与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成23年4月28日

(平成23年4月28日(木) 9:00~9:25  於:合同庁舎第4号館4階共用408会議室)

1.発言要旨

 まず、閣議に先立ちまして開かれました経済情勢に関する検討会合について、ポイントを御報告申し上げます。
 出席は、総理、官房長官、財務大臣、経済産業大臣、国家戦略担当大臣、金融大臣と私、日銀総裁がオブザーバーで出席をされておりました。
 事務方より、先週金曜日に総理から取りまとめの御指示のあった、政策推進のための全体指針の骨子案について説明があり、この説明について出席閣僚等の間で議論をいたしました。
 その議論の幾つかを御紹介しますと、野田財務大臣からは、あらゆる経済活動の基礎基盤は信認。市場は高い関心を持っている。震災の後だからこそ信認が大事。財政運営戦略の年央までの決定や、社会保障・税一体改革について6月に成案を得るなど、スケジュール感をしっかり守って仕事をしていくことが信認に繋がる。
 仙谷副長官。エネルギーの信認も大事。原子力について、政治の意思が重要。再生エネルギーや蓄電池、分散電源など新しい市場に資金と投資を回すことが日本経済にとって重要。現時点ですぐに始めるべき話。雇用については、公的団体による直接の雇い入れが重要。がれき処理から始めて、新しい第1次産業での雇い入れなど、大胆な資金投入をすべき。戦後の失業対策事業の失敗に懲りて、政府の直接雇い入れには消極的だったが、今回は工夫した直接雇い入れを検討したらどうか。また、国内における巨額の余剰資金を、復興やエネルギー市場に回す仕組みが必要。政府が音頭をとってファンドをつくったらどうか。
 自見金融大臣。二重債務の問題、国土交通省と財務省が協力して、被災者の住宅ローンについて無利子据え置きの制度をつくったので、これを組み合わせて二重債務問題に対応。民間金融機関をケースバイケースでフル活用していくことが大事。郵便局は民間活力を使い、絆をつくる要。三事業一体化が大事だ。
 玄葉大臣。成長戦略の再設計の最大のポイントは、エネルギー、環境戦略の組み直し、巨大リスクに耐える構造を進めることが重要である。経済連携、農業については、農水、外務両大臣とよく相談してまとめていきたい。被災した農林漁業者の心情に配慮しつつ、同時に高いレベルのEPAという基本的理念は堅持する。こうした考え方で、段取りを組み直すことが大事。本日の意見を踏まえて調整していく。
 総理からの御意見は、皆様お聞きになったとおりでございます。
 総理からの御指示に基づきまして、連休明けの取りまとめに向けて、玄葉大臣と共同して、政策推進のための全体指針の作業を進めてまいりたいと思っております。
 閣議は案件どおりでございましたが、各省から色々な統計が出てまいりましたので、まとめて皆様方に御報告申し上げます。
 本日公表された3月分の指標、鉱工業生産については、前月比マイナス15.3%と、5カ月ぶりの減少でございます。
 消費については、前月比2.3%減と2カ月連続の減少になっています。
 小売の販売額を見ますと、7.8%減と4カ月ぶりの減少でございます。
 雇用については、完全失業率が4.6%と先月から横ばい。有効求人倍率は0.63倍と、先月より、僅かでありますけれども、0.01ポイント上昇しております。
 なお、労働力調査は、岩手県、宮城県、福島県を除く全国の結果を公表いたしました。
 職業安定業務統計は、震災の影響に特段の措置なく公表しております。
 物価については、消費者物価、コアコアは前月比で横ばい、前年比は0.4%減となり、緩やかな下落傾向が続いております。これらの結果は、震災の影響により、我が国の経済が弱い動きとなったことを確認するものであり、我が国の景気動向については引き続き十分に注意してまいりたいと思います。
 以上です。

2.質疑応答

(問)今、大臣からもお話がありましたけれども、特に鉱工業生産が15%以上の落ち込みということで、過去最高ということになっていますけれども、この落ち込みについてどういうふうにお考えになっていますか。
(答)リーマンのときは、多分7~8%だったと思いますので、それの倍になっていますので、相当衝撃的な数字であると思います。これは、リーマンのときとはよってきたところは違っていると思います。リーマンのときは、いわば金融ショックによる落ち込みであり、今回は実際に物を生産している拠点、あるいは部品を生産している拠点が震災の直撃を受け、全体として日本経済が行っている生産活動に大きな影響を与えたというふうに思っておりますが、サプライチェーンの復活ぶりというのは、ある意味では各企業にとっても死活問題でありますし、日本経済全体にとっても死活問題でありますけれども、それらのサプライチェーンに携わっている方は、昼夜を問わず復旧に向けて全力を挙げておりますので、明確な時期は申し上げられませんけれども、我々が予想していたよりもはるかに早い段階でサプライチェーンは回復するものと、私は確信しております。
(問)家計調査だと、8.5%減ということで、これも過去最高の、最大の落ち込みということですけれども、消費についても相当震災の影響が出ていると思うのですが、これについてはいかがでしょうか。
(答)これは予想以上に、震災地で苦労しているのに、何か自分たちだけは楽をしているというのは嫌だという精神的なブレーキが働いて、非常に自粛ムードが全国的に広がっています。私の友達で、中小企業などを経営している人たちに聞きますと、売り上げが6割減とか、レストランをやっている人に聞くと、お客は平均2組だとか、やはり日本人がある種の弔意を示すためにそういう自粛行動に走ったのですが、これは当然のこととしても、やはり自粛の時期は終わって、普通の国民経済活動、生活行動、消費行動に戻っていただきたいと思っております。
 ただし、これは、節電だけは別の分野です。
(問)政策推進のための全体指針、これのテーマとする主な政策というのは、一体改革はそうなのでしょうけれども、あとエネルギーと環境政策を含めた成長戦略の見直しと、これとTPPの取り扱いと、大きく言うとそういうところでよろしいのでしょうか。
(答)全体は、これから各省と個別に話をして取りまとめをやっていくわけですけれども、すべてのテーマは、もう皆様方、いわば予備知識として持っておられることですけれども、震災が始まった瞬間に、すべてのそういうものが停止してしまったということで、やはり日本経済にとって、日本の国民生活にとって必要な政策課題はきちんとやるという再スタートを切ったということです。
 例えば、エネルギーの問題、環境の問題等は、「はい会議をやります。結論が出ます。」という簡単な問題でもありませんし、外国の情勢にもかかわってくる問題ですし、あるいは省エネ技術とか、省エネ投資とかということの問題も、当然出てまいりますが、連休明けまでには皆様方にもう少し詳しくお話し出来ると思います。
(問)連休明けの意味ですけれども、連休の最後の日曜日が終わった翌週の月曜日、10日以降というイメージでよいのですか。
(答)連休の谷間にやるようなことはしませんので。
(問)安心しました。
(答)御安心して計画を立ててください。
(問)別々に2点お伺いしたいので、1点ずつちょっとお伺いしたいのですが。
 今日、相当色々なものの数字が悪くなっているのですけれども、与党の中からなどで、震災復興に向けては、なお景気刺激的なマクロ経済政策をとらなければいけないと言っている方もいらっしゃるのですけれども、客観情勢を考えたときに、IIPの落ち込みは、生産設備そのものがダメージを受けているという話ですし、電力も相当制約されますし、簡単な景気刺激をとることが、今まで従来やってきたような総需要的なマクロ経済政策を継続してよいのかと単純に疑問に思うのですが、今、足元の経済政策をどういうふうに運営すべきというふうにお考えですか。
(答)非常に自民党的な意見で、そういうことを繰り返してきて財政がここまで来たわけですから、やはりもう少し経済の状況を見てから、そういうことは考えなければいけないので、落ち込んだからすぐ有効需要を財政によって発生させるという安易な考え方は持っておりません。日本の経済の実力は実力でしかないと。
(問)ちょうど今、そういうお言葉が出たのですけれども、日本経済の実力は実力でしかないという話ですけれども、今度の新しい指針の中で成長戦略が非常に重要なポイントになると思うのですが、恐らくこの震災で潜在成長力自体が落ち込んでいるのではないかということを指摘する声もあるのですけれども、成長戦略を練り直す上で、潜在成長力を引き上げていくために必要なものというのを、現時点で何か大臣はお考えでしょうか。
(答)説教めいたような答えはしたくないのですけれども、一番ベースにあるのは教育の問題。やはり一人一人の人間力というか、そういうものが上がってこないと、日本の場合は経済成長しない。やはりそういう意味では、日本の学校、小・中・高・大学の教育水準は、よく外国の教育水準と比べてみたらよいと思います。ただ入学させて、ただベルトコンベアのように社会に送り出していく教育、これはやはり一番考えなければいけないことで、この間、麻布中学、それからその後、慶應大学に行って講義したのですけれども、私が中学、高校、大学の人たちに言ったのは、あなた方が競争しているのは、そこらにいる自分の仲間ではないのだと。やはり、韓国で一生懸命勉強している人、中国で一生懸命勉強している人、東南アジアで一生懸命勉強している人、そういう人に負けないだけの勉強をしないと日本は支えられませんと、そういうことを申し上げて、ちょっと科学技術研究費を使ったから何とかというのではなくて、やはりその基礎の土台のところからきっちりやるということが、皆様方が高齢者になったときの日本の繁栄を支えるために、一番重要な要素だと思います。
(問)先ほどサプライチェーンについて、はるかに予想していたのよりも早い段階で回復するものと確信していると仰っていましたけれども、それは先ほど仰られた、色々な方が昼夜問わず一生懸命やっているということの他に、何か兆しというか、根拠というものをどういうふうに感じていらっしゃるのか教えてください。
(答)今、内閣府で集めている色々なデータとか、色々なお話とか、そういうようなものを総合すると、そういうことが想像されると。システマティックに調べたわけではありません。
(問)元々予想というのは、どのくらいだったのですか。
(答)相当長い期間、駄目なのではないかなと思っていました。ある企業で、部品が来なくなったと。それで調べると、またその下に部品工場があって、またその下にあってと、もうどうやって手をつけたらよいかわからないほど、最初の時期は混乱していましたけれども、その混乱の時期は終わったと思います。
(問)もう一点。先日、片山総務大臣が、復興財源にかかわる復興税の構想について、役人が根回ししているというようなことを会見で仰ったのですけれども、与謝野大臣としては、そういった御認識というのはおありでしょうか。また、違うのかどうかというところを、ちょっと教えてください。
(答)日本の国債は、90数%国内で消化されています。特に、個人というよりは、銀行、生保、郵政、かなり大きいところがずっと買っていて、1.2%でも買うという状況が続いていますけれども、ここで信認が大事、信認が大事と言うのは、やはり国債は出すのですけれども、それに対してちゃんと返すことも併せて考えているというふうに信じていただけるか、また信じていただけるだけのことを政府がやるかどうかということだと思います。
(問)先ほどの経済情勢の関係で、エネルギー政策のことでお聞きしますが、エネルギー基本計画で、2030年までに14基以上の原発、原発を地球温暖化対策も含めて14基以上が必要というのが民主党、閣議決定されていますが、それについても、どちらかというと、今回の原発事故を受けて、減らす方向での見直しというのも考える方向でしょうか。
(答)あまり事故が収束する前に色々なことを考えると、考える力が薄くなっていますから、物事が落ちついた段階で英知を集めてちゃんと考えられたらよいと私は思っています。火事場で物を決めてはいけない。
(問)直接の御所管ではないのですが、東京電力さんの賠償スキームのお話で、昨日、枝野官房長官が午前中の会見で、東京電力さんの賠償に上限を設けるということは考えていないというふうに明言されたのですけれども、一方で金融機関や債券市場などは、賠償に上限を設けないと債券市場は壊れてしまうとか、東京電力さんの社債が発行出来なくなるというような懸念もあるのですけれども、大臣の御所見がありましたら頂戴出来ればと思うのですけれども。
(答)昨日、中央防災会議というのがありまして、東大の名誉教授が、今回の地震、津波の規模、想定内か想定外かというお話を原理的にしてくださいました。これは、地震学、地球物理学から言って異常で、かつ巨大な天災ということは、その名誉教授のお話から、巨大という言葉も使っていましたし、全くの想定外だということを言っておられましたので、それを、法律を判断するときにどう考えるかという問題ではないかと思っています。それ以上はあまり考えていません。
(問)大臣、それはやはり、今回の地震というのは異常で巨大な天災であるという認識に立って考えるべきであるというふうに大臣はお思いなのですか。
(答)私は、実はあまり何も考えていなくて、昨日、中央防災会議に伺ったら、そういうふうに仰っていましたので、地震学から見ても、想定外、予想不可能な、なおかつ巨大なものであったという御説明があったということです。

(以上)