いたしまして、人材育成の現場を視察させていただきました。
日曜日に訪れました国際教養大学におきましては、国家戦略会議の議員の長谷川さんと一緒に「国家戦略フォーラムin秋田」を開催いたしまして、グローバル人材育成について議論をさせていただきました。その中では、グローバル人材には語学力だけでなく、コミュニケーション能力を備えるとともに、オープンで柔軟に物を考えつつも、自らのアイデンティティーを失わないことが求められること、また、グローバル人材の形成のためには留学や外国人との交流等、様々な機会を通じて自らを外国にさらして実生活経験を積むことが重要なこと、こうしたことなどを議論させていただきました。
このフォーラムに先立ちまして学生の皆さんとも懇談をさせていただきましたが、大変積極的で、また全国から集まってきている皆さんで、こういう若い人たちが育っているということに大変私も心強く思いました。
このグローバルな大学が極めてローカルな、特に秋田の中でも一番近いコンビニまで10キロあるという中で生活をしているとお話を聞きました。私はこれは非常に大事なことではないかと思います。勉学に集中するという意味でもそうでありますし、グローバルな人材というのは、やはり自分の足がきちんと根っこが正にローカルな部分になければいけないと思っております。秋田は米どころでもあります。日本のいわばふるさと、原風景が残っているような場所であります。そうしたところに根づいて勉学に励む。そしてそこで世界各国の様々な人たちとの交流もある。また、そこから出ていって、この大学の場合には1年間の留学というのが義務づけられております。そういう海外に出ていって経験をすると、こうしたことが真のグローバル人材を生んでいく。環境的にも非常にいい場所にあるのではないかと思いましたし、こうした場所で学んでいく人たち、ここは就職率100%であります。就職には困らない。まだ設立されて7年ぐらいの大学でありますから、名前は知れ渡っているわけではありませんけれども、会えば、これは大変採用したくなる。同行させていただいた長谷川さんも、是非自分の会社でこの大学から採用したいと、そういうことを帰り際にはおっしゃっておられました。そういう人材を生み出している。
先駆的な取組として、既に9月入学も認めています。もちろん4月入学もありますが、9月にも入れるよう、セメスターごとに完結をしている。こういう他の大学とは少し違う取組をしているわけでありますけれども、私は、これまで日本の教育の仕組みが画一的で多様性を認めない、皆同じカリキュラムや同じプログラムでやっていた、こうしたものをもっと柔軟にして、こういう様々な新しい取組ができる仕組みにしていくということが非常に大事なことだと改めて感じた次第であります。
その秋田の国際教養大学に行く前には、秋田工業高等専門学校を訪問させていただきました。この専門学校、高専の重要性については、これは戦略会議の民間議員の皆さん方から出していただいた御提案の中でもあったわけでありますけれども、この学校は教育が学生の就業に結びついておりました。教育内容が専門的であるだけでなくて、日ごろから地元企業との連携や学生のインターンシップなどの取組を強化しておられました。
また、さらに、高専ですから工業というところが中心になるのですけれども、地元の一次産品と高専の知恵、技術が連携することによって、一次産品の商品開発が進んで6次産業化が進む可能性を実感することができました。
例えば、大変私も興味深くありましたのが、木材を粉のようにして、これを牛の飼料にする。しかも、この粉のようにしたもの、粉末状にしたものに乳酸菌などを混ぜる。要するに、木材をただ粉にするだけだと全く無味乾燥で、なかなか牛も他のものがあれば他のものを好むらしいのですけれども、少し乳酸菌とかを加えて、少しにおいとか味もつけていくと牛も好んでいく。これは、牛が草を食べるのとある種同じで、木は堅いからなかなか牛は食べられないわけでありますけれども、食べられるようにすれば、これは牛を通じて、いわば光合成された糖分を人間が摂取することができるということで、今、牛の飼料などは多くを外国に頼っているわけでありますけれども、こうした技術が進んでいけば、国内でそうした飼料を供給できることにもなっていくわけであります。正にこうした技術も、工業高専というところで今まで工業に使っていた技術を生かしていく、6次産業化の一つの取組にも高専の人たちが、あるいは生徒の皆さんが地域の人たちとつながっていく、こうした例を見ることができました。
また、さらに、その前日には農業組合法人たねっこファームにお邪魔をさせていただきました。ここでは、複数の集落が共同で法人を立ち上げて大規模化して、地域住民の雇用を創出して所得の増加、また新規就労を実現していました。今後の食と農林漁業の再生において日本が目指すべき先駆的なモデルの一つの例であったのではないかと考えております。
さらにその後、酒蔵もお邪魔をさせていただきました。ここでは日本酒が持つ潜在的な可能性というものを感じました。
私は日本酒はうまくセールスをしていけば、ワインと競合できるぐらいの日本の輸出品にすることができるのではないかと思っています。日本の国酒とも言われる日本酒、そして焼酎、こうしたものを単に日本食に合わせてというだけじゃなくて、フレンチとかイタリアン、ほかの食事にも合う、そうした飲み物として海外にセールスをしていくということは、これは非常に大事なことではないかと思っております。
このことは、単に輸出業、日本酒や焼酎などの需要を拡大するというだけではなくて、大体酒蔵、蔵元というのはそれぞれの地域の中心的な存在になっています。したがいまして、そうした蔵元などから元気が出てくるということは、地域の活性化にもつながっていくわけでありますし、また、こうしたところから世界に輸出されるようになったお酒が有名になれば、海外の人たちが日本に来たときに、我々が海外に行ったときに有名なワインのシャトーを訪ねるのと同じように、海外から来た人がわざわざそういう地方にある蔵元を訪ねるということにもつながっていくのではないかと思います。そういった意味では観光を促進することにもつながります。
さらに、おいしいお酒をつくるためには、やはりおいしいお米と水が必要であります。米づくり、そして日本の水、これをしっかり守っていく、こういうことにもやっぱりつながっていくのではないかと思います。日本の文化・伝統を守り、そしてまた地域の活性化にもつながり、さらには世界へ日本のいわばブランドとも言える日本酒や焼酎といった国酒を売っていく、そういった意味で、これは非常に様々な分野に広がっていく可能性のあるものではないかと感じております。
今後、こうした日本酒や焼酎などを世界へ売り出していくことにも取り組んでいきたいと思っておりますけれども、そういう可能性のあるということを蔵元に訪ねさせていただいて感じたところであります。
今回、先週1週間、日曜まででございますけれども、それぞれ人材育成や雇用創出に向けた取組を実際にその現場などを訪れて見てまいりました。成功事例、あるいは取組、こうしたものも年央の日本再生戦略の策定に参考にしてまいりたいと考えております。
あと2点、私から報告がございます。
まず、私が議長を務めておりますエネルギー・環境会議と、官房長官が座長を務める電力需給に関する検討会合のもとに需給検証委員会を立ち上げることといたしました。この委員会では、この夏の電力需給について、第三者の立場から徹底的に検証していただきたいと考えております。検証の結果は、連休明けにもエネルギー・環境会議と電力需給に関する検討会合で決定することとしているこの夏の節電目標の検討の基礎となるものであります。委員につきましては、エネルギー・環境会議のコスト等検証委員会のメンバーを中心に御参加いただくことを考えております。来週早々にも第1回を開催するべく、今調整中でございます。第1回目は電力会社から電気事業法に基づく報告聴取に基づいて情報のヒアリング等を実施する予定であります。透明性の高い議論を行って、連休明けには結論を出していきたいと考えております。
最後に、今度の日曜日、4月22日に長野県に参りまして、長野県の経済4団体の皆さんとの意見交換会、そしてマイナンバーシンポジウムへの出席を予定いたしております。詳細については、事務方にお尋ねいただければと思います。
私からは以上であります。

2.質疑応答

(問)まず、1点目、社会保障と税の一体改革についてなのですけれども、国会で特別委員会をつくるという話になっておりまして、番号制度についてもこちらの委員会で議論をするという話が出ておりますけれども、かなり重要法案が目白押しの中で、この法案審議をきちんとやってもらえるかどうか、その点についてどうお考えですか。
(答)これは国対のほうで対応していただく話でございますが、とにかく番号につきましては、どういう税制、あるいは社会保障を考えるに当たっても、共通のインフラとして重要なものでありますので、是非一日も早く議論を行って、成立させていただくように、私も国対委員長へお願いもさせていただいております。是非そういう方向になっていただきたいと思っております。
(問)もう1点TPPについてなのですけれども、民主党は経済連携PTでまた今週から議論を始められますけれども、こちらの議論というのは、今後の政府としての判断に影響を及ぼすものかどうか、その点どうお考えでしょうか。
(答)私もPTに、今までも2度ほど出させていただいてお話を伺っております。
 先週に、PTのメンバーも米やカナダへ訪問して、様々意見交換や情報収集も行ってきたようであります。TPPについて国民的な議論を行うという意味では、党における議論というのも非常に大事なことでありますから、こうしたことを行っていただくということは、結構なことだと思っております。
 そうした党の議論等も踏まえた上で、これは政府において責任を持って国益の観点から、最終的な結論を得てまいりたいと考えております。
(問)まだ日程は分かりませんけれども、日米首脳会談があるとすれば、それは今後判断する一つの節目になるものでしょうか。
(答)今、訪米の方向で検討しているようでありますけれども、まだこれは決まったわけではありません。また、その中でどういうことを議論するとか、そういうこともまだ未定の状況であります。
(問)2点あって、1点目は先週末の出張におきまして、大臣色々視察されたようですが、印象に残っていることをまず一つお願いします。
(答)たくさん印象に残りましたが、私は、最後にお邪魔した国際教養大学のキャンパスの雰囲気、特に学生の皆さんの非常に積極的・意欲的な様子というものには大変感心をいたしましたし、こういう若い人たちがどんどん出てくるということが日本の活力にもつながっていくという感想を持ちました。
(問)もう1点は宇宙戦略室がどんなふうになっていくのかという見通しについてお願いします。
(答)これは、今国会に法案を提出して、質疑をお願いさせていただいているところでございます。
 これは国会の運営でございますので、国対にお願いをするしかないわけでありますけれども、一日も早く法案を審議していただいて、成立すれば、できるだけ速やかに立ち上げていきたいと思っております。
(問)前田国土交通大臣の件なのですけれども、昨日会見されまして辞任はしないということで、政務秘書官の解任をする方針だけということなのですけれども、同じ内閣の閣僚としてどういうふうに思われますでしょうか。
(答)政治家の出処進退は御本人が決められるものだと考えおります。
(問)もう1点、石原都知事が尖閣諸島を購入するということを表明されましたけれども、それについて大臣の御所見はどういうふうに思われていますか。
(答)どういう脈略の中でどう言われたのか、分かりませんけれども、そこの部分は私が所管しているわけではございませんので、政府としてコメントする立場にはございません。
(問)大臣が冒頭におっしゃいました需給検証委員会、これはトップの方はどなたがなさるかということと、これは夏の需給だけを連休明けに報告して終わりなのか、その後も何か役割を任せるのか、その2点をお願いします。
(答)この夏の節電目標の設定に当たって、全国レベルの電力需給に関して、供給、需要の両面にわたって精査することが必要であるので、今回こうした委員会で第三者による検証を行うこととしたものであります。
 コスト等検証委員会のトップは石田副大臣にやっていただきましたが、今回も石田副大臣にトップとしてこの委員会を運営していただきたいと考えております。
(問)国家戦略会議の設立が決まって、間もなく半年を経過すると思うのですが、この会議の半年を振り返った御感想と当初掲げた政策の司令塔としての役割が実際果たせているかどうか、その2点についてお願いします。
(答)国家戦略会議におきましては、年末に日本再生の基本戦略をまとめました。そのまとめる過程の中で、正に今年度の予算などもそうした基本戦略、日本再生元年と今年度の予算は位置付けられております。そうした方向性を指し示すことができたと思いますし、今も年央に日本再生戦略をまとめていく。正に今後そうした再生戦略の枠の中で政府の重要な政策が運営されていくということになっていくと思っております。  そういった意味では、政権・政府として行っていく政策の大枠というものを指し示す役割というものは、果たしてきているのではないかと思っております。  国家戦略会議の運営の仕方については、民間議員の皆様方とも随時意見交換等をしながら、会議のたびに日々改善をしていくということで、今回の会議の議論等を踏まえて、次回はこういう形に変えていこうかということで、様々な工夫をやってきております。  そういった意味では、半年間が経過いたしまして、少しずつ形がそういうものもでてくるのではないかと思いますし、また国家戦略会議における議論や、そしてそれを受けての総理からの指示によって政府、各省が動いていくと、そうした形もだんだんと軌道に乗り始めているのではないかと考えております。
(問)エネルギーの関係でお伺いしたいのですが、今、枝野経済産業大臣を中心に大飯原発の再稼働の話が進んでいますが、一方で来月には原発の稼働がゼロになる見通しになっていて、そういう中で今後エネルギー・環境会議で議論する革新的エネルギー・環境戦略の作成にこの原発の再稼働ができるかできないかが影響するか、しないかについて、大臣はどうお考えですか。
(答)この原発の再稼働問題につきましては、4大臣中心に議論や検討をして判断をしていただいているわけでございます。この革新的エネルギー・環境戦略については、今年の年央を目途にこれから議論をしていくということになるわけでございますが、それに向けてはまずは5月を目途に、総合エネ調などの関係審議会が選択肢の原案を策定することになっていて、その原案が出てきたところで、それを踏まえて複数の選択肢を提示していきたいと思っております。  同時に、できるだけ早い段階でグリーン成長戦略、これはもともと新成長戦略でもグリーンイノベーションというものを立ち上げているわけでありますし、特にこうしたグリーン成長戦略策定の部分に少し集中をした戦略をまとめていくということもやっていきたいと思っております。  そうした取組を私どもとしては、マクロの視点での長期的な日本のエネルギー戦略のあり方というものを踏まえて考えていきたいと思っております。目の前の今停止中の原発が再稼働するかしないか、これとは切り離した形で中長期のエネルギー戦略というものをまとめていきたいと思っております。
(問)夏の需給検証委員会についてお尋ねします。  電力会社のほうがこういう需給の情報というのは持っているということで、そのまま出したものを鵜呑みにはできないということで、今回検証委員会を立ち上げられるのだと思うのですが、どうしても電力会社のほうが情報が多い中で、どういう形で検証することができるのかということをもう少し詳しく教えてください。  また、ゴールデンウイークまでに結論を出すとすると、そんなに時間もないと思うのですが、何回ぐらいの検討を重ねられるのかもお願いします。
(答)スケジュールから言いますと、ゴールデンウイークまでにとは申し上げていません。連休明けを目途にと申し上げております。  この検証委員会は、正に今、御指摘があったように、電力会社が出してきたものをそのまま鵜呑みにするわけではありません。だからこそ、正に第三者の目でこれは客観的に精査をしていただくために、こうした委員会を設けて検証をお願いするということでございます。また、電力需給の分析を行っている研究者等の皆さんにも、考え方を委員会の場で御説明をいただきたいと思っております。  また、ここでの議論はコスト等検証委員会の議論の仕方や資料の公開なども是非見ていただければと思うのですが、基本的にはコスト等検証委員会と同じような形でやりたいと思っております。  すなわち議事録は当然公表いたしますし、インターネット中継も行って、そこでどういう議論が行われているかと、そこで出てくる数字やデータ、そういったものは全部明らかにする。それを広く皆さんにも見ていただいて、様々な視点からチェックをしていただく、あるいは考えていただく、中日新聞がそうしてやっていただいても結構でございます。  そこはデータをしっかりお示しをしていきたいと思っていますので、この電力の需給の問題というのは、単にこれは政府とか電力会社だけの問題ではなくて、正に国民皆さん一人一人に関わる話でありますので、そうした皆さんの目にきちんとデータや情報が触れるような状況をしっかりつくっていきたいと思っております。  どれくらいやっていくかということについては、できるだけ議論がきちんと尽くせるように、そしてコスト等検証委員会のときもかなり最初は皆さんいろいろな意見の違いがあったようでありますけれども、最後は皆さん議論を尽くして、結果については、全員納得というところまでいきました。  今回の検証委員会についても、そうした皆さんの議論が尽くせるような状況というものをつくっていきたいと思っております。

(以上)