与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成23年1月14日

(平成23年1月14日(金) 23:12~23:35  於:合同庁舎第4号館4階共用408会議室)

1.発言要旨

 内閣府特命大臣を拝命いたしました与謝野馨でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 私が担当する分野は、経済財政、プラス男女共同参画、少子化対策、プラス社会保障・税一体改革と4分野になりますが、関係者でよく相談しながら、一歩一歩、仕事を積み重ねてまいりたいと思っております。以上です。

2.質疑応答

(問)2年半ぶりの経済財政相への就任ということになると思うのですが、今回も景気認識をお伺いしたいと思っておりまして、海江田大臣は10月に足踏みという判断をされて、そのまま基本的には判断を維持している状態になっておりますが、大臣の現在の景気認識をお聞かせいただけますでしょうか。
(答)その海江田大臣の御判断は正しいと思いますけれども、我々が常に注視しなければならないのは、ヨーロッパの経済の状況、特にここにはソブリン・リスクがあるということ。それからアメリカの経済は上向きになっていると報ぜられていますけれども、失業率は依然高いという問題があります。その他の新興国の経済では、やはり各国中央銀行が金融を緩めたために流れ込んだ資金によって、ややバブルの状況もあるというふうに報ぜられておりますので、日本経済だけ見るのではなく、やはりアメリカ、欧州、新興国の経済というものをよく注視しながら、経済運営に努めていかなければならないと思っております。
(問)税制改革、とりわけ消費税についてなのですが、大臣は以前、著書や月刊誌等への寄稿で、2010年代半ばまでに消費税10%への引き上げが必要という言及をされたと思います。それからリーマン・ショックがあったり、大規模な財政出動があったり、現状、状況が変わっているとは思うのですが、今の段階で税率の適切な水準等、大臣の頭の中にあるのかどうかお聞かせいただけますでしょうか。
(答)税を論じるときには、国民の御理解をいただかなければならないと、これが大前提でありますけれども、一昨年、成立させた税法の104条には、税制改革の方向が税目ごとに書いてあるのと同時に、消費税を新たに税率アップをお願いするときには、社会保障を目的とした税源にすると。また、それについては区分経理をして明確にするということであります。
 ただ、用心深くいかなければならないのは、単純にこれだけ足りないからこれだけ税率だということではなくて、経済との関係、あるいは国民の理解との関係、こういうものを慎重に図りながら議論を進めていかなければならないと思っております。
(問)過去2回の経財相のときの違いを比べると、自民党時代のときは政調幹部と連携したり、政党の後ろ楯というものがあったと思うのですけれども、今回、いわゆる単身で閣僚になられて、与党の中でもやや大臣への就任の不満もある中で、どのように政府・与党への連携を図るかというお考えをお聞かせください。
(答)それは、閣内に民主党の政調会長がおられますから、玄葉大臣を窓口にし、玄葉大臣とよく御相談しながら物事を進めていくということが大事であると思っております。
(問)2点質問させてもらいます。
 一つは社会保障費のあり方です。民主党政権は、基本的には社会保障費の自然増を全額認めるというのが方針になっています。この方針について、大臣は社会保障改革を考える上でどのようにお考えになっていらっしゃるかということが1点。
 もう一つは、前の経済財政相をされた大臣のときと違いまして、現在、諮問会議が休眠状態になっておりますが、これをどうお考えになっているか。現状の考えで構わないので、これを使うべきであろうとか、その辺のお考えがあればお聞かせください。
(答)まず1点目ですけれども、社会保障費の中のいたずらな無駄というものは、努めて排除しなければならないということは当然であるにしても、社会保障費を無理に削るということは、現行の制度の下では、制度を運用していく上ではできないと思っております。
 それから、2番目の話ですけれども、これは一般論で申し上げますと、菅総理のリーダーシップをどの場面で発揮していただくかということに関わってくる問題でして、どういう仕組みが最も適切なのかということは、総理や官房長官とも御相談しながらやってまいりたいと思っております。
(問)2点お伺いいたします。今の質問とも関連するのですが、野田大臣や細川厚労大臣などと、どのように今後、社会保障・税一体改革担当相として役割分担をしていくのか。あと、この税と社会保障の議論では、現時点では政府・与党社会保障改革検討本部というものがありますが、ここを基本的に舞台として使っていくお考えなのかということを、まずお聞きしたいと思います。
(答)役割分担の問題は非常に重要な問題なので、今日も閣議後、玄葉大臣と少しお話ししましたら、近々、会って御相談しようという話になりましたので、その場面で関係する大臣は、財務大臣、総務大臣、厚労大臣、私、あるいは玄葉大臣とおられますので―あるいは官房長官も入るかもしれません。そこできっちりそれぞれの役目を確認して、それぞれが全力を尽くすということだと思っています。
(問)与謝野大臣が前政権時代につくられた附則104条が、また今回、政権入りするということで、今度はこの附則104条を実現するお立場になるかと思います。この附則104条の中には、2011年度までに法制上の措置ということがありますので、現時点ではやはりこれを守るとなると、消費税を含む税制抜本改革の関連法案は、来年の今ごろの通常国会にはやはり提出するべきだというような、今のところの時間軸というのは、そういう御認識でよろしいのでしょうか。
(答)法律は法律ですから、行政府を縛っているということは間違いない。ですから、その法律に書いてあるとおりの努力をするというのが、誠実な政府の態度であるべきだと思っております。6月までに、社会保障・税の改革法案を総理が示されたいとおっしゃっておりますので、まずはその段階まで作業を進めたいと思っております。あとどう取り扱われるかということは、国会の情勢、世論の動向、いろいろなことを考えなければいけないという政治判断の分野に入るのだろうと思っております。
(問)今の質問に関連して、6月までに社会保障・税の改革案をまとめるという方針を菅総理大臣は示していて、そのために与謝野大臣を起用されたというところもあると思いますが、今、我々のところでは6月というスケジュールしか与えられていないのですが、大臣は御就任の現在の時点で、より詳細にどのようなスケジュールで詰めていきたいかという案があれば聞きたいというのが1点と、もう一点それに関連して、野党と話し合うということで、安心実現会議でも円卓会議というアイデアがありましたけれども、非常に重要なことになってくると思うのですが、現時点で、大臣の就任自身が野党からの反発を招いているという点もあるのですが、野党への協議、円卓会議の実現ということについて、どのような構想を考えていらっしゃるのかお聞かせください。
(答)野党の反発は、私の人徳のなさの所以でありまして、国の大事というのは、与党・野党を問わず同一のものがあるのではないかと思っております。自民党が出した財政再建の責任法という法律の中にも、与野党協議というものが条文として書いてありますので、必ずしも総理が猪突に物を言われたわけではなくて、そのベースは安心社会実現会議、あるいは財政責任法等々によって、少しずつ調整されている方向ではないかと思っております。
(問)6月までの進め方で、何か現時点で具体的なアイデア等はお持ちですか。
(答)6月までに案をつくりたいという総理の御意思ですから、それに従って作業を進めるというのが閣僚の責任であると思っております。
(問)菅総理も野田大臣も、税と社会保障について、政治生命をかけるというふうにおっしゃっておられます。その意気込みを、与謝野大臣にお伺いします。
(答)そういうお気持ちを知って、私も意気に感じて、この職に就かせていただいたわけです。
(問)2点お願いします。1点目なのですが、先ほど、国民の理解ということをおっしゃいましたけれども、国民なり野党なりの理解の前に、まず与党内の理解というのが必要だと思うのですが、昨年の参院選の際に菅総理が社会保障と消費税という話をされた後、民主党内の理解というのがどこまで進んでいるというふうに与謝野さん御自身はとらえていらっしゃり、また、それを党外からいらした与謝野さんがどう説得できるのかという見通しをまず教えてください。
(答)説得というのは、そんな簡単な話ではない。例えば自民党の中でも、なかなかこういうものの理解は深まらなかったということですから、大きな政党の中にはいろいろな意見を持っている方がおられるので、やはり丁寧に説明をし理解を求めていくという謙虚な態度で、党の御理解を求めていくということが必要であると思っております。
(問)社会保障と税の改革というところでは、与謝野さんのお力を発揮できると思うのですけれども、先ほどおっしゃったように、税で負担増を求めていく際に、やはりほかの歳出とのバランス、ほかの歳出のばらまき政策と言われているようなところとのバランスをとらないと、なかなか負担増というのは国民に理解が得られにくいと思うのですけれども、その辺は、ほかの民主党の子ども手当をはじめとする政策の中で、どういうところを修正していけば負担増というものの理解を得やすくなるのかという現時点でのお考えを改めてお聞かせください。
(答)やはり、理解していただく最も大事な方向というのは、タイムラグはありながらも、自分の払ったものが自分に戻ってくるという確信を納税者が持つということだろうと私は思っております。
(問)本来の大臣としてのお仕事に加えまして、政権としましては与野党協議の呼び水として、与謝野大臣に期待する向きがございます。その一方で、最大野党の自民党などは、大臣の起用に態度を硬化させているとの報道もございます。連立のキーマンとして報道されている点はいかがでしょうか。
(答)もともと与党と野党というのは、定義からいって激突するものであって、激突するということは不思議なことでも何でもないと思っております。そういう状況の中で、やはり国民が心配していること、国の財政は持続可能か、年金・医療などの社会保障制度は持続可能か、こういうことは、例えばスウェーデンで行われたように、政治的に一時休戦して国民の喫緊の課題を解決するということも外国の例にありますから、そういうことも与野党とも十分に参考にする必要があると私は思っております。
(問)先ほど、官邸での野田大臣の記者会見の中で、円高など厳しい経済情勢を踏まえて為替動向を注視しつつ、経済財政担当大臣と協力して、日銀とも円滑に連携するよう総理から野田大臣に指示があったとの御発言がありました。円高が随分と長引いておりますけれども、この点について与謝野大臣は、具体的に取組としては、今のところどのようなお考えをお持ちでしょうか。
(答)閣僚は、円のレベルに触れてはいけないというのが原則であると思っております。
 ただし、非常にボラティリティが発生したような場合には、やはり政府として何らかの措置をとるということは、自然なことだろうと思っております。
(問)2点ほどお願いします。
 まず一つは、大臣御自身は、「民主党が日本経済を破壊する」という著書の中で、民主党のマニフェストにあった子ども手当とか、その他、いわゆるばらまき政策と言われるものを批判されていますけれども、今回、この政権の閣僚に就任されて、そうしたこれまで民主党の看板政策とされてきたものについて、どのようなお立場、あるいは姿勢をとられるのかということ、まずこれをお伺いできればと思います。
(答)そう批判したことも事実ですし、批判精神は失っていないと私は思っております。子ども手当等は、やはり十分にその政策効果というもの、あるいは政策目標というものが、導入された当初、十分、説明されなかった恨みがあると思っております。
(問)もう1点お願いします。これまで経済財政部局では、日本経済の最大の課題としてデフレの脱却というものを挙げてきました。政府経済見通しでは、来年度中にCPIをプラスに持っていって、2011年度のCPIの総合指数は0.0%という見通しを立てていますけれども、このデフレ脱却に向けた道筋を来年度中にどのように立てていけばよいのかということについて、お考えをお伺いできればと思います。
(答)日本経済を本当にデフレから脱却させるというためには、やはり金融を緩めるとか、そういう短期的なことだけではなく、やはり日本経済の本質的な力というものを強くする。すなわち、イノベーションを中心とした物の考え方に頭を切り換える必要があると思っております。単に政府の財政出動による需給の調整とか、あるいは日銀の金融政策に過度に依存してデフレを脱却しようということではなくて、日本経済の底力が本当に発揮できるような経済政策、国民に対する鼓舞、こういうものが私は大事なのだと思っております。

(以上)