与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成23年5月24日

(平成23年5月24日(火) 14:53~15:17  於:合同庁舎第4号館4階共用408会議室)

1.発言要旨

 まず、記者会見の前に、今朝ほど当面の経済見通しについての見解はどうなんだと、今年度の成長率見通しなどをどの程度下方修正するのかという御質問を受けました。十分意を尽くせなかったと思いますので、次のようにお答えをしておきます。
 平成23年度の実質GDPの成長率は、サプライチェーン毀損の影響やマインドの悪化等による消費、投資の減少等により、当初の政府経済見通し1.5%を下回ると考えております。1%程度下方修正されると申し上げたのは、民間機関の予測が震災前後で同程度下方修正されたことを参考にしたものでございます。
 ただし、民間予測は先般の10‐12月の成長率の改定、すなわち年率マイナス1.3%からマイナス3%という改定を受けて、さらに0.5%程度下方に修正をしております。
 政府の23年度の実質GDP成長率等の見通しについては、今後の基礎統計の動きや先般成立した補正予算を含め、復興に向けた政府の取り組みを踏まえて、年央を目処に改定することといたしたいと考えております。
 それでは、月例経済報告についての記者会見をいたします。
 月例経済報告関係閣僚会議の概要を御報告します。景気の基調判断は、「東日本大震災の影響により、このところ弱い動きとなっている。また、失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にある」と先月同様の判断にしております。供給制約やマインド悪化等によって、消費、投資に弱い動きが見られるものの、震災後の景気の基調は先月から大きく変化をしておりません。先行きについては、当面弱い動きが続くと見込まれますが、その後生産活動が回復していくのに伴い、景気は持ち直していくと期待をされます。ただし、電力供給の制約やサプライチェーン立て直しの遅れ、原子力災害の影響等の下振れリスクには注意が必要でございます。
 政府としては、5月17日に閣議決定した「政策推進指針」に基づき、大震災がもたらした制約を克服し、日本経済の潜在的な成長力を回復するよう政策運営に取り組んでまいります。以上です。
 なお、専門的なことは齋藤統括官が同席しておりますので、必要であればお答えをさせていただきます。

2.質疑応答

(問)大臣、冒頭の発言ですけれども、1%程度の下方というのは、民間の見通しを参考にして言ったけれども、さらに民間は0.5%を下回っているというのが最新の動きであると。ということは、0.6%とか0.7%ぐらいに下がると今日午前中おっしゃいましたけれども、それについても訂正するという趣旨でおっしゃっているのですか。
 今日の朝の会見では、大臣は見通しについて聞かれて、0.6とか0.7%という言葉で見解を示されましたけれども、民間の最新の修正を受けて、今日の午前中の0.6とか0.7ということについても、訂正をすると、そういう趣旨でいいのですか。
(答)今朝は1%程度は下がるであろうというお話をしましたが、政府自体の見通しは年央に2次補正の結果、もろもろのその他の要因を加味して、政府の経済見通し自体は年央に改定をいたしますが、全体、民間のエコノミストの推計は1%以上のことを言っておられるということを念のために申し上げた次第です。
(問)年央の改定ですけれども、これは6月の上旬にGDPの改定値、2次速報ありますけれども、これも含めて見た上で判断するという基本的な考えでいいのですか。
(答)もちろんそれもありますし、2次補正と言われる復興予算の規模、財源、あるいはサプライチェーンの回復の速度、あるいは海外での風評のおさまり、原子力発電所の現在の状況からの進展、また色々なものの出荷停止等がありますが、そういうものがどういう状況になっていくかということを考えなければならないと思っております。
 次のQE自体は6月9日ですから、そういうものを全部要素を取り入れて、年央に改定するということで、6月の下旬ないしは7月に入る可能性があると思っております。
(問)もう一つ月例の基調判断ですけれども、個別では設備投資と住宅建設と企業収益という非常に重要な項目が下方修正になっていますけれども、にもかかわらず今月据え置きにしたという最大の理由は何でしょうか。
(齋藤統括官)御承知のように、先月、4月に、判断を下方修正していまして、「東日本大震災の影響により、このところ弱い動きとなっている」ということにしておりました。基本的にこのときには生産の動きなどを重視しておりましたけれども、それが依然として続いているということでありまして、消費とか、あるいは今回引き下げました設備投資というのは、その生産の動きの裏側になるわけです。需要サイドと供給サイドは表裏一体ですが、既に供給サイドのほうで評価しています。したがって基本的に景気全体の基調判断は変えていないということでございます。ただ、個別の項目としての設備投資につきましては、具体的な指標が出てきていて、ここは下方修正をするべきだということで修正をしたということでございます。
(問)それから、あともう1点、生産についてなのですけれども、今生産の停滞のネックになっているのがサプライチェーンの寸断ということなのですけれども、今回の月例では先行きについて、サプライチェーンの立て直しとともに生産が持ち直していくことが期待されるというふうにあるのですけれども、今足元サプライチェーンの復旧というのは企業努力によって、当初よりも早目に進んでいるという見方もあるのですが、生産の回復に向けたサプライチェーンの復旧について、今、大臣どのように見ていらっしゃいますか。
(答)これは今日も月例経済報告で例が説明されました。それは自動車部品をつくっているメーカー、いわゆるICをコントロールする部分ですけれども、そこがフル生産していた。だけれども、工場がやられたと、だから立ち上がらないというので、自社の別の工場で生産を立ち上げたと、それが少しずつ増え始めたと。
 それで、8月になると毀損した工場からも生産が始まって、10月にはそこの被害を受けた工場プラス自社の他の工場でつくった同じ部品ですけれども、それで従来と同じだけのレベルにいくということですから、立ち上がりは私は外国の方々が心配されたようなことではなくて、立ち上がりは早いと思います。
 それから、この部品の供給を受けて、例えば自動車をつくっているようなところも6月ごろから生産の増強が始まりまして、恐らく10月ぐらいには部品の問題からはフル生産が可能になると、こういう例もありますので、概して非常に遅れるのではないかというふうに心配していたものが現実にはそれぞれの企業、それぞれの経営者が頑張っておられる姿というのは、分かるのではないかと思っております。
(問)今回、基調判断自体は据え置きになりましたけれども、表現変更されたものが6つありまして、その表現変更はすべて持ち直していたとか、改善していたとか、そういったものが削除された形になりました。
 これは4月の策定時よりも、今の時点のほうが、基調判断自体は維持ですけれども、景気は少し厳しさを増してきたということになるのでしょうか。
(齋藤統括官)基調判断は先ほど申しましたし、今御指摘もありましたように変えておりません。表現変更したところは、4月の時点ではもともと「持ち直していたが」というもので、過去形で書いていました。それは3月の震災までの話ということで、書いていたわけですが、もう5月になりましたので、3月の震災までの話というのはあえて書く必要もないだろうということで落としたわけでございます。したがいまして、単純な表現変更でありまして、基本的な考え方は変えていないということでございます。
(問)大臣にお伺いしたいのですけれども、先行きちょっとこれから先どういうふうにごらんになられているのか、年末ぐらいにかけての見通しを教えていただきたいというのが1つと、特に今回の月例で原発の事故についてリスク要因として新たに加えられていますけれども、その理由をお聞かせいただけますでしょうか。
(答)原発の事故は、まず20キロ、30キロと避難地域が指定されて、現にそこで生活をし、経済活動をしていた方々の活動が止まってしまっているということがあります。
 それから、もう一つはほぼ直接的な被害に近いのですが、野菜、果物等の出荷停止、あるいは魚等の出荷停止、これはそれぞれ行政機関からの出荷停止命令、もう一つはそういう出荷停止命令はなかったのだけれども、どこどこ産のものについては、少し消費者が避けるようになったという、通常我々が言っている風評被害的なものが発生しているということ。
 それから、原子力の事故というのは、思わぬところに影響を与えていまして、日本に来ていただくはずの観光客が激減したとか、あるいは全く食料品とは関係ないような、工業製品等も外国に行くと大丈夫かなどと言われてますから、なかなか積み上げ計算できない部分もありますけれども、全体として原子力が放射線被害ということ以外の色々な経済や生活、そういうものの国民の活動を阻害している、それは経済にマイナスの影響があるだろうということでございます。
(問)今後なのですが、基本的には現状は大臣は景気後退には入っていないと、今後もそれは現状はそうだとしても、今後景気後退に入るリスクはないのかと。
 特に大臣は先ほどから潜在的な成長力とおっしゃっているのですが、生産供給制約がある以上は潜在成長率の引き下げ要因になると思うのですけれども、それが長引けば当然景気後退のおそれもあるかなと思うのですが、その辺のリスクはどのくらいの程度と見ていらっしゃるのか、教えてください。
(答)これは実体経済の問題というよりも、ほとんど日本人の心構えというか、精神の問題にかかわることではないかと思っております。今のところ、標語では「頑張ろう日本」と、こういう標語が出ておりますが、「頑張ろう日本」というのがちゃんと長期間続けば、私は日本経済を悲観的にとらえる必要はないと思っております。
(問)原子力災害、原発事故について聞きたいのですけれども、将来リスクとして原子力災害という言葉が入りましたけれども、なぜ「東京電力福島第一原子力発電所事故」という固有名詞が入らないのですか。
(答)原子力災害というのは定義するまでもなく、現在起きている福島の1号炉から4号炉のことを指していると考えております。
(問)それは分かりますけれども、それであれば東日本大震災も地震災害という一言でいいわけであって、こういう巨大な非常に大きなものというのは、固有名詞が重要だと思うのですね。そこをなぜやらないのかというのが1点と、あともう一回お願いしたいのですが、将来のリスクとして書いてありますけれども、民間のエコノミストなんかは常にいっぱい指摘をしていますけれども、大臣も言われていましたけれども、色々な現状の経済に与える影響があるわけですよね。
 あともう一つは特に個人消費に与える原発事故の影響というのは、相当のものがあると思うのですね。そういうものを現状には全く書いていないと、将来のリスクだけしか原発事故について取り上げていないと、これはなぜなのか、現状に与える影響というのは書くこともないほどスモールであるという認識なのか、2点ちょっとお聞かせください。
(答)消費マインドという言葉の中にそういうものも一括して含められていると思っております。
(問)後世の人が見たら、政府は恐らく、今の人が見てもそうですけれども、原発事故については、現状については大きな影響はないというふうにこれは読める文章であるし、日本政府のこれまでの一貫した対応を見ると、原発事故を過小評価したいというのがあって、月例経済報告もその一環として、その流れの中で書かれているのではないかという誤解も与えかねないと思うのですね。もうちょっとはっきり書くべきことは書く、災害と原子力発電事故は連動しているけれども、違うものだと思うのですね。この点いかがでしょうか。
(答)よく御質問の趣旨が分からないままお答えするのは申しわけないのですが、この原子力事故というのは既に広がっていまして、過小評価はできない種類のものだと思ってますから、この文章の書き手もそのような心理状況で書いたとはとても思っておりません。
(問)大臣、冒頭で当面弱い動きが続くが、その後持ち直していくことが期待されると。自動車は例えば10月ごろから生産がフル活動に戻っていくだろうというような見通しをされていましたけれども、日本全体を見たときに、ちょっと明るくなってきたなというのを一般の人たちが感じられるような時期というのは、いつごろになるとお考えでしょうか。
(答)それは心の持ち方の問題ですが、一番大事なのは福島が一応の落ち着きを取り戻すということが第一、それから第二は被災地の方々がいつまでも避難所で生活しているという状況、これが脱却できると、その2つがまず実現できるということが、実現しなければならないということが政治や日本の社会に課せられた課題であると思っております。
 経済自体は外国の文献を見ましても、日本の底力、反発力というものがあるというふうに書いてありますので、大いに激励されるわけで、我々としては海外の人たち、また国内の人たちの期待に応え得るような政策運営をやっていきたいと思っております。

(以上)