古川内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成24年3月27日

( 平成24年3月27日(火) 9:13~9:41   於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

冒頭に私から簡単に4点申し上げます。
まず1点目、今日の閣僚懇談会におきまして、国際標準化戦略の策定等について発言をいたしました。
先般の知的財産戦略本部におきまして、我が国の産業競争力強化のため、次世代自動車など7つの重点分野を対象とした国際標準化戦略を強化するアクションプラン第3弾を策定したところであります。
国際標準化戦略の例といたしまして、自動車用急速充電器のコネクタ基準については、我が国はチャデモ規格を提案しております。昨日、チャデモ協議会の志賀会長とも話をさせていただきましたが、このような取組については官民一体となって国際標準化への取組を加速していくことが重要であります。特に、インフラ輸出と一体でトップセールスを行うことが極めて有効なものについては、所掌を超えて政府一丸となって働きかけを行っていただくよう各大臣にお願いいたしました。
2点目、昨日夕刻でございますが、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長とお目にかかり、ライフイノベーションの促進等に向けた意見交換を行いました。
御存知のとおり、山中先生は、iPS細胞研究の先駆者として、創薬、再生医療などライフイノベーションにつながる研究をされております。今後も、先頭を走っていただいているわけでありますから、走り続けていただきたいと思っております。
山中先生とは、世界と競い合う最先端研究の継続的な支援の重要性や研究費の確保、さらには、若手研究者や知財担当職員等の優秀な人材の将来の可能性を広げていくことの重要性について意見交換を行わせていただきました。
私からは、科学技術政策担当大臣並びに国家戦略担当大臣として、このiPS細胞を用いたイノベーションの推進というのは、国家戦略として応援をしていきたい。山中先生は研究資金を集めるためにマラソンを走られたりされていますが、私は、健康には良いかもしれませんけれども、やはり先生にはとにかく研究に専念をしていただけるような環境をつくっていきたいということを申し上げました。
昨日、山中先生からいただいた御意見等も踏まえ、今後こうした有望な最先端研究が後顧の憂いなく安心して推進されるような環境をつくるためどういう支援をしていったらいいのか、そうしたことを関係各省とも相談をしながら考えてまいりたいと思っております。
3点目は、カナダとの間の宇宙協力の促進に関してでございます。
先週末のカナダのハーパー首相の来日に関連いたしまして、昨日、宇宙開発担当大臣としての私と平野文部科学大臣とカナダとのファスト国際貿易大臣との間で、日本とカナダの宇宙協力の促進に関する文書に署名いたしました。
本文書は、宇宙開発戦略本部事務局、文部科学省、JAXA、カナダ宇宙庁を当事者とし、地球観測、宇宙探査、宇宙科学、宇宙教育といった分野について日加間の情報交換や協力を促進することとしております。今後とも宇宙開発利用を効果的に推進していくために各国との協力を進めてまいりたいと考えております。
なお、本文書につきましては、日加首脳会談の共同成果の中にも盛り込まれております。詳細については、宇宙開発戦略本部事務局にお問い合わせいただきたいと思います。
最後に、3月19日に開催されました第7回雇用戦略対話におきまして、若者雇用戦略の策定に向けて専門家の方にも御参加いただき、ワーキンググループにおいて検討を深めることが決定されました。
それを受けまして、今度の木曜日、29日に雇用戦略対話ワーキンググループの第1回会合を開催いたします。ワーキンググループには、労働界、産業界に加え、学校関係者、若者雇用の専門家の方々にもお集まりいただきます。
なお、ワーキンググループの様子については、今回の議論の対象となっている若者の皆さんにも関心を持っていただきたいと思いまして、インターネット中継も行う予定でおります。
私からは以上でございます。

2.質疑応答

(問)昨日、前原政調会長が、例の消費税の合同総会の御挨拶の中で、党も政府を支えていく中でデフレ脱却をしっかりと確認して、何らかの担保を政府に果たさせることが大事だという御発言をされているのですけれども、この件について、経済財政政策担当大臣として何か政調会長のほうから御相談を受けたりされているのでしょうか。
(答)特にございません。
(問)政府に果たさせる担保については、古川大臣としてはどの様にお考えなのでしょうか。
(答)私も直接前原政調会長の言葉を聞いたわけではございませんので、予断をもってその内容についてコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。一般論として申し上げますと、今の私どもの政府・与党の基本的な認識は、このデフレ脱却をマクロ経済政策の最重要課題として、取り組んでいるということでございます。そうした認識を持って考え得る政策手段、とにかくできることは何でもしていく。そういう形でデフレ脱却に向けて政府が一体として取り組むことではないかと思っております。
(問)そういう面で言いますと、新成長戦略や日本再生の基本戦略も閣議決定されておりますし、大臣も経済演説の中で今後2年取り組むとおっしゃっていますが、それだけでは不十分なのでしょうか。
(答)まず、そこのところをきちんとやるということが大事なのではないかと思っています。何か新しいことをやるというよりも、今までやってきたことをしっかり着手して実行に移していく、それが非常に大事なことだと思います。その上で、もろちんいろいろな意見を今後とも伺っていきたいと思いますが、デフレ脱却に資するような政策があれば、それはまた今後とも新たに考えていくこともやっていかなければいけないと思っています。現時点については、まずしっかり昨年来からの累次にわたる補正予算を迅速かつ着実に実行していくこと、そして、今、御審議いただいております来年度予算案を一日も早く成立させて、迅速かつ着実に実行していくこと、そして、2年前から取り組んでおります新成長戦略、さらに再強化した日本再生のための基本戦略、こうしたことをしっかりできることは前倒し、あるいは重点的にやる部分は重点的にやる、こうした形でやっていくということがデフレ脱却に向けて非常に大事なことであると思っています。
(問)iPSと宇宙についての質問をお願いします。
 まず宇宙なのですけれども、カナダとの宇宙協力がなぜ今この時期なのかということと、非常に幅広にわたっていますけれども、具体的に何から協力していくというお考えでしょうか。
(答)今回、首相が訪日されたのに合わせて協定を結んだということでございます。この中でどの様な具体的な協力ができるかということでありますけれども、この文書におきましては、地球観測、宇宙探査、宇宙科学、宇宙教育、こうした幅広い分野が協力の対象とされております。その中でどういう具体的な協力を行っていくかにつきましては、宇宙開発戦略本部事務局とカナダ宇宙庁が共同議長を務める合同会議を開催することにいたしましたので、その場で絞り込んでいきたいと思っております。
(問)その合同会議というのはいつ頃なのですか。
(答)これからできるだけ早く協議をして立ち上げていくことになろうかと思っております。
(問)この戦略本部の事務局ですけれども、今、組織替えをやるということで国会に法案を提出していますけれども、これの見通しは如何でしょうか。
(答)一日も早く審議をして通していただきたいと、政府としてはお願いさせていただく立場でございます。
(問)iPSはライフイノベーションということで政府は他の分野よりもかなり手厚く予算を投じていると思うのですが、これをさらに増やしていこうということなのか、どういうことを考えておいでですか。
(答)山中先生からも昨日お話があったのは、今、予算の措置が講じられているのが25年度までで、大体10年位の計画でやってきている。その後がまだはっきりしないというところが、今働いている研究者の中で不安があって、特に御結婚されて奥さんがいらっしゃる方は、3年、4年先のことが分からないのであれば、今のうちにどこかいいところがあれば変わりなさいと、優秀な人から抜けてしまいそうな状況があるというお話もありました。今一緒に研究をしている人たちがきちんと先の見通せるような状況が欲しいというお話がございました。私はもっともなことだと思っています。
 先の国家戦略会議でもiPS細胞の研究というのは、国家戦略的に推進をしていかなくてはいけない分野だという議論もございました。今、山中先生をトップに、チームとしてこのiPS細胞の実用化に向けて研究を続けていらっしゃる皆さん方が、きちんと臨床研究のところまで行けるような状況まで、政府としても責任を持っていかなくてはいけないと思っています。山中先生のチームが、安心してそうした研究に従事できるように、そして山中先生自身も、先程申し上げましたけれども、体のために走るのは、私も走れるものだったら走りたいと思いますけれども、体のためではなくて研究資金を集めるために走っておられるというようなことであっては、本来の山中先生に私どもが期待しているところとは、あるいは世の中の皆さん方が期待しているところとは少しずれてくるのではないかと思いますので、山中先生にも安心して研究に集中していただけるような状況をつくっていけるように、私どもとしてもできるだけ最善の努力を尽くしていきたいと思っております。
(問)それは、今決まっている平成25年度以降も何らかの措置をされるということですか。
(答)是非そうした形を私はとっていきたいと考えています。先程から申し上げているように、iPS細胞の研究は国家戦略として、日本がリードしていかなければいけない問題であります。
 チャデモ規格と同じように、先行している、そして技術として優れている。これまでの日本は技術で勝って事業で負けるということがしばしばありました。今大事なことは、技術で勝つだけではなくて事業でも勝つ状況に持っていかなければいけないということだと思っています。そういった意味では、このiPS細胞の研究は、研究段階だけではなくて実用化のところでも日本が世界をリードしていく、そうした研究、そして事業にしていかなければいけない。何よりも私は一番重要なことは、このことによって多くの人の命が救われたり、病気が治ったりするという、人類にとっても極めて大きな成果をもたらす研究でありますし、これが広がればそうした大きな可能性のある事業になるわけでありますから、国家戦略としてしっかり実用化のところまで導いていく、サポートしていくということが大事なことだと思っています。
(問)国内の電力供給の関連で伺います。
 東京電力の柏崎刈羽が停止して、有事のことで北海道の泊も5月には定期検査に入るということで、春以降、全原発が停止するという事態に陥るわけですが、この全原発停止が日本経済に与える影響についてどの様にお考えでいらっしゃるかということと、当然予想される電力供給の不足に対しては、政府としてはどの様に対応すべきか、この2点についてお願いします。
(答)昨年11月のエネルギー需給安定行動計画においても、全ての原発が停止した場合においても、あらゆる政策を総動員してエネルギー需給の安定に万全を期すということが確認をされております。そのためには、省エネ等によりまして総需要の抑制を行ったり、電力会社の経営効率化等によって電力コストの上昇を極力抑制をしていく、そうした考え方の下に様々な施策、あるいはお願いもしていかなくてはいけないと思っています。そのことによって経済に与える影響を必要最小限に食い止めるように努力をしてまいりたいと考えております。
(問)昨日、山中先生がおいでになったという話の中で、研究者の方たちが雇用の不安があるという指摘が先生のほうからあったということなのですが、これは最近同じような話を私も取材で聞くことがありまして、先日、東京大学の村山斉先生という宇宙の物理学の先生なのですが、この方も研究者の雇用で非常に困っていらっしゃる。というのは、アメリカとの競争で、どうしてもなかなかいい条件を提示できないという、恐らく悩みとしては共通されているのだと思うのですけれども、そういう研究者の雇用がうまくいかなくて優秀な人材がどこかへ行ってしまうというのは、将来的に見ても困ったことだと思うのですが、国家戦略という大層なものではないかもわからないのですけれども、今後何か打っていくような手というのはお考えでしょうか。
(答)アメリカという国は私も少し知っておりますけれども、アメリカの研究者は恵まれている部分もありますが、一方で非常に厳しい部分もあることは御存知だと思います。成果を上げなくてはいけないとか、例えば、自分でお金を集めてこないといけないとか、そういう部分で言うと、むしろ日本の研究者よりも厳しい状況はある面もあるとは思います。ですから、アメリカが一概に全て良いとは思いませんが、日本の中で、特に将来のことを考えますと、若手研究者の皆さん方が安心して研究に従事できるような環境をつくっていくことは大事だと思っています。
 財政に非常に余裕がある状況であれば、そういうところにしっかりお金をつけてということでありますけれども、厳しい財政事情の下ですから、大盤振る舞いはできないわけでありますけれども、日本の将来を考えれば、若手研究者の皆さんに対する投資をきちんとやっていくことは極めて重要だと思っています。全国の大学や研究機関においても、こうしたことをしっかり認識していただきたいと思っていますし、政府としても、どの様な形で若手研究者の人材育成に支援できるのかについては、真剣に検討してまいりたいと思っています。
 そこの心配というのは、私も山中先生からも伺いましたし、昨年、京都にお邪魔して、若手のアカデミーの方々と話をしました。多分、ここにいらっしゃる記者の皆さんのところもそういうところがあるのではないかと思うのですけれども、今、大体30代から40代ぐらいの方は、昔と違って上の研究者の人が辞めない、下の人はなかなか入ってこない。だから、研究生活を10年、15年しても、雑用は減らないし、上の人はずっといるというので、間にはまって若手の中堅の研究者の人たちが苦労しておられるというお話も伺いました。
 こうした若手の研究者の人たちのやる気をいかに出して、成果も出していただくようにしていったらいいのか、このことは真剣に考えていかなくてはいけないことだと思っています。これまでも色々私もできるだけそういう若手の研究者の皆様方から意見を聞いたりして、そうしたものに対応できないかということを事務方にも指示もして、検討させてきたりもしておりますけれども、今後とも若手研究者の皆さん方の研究環境、そしてモチベーションを上げるにはどうしたらいいのかということについてはしっかり検討して、何らかの方向を出せるように努力していきたいと思っています。
(問)今の関連で追加なのですが、先程、山中先生がこの間、京都のマラソンに出られたことを、本当であれば、もっと研究のほうを頑張ってもらいたいという趣旨のお話がありました。これは恐らくは背景として、国の財政がそれほど余裕がなくて、収入も限られる中で、そういう研究者の方たちの雇用を考えると、どうしてもお金が要る。自分が稼がないといけないということで、その一環でPRも込めてああいうことをされていて、これは、先程私が例で申し上げた東京大学の研究者の方も、外国の財団の寄附を仰いだり、色々な方法で工面されていらっしゃるという現実があるのですけれども、研究機関が、これまででしたら国の研究費をいただいて研究をするというのがポピュラーだったと思うのですけれども、自分たちで研究資金をかき集めて、それを研究の糧にするというようなことというのは、どの様にお考えですか。
(答)私は、もっとあって然るべきだと思っています。ですから、昨日、山中先生も、本当に今おっしゃったように、何も別に国からというだけではなくて、自分たちも努力をしていかなくてはいけない、ただ、やはり寄附が集めやすいような環境をつくってもらいたいという話がありました。ですから、そうしたことも我々政府としても検討していきたいと思いますし、また、これは特に私も昔からよく日本の企業の方に申し上げることがあるのですけれども、海外、特にアメリカの大学には膨大な寄附をしている日本の企業がたくさんある一方で、なかなか日本のところには寄附しない。制度の問題もあるのかもしれませんが、そういう傾向もあります。企業側の人たちの意見も聞いてみないといけないと思うのですけれども、研究者の皆さん方の存在と、それとニーズと企業側のニーズとか色々なものがうまくかみ合わないと、特に企業などからの寄附を集めるというのは難しいところもあるのだと思います。しかし、そうした企業のニーズが合ったような形で、国内でも寄附も集まりやすいような環境はつくっていかなければいけないと思うのです。
 今、科学技術の司令塔づくりの議論を検討しておりますけれども、科学技術とイノベーションを一体として考えるというのは、そういう視点もあるわけです。もちろん基礎研究というのは非常に大事なのですけれども、それだけだと技術のレベルが上がるだけで終わって、それをいかに実際の社会に活用していくのか、そこにつなげていくイノベーションというのが重要になってくるわけです。そこの橋渡しをやっていくという考え方から科学技術とイノベーションを一体的に考えていこうと、そうした視点で今、司令塔の検討も行っているわけです。ですから、そういう司令塔ができたりすると、研究者の皆さん方と、そうした研究を必要としているような人や企業がつながりやすくなってくる環境もできてくるのではないかと思いますし、そういう環境をつくっていかなくてはいけないと思っています。
 したがって、日本の科学技術を進歩させて、それを経済成長につなげていく。今日は何度も申し上げておりますけれども、技術で勝つだけではなくて事業でも勝つ、そういう状況をつくっていく意味では、官民でうまくお互いに役割分担や協力、連携ができる環境をつくっていかなければいけないと思っていますので、民間や、あるいは民間からの寄附などもどんどん受けていただく、そして受けやすいような環境づくりをしていかなくてはいけないと思っています。
(問)今の関連で一つお願いします。
 今、科学技術で寄附の話がありましたけれども、宇宙のほうは如何でしょうか。というのは、JAXAがはやぶさ2の予算が今一つだということもあり、今、寄附を募ろうと考えていたり、新しい法律が通りますと、JAXAを民間に開放する。今まで民間企業は国からお金をもらう、JAXAからお金をもらうという流ればかりだったのですけれども、逆に民間企業からJAXAに協力を有償で求める等、何か新たな枠組みはお考えでしょうか。
(答)今の時点で具体的にどうというところまで申し上げることはありません。一般論として申し上げれば、JAXAの持っている技術力をもっと生かせる部分もあるのではないかと思っています。特に、例えば海外で展開していく中で、私も昨年、タイの科学技術担当大臣と話をした時に、タイなどで、今、次の打ち上げ衛星の検討をしているようなのですが、単に衛星だけではなくて、打ち上げた後のシステムやオペレーション、全体でのサポートが欲しいという話もありました。JAXAの持っているノウハウや技術は、かなりそういう部分で生かせる部分があるのではないかと思います。これは先日のパッケージ型インフラ輸出の中でも、今後、宇宙開発というものもそういう海外へ出していく一つのツールであると位置づけさせていただきました。そういう意味では、そういう段階の中で民間とJAXAとが協力し合っていくということは出てくるのではないかと思っています。

(以上)