与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成23年5月19日

(平成23年5月19日(木) 9:10~9:34  於:合同庁舎第4号館4階共用408会議室)

1.発言要旨

 本日公表いたしました2011年1-3月期GDP速報では、まず第1に実質成長率が前期比マイナス0.9%、年率にいたしますとマイナス3.7%、第2に、名目成長率が前期比マイナス1.3%、年率マイナス5.2%となりました。内需寄与度はこのうちマイナス0.8%、外需寄与度はマイナス0.2%、それぞれ前期比でございます。実質成長率は2四半期連続のマイナスでございます。
 なお、2010年度の実質及び2010年度の実質GDP成長率はプラス2.3でございまして、このプラスは3年ぶりでございます。また、2%台の伸びは4年ぶりとなります。
 震災までは我が国の景気が持ち直しつつあったことを踏まえれば、今回のマイナス成長の大部分は震災の影響ととらえております。すなわち、供給制約やマインドの悪化等による消費・投資の減少、さらには石油製品等の在庫減少等によるGDPの押し下げでございます。
 先行きにつきましては、当面は弱い動きが続くと見込まれますけれども、供給制約の克服も着実に進んでおりまして、また自粛ムードの是正によるマインドの回復、補正予算による復興需要も今後顕在してまいります。世界需要が蒸発したリーマン危機のような状況とは全く異なると考えております。すなわち、日本経済の反発力は十分に強いと考えています。
 今後は、17日に閣議決定した政策推進指針に沿って日本経済の反発力を最大限活かす、また引き出す経済財政運営を図ってまいりたいと考えております。
 以上です。

2.質疑応答

(問)まず、今回の成長率、2四半期連続マイナス。大部分は震災の影響ということなんですが、このマイナス幅、マイナス0.9、年率3.7と、この幅を大臣は、予想以上に震災の影響は大きかったとごらんになっているんでしょうか。それとも小さかったとごらんになっているんでしょうか。
(答)マイナス要因は3月にほぼ集中しておりまして、予想以上に低かったと思っております。
(問)低かったとおっしゃるのは、例えば結果的に低くおさまったと。要因というのはどういうところに見ていらっしゃるでしょうか。
(答)もともとGDPで見ますと、被災地がGDPに寄与している割合というのは約4%程度であったわけです。それプラス、あの地域にはサプライチェーンの中でも非常に高度な電子部品等をつくっていた会社があって、そういうことの影響も大きかったと思いますけれども、全体としては4%の中の3分の1ぐらいが壊れてしまったのかなという考えです。
(問)あと、先行きですが、民間の予想では4-6月期もマイナスが予想されていまして、プラスに転換するのは7-9月期からではないかという見方が強まっていますが、大臣は、本格的なプラス成長にまた転じていくのはどの時期で、どれぐらいの勢いになりそうだとお考えでしょうか。
(答)年を通じての成長率は、震災の影響があって、従来目標としていたものが到達できるかどうかということは当然不安を持っておりますけれども、それでも年を通じての成長率、GDPはゼロより上の1%近いところに行くんではないかと期待をしております。
(問)当面弱い動きが続いた後に反発力を生かしていきたいということですけれども、リスク要因として最も懸念が強い点を挙げるとすると、どういったところでしょうか。
(答)反発力というのは、一つはやはり壊れた設備の点なんかを短期間でしっかり立て直そうという、いわば人間の意思というようなものが強く私は今回生きているんだろうと思っております。例えばルネサスというような重要な電子回路部品をつくっている会社も、7月にはフル操業になると考えていっておりますので、そういう意味では私は、1-3月は確かにマイナス、また4-6もマイナスを予想する方が多いと思いますけれども、日本経済が底抜けにならないような頑張りを日本人は見せると、そのように思っております。
(問)2点お伺いしたいんですけれども、1つは、今回の災害は、仮に阪神大震災のときのGDP統計を見ますと、その期間が含まれている四半期のGDPはマイナスにはなっていなくてプラスだったと思います。当時の災害よりも大きなインパクトが日本経済に与えられたということの理由というのは、どうお考えになっていらっしゃるか。これがまず1点目です。
(答)最大のものを幾つか挙げれば、やはり1つは現実に工場が壊れたと。それが単に製品をつくる工場ではなくて、自動車等のアセンブリーメーカーにとっては、もう欠かすことのできない重要な部分が欠けたということで、サプライチェーンが破壊されたというのは一番大きな理由の一つ。
 それからもう一つは、自粛ムードというものが非常に広がった。特に夜の会合等は、国民は喪に服する意味でやめられたということ。それから、一般的に消費者のマインドが冷えて、やはり非常に抑制的な消費行動をとった。それから、同じく経営者について言えば、企業について言えば、企業もやはりこの間、設備投資を行わなかった、あるいは抑制的にしてしまったというのが最大の、幾つか挙げれば要因だと思っております。
(問)すみません。2点目は、先ほどの質問のお答えになっていない部分があって、先ほどの質問のお答えになっていない部分で、今後の、先ほど強い回復力を日本経済は持つであろうとおっしゃったんですが、あえてそのシナリオがうまくいかないという可能性があるとすれば、どういうリスク要因が挙げられるのか。例えば電力不足ですね。国内の原発に対する不安感の高まりから、例えば原発の再立ち上げが難しくなって電力不足が長引くであるとか、そういったいろいろなリスク要因があると思うんですけれども、大臣は、この先のリスク要因、何点か挙げられるとすればどういう点があるんでしょうか。
(答)リスク要因は、1つは電力の供給であることは間違いありません。それから、もう一つは海外における日本の製品に対する風評、これもリスクの一つであると思っております。
 それから、やはり現実に進行しているリスクは、サプライチェーン、非常にある特定の部品を日本のメーカーに依存していていいのかと、そういう世界的に依存率の問題が議論されて、日本が大事なお客さんを失ってしまうかもしれないというリスク、そういうリスク。リスクを考えれば、まだまだ中東情勢の不安定さとか、いろいろあります。ありますが、そういうものを乗り切っていこうという経営者の意思、経済界の意思、国民も多分、いわゆる自粛の生活から自然な状態の消費マインドに戻ってきているんじゃないかと思っております。
 それから、もう一つの重要な考えなければいけないリスクは、立地を国内で行うか海外で行うかという選択を経営者がするという場面が出てきたとして、やはり国内は電力の問題とかいろいろあるから海外に生産拠点を移そうというようなことも、我々のGDPにはきいてくるリスクであると思っております。
(問)すみません。もう一つ追加なんですが、そういうリスクを避けるために政府がやれることという意味で言えば、長期的なものもあれば短期的なものもあるんですが、その辺についてどう考えているか。
 それからもう一つ、2次補正についてなんですけれども、今国会でやるべきだというのと、それから、一回閉じて、もう一回先でやればいいんじゃないかということを考えていらっしゃる方もいるようですけれども、大臣のお考えとして、経済対策的な要素も入れた2次補正にしたほうがいいとお考えなのか、その時期についてどうお考えになっていらっしゃるか教えてください。
(答)最初のほうの質問ですけれども、政府がやれることは限られております。おりますが、やはり震災地の復興を急ぐ、これが一番大事なことであり、また、とにかく東電の福島をみんなが収束に向かっているという確信を持てるという時期が早く到来することであります。
 それから、2次補正の問題ですけれども、当面数カ月間、必要なお金は1次補正で積んであります。用意してありますから、2次補正というのはどういうところから話が出てきているのかということは私は承知しておりませんので、お答えのしようがないです。
(問)すみません。今の補正予算に関連しての質問になってしまうんですけれども、一般論として今の大臣のお話をお伺いすると、現在では景気対策とか総需要対策が要るような局面ではないというお考えでいられるかどうかというところを、ちょっとお聞かせいただけますでしょうか。
(答)いわばこういうときの対策というのは、金融政策を活用しての対策。これは日本政策金融、あるいは政投銀等々のやはり公的な金融機関がどれほどできるのかと、信用保証制度をどうするのかという側面と、多分ご質問は、景気の仕組みに対して財政出動するのかどうかということだと思いますけれども、そういう必要は今のところないと思っています。
(問)今回の1-3月期のGDPの数字なんですが、市場が予想していた数字よりもさらに悪かったと思うんですけれども、予想以上に日本経済が今回の震災でダメージを受けた中で、大臣は日本銀行に対してどのような政策を期待されていますか。
(答)日本銀行は、日本銀行法で許されている最大限の政策をとっていて、日本銀行に注文するものは一つもありません。
(問)2期連続のマイナスということで、10-12を振り返ると、大臣がまさに麻生政権でとられた経済対策の期限が来たことによってマイナスに落ち込んだと。今回は震災の影響でまたマイナス幅が広がったということで、リーマンショックのときのようなことではないとおっしゃっていますけれども、客観的に見ると、やはりリーマンショックのときに受けたダメージから、日本経済が事実的な回復に向かえていないということではないかというふうにも分析できると思うんですが、大臣は先ほどから力強く反発するということをおっしゃっているんですが、改めて本当にここから自律的な経済回復に向かえるのか。向かえるとすれば、経営者の意思とか、そういう話ではなく、どういうところに要因があるのかということを改めてお聞きします。
(答)リーマンショックのときの日本経済に対する打撃は、外需が一瞬にして蒸発したという需要の側面からの景気後退。少し簡略化していますけれども、そういうふうに考えています。今回のGDPマイナスというのは、需要の蒸発ではなくて供給力が落ちた、あるいは消費者マインドが国内で冷え込んだということであると思っています。
(問)そうすると、確認なんですけれども、リーマンのときは、明らかにあそこが景気の潮目の転換点になったわけですけれども、今回の震災が景気の転換点になるというようなことは可能性はもう低いというふうに。
(答)何。
(問)景気の転換点。今、回復局面がこれによって消滅する、そういう転換点になるということはないということで。
(答)リーマンショックのときのことを思い出すと、輸出が突然半分になってしまったというような、普通の経済運営では吸収できない部分がありましたけれども、今回はそういう話ではないので、2期連続ということが景気の局面が変わったというふうに判断するには至らないと思っています。
(問)今の景気の局面が変わったとは判断に至らないということですが、通常、2四半期連続のマイナスだと欧米ではリセッションとか言われる可能性があるわけですけれども、しかも4-6もこれはマイナス、3期連続マイナスということになった場合、これは後にならないと景気の山谷はわからないんですけれども、景気後退のリスクというのはないのかどうかを改めてお伺いいたします。
(答)景気後退のリスクに対しては、いつもいつも高くているわけでして、まず3期ぐらいマイナスでびっくりしてはいけないということ。しかも景気循環的に余りコントロールできないマイナスではなくて、景気後退ではなくて、GDPがマイナスになったということの原因は非常にはっきりしているというのが、この局面での状況であって、外需が落ち込んだとか、そういう話ではない。一時的な減少と、そういうふうに明るく考えないといけないということです。

(以上)