与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成23年6月20日

(平成23年6月20日(月) 18:11~18:30  於:合同庁舎第4号館4階共用408会議室)

1.発言要旨

 月例経済報告等に関する関係閣僚会議の内容を御報告いたします。
 景気の基調判断は、「東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるなかで、このところ上向きの動きが見られる」と上方に変更しております。
 我が国の景気は、震災の影響で弱い動きとなった後、依然として水準は低いものの、生産に復調の兆しが見られることなどを踏まえたものであります。
 先行きにつきましては、生産活動が回復していくのに伴い、景気は持ち直していくことが期待されます。ただし、電力供給の制約や原子力災害の影響に加え、海外経済の回復がさらに緩やかになることなど、景気の下振れリスクに注意が必要であります。
 政府としては、「政策推進指針」に基づき、大震災がもたらした制約を克服し、日本経済の潜在的な成長力を回復するよう、取り組んでまいります。
 以上でございます。

2.質疑応答

(問)今回、上向きの動きが見られると基調判断を上方修正されました。4月に、このところ弱い動きとなっていると下方修正されてから、わずか2カ月で上方修正ということになりましたけれども、この間の日本経済の回復ペースについて、想定以上に速かったでしょうか、大臣の回復のペースについての御認識をお願いします。
(答)結局、3月11日に震災が発生して、日本経済は非常に大きな打撃を受けた。特に外需が減ったと。外需が減ったのは、海外の経済の影響というよりは、生産力が落ち込んだと。中でも輸送用機械、端的に言えば自動車などの落ち込みが非常に大きく響いたと思っております。
 しかしながら、自動車に限らず各社とも生産力回復に非常に努めてまいりまして、予想以上に生産力の回復というものが早まりそうだというのがいろいろな兆候からわかってきましたので、上方修正したわけでございます。
(問)一方で、先ほど大臣もリスク要因として触れられましたが、海外経済の回復が緩やかになるリスクが今取りざたされております。特にアメリカでは、雇用統計の戻りも遅いようですし、欧州では財政危機の深刻化というものが言われていますけれども、そういったものがこれから回復してくる日本の輸出を下押しする、ひいては日本の景気の回復をにぶらせると、そういうリスクについては、大臣の御認識はいかがでしょうか。
(答)アメリカでは、失業率も高い水準にありますし、住宅価格もリーマンショック以降低迷し、いまだ下値を見ていないという状況で、住宅価格なども非常に不安要因の一つになっています。
 ヨーロッパでは、ご存知のように、ギリシャを始め幾つかの国がソブリンリスクという事態に遭遇しておりまして、これに対する救済措置をIMF、あるいはヨーロッパの中央銀行がやっておりますけれども、欧州の域内でもいろいろな意見があるということと同時に、ギリシャに次いで幾つかの国も相当ソブリンリスクというものがささやかれておりますから、日本の輸出先であるヨーロッパの経済というのは、不安定要因を持っているということです。
 それから、中国始め新興国経済というのは、インフレ懸念というものがあって、どちらかというと引き締めに転じているというケースも幾つか見られます。そういうことで、外需が非常に日本経済にとって重要であることからして、海外経済が今後どういう道筋をたどるかということは、日本のリスク要因として認識をしておかなければならないと思っております。
(問)物価動向についてお伺いします。
 消費者物価指数は、最近コアCPIはプラスに転じました。コアコアCPIもマイナス幅が縮小しています。一方で、需給ギャップは年率換算で20兆円と非常に大きなギャップが残っておりますけれども、今後の物価動向について、これまでずっと緩やかなデフレ状態が続いているという認識を政府は示してきましたけれども、このデフレの脱却に向けて、今後物価の動向の先行きについて、どういうことを大臣は予想されていますでしょうか。
(答)物価の動向の中で一番気になりますのは原油。原油というのは燃料としてだけではなく、生産活動の原料としての役割を果たしておりますので、原油を初めとした資源価格、あるいは穀物の価格というのは、日本の物価に非常に大きな影響を与えるものだと思っております。
 物価の統計を考えるときに、原油を除いたとか、そういういろいろなコアとかコアコアとか、いろいろなことがありますけれども、最終的に消費者が実感として持つ物価というものは、大事な要素でございますけれども、常にそういう国際的な原料、食料の価格動向によって、物価動向は左右されるということは、忘れてはいけないことだと思っております。
(問)今回の月例経済報告では、月例経済報告の主文の中で失業率という言葉がなくなって、これは2009年の9月からずっと一貫して使ってきたわけですけれども、今回なくした理由は何なのでしょうか。
(答)失業率が高いということは、日本の経済の厳しさの例示として挙げてきたわけですが、今回は東日本大震災の影響というものを例示に挙げたわけで、雇用の動向というのは依然厳しいという認識は政府としては持ち続けております。
(問)東日本大震災というふうにおっしゃいましたけれども、5月では大震災と失業率が一緒に並列的に書かれているということもありますし、失業率をなぜこれまでずっと書いてきたかといえば、雇用が重要なんだという政府としてのメッセージがあったからだと思うんですが、そういう考え方に変更があったということですか。
(答)全く雇用に対する考え方は変わっておりませんし、雇用問題に対しては、これからも政策的努力を続けていくということは、全く変わっておりません。
(問)失業率が結局今回の月例から主文だけじゃなくて、全体としても前段の冒頭の記述からは落ちているということになると思うんですけれども、失業率を書かなかったもっと政治的理由、もうちょっとわかりやすく言っていただけないですか。
(答)文章の中に失業率というものが経済の厳しさの一つの例示として挙げていたわけですが、今回は例示として東日本大震災を挙げているわけでして、雇用政策とか雇用情勢に対する政府の認識が変わったわけではありません。
(問)ちょっと先行きについてお伺いしたいんですけれども、景気が持ち直していくことを期待されるとおっしゃっていましたが、今後の回復のペースというのは、どういったものを描いていらっしゃいますか、ゆっくりなのか、V字でいくのかというのは、どうごらんになられていますか。
(答)政府の見通しが出るのは、7月中か、7月を越えたところできちんと出しますけれども、日本銀行初め、国際機関、あるいは日本の民間の金融機関、研究所等々が既に数字を発表しておりますけれども、来年は非常に大きな成長が期待されるというのがそれぞれの一致した意見でございまして、2%の後半、2.9%という数字もよく見る数字でございます。
 しかし、今年は3月、4月の落ち込みが非常に厳しくて、5月も6月もその影響はまだ引きずっている。しかし、それを越えると年末にかけて、経済は上向きになっていくというのがほぼ日本銀行も民間金融機関も一致している見方でございまして、政府の見通しも多分それらの見通しとそんなには変わらないと私は思っております。
(問)今朝方発表された貿易統計なんですが、民間予測を下回って、余り芳しくない結果だったんですけれども、大臣が考えられている生産が回復すると輸出が戻るとお考えになるのか、それともこの間いろいろな韓国製品とかほかの国の代替が進んで、もとのとおりには戻らない、もしくは戻るのに時間がかかるとお考えになるのか、どちらでしょうか。
(答)これはにわかにはお答えできませんけれども、今御指摘の点は日本が心配しなきゃいけない点でして、8,500億円を超える貿易赤字が出たのは、1つ、国際競争力が失われたのか、2つ、お得意様を他の生産国にとられてしまったのか、3つ、日本は不安定だから貿易の相手先として他のところにいこうと相手国が考えたのか、それはわかりません。
 わかりませんが、日本が貿易立国であって、輸出をして日本が必要とする資源等を輸入しているという、明治の初めから余り変わらないこの経済の構造、こういうことからしますと、貿易赤字というのは大変深刻な問題なので、これから貿易赤字が一時的な要因なのか、あるいは構造的な要因なのかということは、よく見きわめる必要がある。これが恐らく貿易の赤字というのが日本が注目しなきゃいけない最大の問題の一つだと私は認識しております。
(問)アメリカの格付け会社のムーディーズが東京電力の長期社債を4段階格下げして、いわゆる投資不適格というレベルまで格下げしたんですが、先ほども今後の景気の下振れリスクとして、電力の供給の制約とか原子力災害というのが挙げられているんですが、経済に対する影響とまずこの格下げに対する受けとめと今後の経済、特に電力供給、原子力災害という下振れリスクに対する影響について、どのようにお考えなのか、お答えいただけますか。
(答)原子力損害賠償のフレームをつくったときの考え方というのは、文書に残っておりますけれども、東電を債務超過にさせないということ、また電力の設備投資に必要な資金は供給すると、その場合は政府保証もつけると、こういう一連のことが書いてありますので、資本の面から東京電力が危殆に瀕するということは考えにくいと思います。
 ただ、社債発行に関しては、社債は確かに電気事業法で一定の保護がされている債券とはいえ、東電の社債というのは、恐らく市場で消化できないような状況になっていると思います。現に他の電力会社の社債も発行条件等が市場と発行体との間でうまく折り合わなかったと聞いておりますので、ムーディーズの評価とは別に、事実上社債の発行は厳しい状況にあると。ただし、東京電力が資金的にどうかといえば、政府は賠償スキームの中で東電には何回でもお金を供給するということを言っておりますので、その点は電力供給の制約になるとは考えがたいと思っております。

(以上)