与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成23年7月15日

(平成23年7月15日(金) 9:16~9:34  於:合同庁舎第4号館4階共用408会議室)

1.発言要旨

 閣議は案件どおりでございまして、特に御報告することはございません。

2.質疑応答

(問)菅総理が13日の会見で表明された脱原発の方針についてなのですけれども、政府・与党内の議論がないままに打ち出されたということに批判が出ておりますけれども、大臣、改めてこの問題についての御認識をお伺いします。
(答)脱原発というのは、日本の将来の社会、あるいは日本の経済活動、国民一人一人の生活、こういうものにかかわることでございます。また、日本全体の資源エネルギー政策の中での脱原発であって、日本の資源エネルギー政策そのものが論ぜられて、その中で脱原発というものが位置付けられなければならないと思っております。そういう点では、あの発言に関しては、これから議論をし、実現可能な方途を探っていくという、いわば宿題が出されたというふうに認識をしております。
(問)関連して、もう既に退陣の意向を表明されている総理の立場で、大きな政策転換を打ち出されたという、このタイミングの問題についてはどのようにお考えでしょうか。
(答)現に総理大臣であられるのは菅直人氏であって、総理大臣が自ら、自分の使命であり、職責であると考えておられることを言明したり、行動したりするのは、別に不思議ではないと思っております。
(問)もう1点、震災の復興財源についてお伺いします。先日大臣は7月末までに税目と償還期限を決めることが望ましいというふうに仰ったのですけれども、昨日、平野復興相は、税目については8月以降にしたほうがいいというふうな認識を示されたようですが、この辺は今後の閣僚会議等でどのように調整されていくお考えでしょうか。
(答)一番いけないのは、復興のために借金だけをして、税目については12月の年度改正に先送りをするというような考え方、一部の閣僚の方が冗談のように言っておられますけれども、こういうものは不見識と断じざるを得ないと思っております。平野大臣が言われたことは合理性があって、復興財源と具体的な税目を決めると、その時期は7月中ではなくても8月に入ってからでも、ということを言っておりますが、なるべく同時決着するというのが政府の方針であり、また3党合意を読めば、償還についてはきちんと担保するということが書かれているわけですから、復興債で財源を調達することと、それをどう担保するかというのは同時に決着しているということが、3党合意からいっても必要なことだと私は思っております。
(問)補足で1点だけですが、少し前に戻って、菅総理の脱原発の発言の関連なのですが、原発に依存しない社会を目指すという一昨日の菅総理の日本のエネルギー政策の将来の方向性自体については、与謝野大臣、どのように感じていらっしゃるのでしょうか。
(答)依存しないというのは、ゼロにするということと同義だと思いますけれども、恐らくそれは相当長い期間、時間がかかる話であって、その長い期間の間には石油資源、あるいは天然ガス等のアベイラビリティというか、入手可能性という変数がどう動くかという問題もあります。ですから、相当長い期間、単独では成し遂げられない。やはり他のエネルギー資源の入手可能状況、あるいはそれの価格等々に全部依存した一つの物事であって、その都度日本国民としてこの国をどうやって支えるかということを、将来にわたって、やはりその都度判断をして進まなければならないと思っております。脱原発にしたいというお気持ちはよく分かります。
(問)まず1点、先ほどの脱原発の考え方なのですけれども、総理があのような形で御発言されたことで、例えば日本の企業活動などにどのような影響があるとお考えでしょうか。
(答)ざくっと見て、日本の電力料金は間違いなく上がる。上がった電気料金のコスト分析をしますと、そのコストは石油のコストに非常に依存するということで、原子力の特徴というのは、設備は非常に高いのですけれども、ウラン自体は発電コストの非常にマイナーな部分ですけれども、石炭火力、石油火力というのは、設備に比べて燃料費が占める部分が非常に大きいので、高くなると同時に価格変動にさらされる。資源の入手可能性も心配になる。当然電力料金というのは原価主義ですから、これは家庭にも産業にも転嫁される。となると、恐らくざっと見て、法人税が3割ぐらい上がってしまうような結果にもなりかねない。日本の電力多消費分野は競争力を失うと同時に、海外に生産拠点を移そうというモチベーションが出てくる。日本にとってあまり良いことは起こらないと、そう思っています。
(問)あともう1点、先ほどの復興財源のところのお話なのですけれども、先ほど仰った一部の閣僚の方というのは片山大臣のことと思われますけれども、そういった償還財源とか税目とかというところをきちんと決めずに先送りすると、どういうデメリットが生じるというふうにお考えでしょうか。
(答)税というのは、国会議員が政治生命をかけてつくるものでありまして、そう簡単な話ではないわけです。今回も民主党は長い議論が続きましたけれども、決してこれは不思議なことではない。一人一人が選挙区での自分の政治生命をかけた、一人一人の発言であったわけです。言ってみれば、選挙に関係のない閣僚が税について発言をするというのは、やはり国会議員の一人一人の苦しみを分かっていない、軽率な発言だと思っています。
(問)それに関連してなのですけれども、決めないことによるマーケットなりの影響というのは何かあるのでしょうか。先般、政治的な理由で曖昧にすると、市場からしっぺ返しがあるというふうに仰っていたと思いますけれども。
(答)元々、社会保障・税一体改革の中にも流れている思想というのは、日本の国債は日本人の金融資産に比べて相当目一杯出しているなと、やはりこの際は日本の国債を順調に消化していくためには、市場が日本国政府の財政規律に一定の信認を置くということが大前提だということでやってきたわけです。復興債については、最初からそういう考え方を民主党も公明党も自民党も持っておられて、復興債はやはり財源を手当てすると、それでその償還を担保するということが3党合意ですから。一閣僚の発言よりは3党合意のほうが大事であって、意味のあることであるというのは論をまたないと思っております。
(問)総理の脱原発の発言に関してちょっとお聞きしますが、大臣はこれまで原子力を不可欠であるというふうに仰ってきていますが、菅総理は会見の中で、原子力のリスクの大きさを考えたときに、これまでの安全確保という考え方では律することが出来ない技術だということを痛感したと、それが原発をやめようという考えに至ったと思うのですけれども、この考えについて大臣はいかがお考えですか。
(答)先ほど申し上げたつもりなのですけれども、原発の部分だけをとらえて論じるのではなくて、日本人の生活とか経済活動とか原子力の安全性の進展とか、もろもろのファクターを考えた上での結論でなければならないと、そういうことを申し上げたつもりでございます。
(問)それについては総理は総理なりに、日本人のまさに生活を考えて、やめるという決断をしたわけですね。それは大臣はどういうふうにお考えなのですか。
(答)私は、恐らく世界の人口が増え、また世界の経済活動のレベルが上がっていくという段階では、石油とか天然ガスとかそういうものが取り合いになるということで、値段も高騰しますし、安定供給にも懸念が出てくる。それでもいいという覚悟を決めるかどうかという問題です。
(問)大臣、入手可能性、資源の有限性ということを仰っていますけれども、ウランのほうがよほど有限性については寿命が短いわけであって、最近は天然ガスが相当採掘の技術が発達して、一説によれば100年単位で寿命が延びていると。ウランはそれに比べれば、まだ数十年しかもたないということであって、そういうことを考えると、よほど天然ガスにシフトしたほうが、環境にも国民生活にとってもプラスなのではないですか。
(答)ウランの賦存量についてのデータはどういうところから考えておられるのか知りませんけれども、ウランというのは海の中にも幾らでもある、そういう種類の物質ですから、ウランの賦存量と原子力発電の関係というのは、天然ウランのコストというのは殆ど幾ら上がっても電力コストにはあまり関係ないという性質を持っていると、そこは考えていかなければいけないと思っています。
(問)最後にしますけれども、原子力のコストももうちょっと大臣はお考えになったほうがいいのではないですか。総理が言うように、事故が起こったときのあの取り返しのつかなさというのは、これは日本の経済に与えるリスクとしては物凄い大きいと思うのです。そういう原子力に対する反省というのは、大臣はあまりないのではないかというふうに、この間の発言を見ると思っているのですが、それはいかがなのですか。
(答)そう思っていただいて結構です。
(問)そういう反省がない形で原子力の推進を仰るのは、非常に閣僚としては、特に菅内閣の中では不適切なのではないですか。
(答)私が言っているのは、原子力のところだけに着目して議論をしないで、社会のあり方、生活のあり方、経済活動のあり方、資源の他国への依存度等々すべてを考えた上で物事を判断するのが適切だと言っているわけでして、一つのことだけに着目をして物事を論ずるのではありませんということを申し上げているだけです。別に原子力がなくなったからといって、生活のレベルが落ちていくだけであって、そんなことは痛くもかゆくもありません。

(以上)