古川内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成24年1月20日

(平成24年1月20日(金) 11:38~11:56  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 まず最初に、景気対応検討チームにつきまして御報告申し上げます。
 本日、閣議前に第2回目となる景気対応検討チームを開催し、円高への総合的対応策のうち、円高の痛みの緩和に係る施策の進捗や成果を中心に議論いたしました。
 会合の場でも申し上げましたが、このチームの進捗管理を通じて具体的な成果が上がりつつあります。ただ一方で、なかなかまだ進んでいないというものもございます。したがいまして、今後ともこのチームを活用して、各府省の政務三役の取組を叱咤激励して、徹底した進捗管理を行うことによりまして、せっかくまとめた対策がきちんと実行に移されて、それが国民の皆さん方に実感していただけるような状況を早急につくれるよう努力をしてまいりたいと思っています。
 もう1点、TPP交渉参加に向けた関係国との協議について申し上げます。
 TPP協定交渉参加に向けた協議に関しまして、17日の火曜日にベトナム、19日木曜日にブルネイにおきまして、我が国から派遣された関係省庁関係者がベトナム及びブルネイ両国政府のTPP交渉担当者との間で交渉参加に向けた協議を行い、また、TPP交渉に関する情報収集を行いました。今回の両国との協議は、全体として非常に前向きなものであったと聞いております。
 ベトナム及びブルネイ政府からは、我が国のTPP交渉参加への関心を歓迎する旨の表明がそれぞれございました。
 また、同じくTPP交渉参加国でありますペルーとチリにつきましても、先方の要望を踏まえ、それぞれ来週、24日火曜日、25日水曜日に、関係省庁関係者を派遣して協議することとなりましたので、併せて発表させていただきます。
 私からは以上でございます。

2.質疑応答

(問)2点お伺いします。
 1点目が電気料金の値上げについてなのですけれども、企業用の電気料金の値上げは既に発表され、家庭用の電気料金の10%値上げなども一部報道で言われていますけれども、こういった電気料金の値上げが経済に与える影響をどのように御覧になっているかという点。あともう1点は、グローバル人材の確保という観点から、東大の秋入学についてはどう思われるかということで、経済界は概ね3団体とも割と肯定的な意見表明があったのですけれども、5年後に全面移行というスピード感への評価も含めて、お話しいただきたいと思います。
(答)まず電気料金の値上げにつきましては、経済財政担当大臣として、こういう経済状況でございますし、さらには円高に伴う産業の空洞化が大変懸念されている状況の中で、このような電気料金の引き上げが行われると、そのことが経済に及ぼす悪影響を大変強く懸念をいたしております。
 特に、家庭用につきましては認可料金でありますが、具体的に政府として東電と値上げについて調整に入ったという事実も、値上げを容認したという事実もございません。この点については、安易な電気料金への転嫁は回避して、コスト上昇を極力抑制することが極めて重要と考えております。これは経済産業省においてやっていただくことになろうかと思いますが、徹底的な経営合理化等の検討が行われた後に初めて議論の俎上に上がるものではないかと思っています。
 ここは規制部分でありますが、そうでない自由化部分につきましても、これは電力会社が事実上の地域独占、需要家の側に他に選択肢が基本的にないという状況の中で、先程から申し上げているような、今、企業が置かれている大変厳しい状況、特に中小企業などの置かれている状況を考えますと、本当に東電がどこまで徹底的な経営努力をしてきたのか、もっとしっかり検証される必要があるのではないかと思っています。
 この電力料金の引き上げが経済にどういう影響を与えるか、事務方のほうで検討してみるように言いました。これは今回の料金引き上げ案を踏まえたものではありませんけれども、発電コストが基本的に全部電気料金に転嫁されるという前提で考えるということですが、内閣府では、全国ベースでの発電コストが、10%程度上昇すると、実質GDPで0.3%から0.6%程度減少するという試算を前に出しております。特に産業別で言いますと、非鉄金属など電力需要の多い産業への悪影響が懸念されます。
 これを今回、東電の自由化部分の全電力供給に占める割合は、今、19.6%でありまして、これを、値上げ率の17%を全国ベースに置きかえると約3.3%の上昇になります。ですから、これは単に機械的な試算でありますけれども、機械的に割り戻しますと、実質GDPに与えるマイナスの効果は0.1%から0.2%程度あるのではないかということが、試算上は出てくるということが明らかになりました。
 これは大変危惧をしていることでございまして、これから電力料金体系の見直しもやっていかなくてはいけないわけでありますけれども、需要家が選択できる、あるいは節電の努力などをできるような料金体系も含めて、今回東電から提示をされているのは、一律の引上げのようでありますが、例えば、ピーク時を避けて操業したりしたら、その分は電気料金が安くなるとか、需要家の側が、コストの負担を少しでも減らす努力ができるようなことも考えていくべきではないかと思っております。
 繰り返しになりますけれども、今回の値上げについては、さらに景気を冷え込ませたり、また空洞化を後ろから背中を押すようなことにならないかと、大変懸念いたしております。
 2点目の9月入学の話でございますが、私は基本的に大賛成です。もともとグローバル人材をどう育成していくかというこれまでの議論の中でも、9月入学の話やギャップ・イヤーの話というのは議論してまいりました。こうしたことをやることによって、帰国生徒や留学生の受け入れといった国際化の促進や、若者の多様な体験機会の充実に資するという面があるのではないかという議論をしてまいりましたので、東大が本格的に検討するということは、好ましいことではないかと思っています。
 5年後というのがどうかという話がありました。私は、できれば少しでも早くスタートしたほうがいいのではないかと思います。大学も、これからグローバルに競争していく、グローバルユニバーシティとして生き残ろうと思うところは、他の国のユニバーシティと、ある意味で様々な競争条件を合わせ、より魅力的なものにしていかなくてはいけない状況にあると思います。
 したがって、日本の大学すべてが9月入学にする必要はないと思いますが、グローバルな大学として生き残っていこう、競争していこうというところについては、積極的にやっていかれたらいいのではないかと思います。
 これまで、どの分野でもそうですが、皆横並びということでありましたが、これからは、手を挙げてやる気があるところはどんどん先にやってもらう、よければそれをまた広げていくというやり方が日本の再生のためには必要不可欠なことだと思っています。教育の分野にも当てはまると思いますので、是非、今回東大が言い出して、報道などを聞いていますと、実は他の大学でも検討したり、やっていたという話もあるようでありますが、様々な形でそういう検討が進んで、やろうというところが出てくればいいのではないかと思います。政府としても、そういった動きを積極的にサポートするようなことを考えていきたいと思っています。
 同時に、これは大学だけではなくて、就職の体制、大学を出た後の受けるほうの企業側の御協力もいただかなくてはいけないと思います。
 ティーチ・フォー・アメリカという言葉がありますが、そういう様々なボランティア活動をしたり、具体的な貢献活動をした人たちを、企業などが採用の時に優先するという取組なども英米等では行われていると聞いたことがあります。これは私自身の反省でもありますけれども、ずっと真っすぐ、どこも寄り道しないでそのまま行ってしまうと、後で気がついて、年をとってから苦労しなくてはいけない。私も、役所をやめてからの2年半の浪人時代が人生で一番勉強になったと感じております。企業の側も、特にグローバルで競争しているような企業においては、ギャップ・タームやギャップ・イヤーを活用して、海外で様々な経験をしたり、ボランティア等の活動をした人を、若い時代の様々な寄り道をむしろプラスに評価するようなことを是非していただきたいと思っています。
 人材の育成は、これまで国家戦略会議などでも何度も議論になってきています。こういうグローバル人材の育成の話については、今回の9月入学等の取組も含め、国家戦略会議などでも積極的に議論を行っていきたいと思っていますし、是非、こうした前向きな取組を国や企業、あるいは地域を含め、日本全体としてサポートしていけるような取組をしてまいりたいと思っております。
(問)今の電力料金に絡んでお伺いしたいのですけれども、原発がこれからまたさらに動かなくなってくると、料金の値上げというものが響いてくると思うのですけれども、原発の稼働と電気料金の値上げについてはどのようにお考えでしょうか。
(答)原発の再稼働につきましては、従来から申し上げておりますように、まず安全性をしっかり確保するということ、そして同時に、原発が立地する地域の皆様方の理解、さらには国民の信頼といったものを踏まえてやっていかなければいけないと思います。そうしたことと電気料金の話は、きちんと分けて考えていかなければいけないと思っています。そのことが、原子力に対する国民の皆さんの信頼を得るためにも大事なことではないかと思っています。
(問)先程、値上げで景気が冷え込むのではないかという懸念を示されましたけれども、実際電気料金が値上げしても景気を冷え込ませないための対策、手段は、何かあるのでしょうか。
(答)まずは、様々な努力を電力会社においてやっていただきたいと思います。これからエネルギー・環境会議などでも、エネルギーミックスの議論を深めていくわけでございます。この議論の中でも、エネルギーミックスを国の側や供給者の側が決めるのではなくて、ベストミックスは最初に需要者の皆さん方が決めていくような方向性であるべきだという議論がこれまでもありました。
 需要者の皆さん方が選択できるような形、料金体系なども、検討する一つではないかと思います。また、そうしたことを、例えばスマートメーターなどを導入すれば、再生可能エネルギーの導入促進や蓄電池の導入促進といった、言ってみればエネルギーテクノロジーの革命を起こすことにもつながっていくと思っています。ここは規制、様々な制約が、今、日本のエネルギー分野については直面しているわけでありますけれども、むしろここをエネルギーテクノロジー革命、一次革命を実現する、そしてこの分野で日本は新たな成長をしていけるような方策は考えていかなければいけないと思っていますし、考えることができるのではないかと思っています。
(問)TPPに関してですけれども、今後、各国との事前協議を行った結果をどのように集約していくのかということと、次回の参加国協議までにすべての国との事前協議が終わる見通しというのは立っているのかどうかをお聞かせください。
(答)まず1点目については、できる限り、色々な協議の中で得られた情報は皆さんに公表できるようにしてまいりたいと思っております。
 2点目につきましては、これは相手国との関係で、向こうからの要望等を聞いたりして、今、協議をしておりますので、できるだけ速やかに各国と協議できるように努力していくということでございます。

(以上)