与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成23年5月17日

(平成23年5月17日(火) 9:00~9:38  於:合同庁舎第4号館4階共用408会議室)

1.発言要旨

 本日の閣議で、政策推進指針を決定いただきました。この政策推進指針は、玄葉大臣と私が共同して取りまとめたものでございます。私の考えているポイントを3点申し上げたいと思います。
 第1に、今回の閣議決定により、復興財源の確保と社会保障・税一体改革と財政健全化戦略を一体的に検討していくことが必要である旨、合意されたと考えております。
 第2に、震災にかかわらず、成長を実現するために必要な改革は加速する旨が合意をされたと考えております。この合意に沿って、玄葉大臣が担当する新成長戦略実現会議においても、各種戦略の再設計、再強化が行われると理解をしております。
 第3に、それぞれの分野における検討結果を取りまとめる形で、本年半ば頃には、経済財政の展望と、点検を有するため中長期試算を行うこととなりました。
 以上でございます。
 閣議は案件どおりでございます。

2.質疑応答

(問)この政策推進指針なんですけれども、まず、この文書の位置付けを大臣はどのように重視されているかお伺いします。単なる閣議決定の書ではなくて、「日本の再生に向けて」という副題も付けられておりますので、例えば大臣が過去に手掛けられた骨太の方針であるとか、あれほど重要な位置付けになるのかどうか。その位置付けについてどう考えていらっしゃるかお願いします。
(答)実態の問題から言いますと、これらの作業は、震災前は一歩一歩やっていたわけですが、震災が非常に大きな影を落としまして、従来やってきた作業が中断したということですから、それをもう一度立ち上げてやっていくと、そういうことでございます。
(問)この政策推進指針の中身なんですが、1点重要なポイントだったTPPの交渉参加の判断時期については総合的に検討するということで、判断時期も示されていないままなんですが、大臣は、前回閣議後会見で数カ月の遅れは前提にした記述になると仰っていましたけれども、この判断時期を先送りしたという形になっているんですが、今年11月に交渉妥結を目指しているという事情もあり、そんなに時間的余裕はないと思うんですけれども、その判断時期についてはどうでしょうか。
(答)したがいまして、TPPについては、まず大前提として、昨年11月行った閣議決定の路線は一つもゆるがせにしていないということです。ただし、6月といっても来月の話なので、色々なことが重なっていますので、6月には出来ないだろうと。しかし、その後数カ月以内に、こういうことも決めていかなければいけないということが書いてあるわけでございますが、この紙はいずれも日本が取り組んでいる政策努力、例えばG7、G8に行った場合に、総理がどういう取り組みをしているのだという話を聞かれたとき、ちゃんと閣議決定のある政策文書というものが、やはり菅総理の発言される立場を強くするものと私は考えております。
(問)大臣、最初に仰った社会保障と税の一体改革と復興財源の確保というのを一体的にやっていくんだというのは、これはどこに書いてあるんですか。この3ページの経済財政の中長期の展望、ここについて言っていらっしゃるんですかね。
(答)「従前からの大きな課題であった財政・社会保障の持続性の確保、信認維持の必要性は、大震災によって更に高まっており、着実な推進、取組を進める。」と、こういうことでございます。
(問)あと農業のところですけれども、11月の閣議決定では6月に基本方針ということになっていましたけれども、これについては先送りとすることが書いてあるだけで、具体的に何も書いていないと、期限についても何も書いていないということであってみれば、ただ単に先送りしただけじゃないかという感じもするんですが、いかがですか。
(答)TPPは進めろと言う方と、これは駄目だと言う方、はっきり分かれておりまして、やはり駄目だと言う方に理由をよく聞いて、それに政策的な何か治癒の方法があるかどうかということをきちんと我々のほうで研究する必要がある。しかし、TPPをやるという菅総理の決意は変わっていないと。ただ、農水省も被災地回りで忙しいとか色々なことがありましたので、若干遅れると思いますけれども、11月には、日本以外のところで色々な話し合いも進むと思いますので、その時期までには日本の態度は決めなければいけないのだろうと思っております。
(問)全体として、リスタートというには、スケジュール観もあまり書かれていなくて具体性に乏しいような、内容が非常に乏しいような気もするんですが、その辺はいかがですか。
(答)それは読む方によって、多少そう思われるということもあり得ることだと思いますが、政府としては、この指針に沿って、持ち場、持ち場で全力を挙げていくということだと思っております。
(問)電力供給の問題にもかかわるのでちょっと聞きたいんですけれども、エネルギー戦略を見直すということで書いてあるんですけれども、総理は、2030年までに原発を5割に引き上げるとしていた従来のエネルギー計画は白紙に戻すというようなことを会見で仰っていたわけなんですけれども、この指針は、7月までにまた全体像を取りまとめるということなんですが、その時点で原発に代わる新エネルギーの比率であるとか、そういう具体的なところまで示すべきとお考えか、もしくはもう少し長く時間をかけて検討してもいいとお考えか、大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。
(答)日本の発電というのは、水力、火力に初期の段階はずっと頼ってきて、その後、石炭を燃やす大型の火力、あるいは原子力と。この中で、水力はもう開発地点がない。開発地点があっても非常に小規模な、経済性が全くない火力発電所だと。石油、天然ガスについては供給の安定について、やはり一抹の不安がある。そういう中で、原子力は燃料費も安いし、日本の電力の中枢を占めるに至るだろうと思われてきたわけですが、それは現に建設済みの発電所をどう動かしていくのかということは、一つ政府としての方針を決めなければいけないと思っております。新規の計画、あるいは用地が手配済みのところが幾つかありますけれども、この人たちも慎重に物事を進めていくのだろうと思っております。
 新しいエネルギー供給構造を論じるときに、風力、太陽熱等々、太陽以来のエネルギーが論じられますけれども、そのほかに例えば地熱発電等もありますけれども、この新しいエネルギーというものが、どれほどの容量のものを日本国民の生活、日本の経済に供給し得るかというのは、国土の広さ等からいって一定の限界があるということは計算しなくても分かることですが、しかし新築住宅とか、あるいは古い住宅でも、太陽パネルを設置するというのは有効な方法であると思いますし、色々な家電製品が今は省電力設計になっていますけれども、熱を発する照明なんかも、段々段々LEDなどに置き換えられていくと私は思っております。
(問)エネルギーの関連で一つと、あと別件でもう一つなんですが、エネルギーの関連ですと、新成長戦略実現会議のほうで革新的エネルギー戦略を検討するということになっていると思うんですが、総理が白紙に戻すと仰ったエネルギー基本計画は、エネルギー基本法で経済産業大臣が所管すると、産構審のエネルギー基本計画部会でしたか、そちらのほうで審議するということが法律事項としてまとめられていると思うんですが、この紙を読んで、そのエネルギー基本計画を経済産業省が所管するというところをもう引きはがしてしまって、国家戦略としてエネルギーを論じるんだというふうに舵を切ったとも読めるんですが、そういうことなんでしょうか。
(答)資源エネルギー庁という、色々な知識や経験を持っている役所があるわけですから、やはり国内に来たエネルギー資源をどう配分するかという、そういう視点での政策も必要ですが、そもそもそういう資源をどこから持ってくるのかと、持ってくるためには、どういう世界経済の雰囲気、相手国との関係等々、非常に重要な国家戦略の部分が含まれておりまして。例えば中国の場合ですと、潰れましたけれども、アメリカでユノカルというのを買おうなどという試みをしたと、あるいは有り余るキャッシュで色々なところの資源開発を手伝っているという、そういうこともありますから。残念ながら日本は石油公団というのを潰ししまって、そういう政府としての、例えば石油の開発機能というのはなくなってしまったという、そういう非常に不幸な状況にあります。
 しかし、いずれにしても時代は、化石燃料の時代をまだ脱却していない。補完的に入ってきた原子力は、今回の件で計画推進というのは相当遅れる可能性がある。いわゆる再生可能なエネルギーというのは太陽エネルギーのことですけれども、これも最近は効率性が高くなってきたとはいえ、まだまだ不十分であると思いますので、新エネルギー政策を論じるときには、省エネをどうするかということと一体的に議論をされ、また諸外国との安定的な供給の約束、友好的かつ安定的な外交関係をどう維持するかというような、色々な問題が全部出てくるのではないかと思っております。
(問)もう一点、それと別件なんですが、経済成長率というか、成長力の問題なんですけれども、今回の震災で相当日本の潜在成長力にダメージを受けたと、これがそのまま回復しないんじゃないかという悲観的な見方もあるんですが、この紙の中では、回復を目指すと書いてありますけれども、明示的にはどの程度を目指すというのはないんですけれども、震災前を目指すのか、あるいは日本復興という意味から震災前以上の成長力を政府として目指していくのか、どういうお立場なんでしょうか。
(答)サプライチェーンは、猛烈な勢いで操業を開始しております。7割近くが操業可能になっています。あと3割のところを夏場から秋にかけて回復させれば、そういう意味での大事な部品等の供給は、世界に向かっても国内需要に向かっても供給が可能になるという状態は秋にもやってまいります。
(問)一つ、最後に「本指針に従って、今後、云々かんぬんで、年央に、政策推進の全体像を取りまとめ、公表する。」というふうになっていますけれども、これは今年の6月ぐらいに各分野で結論を出すと、そういう意味で考えていいんですか。
(答)そのとおりです。
(問)あと、革新的エネルギー環境戦略というのがありますけれども、これはエネルギー全体にかかわる政策のことを言っているんですか。それとも太陽光だとかそういう先行的なエネルギー特化したような話なんですか。
(答)いや、多分、石油、天然ガス、石炭、プラス原子力、プラス太陽エネルギーすなわち太陽パネル、風車、あるいはオイルシェールまで行くかもしれませんし、将来の話としてメタンハイドレードの開発ということもいくかもしれない。色々なものを全部きちんと見直して、絵空事にならないようにするということだと思います。
(問)もう5月の半ばに来ているわけですけれども、僅か1カ月ちょっとで大きな宿題を急に出せと、書けと言われても本当に出来るのかという、拙速に過ぎないかという気もするんですが、もう少し時間が普通はかかるものではないんですか。
(答)拙速というのは、頭を使わないで急いでやるという話で、これは頭を使って急いでやるという話ですから、また従来からも勉強してきた分野ですから、拙速には当たらないと私は思っています。
(問)先ほどの成長の質問と重なりますけれども、文章の中では「中長期的に従来の想定と同程度の経済成長を実現することを目指し」とありますが、これは新成長戦略の中で指摘していた2020年度までの実質2%というものを踏襲するという理解でよろしいんでしょうか。
(答)そうですが、そのためには相当な努力を傾注しなければいけないという意味も込められております。
(問)話が全然違いますが、IMFの専務理事が逮捕されたということなんですけれども、これによって欧州財政危機の対応が遅れたりするのではないかなという指摘は出来ると思いますし、その上に、IMFの専務理事の人事の決まり方を、改革もしくは変えたほうがいいのではないかという指摘も出来ると思うんですが、この二つについてどういうお考えでしょうか。
(答)IMFの役割というのは、専務理事が誰であろうとも、IMFが持っている使命というのは決まっているわけでございます。最近の事例ではIMFと欧州中央銀行が協力してギリシャを助けたとか、色々なことがありますが、ああいう個人的な事件でございますから、IMFは従来の路線で困っている国を助けるという仕事は順調に進んでいくと思います。
(問)もう先週の話になってしまいますが、東電の賠償スキームというのが決定されたかと思うんですが、この中で一つ争点になっていた原賠法の3条但し書きについて様々な議論がございましたけれども、最終的にそれは東電の免責は認めないという形でスキームが出来上がっているかと思うんですけれども、これに対する大臣の評価と、今後電力料金への負担の転嫁ということについて、政府としてはこれまでの国会答弁なんかを見ておりますと、かかっていかない方向でやるというようなことを言明されておられますけれども、大臣としてはどう御覧になっているかお聞かせください。
(答)一応このスキームは、3条但し書きは適用しない。それは、実はよく見ると、きちんとした法律的な説明は国会答弁以外ではなされていないという意味で、ある種の弱さを法解釈としては持っていると思います。最高裁に行かないと物が決まらないというほど微妙な判断が多分あるのでしょう。しかし、賠償をなるべく早くやらなければいけないというケースに直面して、東電も色々言いたいことがあっただろうけれども、それをぐっとのみ込んで、政府の解釈に従ったというのが今回のスキームだと思います。ただし、このスキームはおかしいということを利害関係人から裁判所に言ってくる可能性は、それは当然のこととして残る。それはもうはるか先の話で、賠償のほうが、やっぱり現に困っている人をどう助けるかと、このことが優先されて、ああいう法解釈になったと思っています。
 ただし、技術的には事故調査委員会できちんとした事故の調査をやらなければいけない。それは遡って、福島1号炉を認可した時期における地質学的、地震学的な見解、ここ数年における地質学的、地震学的な考え、そういうものを全部取り入れた判断というものが事故調査委員会で行われるでありましょうから、人類として予見し得た災害なのかどうかということは、そのときまで待たないと分からないということです。
(問)それに関連して一つ、大臣はこれまで政府内で、その3条の但し書きを適用すべきであるという主張をされたことはあるんですか。
(答)当然あります。
(問)それについてはどういう議論が行われて、最終的に今の形になったということなるんですか。
(答)但し書きの不適用を主張した論拠というのは、一つは、但し書きを使うと、法律的には法の第17条に飛んでしまうと。そこでは救助とか援助という、いわゆる賠償の話が表現として非常に薄くなると。だから、法16条でやったほうが、あそこには政府が原子力事業者に対してああいう支援も出来る、こういう支援も出来るということ、そういう議論が一つあって、もう一つの議論は、そもそも立法の過程で、加藤一郎さんとか我妻栄さんとかが証言している証言を引用して解釈しているということです。だからあの3条の後段が、この世の現実のことを語っている条文なのか、あるいはサイエンスフィクションとかそういう空想、想像の世界を語っているのかというのは、これから議論がなされると思います。
 ただし、この件についての私の見解は、法律である以上、現実の世界を語っているというのが当たり前のことで、絶対起きないことをあそこで書いてあるということは、論理的にはおかしいと思っております。しかし、被害者の救済を急いでやらなければいけないということであったので、やむを得ざる解釈だなというので一応合意したわけです。
(問)考え方としては、電力会社が対策をつくって、政府も安全をチェックして、その限りで両者がお互いにきちんと行われていれば、想定を上回るような災害が起こった場合は、やはり異常に巨大な災害というふうにみなすことが出来るというのが、基本的な大臣のお考えというふうに考えていいんですか。
(答)異常な災害というのは、災害があったときに、災害というすべての集合をとった場合、考えられる、経験のある災害というのは、その全体集合から抜けるわけです。残りが異常な、強力なという集合部分なのですけれども、通常考える災害には安全率を掛けて、少し異常な災害のほうに枠を広げているわけです。その場合に、原子力事業者としては一体何に頼ったらいいのかと。自分たちも地質学者などの意見も聞くでしょうし、地震学者の意見も聞くのだろうけれども、最終的には国の安全審査に依拠をするということが、彼らの出来る最大、最善のことだというわけです。ですから、国が言った最大、最善をやっても、なおかつ十分でなかったと言われても、東電は答弁しようがないということだろうと思います。
(問)ということは、いわゆる安全であると保障をした国の責任だということになりますよね。東電としてはそう言われても困るということであってみれば、結局、東電の対策が安全であるというお墨付きを与えた国の責任が今度は問われるという考え方になるわけですよね。
(答)原子力行政は、こんな事故が起きても起きなくても国の責任でやっているということは当たり前のことであって、すべての許認可については国の責任が生ずるというのは通常のことだと思います。
 ただし今回は、私も私の考えはあったのですが、議論を長引かせて被災者の救済が大幅に遅れるというのは、やはり政府としてやってはいけないということで、皆さんの考え方を受容したわけでございます。

(以上)