与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成23年3月23日

(平成23年3月23日(水) 15:06~15:36  於:合同庁舎第4号館4階共用408会議室)

1.発言要旨

 月例経済報告等に関する関係閣僚会議・震災対応特別会合の概要を御報告申し上げます。
 景気の基調判断は、「持ち直しに転じているが、自律性は弱く、東北地方太平洋沖地震の影響が懸念される。また、失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にある。」と表現変更いたしましたが、判断は維持をしております。
 これは、地震直前では、生産の復調傾向が明確になっていたものの、足元では地震の影響により、被災地域はもとより、それ以外の地域においても生産活動等の停滞が生じている現状を考慮したものでございます。
 先行きにつきましては、海外経済の改善等を背景に、景気の持ち直し傾向が続くことを期待しておりますが、一方で、地震の影響により生産活動等の停滞が広範囲にわたって長期化するおそれに十分留意する必要があります。また、金融資本市場の変動や原油価格上昇の影響、海外景気の動向等のリスク要因にも注意が必要であります。
 政策の基本的態度では、政府としては、今般の地震の影響等を十分注視して、国民生活及び経済活動の安定に総力を挙げて取り組むことなどを記述しております。
 なお、今回は、内閣府による地震のマクロ経済的影響の分析を報告するとともに、各大臣からも、地震による経済的な影響や被害の現状と当面の対応策等について御説明をいただきました。
 以上でございます。

2.質疑応答

(問)まず1点目、今のお話がありました各大臣から地震による経済的影響や被害の現状、当面の対応策というお話でありましたけれども、その中で何か特記すべき事柄についてありましたら教えていただけますでしょうか。
(答)十分、皆様方が知っていることでございます。
(問)あともう1点、この資料の中身については、先ほど事務方からレクをいただいたんですが、いろいろと民間も同様の資料などを公表している中で、あえて今この時期に、不確定要素もある中で、政府として、こうした試算を公表した意義とそのねらいについて、大臣のお考えをお聞かせいただけますか。
(答)通常ですと、非常にスタティックな経済報告をするところでございますが、むしろ、国民の関心、あるいは内閣の中の閣僚の方々も、一体、日本の経済はこれからどうなっていくのかということに、その関心があると考えて、地震の影響は経済的な側面でどう出てきているのかということを、とりあえず入手できる限りの資料に基づいて御提示申し上げたわけでございます。
 初期の段階における推定でございますから、ある一定の幅を持たざるを得ないと思いますけれども、これからある時期が来ましたら、復旧、復興ということに取り組まなければならないわけですから、あらかじめ一定の数字をもって、今回の地震の被害の規模について、皆さんに金額としてのイメージを持っていただくということを目標にいたしました。
(問)一つは、以前、大臣は9割以上の生産設備、生産力を日本は維持しているのだというふうにおっしゃっていましたが、そのイメージと今回の結果はどの程度そごがあるのかなしやというところを教えてください。
(答)一番大きい影響は、やはり電力供給の制約が生産現場を直撃しているということがあります。そのほか、サプライチェーンが意外なところでボトルネックになって、例えば自動車産業等は工場を停止せざるを得ない、あるいは、相当多数の方が原子力発電所の現場から避難をせざるを得ない状況になっているとか、あのとき申し上げましたこととは、やや違う状況が幾つかあると思います。
 しかし、この表の中にありますように、最終的なGDPに対して、どう影響があるかというのは、民間の予測、あるいは政府の予測とも、そう大きな隔たりがあるわけではないと思っております。
(問)この試算を見ると、サプライチェーンの件は数値的な影響が出ていますが、計画停電の影響については数字がないのと、それから原発事故の放射能の汚染の影響、それからひいては風評被害とか消費者のマインド、それから、もしかしたら国土の一部が使えなくなるかもしれないというリスク、そういったかなり重要なファクターについて、数字が出せない状況であると。ここの影響をどの程度見ているかということと、こういうものが出せない段階で数字を出されることのリスクもあったかと思うんですが、その辺についてお願いします。
(答)それらの問題については、全部気がついておりました。これはやはり阪神・淡路大震災と対比して、大きいか小さいかというところがポイントでありまして、やはり阪神・淡路大震災よりはストレートに比較すると、はるかに大きいものになると。そのほかに、今御指摘があったような消費者のマインドとか放射線の問題とか、サプライチェーンの問題とか、いろいろ各種の問題がありますが、中でも一番厄介なのは放射線による風評被害、あるいは心理的な問題、それからもう一つ、大きな問題は、電力不足が今後、生産現場にどのぐらいの打撃を与えるのかということです。
 これは、やっぱり日本はものづくりをやって、生活の糧を得ているという部分が非常に大きいわけですから、その点は、もう少し詳細に具体的に考えなきゃいけないと同時に、電力会社側の停電計画がどうなるのかと、あるいは電力側が民生用のものと、あるいは生産に使う電力と、どう区別して供給していくのかというような問題があって、今の5地区、あるいは25地区の計画停電というのが、日本の経済にとって最善のものかどうかというのは、少し検討を要するのではないかと私は思っております。
(問)今回のストックの被害が16兆円から25兆円という、非常に試算としては10兆円近く違うという、こういう試算を今の段階で本当に示す必要があったのかというのが一つと。これぐらい幅があると、大体20兆円ぐらいの規模に被害としてはなるのかなというふうに見られるんですけれども、それはどう考えているか。
 あと、この試算の中で再建シナリオを、今後3年間にストックの回復が100%行われるという前提で、最終的に成長率がプラスになるという試算をしていますけれども、阪神・淡路のときは都市型の災害であって、集中的に資本投下して復元するというインセンティブが強く働いたと思いますけれども、今回みたいに広域にわたって小都市とか集落がなくなっていると。こういうのなら、阪神・淡路のようなモデルを使って再建シナリオをやるというのは、ほとんど無責任に近い数字ではないかと。こんな再建シナリオをやるよりは、直接的な被害がどれぐらいあったのかというのを率直に、ストレートに書くべきであって、この再建シナリオを何でつくったのかという、そこを教えてください。
(答)もちろん、御要請があったような精度の高い試算ではありません。東北3県にありますストックの総額は、この資料の中にありますように175兆円でございますから、その重要な部分が被害に遭っていると。例えば漁港でいえば、全部が破壊されている。漁船でいえば、2万隻を超える漁船が使用不能になっている等々、ありとあらゆることを勘案して出した数字でして、目の子でやったわけではありません。
 再建計画は、神戸の場合は非常に地域が限られていました。ですが、それでも本格的に元どおりになるには5年近くかかっているわけでして、大急ぎでやっても相当な時間を要するということは、明白だろうと思っております。
 ただ、復旧・復興というのは、やっぱり哲学なしにはやってはいけないので、今度はどういうまちづくりをするのか、どういう防災対策をつくり上げていくのかという、やはり大きな青写真の中で、多分復興は論じられるべきだと、私は思っております。
(問)一つだけ。もしそうであるならば、具体的な復興計画がどういうコンセプトでやるかというのをわかっていないうちに、全額元どおりにするという再建シナリオをこういう形でつくるというのは、およそ現実的ではないし、かえってミスリードで、いわゆる復興予算の拡大に結びつくような形になる可能性があるんじゃないんですか。
(答)復興・復旧の予算というものは、公は公の施設の復興に使いますし、民間は民間で投資をしていかなきゃいけないわけです。
 阪神・淡路大震災のときは、被害はストックで10兆円、その他もろもろの間接被害はもう10兆円と推定されています。20兆ぐらいの損害だったろうと。しかし、予算としては、3年目が終わったところで3兆数千億円、締めて5兆円で一応、公の支出は終わっております。
 しかし、今回も、やはり被害の大きさというもののイメージを、まずつかむということが、これからやっていく仕事のためには大変大事なことですし、それだけではなくて、今日の報告は、それが日本のGDPにどのぐらいの影響を持つものかということは、やっぱり一定の推計をやるということが、政府として、私は責任ある態度であると思っております。
(問)関連すると思いますけれども、つまり今回のマクロの試算というのは、今後、復興の計画を立て予算をつくっていく上での参考の材料にすると、こういう理解でよろしいんでしょうか。
(答)復興は、実際、政府の予算を決めるときには、具体的なこの道路、この建物、この橋、この鉄道と、そういうことでやっていくわけでして、このマクロの数字そのままが適用されるわけではないということは、当然なことであります。
 ただ、一部で、日本経済が沈没するんではないかという御不安を持つ向きもありますので、GDPに対する実際の影響は、最善の情報と最善の知識をもってすれば、この程度の大きさの損失ですということを申し上げているわけです。
(問)ちょっと先ほどの質問と若干重なる部分があるんですけれども、放射能の汚染ですとか消費者マインドですとか、まだ今回の試算に考慮されていない部分というのを今後入れ込んで、改めて検討していった場合に、16兆円から25兆円という範囲内におさまるとお考えか、それともそれより大きくなる、あるいは小さくなるとお考えか、教えていただけますでしょうか。
(答)これは、ストックのロスを書いてあるので、フローの部分の話ではない。当然フローの部分では、国民の方々が消費行動を抑えるとか、そういうことは当然考え得るんですが、しばらく様子を見ないと、断定的には言えないという段階であると思います。
(問)GDPへの影響のイメージを伺いたいんですが、電力供給の制約の数字はちょっと簡単には出せないということと、あと放射能の話でなかなか影響があるんじゃないかという話をひっくるめて、プラスマイナスのイメージでいうと、例えば2011年度についてはGDPへの影響は、全体としてマイナスの可能性が高いけれども、2012年度以降はプラスが期待できるとか、そういったイメージを教えてください。
(答)イメージはここに、7ページのところに書いてある。資料行っていますか。
(問)資料はいただいていまして、電力のところを除くとGDPのプラスがこのぐらいというのは書いてあるんですが、電力の部分も含めて、要は全体としてプラスマイナスのイメージでいうと……。
(答)ですから、電力不足がどういうふうに生産活動に出てくるかと、あるいは電力不足がまた消費活動にどういう影響を与えるのかということは、まだ推計でもなかなか難しい状況です。
(問)幾つか前の質問の中で、例えば今回のマクロ試算は、今後復興の計画を立て予算をつくる上での参考材料にするというか、要するに、今回のこの試算は、結構目標にするというか、明る目の数字を出されたのかなという印象を受けたんですけれども、それと同様に、基調判断も、これはどう考えても「持ち直しに転じているが、自律性は弱く」ということで、基調判断を引き下げてもおかしくはないと思ったんですけれども、そういう意味で、あえて下げずに日本経済が沈没してはいないということをちゃんと出すために下げなかったですとか、そういうふうにしたということはないんでしょうか。
(答)いや、ですから、地震が起きる前の時点で切って判断をすれば、持ち直しという話だったんですけれども、当然、将来予測としては地震のことを、これを入れざるを得ないということです。
(問)先ほど質問のあった点で念のため確認ですけれども、ストックとフローで、要するに、今後の影響でストックは基本的に16から25兆円で、フローの部分については計画停電とか原発の話があって、変わるかもしれないというお話でしたけれども、本当にストックについても、この16から25兆円の間におさまるのか。要するに、一番懸念しているのはやっぱり福島原発であって、あそこの状況がどうなるかによっては、例えばもうそこの地域は住めないとかいうこともあるわけでしょうから、そういう部分をやると、ストックの部分もこれ以上にふえる可能性があるんではないかと、ちょっと懸念するんですが。
 それと、もう一つだけ。これを見直すとしたら、またいつごろ見直す予定があるのか、その点をお願いします。
(答)原発の事故が広がらないことを願っておりますけれども、万が一という場合のことは、それは大きなマイナス要素になることは間違いない。ただ、この種の統計というのは、具体的に復興が始まりませんと、また今は、人命とか救助とか、避難されている方への生活支援というのが主たるもので、村、町丸ごと消滅しているようなところをどう評価していくかとか、どうするのかということは、まだ考えられない段階、今のところは。
 ただ、何か100兆円も200兆円も大きなというものではなくて、このぐらいの幅の、多分ストックの被害だろうということを、ある種の物差しとして今回は掲載したわけです。
(問)次に見直す時期は、いつごろまた考えられているか。
(答)おいおい、皆様方に御報告できると思います。
(問)ちょっと思いつきなんですけれども、放射能の汚染による影響というのは、例えばチェルノブイリとか海外での放射能汚染による影響の試算とか、そういったものがもしあれば、試算に利用しようとかというのは考えられなかったんでしょうか。
(答)これは保安院、あるいは原子力安全委員会等が持っておられると思いますし、インターネットで「IAEA」を検索していただくと、そこに資料があるのではないかと思います。
(問)それを今回の試算に使われようということは考えられなかったでしょうか。
(答)今はまだ、やっていません。
(問)今後は、されると。
(答)それは、原発がこのままうまくおさまってくれるという前提条件ができるか、あるいはもうちょっと始末に時間がかかるかということによって、差が出てくるんだろうと思っています。
(問)大臣、冒頭のところで、冒頭というか、真ん中の質問で「計画停電が最善な方法かどうか検討を要する」とおっしゃられていましたけれども、要は、今のやり方の見直しなどを電力会社のほうに働きかける具体的なアクションを起こされる御予定があるのかということが1点と。
 あともう1点、今回の試算を受けて、総理から何か具体的な指示等があれば教えていただけますでしょうか。
(答)2点目は、ありません。
 1点目は、やっぱり工場によっては、3時間とまると前後で何時間もロスが出るとか、あるいは精密機械のメーカーだと、一度止めるとまた微調整に何日もかかるとかということがあって、結局は民生用、家庭で使っている電力というのが、おそらく一番この節約に関しては、弾力性を持っている電気であると私は思います。
 工場を動かしている電力というのは、実は弾力性というか、そういう状況変化に対する応答性というか、そういうものは非常に悪いわけです。ですから、3時間停電して3時間の生産ロスで済むかといえば、相当時間がロスができるということで、そういう意味では、日本経済を維持していくためには、この停電制度がベストなのかどうか、もうちょっと、ほかにやりようがあるのかどうかということは、物事がちょっと落ち着いた段階で、やっぱり電力会社にも経産省にも、考えていただかなきゃいけないことだと思っております。
(問)先ほどの質問とかなり絡むんですか、元どおりに戻ろうというインセンティブが放射能汚染等々でかなり薄いかもしれないと。そうなると、西日本へ移動するなら国内的な意味はあまり変わらないんですが、海外に出られたり、そういう可能性も、生産拠点を海外に移すとか、サプライチェーンの一部を担っている東北の工場の機能を海外に移すという動きが、もしくは首都圏から脱出しようという動きが加速すると、ここに書いてある実質GDP比の復興需要を大きく上回るマイナスのフローの影響が生じる可能性も十分あり得るのではないかというふうに予想ができるんですが、どうお考えになっていらっしゃいますか。
(答)そういう仮定が本当でしたら、今おっしゃるようなことが起こり得ると。ですけれども、まだ、その仮定は目に見えては来ないと思っています。

(以上)