古川内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成24年2月13日

(平成24年2月13日(月) 12:10~12:25  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 本日公表した2011年10月-12月期GDP速報、1次QEでは、実質成長率が前期比マイナス0.6%、年率ですとマイナス2.3%となりました。名目成長率が前期比マイナス0.8%、年率ではマイナス3.1%となりました。実質成長率は2四半期ぶりのマイナスとなりました。
 昨年10月から12月期のマイナス成長は、海外経済が弱い回復を続ける中、タイの洪水の影響という一時的な要因が加わって外需が大きく押し下げに寄与したことによります。ただし、12月にはタイの洪水の影響からの反動により輸出や生産が増加しております。また、現在、アメリカの景気は緩やかに回復しており、世界的な企業の景況感に改善の動きも見られます。
 内需項目では、消費が底堅い動きとなっておりますが、住宅投資と公共投資がマイナスとなりました。これらの項目については、今後、政策効果の発現が見込まれます。
 具体的には、住宅投資につきましては、各種住宅支援策の終了前の駆け込みの反動等により減少しましたが、今後は住宅エコポイント制度の再開やフラット35Sによる金利引下げが住宅投資の増加に寄与すると期待されます。
 公共投資につきましては、地域の復興計画の策定が昨年末にかけて進み、約8割の自治体で策定済みとなったところであり、今後、復興需要を後押しすると考えられます。
 このほか、エコカー補助金や、先般採択先が決定した立地補助金により個人消費や設備投資の押し上げも期待されます。例えば、既に本年1月の新車販売台数は前月比20%超の増加となっております。今後につきましては、世界経済の緩やかな好転の中で輸出が着実に増加すると期待されます。また、内需につきましても、復興需要の顕在化や各種の政策効果が見込まれます。以上によりまして、景気の緩やかな持ち直し傾向が続くと期待されますが、下振れリスクには十分留意する必要があると考えております。
 政府といたしましては、大震災からの復興と景気の下振れ回避に万全を期すとともに、デフレ脱却に断固として取り組んでおります。このため、円高への総合的対応策を含め、平成23年度第3次、第4次補正予算を迅速かつ着実に実行するとともに、平成24年度予算の速やかな成立に努めてまいりたいと考えております。
 私からは以上でございます。

2.質疑応答

(問)今回のマイナス成長ですけれども、外需の押し下げ要因が強いと相変わらず外需が下振れ、全体の成長率も下がってしまうという経済構造について、中長期的に構造をどうしていくべきか、大臣のお考えをお願いします。
(答)内需主導の成長というのは、80年代からずっと言われていることでありまして、国内の新規需要の掘り起こし、特に新成長戦略で定めておりますライフイノベーション、グリーンイノベーションにより、環境やエネルギー分野、さらには医療とか介護とか、そういう分野で新たな市場をつくって需要をつくっていくという内需の創造も非常に大事なことだと思っています。同時に、日本は21世紀の成長の最先端とも言えるアジアに位置しているわけでありますから、このアジアを中心とした成長を取り込んでいくということも非常に大事なことであって、内需、外需両方大事なものとして考えていかなければいけないと思っております。
(問)今回、公共投資がまた連続でマイナスになっておりますけれども、この公共投資のマイナスは、これまで補正予算を四次にわたって組んできたわけですけれども、いわゆる復興予算の執行の遅れが見られるのではないかという指摘もあるのですが、大臣はどのようにお考えでしょうか。
(答)今回の公共投資の伸びが2四半期連続でマイナスとなった背景といたしましては、仮設住宅建設の進捗に伴って、仮設住宅の建設が公共投資を押し上げる追加的な効果が剥落したことと、また着工後、数四半期にわたって工事が進行する公共投資は、工事の進捗ベースで記録される国民経済計算上はならされてあらわれてくる点などが背景にあるのではないかと考えております。しかし、公共投資の先行指標の公共工事請負金額を見ますと、補正予算の効果もありまして、昨年8月以降、前年を上回る水準で推移をいたしております。1月には前年比プラス8.5%という底堅い動きとなっておりますので、今後、復興需要は着実にあらわれてくるものと考えております。
(問)その復興需要なのですけれども、この後どの程度持続性があるのかということについての認識をお伺いします。確かに今後、復興需要の顕在化が本格的に出てくれば、一定の下支え効果はあると思うのですけれども、今後中期的に見てどの程度続くのか、持続性があるものか、その辺の認識はいかがでしょうか。
(答)これから今年度後半、そしてまた来年度にかけて主に出てくるのだと思います。したがいまして、この復興需要で経済の押し上げ効果があるうちに、民需主導の経済成長の過程にいかに乗せていくかが中長期的には非常に大事なことになってくると考えています。
(問)先程のお話でもデフレ脱却に断固として取り組んでいるという話ございましたけれども、GDPデフレーターを見るとマイナスが9四半期のデフレ続いていると思います。この現状をどの様に受け止めていらっしゃいますでしょうか。
(答)GDPデフレーターについては、9四半期連続のマイナスとなっております。また季節調整済みの前期比で見ますとマイナス0.2%と、12四半期連続のマイナス。我が国経済が引き続き緩やかなデフレ状況にあるというような認識は引き続き持っております。
 この国会でもデフレからどう脱却するかということについては議論がされているわけでございますが、これまでも政府と日本銀行と一体となってデフレ脱却に向けて取り組んできたわけでありますけれども、今まで以上に断固とした姿勢でデフレ脱却に向けて取り組んでいきたいと思っております。政府のほうももちろんでございますけれども、日本銀行においても今まで以上に、政府との緊密な情報交換、連携を始めておりますけれども、必要に応じて適切かつ果断な金融政策運営を期待したいと思っております。
(問)意気込みとしてはよく分かるのですけれども、まだ結果としてついていっていないという現状があるのかなと思うのですが、それを意気込みだけでなく本当に結果として実行できる浮揚策はあるのでしょうか。
(答)為替介入とかそういうものと違って、ワンショットでデフレから脱却できるというものではありません。基本的には人々の期待物価上昇率を高めていく状況をつくっていかなくてはいけないと思いますし、ほかにも様々なデフレの要因がございます。
 例えば、今、資源価格などが上がって、製造工程で言いますと、川上ではインフレになっているけれども、小売りの末端のところを見ますと、川下のところでは競争が非常に厳しくて、売り上げを維持するためにまた価格を下げているということがあったりします。昨日のNHKの討論でも申し上げましたけれども、やはり企業の再編とかそういったものも進めていく。過当競争で、まだ企業の行動が収益よりもシェア重視になっているということもあるのではないかと思います。
 これは様々な要因が複合的に絡んでいると思います。私どもとしましても、そうしたデフレに長い間日本が陥っている状況については、もう少し詳細に分析してまいりたいと思っております。そうした分析に伴って、それぞれの要因についてどういう政策を打っていったらいいのか、今までもそうした観点から様々な政策をとっておりますけれども、デフレ脱却に向けてよりフォーカスを絞った政策も今後考えていきたいと思っております。
(問)アメリカ経済なのですけれども、日本にとっては輸出でのプラス効果というのはあると思いますが、それ以外に世界経済全体にとってどういう影響があるとお考えになりますか。
(答)日本にとってももちろんでありますが、中国などでは、やはりアメリカ経済が持ち直すと経済にもプラスの効果もあると思います。ここのところの状況を見ておりますと、ヨーロッパは予想よりも減速をしているという状況がありますけれども、アメリカは予想よりも景気が緩やかに回復する道筋となっている。そのことによって世界全体の経済の落ち込みが止められて、緩やかな回復の方向が全体として見えつつあるという状況になっております。やはりアメリカ経済は世界経済全体に与える影響も非常に大きいわけでありますから、アメリカ経済の動向もしっかり注視をしてまいりたいと思っております。
(問)大臣談話では、10-12月期がマイナスになっても、上向きの動きが続いているということと、世界経済の緩やかな好転の中で輸出が着実に増加ということも含めて、欧州の債務危機については直接的な言及はなく、見方が基本的に甘いのではないかという気がするのですが。
 また、経済見通しでは、今年度マイナス0.1%の実質経済成長率ということですけど、今回マイナス成長になったことで達成が大分難しくなったようにも思うのですが、その2点についてお願いします。
(答)私どもとしての見方を述べさせていただいているということであります。
 23年度の政府経済見通しの実績見込みとの関係でございますが、23年度の成長率が実績見込みを下回る可能性も否定できないわけでございますけれども、引き続き今後の経済動向を注視してまいりたいと思っております。ただ、24年度につきましては、外需の持ち直しや復興需要を中心とする政策効果が成長を下支えすることで景気は緩やかな回復を続けるという政府経済見通しで見込んだ姿が実現すると考えております。
(問)欧米諸国によるイランの経済制裁とか、イスラエルがイランを攻撃するという観測が高まったとか、イラン情勢が緊迫しているのですけれども、このイラン情勢が原油価格や日本経済に与える影響について簡単にお願いします。
(答)日本の原油輸入量の85%はホルムズ海峡を通っている。イランで何か有事が起きますと、原油価格などの高騰につながる恐れや、最悪のケースとしては、そもそも原油自体が入ってこないということも考えられるわけでありまして、日本の経済にも大変大きな影響が及んでくるリスクはあると思っています。そういった意味では、イラン情勢をしっかり注視してまいりたいと思っていますし、外交的にイランの問題が解決することを私は望んでおります。
(問)中国とのGDPとの対比なのですけれども、去年逆転されて、この1年でまたさらに格差が大きくなったようですけれども、この受け止めといいますか対策といいますか、お考えをお聞かせいただけますか。
(答)GDPは、もちろん他の国との比較というのもあるかもしれませんが、まず大事なことは、自分の足下でGDPをどう上げていくかということではないかと思います。
 例えて言いますと、ゴルフをやるのに、自分がきちんと自分のスコアをたたき出さないで、相手のスコアだけを気にしていても仕方がないわけであって、まずは日本が自分のGDPを実質、そしてデフレから脱却して名目ベースでも上げていくということに向けて全力を尽くすということが第一に必要なことではないかと思っております。

(以上)