与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成23年5月13日

(平成23年5月13日(金) 9:07~9:29  於:合同庁舎第4号館4階共用408会議室)

1.発言要旨

 閣議、案件どおりでございまして、閣僚懇も特段変わったこと、御報告すべきことはないと思われます。
 ただ、玄葉大臣と、また私がお手伝いしている政策推進指針案は、前文のところを少し直してほしいという御意見がありましたので、玄葉大臣、そして私もお手伝いをして、文章をもう少し短くしようということになりました。以上です。

2.質疑応答

(問)今日閣僚懇で、原発事故の補償問題に関するスキームとか基本的な方針というのは話し合われたんでしょうか。
(答)昨日閣僚懇をやって十分話し合ったのですが、民主党の中の議論がその時間までに終わっていませんでした。したがって、それを待ってやることにしまして、今朝の閣僚懇で関係閣僚としてこれを了承したということです。
(問)1つ確認ですけれども、今回の政府の原発の補償問題については、今回の事故というのは異常に巨大な天災地変ではないということで、原則は東電の無限責任を負うというスキームというか、基本的考え方でいっているということでいいんでしょうか。
(答)そこのところは色々な説がありましたが、今回の事故は但し書きには当たらないということを前提にすべてつくられております。
(問)あと、その絡みで言うと、そういうことではないということであるとすると、東電の対策に甘さがあったのではないかとか、その対策を国がチェックしているわけであって、国のチェックが甘かったんではないかと、国の過失もあるのではないかという部分も想定されるだろうと思うんですけれども、あと株主の責任ですね。これは減資という形で株主の責任というのが問われなければいけないという考え方もありますし、銀行の貸し手の責任、これもやはり債権放棄という形でやらなければいけないんじゃないかという考え方もあると思うんですけれども、こういう主要な構成者がきちんと責任を負うというスキームに、今日閣僚懇で話し合われた内容というのはなっているんでしょうか。
(答)文章が発表されて、それを詳しく読んでいただきますと、今お話しになったいずれの点も考え方が述べられています。
 まず、株主は、いわば自分の持っている株のダイリューションという希薄化が生ずるわけですから、そういう点では株主としては一定の犠牲を払うと。それから、東電は金融機関に協力を求めると。その結果を政府に報告すると書いてありますから、金融機関にも一応協力を求めるということになっております。
(問)政府の過失責任というのはどうなんですか。
(答)原子力安全審査のときというのは、そのときに入手可能な最善、最良の知識、知見をもって安全審査をしているので、そういう意味では、いわゆる民法上の瑕疵というのは東電にも政府にもないと考えているのが、このスキームでございます。但し原賠法上は、過失があろうとなかろうと、ある例外的な場合を除いて責任が原子力事業者に集中するような仕組み。しかも過失があろうともなかろうとも賠償責任が集中するということで、サードパーティーライアビリティー、第三者賠償に関しては、今回の措置が被災者をきちんと救済するという意味ではよく出来たスキームだと私は思っております。
(問)今回の事故をとらえて、東電にも何の過失もなく、政府にも何の過失もないというような考え方というのは成り立つんですか。それだけ最善の知見で東電と国が対策を立てたにもかかわらず、それが破られたということであれば、やはりこれは異常に巨大な天災地変だったということになるんじゃないんですか。それが成り立たないというのであれば、東電にも政府にも民法上の責任はないという考え方で整理するというのは問題はないんですか。
(答)この原賠法というのは民法の特別法でありまして、今回発生している損害賠償責任というのは、いわば民法の損害賠償責任であるというふうに考えております。そこで、これらの問題は、事故調査委員会がきちんと出来て、この福島の原発を認可した経緯、あるいは地震、津波等に対する評価、これがどうであったか等々の安全審査のプロセスが明らかにされ、そのときの根拠となった科学的な知見というものはどうであったかというようなこと、事実関係をきちんと明らかにした上で、物事がもう一歩前進して考えられるのではないかと思っております。
(問)政策推進の全体指針案なんですが、前回の閣議後会見でも今週末の閣議決定を目指したいというふうに仰っていたかと思うんですが、先ほどの大臣のお話ですと、ちょっと文章を短くするということなんですが、具体的にはどういう箇所で修文が必要になっているんでしょうか。
(答)結局、今までやってきた色々な政策を再スタートさせようというので、あまり前文などをしつこく書かないで、さらっと再スタートというニュアンスのほうがいいのではないかということだろうと思います。玄葉さんと、それでは前文のところはもっと簡略にしようというふうに閣僚懇の後話しましたので、そこだけ直せばいいのではないかと思います。
(問)その中身について、特にTPPの問題をめぐっては経産省とか農水省の調整が難しいとされていますが、その点について修文が遅れていると、そういうことではないんでしょうか。
(答)ではありません。結局、昨年の11月の閣議決定は、大事な通商交渉をやると、それからTPPについても時期を見て参加するための情報収集とか交渉とかということをうたっている閣議決定です。ただ、総理が所信表明の中で、6月には交渉に参加するかどうかを意思決定したいというふうに所信表明で仰っていたのですが、やはり震災の影響は若干あって、やはり少し、それはやらないというのではなくて、やるとしてもちょっと、数カ月間の遅れが出るのだろうということを前提に文章が書かれておりまして、文章全体としては11月の閣議決定はそのまま維持すると、そういう前提で書かれております。
(問)あと、電力需給の関係で、今日対策本部で、夏の使用電力について15%カットということを決定されたかと思うんですが、改めまして、この夏の電力需給の状況と、今後、7-9月期から年度後半にかけて日本経済に与える影響というのは、どのように今とらえていらっしゃるでしょうか。
(答)実は15%というと第一印象が、電力全体の使用量を15%カットするというイメージがどうしてもわいてくるのですが、これはピーク時の電力を15%カットするということであると同時に、経産省は丹念に業種ごとの事情を聞いておりまして、ピーク時に15%電力を落とすと全体の生産工程がぐしゃぐしゃになるというようなケースでは、15%を求めないケースも出てまいりますので、日本の生産活動には影響なしとは言いませんけれども、大きな影響があるということは考えづらいような方策を経産省はとったと私は思っております。
(問)昨日、景気ウオッチャー調査が発表されまして、3月のときは過去最大の下落だったんですが、4月の景気ウオッチャーですと、0.6ポイント現状判断DIが改善して、先行きのDIは過去最大の上昇幅となって、かなり景況感は水準は低いながらも改善してきているかと思うんですけれども、現在の消費マインドを含めた景況感について、どう捉えていらっしゃいますか。
(答)震災の直後は、やはり国民は被災地に対する思いとか哀悼の気持ちがあって、どうしても自己抑制的な行動をとられたと私は思っております。それから、やはりサプライチェーンというものが初めて壊れたという経験をしましたので、生産活動も落ちた、消費者マインドも落ちたということですけれども、自粛はもう、自粛すると日本経済がいわば収縮するということは、国民の皆様方もよくわかっていらして、徐々に今までどおりの普段の生活に戻りつつあると思います。
 ただし、その中では、どの家庭もどの事業所も、やはり節電ということは皆まだわかっていて、どこの家庭でも使っていない部屋の電気は消すとか、あるいはビルですと廊下の電気は消しているとか、そういう電力に関しては国民の自主的な御判断がまだ続いていると思っております。
(問)先ほど大臣、原発の賠償で、原発事故で過失責任はないと仰っていましたが、今回のこの事故について、国の責任についてどのようにお考えか、改めてお願い出来ますでしょうか。
(答)国の責任というのは、1つは非常に抽象的なものでして、いわば原子力政策そのものを推進してきたという、そういうオーバーオールのやはり責任はある。原子力事業者が勝手に原子力をやっていたわけではなくて、国策として、また日本のエネルギー政策としてやってきた、それ自体は私は国の責任であると思っております。
 安全審査とか、色々な検査とか、国が基準を決めてやっているわけですから、原子力行政そのものが、その都度最善の知識と知見に基づいてやられていたかどうか、こういうことはやはり事故調査委員会できちんと御判定をいただく必要があると私は思っております。
(問)また民主党側は、今回の賠償について国が肩代わり出来るようにする仕組みをつくるべきだとも主張していますが、この考え方について大臣、どのようにお考えですか。
(答)結局は誰かが払わなければいけないという話で、被害者は現におられるわけですから、国が払うか東電が払うか一緒に払うかと、それは被害者のほうにとってみれば、誰かが損害を補填してくれるのでしょうねと、そういう社会的構図になっているのだろうと思います。そういう中で、一応原賠法の3条で東電が無過失責任を負って、これに対して原賠法16条に基づいて政府が援助するということは、法律的ないわば義務であり、原賠法の精神ですから、政府が出来る限りの援助をする。それは、1つはやはり電気事業者として電力の供給義務を続けられるという側面と、それから現に存在する被害者に適正な賠償補償をするという、この2点。それから、東電という会社は1社しかありませんから、東電をなくしても、また別の東電が必要であるわけですから、現にある東電を生かして電力供給をやってもらうと、そういうスキームだというふうに私は理解しております。
(問)政策推進のための全体指針なんですが、そうすると、今日の段階ではもう前文の修正というところだけで、TPPについては去年の閣議決定を踏まえて、但し、この6月に方針を示すというところの判断は先送りするという認識では一致しているということでよろしいでしょうか。
(答)多分そういう理解でいいのではないかと思います。
(問)あともう一点、この決定なんですが、これは週明けの火曜日の閣議で決定することを目指すという形でよろしいでしょうか。
(答)今日から玄葉さんと前文の修正をやって、さらっとしたものにして、それで、そういう注文があった方々等に少し御説明をして、来週の早い段階で閣議決定したいと思っております。

(以上)